刹那サイド
例のギャルゲを初めてプレイした日から10日、僕はセシアとエネの見ていない隙を狙って何とかゲームを全クリし、見事CGも全て揃えた。そして今日の放課後、令音さんにゲームの結果を見せに行った。
「・・・ん、やっと個別√制覇か。・・・長かったね」
「ロックに手伝ってもらってやっとでした・・・」
僕が机にグッタリしていると、琴里が言う。
「それじゃあ、次の訓練だけど・・・生身の女性で行きましょうか」
「・・・ふむ、大丈夫かね」
「平気よ。もし失敗しても、失われるのは刹那の社会的信用だけだから」
「・・・いや、そうではなくて告白された側の方なんだが・・・」
「はあ?別に大丈夫でしょ?」
「・・・彼はこの学校で一番人気の男子だよ。・・・新聞部の情報によると、愛想が良く、成績は勉学、運動共に何時もトップ、水泳の授業で水着になった彼の上半身を見た者は男女構わず保健室行き、家庭科の調理実習でも彼の作った料理はレストランレベルとも言われる・・・」
令音さんは僕のプロフィールと呼ばれる物を読み上げる。新聞部には呆れたよ・・・。またあの人だな・・・。僕は何かと新聞部にネタにされている様で、学校新聞に何回か載った事がある。一番マズかったのは去年の学園祭の事だ。天宮市の学校は合同で学園祭を行うのだが、違う学校に通っている美九と何故かステージで歌わされた事があった。其れはまだ良いのだが、美九が最後に僕にキスをすると言う事態を引き起こし、会場はパニック。最終的に美九の天使を使ってその場は収まったが、何故か新聞部の部長には効かず、記事を書かれて大変だった。令音さんと琴里はそんな新聞部のカオスな情報が詰まったプロフィールを何故か興味深々に二人で読んでいた。
「・・・中学時代はサッカー部に所属、そのずば抜けた才能で一年生ながらにしてキャプテンとなり、中学サッカー大会《フットボール・フロンティア》優勝」
「まだよ。その半年後に開催された中学サッカー世界大会《FFI(フットボール・フロンティア・インターナショナル)》にキャプテンとして出場し、チームを優勝へと導いた。その時に着いた彼の二つ名は《白狼》」
「うわ・・・その名前恥ずかしいのに・・・」
「・・・いや、その事は映像で見たから知っているが誇ってもいい事だよ。・・・二つ名何て早々もらえる物では無いからね」
「そうよ、アンタはもう少し自分に自信を持ちなさい。何時も自分を卑下しすぎなのよ」
何だろう。此処まで素直に褒めちぎられると何か照れるな・・・。っと、元の話から脱線しすぎじゃない?まあ、流石に部長さんも僕が毎日虐められていた事は書いてないみたいだね。コレはセシア達以外には行ってないからなあ・・・。
「あら?まだあるじゃない刹那のプロフィール」
「・・・その様だね」
・・・ま、まさか・・・あの部長そこまで掴んでたのか?。ちょっとヤバイかも・・・。
「ふ、二人共・・・そろそろ次の訓練に移ろうよ。ね?」
「待ちなさい。最後にコレを見るわ。それほど必死って事は相当レアな情h・・・・・・」
「・・・どうした琴里?・・・コレは・・・」
最後の情報を見た瞬間、琴里の表情が一気に無表情になり、直ぐに怒りの表情へと変わる。令音さんは信じられないと言った顔をしながら内容を読み上げる。
「・・・中学時代、サッカーに勤しむ中で彼は虐められていた。・・・内容は階段からの突き落とし、腹部への蹴り、殴り、カッターでの切り付け・・・それが全て服で見えない部分にのみ。・・・妹を餌にし、サンドバッグ等・・・そんな中であんな試合をしていたのか・・・」
「何よ・・・何よコレ・・・!」
「えっとさ・・・別に気にする事無いよ?回復魔法で傷は治ったし、虐めは最終的にモモ達が解決してくれたからさ。だかr「何処の何奴よそいつら!?」・・・琴里落ち着いて」
「令音、今すぐにそのクズ共を探し出して社会的に抹消しなさい」
「何言ってるのさ。令音さん、そんな事しなくてm「・・・ああ、私だ。・・・話は聞いていたな?」いや、だから止めよう!?」
何だかんだで止めるのに一時間も費やした。
〜一時間後〜
やっと落ち着いた僕は訓練の応用として、女子に告白!・・・の筈だったが、ロックに猛反対されて結局中止になった。尚、セシアとエネは今日もつぼみさんの所に出かけている。そして三人で飲み物を飲みながらゆっくりしていると、
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ-----------------------------
何の前触れも無しにサイレンが鳴り響いいた。すると、琴里に情報が来た様で、僕に内容を伝える。
「一旦フラクシナスに戻るわよ」
「やっぱり精霊?」
「ええ、出現予測地点は・・・此処よ」
そう言って琴里は地面に指を、つまりはこの来禅高校を指差した。
〜フラクシナス〜
時刻は、十七時二〇分。僕達はフラクシナスに戻り、上空から学校を見ていた。
「なるほど、ね」
艦長席に座った琴里は何時もの飴を舐めながら唇の端を上げた。
「刹那、出番よ」
「分かった・・・」
僕はロックの居る端末を持って部屋を出ようとしたその時、
「----------もう彼を実戦登用するのですか、司令」
と琴里の隣に立っていたギンg、神無月さんが不意に声を発した。だが、直ぐに神無月さんは琴里の鳩尾への拳で黙らされる。神無月さんは恍惚な笑みを浮かべている。まさかこの人危ない人なのでは・・・。
「刹那、まだ待ちなさい。コレを見て」
そう言って琴里は学校周辺と思われるマップを出す。恐らくASTと精霊の物と思われるアイコンが示される。
「あのさ・・・気配で区別位は察知できるから大丈夫だよ。あと、通信設備は一切使わないでね。僕も使うつもり無いから」
「はあ!?馬鹿言ってんじゃ無いわよ!」
「・・・普通そんな明らかに怪しい物持ってる奴にあの子が素直になると思う?僕は無理だね。それに精霊は五感が人間より優れているからバレる事間違いなしだよ」
僕の言葉に琴里は「グヌヌ・・・」と声を上げて折れた。結果、ロックはポケットに入れて持っていき、危険と感じた場合のみ、転移魔法で脱出となった。そんなこんなで僕は転移魔法を使い、精霊の移動した、半壊した校舎へと転移した。
〜校舎〜
転移した僕は霊力を辿り、三階の教室へと向かう。教室の前まで辿り着いた僕はある事に気付く。
「あ、此処僕の教室だ。良かった〜、新学期だから物は何一つ置いて無いんだよね」
そう思いながら僕は恐る恐るドアを開ける。夕日で赤く染め上げられた教室の様子が、網膜に映り込んでくる。すると、
「----------ぬ?」
不思議なドレスを纏った少女が丁度僕の机の上に片膝を立てる様に座っていた。相変わらずの物憂げな目でぼうっと黒板を眺めていたが、僕に気付いて視線をずらす。
「や、やあ、久しb」
と僕が話しかけようとした瞬間。
----------ひゅん、と。
少女が手を無造作に振るうと、僕の頬を掠めて一条の黒い光線が通り抜けていった。一瞬のあと、僕の背後の教室の扉、廊下の窓ガラスが大きな音を立てて砕け散る。僕は廊下に一回出てから言う。
「待って、僕は敵じゃない」
そう言うと、それきり光線は放たれなくなった。
『聞いてくれたのかな?どう思うロック?』
『いや、恐らく様子見だろうな。教室に入ると多分止まれって言われるぞ』
僕はロックに念話を使って相談する。コレを使えば誰にも聞かれる事も無く話す事ができる所謂個人チャットの様な物だが、この念話は僕の様に《リンカーコア》のある人間とロック達デバイスしか使う事ができない。僕は念話を切り、教室へと入った。すると、
「-----止まれ」
・・・ビンゴ。少女の声と共に僕の前の床をさっきの黒い光線が灼いた。そして少女は僕を隅から隅まで見て言った。
「おまえは、何者だ」
「僕は五河刹那。君を救いに来た」
そう言った瞬間、少女は不機嫌な表情で此方を睨みながら光の弾を創り出す。まるで僕の《アクセルシューター》みたいだ。僕は警戒させない為に近づくのを一旦止める。少女はそれでも霊力の弾を此方に向けて机から降りた。
「-----そのままでいろ。おまえは今、私の攻撃可能圏内にいる」
「・・・分かった」
少女の言葉に僕は素直に従う。少女はゆっくりとした足取りで此方に寄ってくる。そして腰を折り、僕を凝視すると思い出した様に言った。
「おまえ、前に一度会ったことがあるな・・・?」
「うん、この前の四月一〇日にね」
「おお」
少女は手をポン、とやると姿勢を戻して僕の髪の毛を掴んでグイっと持ち上げる。うん、凄く痛いです!
「・・・今、私を救うと言ったな。ふん、見え透いた手を。言え、何が狙いだ。油断させておいて後ろから襲うつもりか?」
僕は少女が誰の言葉も信じない。信じられない環境に居た事を確信した事に軽い絶望と悲しみを覚えた。だからこそ僕は彼女を救う。救ってみせる!直ぐに絶望感を振り払って僕は言う。
「人間は・・・君を殺そうとする人達ばかりじゃない・・・!」
少女は目を丸くして僕の髪から手を離す。そして少し僕を見つめた後、口を開いた。
「・・・そうなのか?」
「そうだよ」
「私が会った人間達は、皆死ねばならないと言っていたぞ」
「そんなわけ・・・ないだろう・・・!」
少女は未だに僕に疑問の目を向ける。
「では聞くが。どうやって私を救うと言うのだ」
「それは・・・君の霊力を封印する」
「・・・戯言を。できる訳がないだろう」
そう言うと少女は酷く憂鬱そうな顔をする。まただ、この表情を見る度に僕の心は落ち着かなくなる。僕が人生で一番嫌いな顔だ。自分が愛されると思っていない、この世界に見方なんて居ない。彼女の今の状態は毎日に絶望しながら生きた前世の僕そのものだ。僕は気迫を込めて言う。
「できる・・・!僕ならできる!もしダメなら僕を好きにして構わない」
少女が僕の気迫に押され、一歩後ずさる。僕はそれでも止まらない。この少女にはこれ位しないと聞かないだろう。この少女には手を差し伸べる人がいなかったのだから。少女には僕に手を差し伸べてくれた赤いマフラーの神の少女の様な、今の家族の様な者達がいなかったから・・・。だから、僕がなる。僕が彼女に手を伸ばす!
「僕は-----君を否定しない」
僕は一歩踏み出し、そう言った。すると少女は僕から視線を逸らして小さく口を開いた。
「・・・セツナ、セツナといったな」
「・・・うん」
「本当に、おまえは私を否定しないのか?」
「本当だよ」
「本当の本当か?」
「本当の本当だよ」
「本当の本当の本当か?」
「本当の本当の本当だよ」
僕が即答すると、少女は髪の毛をぐしゃぐしゃとかき、ずずっと鼻をすする様な音を立ててから、顔の向きを戻してきた。
「-----ふん」
眉を寄せ、への字の口になり、腕組をする。
「誰がそんな言葉に騙されるかばーかばーか」
「・・・それでも僕は」
「・・・だがまあ、あれだ」
少女は複雑そうな表情で続けた。
「どんな腹があるかは知らんが、まともに会話しようという人間は初めてだからな。・・・この世界の情報を得るために少しだけ利用してやる」
そう言ってふん、と息を吐く。
「え・・・ええ・・・?」
「話しくらいしてやらんこともないと言っているのだ。そう、情報を得るためだからな。うむ、大事。情報超大事」
言いながらもほんの少しだけ少女の表情が和らいだ気がした。
「・・・そっか・・・ありがと」
僕は素直に礼を言った。すると少女は僕をビシッと指差して言った。
「ただし不審な行動を取ってみろ。おまえの身体に風穴を開けてやるからな」
「・・・了解」
僕の言葉を聞くと少女は質問して来た。
「セツナ」
「何かな?」
「早速聞くが、ここは一体何なんだ?初めて見る場所だ」
そう言って歩きながら教室の机をペタペタと触る。
「此処は学校って言って僕と同年代位の子達が集まって勉強する場所何だ。こうやってさ・・・」
「なんと」
そう言って僕は倒れていない自分の机に座って鉛筆を持つ仕草をする。少女は僕の言葉に目を丸くする。
「これに全て人間が収まるのか?冗談を抜かすな。四〇近くはあるぞ」
「いや、本当だよ」
まあ、少女が見ている人間はAST位で後は皆シェルターに居るからね・・・。
「ねえ-------」
少女の名前を呼ぼうとして、僕は言葉を詰まらせた。
「ぬ?」
僕の様子に気付き、少女が眉をひそめる。そして暫く、考える様に顎に手を置いた後、
「・・・そうか、会話を交わす相手がいるのなら、必要なのだな」
そう呟きながら手近な机に寄りかかって少女は言った。
「セツナ。------おまえは私を何と呼びたい」
「・・・へ?」
正直何を言っているのか訳が分からなかった。少女はふんと腕組みをして、尊大な調子で続けた。
「私に名をつけろ」
「・・・」
沈黙が続き、僕は心の中で思った。
----------重いよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
「えっと・・・僕が?」
「ああ。どうせおまえ以外と会話をする予定はない。問題あるまい」
少女の言葉に戸惑いながらも僕は名前を考える。数分間の沈黙の後、僕は頭に浮かんだ名前を口に出した。
「それじゃあ、《十香(とおか)》ってどうかな?」
「ぬ?」
「ダメ・・・かな?」
「・・・」
少女は暫く黙った後・・・
「まあ、いい。嫌いではないな」
そう言った。まあ、名前の由来は一〇日に初めて会ったからなんだけど・・・。すると少女は僕に聞いて来た。
「それで--------トーカとは、どう書くのだ?」
「ああ、それはね-----」
僕は黒板の前に立ってチョークを持ち、《十香》と書いた。
「ふむ」
少女は小さく唸ってから、僕の真似をする様に黒板を指先でなぞる。
「いや、ちゃんとチョーク使わないと・・・」
言いかけて僕は言葉を止めた。少女の指の跡が削り取られ、お世辞にも綺麗とは言えない《十香》と言う時が記されていた。だが、書き順が合っているのでそこまで抜けている訳では無いのかもしれない。
「セツナ」
「ん、何?」
「十香」
「うん?」
「十香。私の名だ。素敵だろう?」
「うん、凄く似合ってるよ」
ちょっと恥ずかしいな・・・。そう思いながら僕は目を逸らす。だが、少女《十香》は、もう一度同じ様に唇を動かした。
「セツナ」
・・・流石の僕でも其れ位の意図は分かる。
「十香・・・」
僕がその名前を呼ぶと、満足そうに十香はニッと笑った。そういえば彼女の笑顔は初めて見た気がする。と、その時、
「にゃっ!?」
突如、凄まじい爆音と振動が襲った。咄嗟に黒板に手をついて身体を支える。
「・・・空気の読めない奴らだね。十香、ああいう輩を世ではKYって言うんだよ」
「そうなのか?」
次の瞬間、ガガガガガガガガガーーーーーッとけたたましい音を立てて大量の銃弾が窓ガラスを突き抜けて教室を行き交う。まるでマフィアの抗争か何かだ。僕は直ぐに彼女に目を向ける。
「十香!」
十香はボーッとしていた様で、ハッとなって僕を見る。銃弾は一旦止んだようで、十香は言った。
「早く逃げろ、セツナ。私と一緒にいては、同胞に討たれることになるぞ」
僕はその場に、十香の目の前にドカッと座る。そして腰のポーチから仮面を取り出して顔を隠し、ロックをセットアップする。十香は僕の見た目が変わった事に驚いて居た。
「これで僕も銃弾は聞かないし、それにまだ僕は君と話し足りないんだ。だから外野は放置して話そうよ」
十香は一瞬驚いた顔をした後、僕の向かいに座った。再び再開された銃弾の嵐の中で僕達は話し込む。
「結局十香ってどんな存在なの?」
「------知らん」
「知らんって・・・」
「事実なのだ。仕方ないだろう。どれくらい前だったか・・・急に私は芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在か知りはしない」
「そ、そうなんだ・・・」
「そういうものだ。突然この世に生まれ、その瞬間にはもう空にメカメカ団が舞っていた」
「メカメカ・・・ああ、ASTの事だね」
苦笑しながら言うと、僕はそろそろ行けるのではと思って本題を言った。
「ねえ、十香。良かったら僕と今度デートしない?」
「デェトとは一体なんだ」
「それはね・・・」
『刹那、アイツ等動きやがったぜ!』
ロックの声に僕と十香が反応すると、教室の外から鳶一さんが光のブレードを持って十香に襲いかかった。十香も自分の足元に踵を突き立てる。
「-----《塵殺公(サンダルフォン)》!」
瞬間、教室の床が隆起し、玉座が現れる。その隙に僕の足元に魔力陣が出現する。そして僕はフラクシナスに転移した。
刹那サイド終了
「