「・・・セン」
「あ、令音さん。どうしたんですか?」
「・・・いや、この前の弁当箱を返しにね」
「ああ、どうも。あ、クルーの人達に頼まれていた物持ってきました」
「・・・ん。・・・私から渡しておこう・・・」
「はい。じゃあ、まず川越さんに・・・」
「・・・何て言うか・・・。刹那って生粋のパシリ癖よね」
「・・・せめて気が利くって言ってやってくれ・・・」
刹那サイド
あれから翌日、僕は学校に登校したのだが・・・。
「ですよね〜・・・」
目の前では瓦礫が盛り沢山な校舎としっかり閉まった校門があった。今日はセシア達デバイス達は全員フラクシナスでASTのデータ解析に行くって言ってたし・・・。
「あ〜・・・つぼみさんの所に行こうかな」
僕は制服のまま孤児院へと歩いて行く。暫く歩くと通行止めの場所へ着いてしまった。
「そういえば此処で初めて会ったんだっけ・・・」
そう、其処は精霊の《十香》と初めて会った場所だ。あの時は驚いたよ。何せ行き成り女の子が剣を振って来たからね。ゲイムギョウ界では結構武器を持った女の子は居たけど行き成り襲われる事は無かったな・・・。
「・・・・・・ナ」
さてと・・・そろそろ行きますか。あ、行く前にお茶菓子買って行こう。そういえば今日は《月刊少女ロマンス》の発売日だったっけ。実は僕の同級生の子が漫画家でしかも大人気少女マンガの作者なんだよね。この前助部への依頼で僕が手伝った原稿の話だから買っていこうっと。
「・・・・・・い、・・・・・・ナ」
いい加減部活にも顔出さないとね・・・。学校が始まったら行こう。また他県へ出張とかだったら嫌なんですけど・・・。助部は特別な部活で公欠扱いで他県へ依頼解決とか行くからなあ・・・。それも皆部長の権力故にだけど・・・。
「おい、刹那」
「ふえ?と、十香!?」
「ようやく気づいたか、ばーかばーか」
声に気が付くと、瓦礫の山の上に十香が立っていた。思わず僕は辺りを見回す。普通に井戸端会議をしているおばちゃん達、犬を連れて散歩している人、服のチャックをゆっくりと下ろしながら此方を見ている男の人・・・ボクハナニモミテイナイ・・・。
「どうしたセツナ。顔が青いぞ?」
「だ、大丈夫だよ。・・・ちょっとトラウマが」
「そうか、ではデェトとやらを!」
「・・・そうだね。行こうか」
空間震が起きなかった事は気になったが、それよりも僕との約束を覚えてくれていた事が嬉しかった。そして僕は十香の手を取って歩き出した・・・。
「あ、その服装何とかならない?」
「む。これか?ならアレでいいだろう」
・・・最初から街の人の服装真似てくれれば良いのに・・・。
〜数分後〜
「それじゃあ行こうか」
「うむ!」
通りすがりの僕の学校の女子生徒の制服を十香はドレスを変えて創り、改めて僕達は歩き出した。暫く歩くと街の人達が僕達を見てくる。まあ、十香は可愛いからね。すると十香は僕の後ろに隠れて周りの人を睨みつける。
「・・・あいつらは敵か?殺すか?」
「そんな事しなくて良いから。皆十香が可愛いから見てるだけだよ」
「む。そうなのか?よくわからないが私から見ればセツナも可愛いと思うのだが・・・」
「男としてそのコメントは複雑・・・」
僕は十香を説得しながら歩いて行く。・・・一応ASTの監視を見越しておこうかな?僕は十香に見つからない様にポケットからある物を取り出す。其れは猫のキャラクターが書かれたメダルだった。僕はメダルにある程度霊力を込めてから道端に投げる。するとメダルは描かれていた猫へと姿を変える。周りにはこの猫は見えていない。これは所謂式神と言う物で、偶々出会った妖怪を式神に変えた。猫は日本足で立ち、欠伸をしていた。猫はめんどくさそうに電柱にジャンプして僕達の周りを見回しながら移動する。
「(頼んだよ、《ジバニャン》・・・)」
式神のジバニャンに監視を任せ、僕達は移動を再開した。その後のデートは順調だった。まあ、一通りの多い場所に出る度に殺す一択の十香を止めていたけど。まあ、プルルートの女神状態を止めるよりは楽勝ですよ。他には十香ときなこパンを一緒に食べたりアイスを食べたりクレープを・・・あれ?もしかして食べてしかいない!?重大な事に気が付いた頃にはもう遅く、十香の笑顔を見ると割とどうでも良くなった。只僕は気付くべきだった。僕のクラスメートの彼女は想像以上の行動を起こす事に・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド
刹那がデートをしている同時刻。琴里と令音は天宮通りのカフェでゆっくりとしていた。琴里も制服を着てケーキを食べている。彼女の学校も空間震の被害を受けたらしく、休校だったのだ。
「・・・そうだ、丁度良い機会だから聞いておこう」
そう言って令音がアップルティーの入ったカップを置く。琴里も何?と令音の言葉を待つ。
「・・・何故彼が交渉役に選ばれたんだい?」
「んー、能力意外にも色々あるんだよね」
「・・・どう言う事だい?」
令音の疑問に琴里が答える。
「実は私とおにーちゃんって血が繋がってないギャルゲ設定なの」
「・・・ほう?」
「それでね。私が覚えてない頃におにーちゃんがうちに引き取られた時なんだけど・・・おにーちゃん両親が死んじゃって一人だったんだって。当初は本当にひどかったみたい。何も写ってない目をしてたって。今にも自殺しそうなくらい」
何故か令音が眉をピクリと動かした。琴里は説明を続ける。
「一年くらいでマシにはなったらしいけど齢一桁の子供にいきなりの孤独はキツかったんだろうねー」
ふう、と一息つき続ける。
「それからなのか元からなのかおにーちゃん、人の絶望に敏感になんだー」
「・・・絶望に?」
「自分みたいに絶望的な状態の子とか困ってる人とかを放っておけなくて、無遠慮に関わって行くんだよねー。だから高校でもあの部活に入ったんだろうし。でも自分を大事にしない所がたまにキズかなー」
「・・・ふむ」
琴里は説明を終え、ブルーベリージュースをストローで一気に吸い込んだ。そしてその瞬間、令音に向けて吹き出してしまった。
「ごめっ、令音・・・」
「・・・何かあったのかね」
令音はハンカチで身体を拭きながら聞く。すると琴里は恐る恐る指を令音の向こう側へと向ける。令音は指の先を見るとピタッと固まり、ゆっくりと元の位置に戻ってアップルティーを一口。そして発した言葉は
「・・・なまらびっくり」
何故か北海道方言だった。無理もないだろう。彼女達の見た物は精霊と楽しそうに歩いている白髪の少年だったのだから。
三人称サイド終了