木葉散る頃   作:とんでん

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最初に時系列を飛ばし飛ばしで書きますと宣言したのを良い事に、一気に十年ほど時間を飛ばすなどしています。このシリーズ度々こういうことが起きる予定です。ご容赦下さい。



青葉

 雨が降っている。

 

『ヒカク様のところのお嬢さんとさ、この間見合いしたんだけど。』

 

 もう懐かしくなってしまった親友の声は、蕭蕭とした音にかき消され、良く聞こえない。

 

『噂には聞いてたけど、べらぼうに美人でさあ。』

『上品で物静かであんまり笑わないけど、笑うと周りがパァーって明るくなる。』

『それを見てきっと上手くやれる、結婚するならこの人とがいいと思ったんだ。』

 

 ああそうかよ、と興味なく切り捨てたダンゾウにめげるでもなく、カガミは太陽のように笑った。

 確か師匠が亡くなってすぐのことだった。今際のあの人に最期の任務を言い渡されたであろう彼が、火影側近の職を蹴って一族に戻ることを決めた頃。

 重荷など何一つとして感じさせずに、照れ照れと相好を崩したカガミは、聞いてもいない話を延々続ける。

 

『俺きっと里一番の幸せ者だよ。あ、やっぱ今のナシ。一番幸せなのはお嬢さんがいいから、俺は二番目で!』

 

 ───あの、此方が恥ずかしくなるような惚気話も、今になってみればちゃんと聞いてやればよかったと思う。

 

 

「ヒルゼン、今時間いいか?」

 

 他でもない親友・・・・・・うちはカガミに『話し合え。』と言われたのだ。遺言になってしまった以上、全うせねばなるまい。

 ダンゾウは久々に暗部の男、ゼンの仮面を解いて素顔で火影室に入った。一人執務机に項垂れ、瞑想にふけっていた猿飛ヒルゼンは、きょとんと眼をしばたかせる。

 

「あ、ああ・・・・・・構わないけど。」

「なら、少し話そう。」

 

 きっとこれがターニングポイントになる、とダンゾウは思った。

 すれ違いと歪みを直すのは、容易ではない。だが正そうとしたという結果は残るのだ。後は自分たちがどう妥協し、許しあえるかである。

 

「きちんと話し合おう。」

 

 ややあってから、ヒルゼンは肯定の意を口にした。空気に若干の緊張を湛えながら、息を吸い込む。

 

 窓の外の雨脚は強まるばかりだ。そして濡れた土と埃のにおいに混じって、紛れもない戦の臭気が這い寄って来ていた。

 

 

******

 

 

 その密書が青年に届けられたのは、梅雨も終わった頃合いだった。

 紙面に踊る流麗な墨を読み進める度に、興奮が火のように身体を焙っていく───なにせそれは、火影直轄の機密部隊・暗殺戦術特殊部隊への任命書であった。

 

(認められた・・・・・・!!)

 

 里が、己と己の一族を認めたのだ。ようやっと、“うちはマダラ”の里抜けから数十年が過ぎて、ようやくに!

 うちは一族の年若き忍は夢見心地で幾度も文書を読みかえした。うちはは木ノ葉隠れの里において、疑心の目を向けられている。それは里上部を長年鎬を削りあった千手一族が占めていること、そんな彼らに反発し、抜け忍となったかつての族長がいたためだ。

 故にうちはは常に政の中枢から遠ざけられ、出世も儘ならなかった。

 

(だが、そのうちきっと俺たちの実力を認めざるを得なくなる。)

 

 青年が求めるのは“対等”と“正当な評価”だ。里への忠誠心も、忍者としての能力も他に引けを取らんという自負がある。

 そう信じ、敢えて警務部隊を蹴って一般上忍師として勤務すること早幾年。

 青年の努力は、やっとのことで実を結んだのだった。

 

「────罠ではないか?」

「スパイとしてうちはを監視する気では。」

「断れ断れ、雑用を押し付けられるのが精々よ。」

 

 が、一族の上層部の反応は芳しくなかった。

 配置変更は一族を統括する長に伝えねばならぬ。そのため族長家に報告へ上がった青年は、苦い気持ちで床の節目を見つめた。

 ・・・・・・青年としても、その可能性が過らなかったわけではない。だがそれでも火影直轄に身を置けるということが、なにより嬉しかったのだ。

 

「そも、志村ダンゾウという男が気に食わぬ。奴め、総隊長に就任してから一度も表舞台へ姿を出していないというではないか。信用ならぬ!」

 

 長老の怒声に、そうだそうだと数名が同調した。

 暗部総隊長・志村ダンゾウ────三代目火影・猿飛ヒルゼンの盟友であり、二代目の直弟子でもある。師匠の死後は里の裏方に徹し、姿を見かけたものは誰一人としていなかった。

 

 ここ十年間(・・・)、一度もだ。

 

「ヤツはうちはカガミとは旧知の仲だった筈!火影は参列したというに、ダンゾウときたら葬儀にも顔を出さず、薄情にもほどがあろう。」

「戦時中も名を聞くことはなかった。いったい何を考えているのか全く分からん!」

 

 二代目火影の側近もとい精鋭部隊の一員───うちはカガミが、雲隠れの忍に討たれてから早十年。

 ただでさえ緊張感の高まっていた木ノ葉、雲隠れは正面衝突することと相成った。俗に言う第二次忍界大戦である。

 火影に就任し間もなかった三代目は、里を率いて真向から雲隠れ・・・・・・と途中で参戦してきた岩、霧、風の五大国と、時には同盟を組み時には裏切りながらこれを制した。

 当時はまだ中忍だった青年も参戦し、その戦いを間近で見ている。

 

「ヒカク様はどう思われますかな。」

「長、どうかご判断をば。」

 

 腕組みをし、黙していた現在のうちはの族長。その昔あの(・・)うちはマダラの側近であったという老爺は、鋭い眼光で青年を射抜いた。

 

「カズラよ。」

「はっ。」

「お前はどうしたい?」

「・・・・・・はい?」

「嫌ならば私から断りを入れよう。望むなら、行くがいい。ただし楽な任務ではないだろうが。」

 

 長!という長老衆の叫びは、写輪眼のひと睨みで掻き消えた。

 なにせ、うちはヒカクは戦乱の世に生を受け、今までの間ずっと戦い抜いてきた忍である。流石の貫禄と言わざるを得なかった。

 

「わ、私はこの任を受けたいと考えます。火影様に、我がうちはの有益性を指し示すまたとないチャンスだと。」

「そうか、」

 

 腕を解いたヒカクは、老いを感じさせぬ所作で立ち上がると、一瞬萎縮した青年にどうやら苦笑らしき表情を浮かべて、ぽんと肩を叩いた。

 青年────カズラの常識に間違えがなければ、それは激励のようだった。父が息子にするような、確かな励ましだ。

 

「頑張れよ。」

 

 ぎゅうと胸が締め付けられた。

 うちはヒカクは、生涯現役を宣言している。故に先の大戦でも全盛期を過ぎているにも関わらず、多くの首級を上げた・・・・・・その戦果が里人に公にされることも、特別の褒賞が下賜されることもなかったけれど。

 

「はい!」

 

 腹から出た返事にヒカクはゆるりと目を細めて、部屋の戸口に手をかけた。

 そして戸を開こうとして、ふともう一度カズラへと視線を向ける。

 

「ダンゾウの小僧は、どうも最近引篭りに精を出しているようだが。」

「はい。」

「心無い男というわけではない。義息子(カガミ)へ幾度か線香を上げに来たし、三代目とは竹馬の友よ。今木ノ葉で対等に三代目と殴り合える男は、ダンゾウ以外におるまいて。」

「はい・・・・・・はい?」

 

 なんか変は単語が聞こえた気がしたが、薄く唇に笑みが乗っていることから、冗談だったのだろうとカズラは断じた。

 

「活躍を聞くこと、楽しみにしている。」

 

 去って行くヒカクに、カズラは深々と首を垂れた。

 そうして身辺の整理をし、一月後。暗部の真新しい装束に身を包んだカズラは、早鐘を打つ心臓を宥めながら、暗部総隊長・志村ダンゾウその人の執務室へと赴いたのである────

 

「ダンゾウの分からず屋!独身!インケン!独り身!童貞!」

「やっかましいわ!あと房中任務があるのに童貞なわけないだろ!」

 

 ────赴いてから、アレここで合ってる?と眼前の光景を三度見した。

 部屋の前に架かった文字も確認したが、どう見ても『第三処務室』・・・・・・という名でカモフラージュされた暗部総隊長執務室である。任命書に書いてあったから違いはない。筈だ。

 

「・・・・・・おい、俺色仕掛けの任務とか報告聞いた覚えないんだが。」

「チッ!忘れろ、口が滑った。」

「忘れられるかバーカ!この間の商屋からの不自然な融資お前のせいか!誰を誑しこんだこのスケコマシ!」

「ウルセエ助兵衛!お前だって女湯覗いてただろうがこの間!火影の名を辱めおってからに!」

「ししししししししてねえよッ!!?」

 

 ・・・・・・しかもなんか、あんまり聞きたくなかった話をしていた。

 パッと見ただけで機密書類まみれと分かる部屋の中で、胸倉を掴みあい忍術忍具を飛び交わせ取っ組み合っている里の最高権力者たち、もとい猿飛ヒルゼンと志村ダンゾウにクラクラと眩暈がする。

 どうすれば良いんだろうこれ、と悩んだカズラはしかし真面目な好青年であったため「あのう。」と控えめに声をかけた。

 怒鳴り散らしていた二人は、いま初めて気が付きました、という顔でカズラを見る。

 暫し沈黙。

 

「ふんっ。」

「どぅわッ!?」

 

 ダンゾウがヒルゼンを執務室の窓から投げ捨てた。三秒にも満たない早業に、己との圧倒的な実力差を感じたカズラは慄く。

 というか普通捨てるか、火影を。

 

「さて・・・・・・うちはカズラだったな。」

「今の流れで何事もなかったかのように始まるんですか?」

 

 それとも暗部ってこうなんだろうか。なんて恐ろしい部署だ。

 涼しい顔で椅子に掛け、執務机に肘をついた上司にカズラは思わず突っ込んだ。ツッコミながら、志村ダンゾウという男を観察する。

 

(・・・・・・この男が、暗部の長。)

 

 隙の無い身のこなしに、均整のとれたしなやかな体躯。長く日に当たっていないためか肌は病的なほど白い。なんならどこか患っているのやも、と思ったがキビキビと動いているところを見るに、ただの不摂生のようである。面立ちはといえば、顎にある傷跡が特徴的だがなかなか整っていた。年は三十半ばと聞いていたが、二十後半でも通じそうである。

 そんなダンゾウは、カズラの問いに「フム、良い質問だな。」と本気でなんてことなさげに頷いた。

 

「俺は三代目とは幼馴染であり盟友であり、上司と部下というややこしい間柄だ。故に上手く意思の疎通が図れぬことがあってな。」

「は、はあ。」

「十年ほど前、一度きちんと腹を割って語りあおうと思ったのだが、何故だか途中から乱闘になってしまい。」

「拳で語り合ったんですね。」

「以後、意見が食い違うことがあれば殴り合って解決している。因みにわりとよくある。」

「なんで・・・・・・?」

 

 ヒカク様の言っていたことがどこも比喩じゃなかった件について。

 スンとした表情になったカズラに「初めはちゃんと演習場を使っていたのだが、毎度毎度爆裂四散させているうちに、苦情が殺到してな。」とダンゾウは続けた。何も理解したくなかったカズラは聞かなかったことにした。

 

「さて、それではうちはカズラ。暗殺戦術特殊部隊への加入、心から歓迎する。」

「あの・・・・・・はい。」

「暗部では基本、本人と特定されることがあってはならない。故に常時獣面を着用し、コードネームで呼び合う。カズラ、お前は以後“ミズノト”と名乗れ。」

「・・・・・・拝命しました。」

「複雑そうだな、凄く。」

 

 今度はダンゾウから突っ込まれたが、そりゃそうなるだろうというお話である。

 

「新入りには教育係が付く決まりになっている。お前の担当は“い班”の部隊長だ・・・・・・ここに。」

 

 パンパン、とダンゾウが手を叩くと、カズラの真横に音も気配もなく一人の暗部があらわれた。長い黒髪に猫面、そして性別が分かりづらい体躯をしている。

 手練れだ、とカズラは瞬時に断じた。

 

「コトツチ、ミズノトを頼む。」

「了解しました。」

「ミズノト。慣れぬことばかりだろうが、お前の才覚を存分に生かせることを願っている。励めよ。」

「かしこまりました。」

 

 一番慣れないのは貴方周りの奇天烈である。

 指導役に促され、まだショックを引きずったままカズラはフラフラと執務室を後にした。待機していた所属班との顔合わせでは、「火影様とダンゾウ様の喧嘩に巻き込まれたって?大変だったね。」「初めて見たらビックリするよな、日常茶飯事だから慣れるよ。」と労わられたり肩を叩かれたりした。先輩たちは皆どこか遠い目をしており、苦労を察知したカズラはうっかりホロリとした。

 

(・・・・・・だが、“うちは”の色眼鏡で見られることは、ない。)

 

 それは一寸の違いもなく、カズラの望んだ“対等”だった。少なくともここでは裏切るかもしれない相手ではなく、仲間として扱ってもらえる。それの何と得難いことだろう!

 

 気を取り直したカズラは、暗部としての初任務へと張り切って挑んだ。

 

「すみませんダンゾウ様隊長が捕虜の肌という肌に千本を刺してるんですが!!!?」

「ああすまない、それもよくある。」

 

 そして同じく張り切った隊長に針人間を見せられ、執務室へと駆け込んだ。

 うちはカズラ、もとい暗部名ミズノト。彼の苦労譚はまだまだ始まったばかりである。

 

 

******

 

 

「なにも三階から放りだすこたあないだろうに。」

 

 ところ変わって、火影室。ブツクサ言いながら、ヒルゼンは執務を処理していた。

 一時冷え切っていた親友との仲が回復したは良い。が、互いの扱いが雑になった気がした・・・・・・否、腑を見せあえるようになったのだから、良いのだけれど。

 十年前────カガミを失ってすぐのことを思い出しながら、ヒルゼンは嘆息を吐いた。

 

 

 その日は雨が降っていた。

 

「ヒルゼン、今時間いいか?」

 

 久しく狛面の中に押し隠され、見ていなかった友の顔にヒルゼンは瞬きをした。

 

「あ、ああ・・・・・・構わないけど。」

「なら、少し話そう。」

 

 さらりと言ったが、顔色は芳しくない。

 親友の死が尾を引いているのだ────ただでさえ師匠である二代目火影・千手扉間の死が深い傷跡となっているのに、彼にかかった負荷はいかばかりか。

 それが起因しているのだろうが、この頃のダンゾウは酷く“らしく”ない。

 

(以前までなら“模範”に己を縛り付けるようなことは、しなかった。)

 

 志村ダンゾウという男は、本来多少の違法には眉一つ動かさない、冷徹な男である。

 自他共に甘いと認めるヒルゼンとは水と油、或いは相克の仲だ。だが、互いにぶつかりあうことこそあれ、二人で切磋琢磨してここまでやってきた・・・・・・師匠はヒルゼンを火影に指名したが、それはダンゾウの存在が前提だった筈だ。

 照れくさいから口に出したことはないが、己に無いものを持っている彼を、ヒルゼンはずっと好ましく思っている。(もしダンゾウがそれを聞いてしまったら己の醜さとヒルゼンへの嫌悪と称賛で精神がねじ切れるので、言わなくて正解である。)

 だのに最近の彼ときたら、ヒルゼンの憧れたキレの良さがないのだ。

 

「長くかかるかもしれないが、場所を移すか。」

「そうだな、そうしよう。」

 

 傘を手に取ったダンゾウがとっとと先に行ってしまうので、ヒルゼンは慌てて後に続いた。

 無防備な背を晒す友との合間には、雨傘の分だけ距離が開いている。物理的にも精神的にも離れている親友に、酷く心もとなくなった。

 否、

 

(俺は未だお前と友なんだろうか。)

 

 今の木ノ葉隠れの里において、ヒルゼンの隣に並ぶ者は志村ダンゾウしかおるまい。

 だが、ダンゾウは自らヒルゼンの隣から降り、部下として振舞うようになった。それがどれほどヒルゼンを傷つけたか、おそらく当人は知らない。

 

「話し合えっていうのは、何をだろうな。」

「さてな。」

 

 素っ気なく言ったダンゾウは、それから気まずげな咳払いをして「なあ。」と言った。

 

「思ったんだがヒルゼンよ、お前は最近、少し変わった。」

「俺が?変わったのはお前だよ、どう考えても。」

「立場を弁えただけだろうが。何が悪い。」

「悪いも何も!」

 

 言い募ろうとして、通りすがりの忍に凝視されていることに気が付き口を噤んだ。

 ヒルゼンは自分が変わったとは思わない。ただ────以前より遠くにいる友の真似を、するようになったかもしれなかった。

 

「昔のお前なら、捕虜を捕らえるにしろうちはへの判断にしろ、もう少し躊躇した。」

 

 優しいヤツだからな、俺と違って。と付け足した声音は淡々としていて、単なる事実を述べただけのようだった。

 嫌味などは感じられない。

 

「悪いか、それが。」

「悪くはない。が、らしくはないな。」

「お互い様だよ、お前も変わった。別人のように。」

「・・・・・・平行線だな。」

 

 ぼやいたダンゾウが、ふと足を止める。

 適当に人通りの少ない方に歩いていたら、いつの間にやら演習場に来ていた。土砂降りの更地に、丸太が三本悲し気に突き刺さっている。

 

「・・・・・・鈴取り合戦、したな。そういえば。」

 

 ふと思いついて、言ってみただけなのだろう。が、親友の独り言のような言葉に記憶を揺り動かされたヒルゼンは、何も悩み事などなく、ただ日々をめいっぱいに生きていた少年たちを思い出し、微笑んだ。

 

「班を組んだばかりの時のことか、懐かしいな。もう十年以上経つか。」

「お前と任務中に喧嘩して、罰として千本組手を命じられたのもここだ。」

「俺が五百一勝、四百九十九敗で勝ったんだっけか。」

「・・・・・・・・・・・・いや、逆だろ。俺が勝っただろう、あの時は。」

「いやいや僅差で俺が勝ったぜ、絶対に。」

「・・・・・・は?」

「アン?」

 

 穏やかな気持ちで思い出に心を馳せていた二人の間に、ここ最近で一番の怒気が満ちた。

 互いに無言で傘を閉じ、丸太に立てかける。距離をとり、向かいあって組手の印。

 

「────風遁・大突破!」

「────火遁・火龍弾の術!」

 

 ふっつーに大乱闘に発展し、決着がつかずに半日が経った頃。駆けつけた里上層部の皆さまにしこたま怒られた二人は、「・・・・・・悪かったな。」「いや、俺も。」と般若の形相の猿飛ビワコを前に、ぽそぽそと和解した。

 第二次忍界大戦前夜の、若気の至りで飲み干したいような、しょうもない話である。

 

 

(まあでも、アレのおかげで有事の際遠慮なく意見をぶつけ合えるようになったし。)

 

 結果オーライ結果オーライ。とヒルゼンは無理やり自分を納得させた。

 

「入るぞ、ヒルゼン。」

「ダンゾウか。」

 

 がちゃりと戸を開けて入ってきた親友に、さっきぶりだな、とヒルゼンは言いかけて顔を顰めた。

 暗部の装束と狛犬の面に身を包んだダンゾウは、「そう嫌な顔をせんでくれ。」と苦笑する───暗部い班の班員、コードネーム“ゼン”としての格好で。

 ゼンは“志村ダンゾウ”は身軽じゃないから、という理由で作られた友人のもう一つの顔である。が、それで仕事も二人分に増やすのでは目も当てられない。総隊長の職務プラスに暗部としての任務だ、普通に考えてダンゾウでなければパンクする・・・・・・彼のこの仕事中毒ぶりもどうにかならないものか。

 

「仕方ないだろう、お前の弟子との共同任務だ。生半可な忍を派遣するわけにはいかない。」

「でも何もお前が行かなくとも・・・・・・千本の人じゃあ駄目か?」

「残念だが、千本の人は新人を任せていてな。あと普通に教育に悪かろうよ。」

「なら新入りを任せるなよ・・・・・・。」

 

 黙殺された。

 図星らしかった。

 

「それで、岩隠れの諜報活動に赴いていると聞いたが、様子は?」

「サッパリ、という感じだな。流石に五大国なだけあって、不穏な気配は見せても核心までは触らせてくれない。」

 

 土の国、岩隠れの里。彼らに煮え湯を飲まされた苦い記憶に目を細めながら、ヒルゼンは巻物の表面を撫でた。弟子の筆跡からは上手く立ち行かない任務への不機嫌と、人員の要請が記されている。

 

「また木ノ葉に仕掛けてくる気ならことだな。早急に対応するしかない、か。」

「ああ。」

 

 戦の火種は、いつどこから芽を出すか分からぬ。見つけた傍から摘み取るのが吉であった。

 そう、争いとはそれこそ藪を這う毒蛇のように、常に側らに息を潜めているのである。

 

「・・・・・・ダンゾウよ、大蛇丸を頼んだぞ。」

 

 誰に言っている。と応えた親友が頼もしかったから、ヒルゼンは胸に過った一抹の不安に見て見ぬふりをして、その背を見送った。





NARUTO、一番好きなキャラクターは卑劣様と我愛羅なんですが、次点は大蛇丸様です。
ようやく出せそうでとても嬉しい。
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