狐の花嫁の災難   作:水野大陽

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【狐の花嫁の災難〜中編〜】

 凛の母「金田一さん!」

 

 病院の手術室の前のベンチに座っていた、はじめの母は、凛の母の声に反応して立ち上がる

 

 はじめの母「申し訳ない!私がついていながら…」

 

 はじめの母は凛の母に頭を下げる

 

―――――――

 

 回想にて…

 

 はじめの母「ここが白狐村ね!」

 

 路線バスを降りたはじめの母は、凛の自宅の住所を書いたメモを確認していた

 

 そこへ…ものすごい銃声が響く

 

 通行人たちは、何が起こったのか分からず、固まっていた

 

 その直後、1人の男が、近くにあった駐在所からとび出し、走り出した

 

 警官「待てっ!」

 

 駐在所から、警官の大声が響き、警棒を持ってとび出す

 

 はじめの母「何があったの?」

 

 はじめの母は、警官にたずねる

 

 警官「今、1人の男が駐在所に押し入って、銃を奪って逃走しまして…」

 

 はじめの母は駐在所の中に入る

 

 昨年の白狐祭で、社に立ち入ったはじめたちに注意した駐在巡査が、血を流して倒れていた

 

 はじめの母「とにかく、今は救急車を呼んで!」

 

 はじめの母は警官に指示すると、駐在巡査の止血処置を始める

 

 はじめの母「そうだ!確か、入間さんが来ていたはず!」

 

 はじめの母はスマホを出すと、凛の母にメールを打つ

 

―――――――

 

 美咲「全く!凛が亡くなった時といい、今回といい、役に立たないんだから、あのヘボ警官!」

 

 美咲の発言に、そばにいた忍はアワアワしていた

 

 凛の母「金田一さんのせいでは、ありませんよ!人命を優先して頂いたのは、正しい判断です!」

 

 忍「ところで…金田一って…」

 

 忍が口をはさむ

 

 凛の母「あ、言ってなかったわね…こちらのかたが、金田一はじめくんのお母様なの!」

 

 凛の母は、美咲と忍に説明する

 

 美咲「緋森…美咲です…こっちは、蝉沢忍…」

 

 美咲は珍しく、堅苦しい表情になっていた

 

 はじめの母「君が蝉沢忍くんか!…話ははじめから聞いてるよ!『キャンプで遭難した時、凛ちゃんにキスを迫った、しょーもない子』だって…」

 

 はじめの母の言葉に、忍は気まずそうな表情になる

 

 美咲「だけど、どうして金田一のお母さんが?」

 

 はじめの母「その事なんだけどね…」

 

 そこへ、はじめの母のスマホが振動する

 

 はじめの母「もう、はじめったら、しょうがないわね!」

 

 はじめの母はスマホに出る

 

 はじめの母「はじめ、今、取り込み中で…」

 

 その直後…電話の向こう側から、ものすごい赤ん坊の泣き声が聞こえてきた

 

 はじめ「母さん、大変なんだよ…達美のヤツが全然泣き止まなくて…」

 

 電話の向こう側のはじめは、かなり慌てている様子だった

 

 忍「一体、何があったんだ!」

 

 忍は耳をふさぐ

 

 凛の母「代わってもらえますか?」

 

 はじめの母はスマホを凛の母に渡す

 

 凛の母「金田一くん、落ち着いて聞いてくれる!赤ちゃんにミルクはあげたの?」

 

 はじめ「今、ミルクやったばかりッスよ!そしたら、急に泣き出して…」

 

 凛の母は何かに気付いた表情になる

 

 凛の母「金田一くん!赤ちゃんの背中を軽くさすってあげてみてくれる?ゲップが出ると思うの!」

 

 はじめ「あ、ハイ!」

 

 はじめは凛の母の指示に従い、森下麗美の娘の達美の背中をさする

 

 直後にゲップが出る

 

 ウソのように、達美は泣き止んだ

 

 はじめ「助かったー!」

 

 はじめは脱力する

 

 凛の母「何かあったら、また電話してね」

 

 凛の母は電話を切る

 

 はじめの母「本当、すみません…ウチのバカはじめは、全く役立たずで…」

 

 はじめの母は、凛の母に、再度、頭を下げる

 

 凛の母「お気になさらないで下さい!『凛の死』に責任を感じているからこそ、来たくなかったんでしょうから…」

 

 はじめの母「オマケに…『学校の同級生のお嬢さんを預かる』って安請け合いしておいて…結局、自分じゃ何もできないんですから、呆れますよ!」

 

 はじめの母は、気が立っている

 

 凛の母「でしたら、私にお任せできますか?私の知り合いに、連絡してみますので!」

 

 はじめの母「本当にすみません!」

 

 かなり気が立っているはじめの母に対しても、冷静に受け流す凛の母の器の大きさに、美咲と忍は、驚いたあまり、呆然としていた

 

―――――――――

 

 数日後、白狐祭の当日となり…

 

 公民館の一室で、女性係員がイスに座っていた濱に、花嫁のメイクをしていた

 

 式部「秋子!」

 

 紙袋を持った式部が、部屋に入るが…なぜかニヤニヤしている

 

 男性係員「すみません、ちょっといいですか?」

 

 ドアの外から、男性係員の声がする

 

 女性係員「すぐ戻るから、少し、待っててくれる」

 

 女性係員は部屋の外に出る

 

 式部「秋子、コレ着て!」

 

 式部は紙袋を濱に渡す

 

 濱「え、どういう事?」

 

 紙袋の中身は、上下共に純白の和装用の、ブラジャーとパンツが入っていた

 

 式部「肌ざわり最高なのよ…一晩中、座ってなきゃいけないんだから、その方がいいでしょ」

 

 濱「でも、コレ…」

 

 式部に渡されたブラジャーとパンツは、あからさまに透けそうな素材だった

 

 式部「ボーっとしてないで、早く着替えて!お祭りまで時間ないんだから!」

 

 式部の圧力に負けた濱は、服を脱ぎ始める

 

 着ていたパンツとブラジャーも脱ぎ、一度、全裸になった瞬間…

 

 忍「濱ちゃん…」

 

 ノックもしないで、忍がドアを開け、入ってくるが…

 

 忍は全裸の濱と、目が合ってしまう

 

 濱「イヤァーーーッ!!!」

 

 濱は反射的に叫んでしまう

 

 式部「出てけぇーーーーっ!」

 

 激怒した式部は、パイプ椅子を忍に投げつける

 

 

――――――――――――――

 

 数時間後…

 

 忍「とんだ災難だったよ」

 

 美咲と式部の3人で、忍は流し場へ向かっていた

 

 式部「自業自得よ!」

 

 美咲「結構、似合うわよ」

 

 忍は頭にタンコブができており、鏡餅に載せたダイダイみたいになっている

 

 美咲「あ、社が見えてきた!」

 

 3人は社へと向かう

 

 忍「濱ちゃんだ!おーい!」

 

 忍は大きく手を振る

 

 雛壇に正座していた濱は、狐の面を取る

 

 ニッコリした濱は、忍に手を振り返す

 

 

 華連「ダメだよ!花嫁に声かけたら!」

 

 華連が現れて、忍に注意する

 

 式部「秋子の見張り、しっかり頼んだわよ!」

 

 式部は華連の目を見る

 

 華連「任せて!」

 

 華連は茉莉香から譲り受けた、おもちゃのサーベルを構える

 

 美咲「これも使っていいわよ!」

 

 美咲は華連にスタンガンを手渡す

 

 美咲のとなりでは、忍が冷や汗をかいていた

 

 

――――――――――――――

 

 美咲「あかり!」

 

 美咲は流し場で待っていた、あかりと毒島陸に声をかける

 

 あかり「灯籠、用意しておいたよ」

 

 あかりは灯籠が3コ入ったカゴを持っていた

 

 毒島が灯籠に火をつけ、美咲と忍にパスする

 

 毒島「霧谷凛の分の灯籠は、アンタが流してくれねぇか?」

 

 毒島は式部に灯籠を渡す

 

 式部「別に構わないわよ」

 

 3人は灯籠を流す

 

 毒島「それと…」

 

 毒島は灯籠をもう1つ出し、火をつける

 

 毒島「神小路陸のお袋さんの分は、アンタが代わりに流してやってくれねぇか?」

 

 毒島はあかりに灯籠を渡す

 

 あかり「ハイ!」

 

 あかりは普段とは別人のような、真剣な眼差しになっていた

 

 あかりは灯籠を流す…

 

――――――――――――――

 

 小一時間ほど経ち……

 

 はじめの母「みんな揃ってるみたいね!」

 

 はじめの母が、凛の父と共に現れる

 

 凛の父は灯籠を2コ用意していた

 

 凛の父「毒島くん!」

 

 凛の父はそのうちの1コを、毒島に手渡す

 

 凛の父「十神まりなさんの分の灯籠、君が流してくれないかな?」

 

 毒島「いいのかよ?」

 

 毒島は驚きの表情をしている

 

 凛の父「この村の人たちは、みんな君に感謝しているんだよ!」

 

 はじめの母「聞いたわよ!毒島くんは『【霧谷凛ちゃんのカタキを取ってくれた英雄】って、この村の人たちにたたえられてる』って!」

 

 そう言って、はじめの母はもう1つの灯籠を準備する

 

 はじめの母「そういえば…忍くんはまだ、戻ってきてないの?」

 

 はじめの母に指摘されるまで、美咲たちは気づいていなかったが、いつの間にか忍がいなくなっていた

 

 はじめの母「私が頼んだのよ!藍野修治くんの分は、秋子ちゃんに流してほしいから、忍くんに『秋子ちゃんを呼んでくる』ように…」

 

 あかり「え?でも、秋子は花嫁だから…」

 

 あかりは首を傾げる

 

 凛の父「金田一くんのお母さんが、主催者を説得してくれたんだよ」

 

 その直後…

 

 社の方から、銃声が響く

 

 美咲「何なの?」

 

 すると、式部が前に出る

 

 式部「まさか、秋子!」

 

 式部は反射的に体が動いており、走り出す

 

 はじめの母「ちょっと、危ないわよ!」

 

 はじめの母の声は、式部には届いていなかった

 

 毒島「俺が行って、様子を見てくる…所轄の刑事さんに知らせてくれ!」  

 

 凛の父に通報を頼み、毒島も走り出した

 

 

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