狐の花嫁の災難   作:水野大陽

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【狐の花嫁の災難〜後編〜】

 はじめの母に、「濱を呼んでくる」ように頼まれた忍は、駆け足で社に向かっていたが…

 

 華連「はなせぇーーー!!!!」

 

 普段とは別人のような、華連の大声が響く

 

 忍「な、何があったんだ…」

 

 忍は樹の陰から、そっと覗く

 

 悲惨以外の何者でもない光景が、忍の目に入る

 

 女子高生2人組のうちの1人が、華連を背後から押さえつけている

 

 華連の目の前では…全裸にされた濱が号泣していた

 

 華連「秋子ちゃんを放せ!」

 

 華連は、濱から脱がしたブラジャーとパンツを振り回し、大笑いしている女子高生に、飛びかかろうとしていたが…

 

 もう1人の女子高生に押さえつけられていたため、どうする事もできなかった

 

 忍「や、やめろよ!」

 

 忍は根性を振り絞って、出てくるが…両足がガクガクしている

 

 女子高生1「は、誰だ、お前!」

 

 女子高生は忍に詰め寄る

 

 忍「ギャーーー!」

 

 女子高生は華連から奪ったスタンガンを忍に押し付け、忍はそのまま失神してしまう

 

 女子高生2「キャハハハハ、ダセェーっ!」

 

 もう1人の女子高生も、忍をあざ笑う

 

 そこへ…

 

 ???「上手くやったみたいだな」

 

 1人の男性が現れる

 

 華連「あーっ!アンタ、前に茉莉香ちゃんが言ってた…」

 

 華連が反射的に叫ぶ

 

 女子高生1「約束通り、10万円な…」

 

 濱から脱がしたパンツとブラジャーをヒラヒラさせながら、男に近寄るが…

 

 男「10万円の代わりに、いいモノをやろう!」

 

 その直後、銃声が響いた

 

 濱「キャーーーーーッ!!」

 

 駐在警官から奪った銃で撃たれた女子高生が倒れたため、濱は悲鳴をあげる

 

 女子高生2「やべぇ…」

 

 もう1人の女子高生は、濱と華連を置いて、逃げようとするが…

 

 銃で太ももを撃たれて、倒れる

 

 華連「クッ!」

 

 華連は全裸でうずくまり、泣きべそをかく濱の前に立ち、両手を広げる

 

 男「秋子、会いたかったぞ!」

 

 男は不気味な笑みを浮かべている

 

 絶体絶命だったが…

 

 突如、何者かが男に飛びかかる

 

 毒島「濱秋子を連れて、逃げろ!」

 

 銃を持った男の腕を、毒島は掴んでいる

 

 男「放せ!」

 

 毒島と男は取っ組み合いになる

 

 式部「秋子!」

 

 毛布を持ったあかりと共に、式部が血相を変えて、走ってくる

 

 その直後…

 

 またしても、銃声が響く

 

 男はそのまま倒れて動かなくなり、毒島はしかめっ面になって下腹部をおさえていた

 

 毒島の下腹部からは、出血している

 

 あかり「秋子、大丈夫?」

 

 あかりは全裸の濱を、毛布で包む

 

 濱「あたしはいいから…それより…」

 

 濱は毒島の方を向く

 

 式部「ったく…役に立たないんだから…」

 

 式部は失神した忍を、ビンタで起こす

 

 そこへ、パトカーのサイレンの音が近づいてきた

 

 凛の母「みんな、無事?」

 

 パトカーの後部座席のドアを開け、凛の母が降りてくる

 

 

 濱「入間先生…」

 

 濱は男の方を向く

 

 凛の母は男の首に手を当てるが…首を横に振る

 

 暴発した銃弾が心臓を貫通し、男は即死だったようだ

 

 パトカーの助手席から降りてきた川原は、花嫁衣装を破いて、毒島を止血するあかりと華連に気付いた

 

 川原「伊藤、救急車だ!」

 

 伊藤「ハッ!」

 

 伊藤は無線機を使い、救急車を手配する

 

―――――――

 

 毒島「はっ!」

 

 病院で手術を受け、ベッドに横たわっていた毒島が目を覚ます

 

 あかり「気がつきました?」

 

 すると、毒島はあかりに詰め寄る

 

 毒島「なぁ、濱秋子は無事なのか?」

 

 毒島の口から、自分の事より、濱の名前が第一声で出てきたため、あかりは驚く

 

 毒島「くっ!」

 

 毒島は下腹部が痛む

 

 毒島も男と取っ組み合いになった事で、下腹部に銃弾が命中してしまっていた…というわけだった

 

 華連「ダメだよ、寝てないと!」

 

 毒島は華連に注意され、再度、ベッドに横たわる

 

 あかり「秋子はかすり傷も受けていません!」

 

 毒島「そうか!」

 

 毒島は安心したような表情になるが…そっぽを向いてしまう

 

 毒島「なぁ!アンタたち…大切な人を喪う苦しみって、分かるか?」

 

 華連「えっ?」

 

 あかりと華連は、2人して首を傾げる

 

 毒島「アンタたちも知ってると思うけど…1年前、霧谷さんの娘さん2人が殺されただろ…少なくとも、白狐祭の時の、霧谷さんの娘さんの死は、俺のせいなんだ…俺が高校生ん時に、多間木と魚崎のヤローを始末してたら、こんな事には…」

 

 華連「あ、いや、ちが…」

 

 凛の母「華連ちゃん、ストップ!」

 

 凛の母が現れて、華連の発言を遮る

 

 凛の母「人の話は、最後まで聞くものよ!」

 

 凛の母は毒島の方を向く

 

 そっぽを向いていた毒島は、凛の母と目を合わせる

 

 毒島「緋森美咲からスマホの動画を見せられたんだよ…タダでさえ娘さんを喪って…せめてもの心の支えだった、霧谷さんの娘さんも死んじまった事で、霧谷さんのカミさんが涙してた…」

 

 毒島は上半身を起こす

 

 毒島「まさに、あん時と同じだった…俺の裁判の時、十神の親父さんは頭抱えてて…お袋さんは号泣してた…十神の遺影を持ったえりななんか、俺をゴミを見るような目つきで睨んでやがった…」

 

 毒島は頭を抱える

 

 毒島「だから…霧谷さんたちには、もう、誰も喪ってほしくねぇんだよ!」

 

 毒島は両手で顔を覆ってしまう…指の間から、涙がこぼれ落ちる

 

 華連「でも…あんな危ない事…」

 

 凛の母「いいえ!毒島さんのおかげで、被害は最小限で済んだの!」

 

 あかり「どういう事…ですか?」

 

 あかりは不思議そうな顔をする

 

 凛の母「実は、撃たれた女子高生2人は、金田一はじめくんの学校の同級生だったんだけど…別の病院で一命は取り留めたの…もっとも…大腿に銃弾を撃ち込まれたせいで、しばらくリハビリが必要には、なってしまったけど…」

 

 あかりは暗い表情になるが…

 

 はじめの母「つもる話は終わったの?」

 

 はじめの母が現れる

 

 凛の母「金田一さん!毒島さんには、しばらく、安静にしてもらいたいので、お2人をお願いして、よろしいですか?」

 

 はじめの母「任しといて!」

 

 はじめの母は、あかりと華連を連れて、病室を出る

 

―――――――

 

 一方、霧谷家では…

 

 

 忍「ふぅ!」

 

 忍がタオルを頭に載せ、入浴中だった

 

 そこへ浴室のドアが開く

 

 濱「忍さん!」

 

 忍「は、濱ちゃん…」

 

 黒い紐パンツビキニを着た濱が、入ってきたため、忍は驚く

 

 濱「あたしも入っていいですか?」

 

 忍「あ、あぁ…」

 

 忍はぎこちなく、返事する

 

 濱は湯舟に入る

 

 忍「に、似合うね…ビキニ…」

 

 濱「霧谷凛さんの遺品なんです!月江茉莉香さんが亡くなる1ヶ月前に、買ったモノらしいんです…だけど、凛さん自身は1回も着ないまま…」

 

 濱の言葉で、忍も暗い表情になる

 

 忍「と、ところで、あの犯人って…一体…何者なんだろうね…」

 

 忍は話題をすり替えようとするが…

 

 濱「母の愛人なんです…母には、いわゆる間男が何人もいて…そんな母に愛想を尽かして、父も家を出たまま、行方不明になって…」

 

 濱の心の古傷をえぐってしまい、忍は気まずそうな顔になる

 

 濱「あたし、今でも思うんです…霧谷さんはこんな役立たずなあたしを、どうして、引き取ったのか…」

 

 忍「濱ちゃんは、役立たずなんかじゃないよ!」

 

 忍は別人のような大声で反論する

 

 忍「俺だって…凛が死んだ後、落ち込んだけど…でも、濱ちゃんを見て、吹っ切れたんだ…凛の死を無駄にしないためにも、濱ちゃんを絶対死なせないって!」

 

 忍は濱に詰め寄る

 

 濱「し…忍さん…」

 

 忍の力強い言葉こそあったものの…

 

 忍は小学生時代同様に、キスを迫りそうなほど、濱に顔を近づけていた

 

 凛が命を落とす原因になった事がある以上、今回は忍自身も、キスを迫るつもりはなかったのだが…

 

 濱「イヤッ!!」

 

 母の間男を思い出してしまった濱は、反射的に忍を突き放す

 

 忍「ごめん、濱ちゃん!」

 

 忍は濱の手を掴むつもりだったが…誤ってビキニのパンツの紐を掴んでしまった

 

 さらに、濱が離れようとしていた事も重なり、不可抗力で紐がほどけて…

 

 忍は濱のビキニのパンツを剥ぎ取ってしまった

 

 濱「イヤーーーッ!!」

 

 濱は大声で、悲鳴をあげる

 

 式部「秋子!」

 

 式部は浴室のドアを開ける

 

 式部の目に飛び込んできたのは…

 

 下半身裸でその場に座りこむ濱と、濱のビキニのパンツを持って、アワアワする忍だった

 

 式部「アンタねぇーっ!」

 

 式部はまたたく間に、メデューサのような形相に豹変する

 

 そこへ…

 

 玄関のドアが開き、あかりと美咲が、はじめの母と共に入ってくる

 

 濱「鐘本さん…」

 

 下半身にバスタオルを巻き、アワアワした濱は、震える手で浴室の方を指差す

 

 あかり「どうしたの、秋子?」

 

 あかりはしゃがみこむ濱の肩を支える

 

 はじめの母と美咲が、浴室の方へ向かうと…

 

 全裸のまま、キズとタンコブだらけの忍が、失神してのびていた

 

 そばには、激怒した式部が立っていたため…

 

 はじめの母「落ちついて!」

 

 はじめの母は、式部を羽交い締めにする

 

 一方、失神した忍が、濱が着けていたビキニのブラジャーと同じ色のパンツを持っていた事に、美咲が気付いた

 

 美咲「忍ったら…『凛が好き』って言ってたのに、もう乗り換えたワケ…」

 

 あきれ顔になった美咲は、ため息をついた

 

―――――――

 

 その頃…

 

 深山揚羽「金田一さん、ソファーで眠っています!よっぽど、疲れたんだと思います!」

 

 凛の母に頼まれて、はじめの自宅に出向いた揚羽が、凛の母と電話していた

 

 おんぶひもで支えられた森下達美も、揚羽の背中で、スヤスヤと寝息を立てていた

 

 凛の母「申し訳ないわね…急に頼んじゃって…」

 

 揚羽「構いません…ところで…」

 

 揚羽はひと呼吸置くと…

 

 揚羽「弟さんの事は、何と申し上げたらいいか…」

 

 揚羽の方は、暗い表情になっていたが…

 

 凛の母「何のハナシ?」

 

 凛の母の声色が、別人のように豹変する

 

 凛の母「私に弟なんていないわよ!」

 

 揚羽「え?…ですが…金田一さんのお母様からも、ご報告がありまして…」

 

 揚羽は話の内容がつかめず、混乱している

 

 凛の母「そうね…強いて挙げれば…『私から凛を奪った粗大ゴミを、毒島陸さんが掃除してくれた』…といったところね!」

 

 電話越しからも、凛の母が地味に怒りを表していた事が、揚羽にも伝わっており、揚羽は身震いする

 

 凛の母「あ、ごめんなさいね!こんな話しても、仕方ないわね!」

 

 凛の母は普段通りの口調になる

 

 凛の母「でも、これだけは絶対言える事よ…『信じ合い、助け合うのが家族』って事よ…家族の絆は離れていても、繋がっているって事…だから、私は凛を救うためにも、離婚を決意したの!」

 

 揚羽「えぇ!私も兄に…その命と引き換えに救われましたので!」

 

 生前の小野寺将之が、揚羽の脳裏を過ぎった

 

 川原「入間さん、事件の事でお話をうかがいたいのですが…よろしいですか?」

 

 川原が凛の母の後ろから、声をかける

 

 凛の母「申し訳ないんだけど、刑事さんに呼ばれたから、切るわね!」

 

 揚羽「では、また後日、ご連絡しますので、ごめんください!」

 

 揚羽は電話を切る

 

 はじめ「もー、食えねぇっつーの!」

 

 ソファーで転寝するはじめが、寝言を言っていた

 

 揚羽ははじめに、毛布をかけた

 

 

 

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