原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

14 / 37
11話 再会と日常(リヴァイ班)

 

 

(ノア視点)

 

 俺はあの後、リヴァイ兵士長に連れられて、リヴァイ班が居る、旧調査兵団本部へ来ていた。

 

 話には聞いていたが、思ったより周りには何も無いところだ。人もいなければ、街もない。

 俺が旧調査兵団本部へ向かっている今は、夜に差し掛かっているくらいの時間だから、余計に静けさと寂しさを感じる。

 

 

 リヴァイ兵士長は馬の扱いも上手く、少しでも気を抜いたら離れてしまいそうだった。

 

 俺は馬の扱いは人並みなので、兵士長について行くのも一苦労だ。

 

 そういえば、クリスタは馬とすぐ仲良くなっていたよな。あれは、優しさオーラが滲み出ていたからだろうか?クリスタは馬の扱いに関してはプロと言っていいほどだった。

 

 どうすれば、あんなに懐かれるんだろうな。

 そんなことを考えながら、リヴァイ兵士長の背中をただ、見ていた。

 

 

 

 どうして、何か話さないのかって?

 

 俺だって、最初は、リヴァイ兵士長と2人でいられることなんてそうそうない事だと思って、何か話しかけようとして、あの…、と言おうとしたら、一言目で、

 

『喋るな、舌噛むぞ』

 

 と、言われたので、諦めた。

 

 あの…の、1文字目、『あ』で気づいたんだ。

 反射神経と、察する能力がずば抜けて凄いんだなあ、と、変な所で俺は感心していた。

 

 

 

 

 旧調査兵団本部に着いた時、辺りは真っ暗だった。今日のところはリヴァイ班の皆さんも寝ているだろうし、挨拶は明日にしようと思っていた。

 

 しかし、俺とリヴァイ兵士長が本部に足を踏み入れた時、そこにはリヴァイ班の皆さんが並んでいたのだった。

 

「おかえりなさい、リヴァイ兵長!

 それと……あ、その子が新兵の、ノア・シュナイダー君ね。これからよろしくね!」

 

 元気そうな、面倒見の良さそうな先輩が出迎えてくれた。

 

「お前ら…まだ寝てなかったのか。明日は休みだからって、もう就寝時間は過ぎてるぞ。」

 

「兵長、すいません!でも、最初の日はみんな揃って出迎えたくて…」

 

 予想外なことに、俺は歓迎されているようだった。俺が巨人だってことは伝えられていないのか?

 

 エレンが、こちらに駆け寄ってくる。

 

「ノア、久しぶりだな!俺が最後にお前を見たのは何日前だったか…。とにかく、無事でよかった!

 

 お前も……巨人になれるんだって?

 死罪にならなくて、良かった。本当に。」

 

 

 違うようだ。エレンが知っている以上、俺が巨人化の能力を持っていることは、ここにいる皆さんも知っているということなのだろう。

 

「ああ…、久しぶり!エレンも無事で何よりだよ。」

 

 俺と会えたことが嬉しくてしょうがないって顔をしているな。エレンに耳としっぽが付いているように俺は見えた。しっぽはブンブンと高速で揺れている。相当嬉しいみたいだ。

 エレンの表情を見る限り、ここでは少なくとも巨人だなんだと虐げられるようなことは無さそうで安心した。

 

 

「これから、よろしくお願いします。リヴァイ兵士長、そして、リヴァイ班の皆さん!」

 

 俺はそう言って、深くお辞儀をした。

 これからお世話になる人達だ。

 

 俺かもしくはエレンが暴走したら、この人たちに項を削いで貰うのだろう。

 

 死ぬことを考えたら怖いが、それより怖いのは、自分の大切な人たちをこの手で殺してしまうことだ。暴走した時に休止符を打つ人達がいるのは、心強い事だと思う。

 

 

 

 

 その後、俺たちはとりあえず、簡易的な自己紹介だけして、俺とエレンと、リヴァイ兵士長だけが残った。

 管理のルール上、リヴァイ兵士長が監視している必要があるのかもしれない。

 元々エレンだけでも大変だろうに、俺のせいで、負担を2倍に増やしてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

「俺たちはもう食べちゃったんですけど、夕食がまだ余ってるので、温め直せば食べれると思います!俺、用意してきますね。」

 

 多少であれば、エレンは信頼されているのもあって、リヴァイ兵士長から離れるのを許可されているのか?

 今も、食堂の厨房の方へ歩いていって、今日の夕食とやらを温めに行ってしまった。

 

「リヴァイ兵士長…、リヴァイ班の皆さんは良い人そうですね。」

 

「あいつらは協調性があるのもそうだが、何より腕が立つ。

 お前らが何か不審なことをした時、そして、暴走した時は、あいつらに殺されるということを胸に刻んでおけ。」

 

「それは…承知しています。俺のせいで被害が出るのも嫌ですし、暴走したら殺してもらう方が、ありがたい。リヴァイ兵士長も、その時はお願いします。」

 

「おいおい…暴走する予定があるのか?

 冗談じゃねえ。」

 

「え!?予定は勿論ありませんよ!

 でも、そうなったら、ということです。」

 

「そんな事考えてる暇あったら、てめえが暴走しねえためにどうするべきか考えろ。」

 

「は、はい!そうですね、すいません…」

 

 いつも夜になるとついつい悲観的になってしまうのは俺の悪い癖だ。

 

 エレンが厨房から今日の夕食を持って来てくれた。

 

 

「リヴァイ兵士長、ノア、簡単なものだけど…」

 

 エレンが俺たちの前に食事を置いたので、それを黙々と食べた。

 これ以上喋ると悲観的になっちゃってしょうがない。

 エレンとリヴァイ兵士長は時々何か話していたりしたが、俺は、その夜は話題を振ることは無かった。

 

 

 

 

 夕食の後、俺たちは地下室へと続く階段で、リヴァイ兵士長と分かれた。

 それを機に、エレンが話し始める。

 

「そういえば、さっきの夕食の時、お前あんま喋らなかったけど、何かあったのか?リヴァイ兵長と喧嘩してるとか?いや、ノアも兵長も喧嘩しそうには見えねえしなあ…?」

 

 そんなことを考えていたのか。

 

「兵長とは喧嘩なんかしないよ。いや、できないと言った方が正しいかな。したとしても、一瞬で俺がボコされて負けるだろうな。」

 

「そうだよなあ。じゃあ、どうしたんだ?今も元気ないし。」

 

「夜は毎回こうなんだよ。考えること全てが全部悪い方向に向かっていくんだ。だから、人とは話さないのが1番いいと思ってな。」

 

 エレンが手に持っている明かりがゆらゆらと揺れている。

 俺たちは長い長い、先の見えない廊下を歩いていた。

 

「へえ………何年もお前と一緒にいたけど、初めて知ったよ。お前…前もそういうことあったよな。俺たちが死ぬ時はどんな時か…って。」

 

「ああ、あの時は、同室の奴が死んだからな。お前らも、そういうこと考えてたんじゃないのか?」

 

「ああ…。あの時は皆深刻そうな顔をしてたしな。でも、いつも立体機動を精密に操って、実戦で死ぬとは思えない、お前がそんなことを考えているとは思ってなかった。」

 

「俺だって、そういうことを考えるよ。

 夜は、特にな。」

 

 夜はそういうことを考えすぎて、眠れないこともある。

 

「いやだって、お前、全てのことを前向きに捉えてそうだし…。お前がやる事は成功することが多いじゃないか。

 だから、自分の選択とか、行動を悔しがったり、先のことを考えて不安になったりしないもんだと思ってた。」

 

「エレン…お前、俺を超人か何かだと思ってたのかよ。期待してるとこ申し訳ないが、俺は至って普通の人間だ。そりゃ、未来だって不安になるよ。」

 

「そうだよな。意外だった。

 

 ……着いた。ここが、俺の部屋で、この隣が、お前の部屋。

 同じ扉で分かりづらいが、扉のココに、俺の部屋には蝶々、お前の部屋にはヘビが描かれているだろ?だから、見分けはつくはずだ。」

 

 エレンはそんなことを言いながら、お互いの部屋を指さした。

 

「うげ、ヘビか…俺苦手なんだよな…あの、細長くて、いつまでもどこまでも続きそうな胴体が、気持ち悪くてしょうがない…。」

 

「なんだ、お前まだそんなこと言ってたのか?もう兵士になるんだから、それくらい克服しろよ。」

 

「いや、お前だって、蝶々苦手だろう。」

 

「流石に、もう大丈夫だ。こう見ると案外キレイだしな。」

 

「克服…したんだな。」

 

 

 

 

 あれは、シガンシナ区が壊落するよりもっと前のことだった。

 

「エレン!見て、蝶々だよ!綺麗じゃない?」

 

 エレンと知り合って1年ほど経った頃。俺は、前世でやりたくても出来なかったことを片っ端から挑戦していた。

 今は、昆虫採集をしていたところだった。

 

「げ、お前、やめろよ、もっと強そうなやつ捕まえろ!」

 

 エレンは、俺の手に掴まれている蝶々から距離を取っていた。

 

「えー、エレン、蝶々が怖いの?こんなに綺麗なのに…」

 

「違うよ!

 ………お前、こいつの小さい頃の姿、見たことあんのかよ!マジで気持ち悪いんだ…。」

 

「前世では見たことあるけど…」ボソッ

 

「え?何か言ったか?」

 

「あ、いや、ないよ。ない……けど、今が綺麗ならそれでいいじゃない。」

 

「はあー…。全然わかってない!そいつの怖さを!気持ち悪さを!」

 

 あの時、あんなに嫌がっていた蝶々を、お前は克服したんだな。

 誰だって、大人になるにつれて好みは変わる。

 

 俺たちは、あの頃よりかは幾許か、大人になってしまったんだな。

 

 そりゃあ、そうか。あれから、色々あったもんな。

 

 

 

 その話の後、俺は、とにかく寝るまでに必要な事だけを教えてもらうためにエレンと一緒に部屋に入った。

 

「なんだ、地下にあるっつっても普通の部屋なんだな。」

 

「そりゃそうだ。そういえばお前、ちょっと前まで地下牢にいたんだって?…あそこは、気が狂いそうになるよな。

 地下牢とは違って、ここは、暖かい布団に、机と便所もついてる。快適だろ?」

 

「ああ…そうだな。地下牢と比べればどこも快適だろうよ。」

 

「確かにな。」

 

 エレンはハハハと苦笑いしてからそう答える。

 

 俺は、一通り部屋の中で操作の分からない部分などをエレンに聞いてから、そういえば…と、考えていた。

 

 地下牢…。エレンは裁判の前に地下牢に居たんだっけか。

 …………裁判!

 

 そうだ、あの時…

 

「なあ、裁判、俺も見てたよ。どうして、あの事、俺に話してくれなかったんだ?」

 

「裁判…?あの事……?

 ……………ああ、ミカサを助けた時の事か。」

 

「そうだ。俺に相談してくれたって良かったじゃないか。お前がミカサを助けた、9歳の頃はもう親友だっただろ?

 あの裁判の時、俺も初めて知って、俺は、信用されてなかったのかって、悲しくなったよ。

 そうならそうと言ってくれ。」

 

「いや、そんなことは絶対ねえよ!俺があの時話さなかったのは……、お前に負担を掛けたくなかったからだし、俺が人を殺したと言って、お前が離れていかないか、心配だったからだ。

 自分本位な考えだった。今更だけど、ごめん。」

 

「そう…か。いや、何年も前のことを掘り下げてどうこうというつもりはない。エレンの気持ちが聞けたならそれでいい。」

 

「そうか…。」

 

「今更こんな話をしてごめんな。なんか、しんみりしちゃって…。

 そろそろお互い寝ないとな。

 今日はありがとな!」

 

「ああ、おやすみ。」

 

「おやすみ。」

 

 長いあいだエレンに聞きたかったことを聞けて、スッキリした。返事も、そこまで悪いものじゃなかったので、一安心だ。

 

 いつもは考え込むせいで、寝れずに夜更かしをしているけど、今日はスッキリ眠れそうだ。

 

 エレンと別れたあと、俺はベッドに入ってからすぐに、眠ることが出来た。

 

 

 

 

 

 翌日は、リヴァイ班は休みの日のようだった。

 俺は、今までのことや昔のことなど、色々な話をエレンとしていたら、あと少しで昼という頃になっていた。

 

「あ、今日の昼飯当番俺だった!」

 

「当番制なの?」

 

「ああ。そうだ、ノアも来たんだし、また組み合わせを作り替えてもいいかもな。いつも、昼、夜を2人1組でやっているんだ。

 俺はこれから昼飯を作りに行ってくるけど、お前はどうする?この建物の中なら、歩き回っても大丈夫な筈だ。」

 

「案外自由なんだな。それじゃあ、俺はこの建物を探検がてら、リヴァイ班の皆さんに挨拶しに行こうかな。」

 

「おう、分かった。行ってらっしゃい。」

 

「お前も。美味しい昼食を期待してるからな。」

 

「ああ、任せろ。」

 

 そんな会話をして、俺たちは別れた。

 

 

 

まず最初に出会ったのは、外廊下で歩いていた、ペトラさんとオルオさんだった。

 

「あんた、毎回言ってるけど、その口調直しなさいよ。もしも…もしもリヴァイ兵長の真似してるんだったら……全く似てないわよ!鳥肌が立ってしょうがないじゃない。」

 

「ペトラ…。お前の熱烈なラブコールには答えられそうにない…。他を当たってくれ。」

 

「いつ私がそんなこと言ったっていうの!?」

 

 今日もコントをしているみたいだった。昨日もこんな感じのやり取りをしていたような気がする。

 

「オルオさん!ペトラさん!」

 

 俺は、2人に聞こえるように声を上げて名前を呼んで、歩いて行った。

 

「ノアか」 「おはよう、ノア!」

 

 オルオさんとペトラさんがそれぞれそう言ってこちらを向いてくれる。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう…。

 おい、ノア、討伐数が新兵の中じゃ多いからって、調子に乗るんじゃねえぞ?お前は壁外調査の怖さも知らない、まだまだあまっちょろいガキなんだからな。」

 

「はい!もちろんです!」

 

 リヴァイ班に選ばれている先鋭班の方々だ。俺とは比べ物にならないくらい、経験も積んでいるだろう。

 単純な強さ、巨人を駆逐するのは得意だが、経験の伴う、その場の判断や、選択に関しては絶対に俺より皆さんの方が上だろう。

 そういう意味でも、俺はリヴァイ班の皆さんを尊敬していた。

 

 

「って言っても、オルオの討伐数は39体。

 これでも凄い方だけど、ノアはその歳でもう、25体は超えたって聞いたわよ。

 それに、今回のトロスト区の作戦の時に大活躍で、単独行動でどんどん巨人を倒して行ったもんだから、誰も見ていないものも多くて、正確な討伐数が分からないとか!

 もしかしたらオルオの討伐数も、もう超えてるかもねー。」

 

 

「おい、ペトラ、口が過ぎるぞ。」

 

 

「だって、そんな態度で来られたら、萎縮しちゃうかもしれないじゃない!それに、事実だし…」

 

「大体な、訓練兵の分際で単独行動なんて、調子に乗りすぎだ。自殺行為だろう。」

 

 多少は心配してくれていると受け取ってもいいのだろうか。

 

「その点に関しては、異論はありません…。自分でも無茶だったと思っています…が、また同じ状況になっても、単独行動をすると思います。」

 

 

「はあ!?お前なあ、…ムググ」

 

 オルオさんが何か話そうとしていたが、ペトラさんに口を塞がれたようだ。

 

 ペトラさんはそのことはお構い無しに、話を続ける。

 

 

 

「それは…、どうして?」

 

 

「皆を助けるためには、多少無茶でもしないと、助けられないし、何より、その時できることを精一杯しないと、あとから後悔するのは俺なので。」

 

「そっか………。

 もう、意見は固まってるのかもしれないけど、1つ、先輩からのアドバイスというものをしてもいいかしら?」

 

「勿論です!お願いします。」

 

 そんなことをして貰えるなんて、思ってもみなかった。

 

「ノアは、単独行動の方が得意なのかもしれないけど、巨人に1人で立ち向かうのは相当の勇気と精神的負担があると思うわ。そんな時に、日頃から馬鹿やってる友達とか、後輩とか、頼れる先輩。例えば、私達とか…!でも、なんでもいいけど、心配してくれる人がいると、その時の気持ちも変わってくる。

 私は単独行動はしたことないけど、班として巨人に立ち向かうだけでも怖いんだから、ノアはきっと、もっとよね。

 えっと、つまり…、何か壁にぶち当たった時は、周りを頼ってみるのもいいよってことを言いたいの。

 まあ、エレンとの交流を見る限り、人と交流することに難がある性格とは思えないし、同期とか、先輩との交流も上手くやっているんだろうから、私が改めて言う必要は無いかもしれないけどね。」

 

 

 凄い。

 

 確かに、今まで全部1人でやらなきゃと思っていた節が俺にはあった。

 巨人と戦う時は単独行動の方が実力を出せるにしても、それ以外は他の人と協力したり、任せたりすることが大切なんだろうな。

 

 リヴァイ班は、こういう人達だから選ばれたのか。

 

 

『あいつらは協調性があるのもそうだが、何より腕が立つ。』

 

 

 リヴァイ兵士長の言葉を思い出す。

 協調性…この人たちは勿論強いのだろうが、単純な強さだけで生き残ってきた者ではないんだ。

 

 巨人に立ち向かうには、普通は何人かの班を組む。そういう時に、まとめたり、場を和ませたり、皆の精神をちょっとずつ支えてくれたり、そんな、小さなことに気の回る人がいると、安定するなんてことが訓練兵時代もあった。

 

 この人たちは、勿論腕も立つのだろうけど、その分野で、特に秀でているんだ。

 

 俺は改めてリヴァイ班の皆さんへの尊敬を強くしていた。

 

 

 

 

 

 ペトラさんとオルオさんと別れた俺は、中庭へ向かっていた。

 1部の訓練は中庭で行うと聞いたから、明日からのためにも見に行ってみようと思っていた。

 

 中庭に着いてみると、

 エルドさんが走っていたのが見えた。

 

 休みの日も訓練しているなんて、ストイックな人だな。

 俺は、一通りエルドさんのランニングが終わるまで待ってから、話しかけた。

 

「こんにちは。エルドさん、お疲れ様です。」

 

「ああ、ノアか。見てたのか…」

 

「はい…。休日も訓練なんて、凄いですね!」

 

「まあ、ここには何も無いし、やることが無かったら訓練するくらいしかないからな。リヴァイ兵長は今日も掃除をしていそうだけどな。」

 

「掃除…ですか?」

 

「ああ、兵長は潔癖症でな。ここに来た当初なんかは、何年も放置されていた場所だから、ホコリも、ゴミもすごくて。俺たちが最初にやったことは、清掃だったんだ。」

 

「確かに、どこに行っても綺麗ですよね。」

 

「そりゃ良かった。

 ノア、清掃をすることになったら気をつけろよ。兵長のチェックは厳しい…どころじゃない。

 全力でやるんだ。

 そうじゃないと…夜中までやることになるからな。」

 

 リヴァイ兵士長がそんなに潔癖だったなんて…

 知らなかった。

 

「はい!どんな時も一生懸命やってるつもりですが、清掃の時は特に頑張ります。

 教えてくれて、ありがとうございます!」

 

「ああ、これを知ってると知ってないとじゃ、最初の清掃の終了時間が変わってくるからな……。」

 

 エルドさんはもう何人も犠牲者を見ているような目をしていた。

 

 

「……あの、今聞くことじゃないかもしれないんですけど…。

 どうしてリヴァイ班の皆さんは俺たちが巨人だって聞いても、親切に接してくれるのでしょうか?

 エレンが巨人だって分かった後は、罵られることもチラホラあったって聞いたし…普通の人は怖いと思います。

 調査兵団なら、巨人の恐怖を間近で見てるはずだから、尚更…」

 

 

「ああ。勿論、巨人は怖い。調査兵団として何年も巨人を見てきても、その恐怖が薄れることは無かったよ。

 だが、エレンの働きで、巨人が仲間になるということは、俺たち人類にとってものすごく利のあることだ、ということが分かった。1度壊されたトロスト区の壁の穴を塞いだんだからな。

 それに、君たちはあの、壁外を闊歩している巨人達とは違う。

 

 君たちには意思があって、エレンは、俺たちと同じように、巨人を絶滅させたいと思っている。

 ノア、君もそうだろう?

 

 ということは、俺たちは、それぞれ違う力を持っているが、仲間だ。

 俺たちリヴァイ班は少なくとも君たちを、同じ方向に進んでいく仲間だと思っているよ。」

 

 

「そう…ですか。」

 

 

「もちろん、君達が暴走した時に項を削ぐのも俺たちだが…」

 

 

「これも、出過ぎたことを聞きますが…、

 普段俺たちに優しくしていたら、俺たちが暴走してしまった時に迷いが生じるのではないでしょうか?」

 

 

「いや、それは無いな。

 俺たちは巨人の恐怖を、普通の人より知っていると、さっき言っただろう?

 だからこそ、巨人の姿で、それも暴れている奴を見たら、すぐに戦えるだろう。

 しかし、その後に、お前達が居ないことを悲しむんだろうな。考えたくもないが。」

 

 自分が死んだら、誰かが悲しむ。これは、俺の心に刻んだ言葉だ。

 自己犠牲は、あくまで自分のため、他人のためにはならない。

 

「そんな事態にならないように、エルドさん達を悲しませないように努力します…」

 

「そうしてくれ。」

 

 

 

 

 エルドさんと別れた後、俺は今度は建物の内部を、階段を登ったり降りたりしながらくまなく探索していた。

 

 しかし、広いな。

 どこの部屋がどの階で、どこら辺にあるなんて、今日1日じゃ覚えられなさそうだ。

 

 俺は、ひとまず自分の勘が働くままに、ウロウロとしていた。

 

 ある1部屋を通りかかった時、

 俺の野生の勘が大いに働いた。

 

 この部屋だ!何があるかは分からないけど、何かがあるはず!

 

 そう思って、扉を開けた。

 

 

 そしたら、ソファーに座って寝ているリヴァイ兵士長がいた!

 

 

 これは………激レアなのでは?

 

 

 

 リヴァイ兵士長が寝ているところなんて見たことも聞いたこともない。

 いや、人間なはずだから、寝るんだろうけど。

 しかし、居眠りだ。

 これは、人生で1度、いや、人によっては1度もない瞬間だ。

 

 

 

 そう思って、忍び足で近づいて行ったら…

 

 あと1歩のところで、起きてしまったリヴァイ兵士長と目が合った。

 

「お前……何をやっている?」

 

 普段も充分目に迫力があるが、寝起きのリヴァイ兵士長は格別だ。人を殺した後のような目をしている。

 

 さっきまではあんなに安らかに寝ていたのに!

 

 近づかなければ良かったと、これ程後悔したことはない。

 

「あ、おはようございます、リヴァイ兵士長。」

 

 俺は動かない表情筋を総動員して、しらを切る。

 

「何をしていると言ってるんだ。」

 

 誤魔化すのは無理そうだった。

 

「い、いや…、兵長の寝顔なんて、一生かけても見れないと思いまして……」

 

 眼力に殺されそうだ…!!

 

 兵長は、ハアーと長いため息を吐いてから、ソファーを立ち、

 

「もうすぐ昼飯だ。食堂に向かうぞ」

 

 そう言った。

 

 俺は、怒られなかったことに安堵した。

 

 

 

 

 その後俺は兵長の後ろについて、食堂まで歩いて行った。

 食堂についた時、エレンがそんな俺を見て、

 

「あ、ノア。兵長と仲直りしたんだ!良かった!」

 

 なんて叫ぶものだから、リヴァイ班の皆さんが驚いて、

 

「え、兵長とノア、喧嘩してたんですか?」

 

「兵長と喧嘩なんて……100年…いや、1万年早いぞ!」

 

 なんて謎の誤解をされていた。

 

 兵長は兵長で、

 

「俺と、お前は………喧嘩してたのか?」

 

 なんてはてなマークを浮かべながらこちらを向くものだから、現場はこんらんしていた。

 

 

「おい…エレン、この状況どうにかしろ。」

 

 俺は、事の発端に助けを求めた。

 

 

「え、………あの、冗談ですよ?

 ノアと兵長が喧嘩しても、一瞬で兵長が勝つに決まってるじゃないですか。」

 

「「確かに…」」

 

「いや、引き分けになる可能性もある。リヴァイ兵長は仲間思いだし、ノアは可愛げのある後輩だ。ノアには手を出せないかもしれない。」

 

「「確かに」」

 

 いや、ペトラさんもオルオさんも一瞬で意見変えないで下さいよ!

 

 結局誤解は俺が解くことになった。

 ひとつひとつ、経緯を説明して。

 

 エレンが発端なのに……。

 

 

 

 

 そんなこんなで、エレンとグンタさんが昼食を運んできてくれた。

 

 そういえば、今日まだ会ってなかったのはグンタさんだったが、その、グンタさんは、エレンと昼食を作っていたようだった。またの機会に話しかけてみよう。

 

 俺たちは昨日とは違って、賑やかな食事を取っていた。4人増えるだけで、こんなに賑やかになるなんて。

 昨日とは違い、まだ夜ではないので、俺も会話にちょくちょく参加していたからだろうか。

 

 

 しかし、俺とエレンは、1ヶ月後に初めての壁外調査がある。

 それまでにやる事は山積みだ。

 俺は改めて気を引き締めた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。