原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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12話 地獄の再開(第57回壁外調査1)

 

 

(ノア視点)

 

 それは、旧調査兵団本部で過ごしている時の事だった。俺は、エルヴィン団長に呼ばれたらしく、リヴァイ兵長に連れ出された。

 

 リヴァイ兵長は、調査兵団の執務室のようなところの部屋の前で、「ここだ」と言って、そのままどこかへ行ってしまった。

 

 凄く大きくて立派な扉だな…

 流石に団長の部屋ともなると、豪華になってくるのだろう。

 そんなことを考えながらノックをして入ったが、中は案外、豪華絢爛と言った感じではなく、使いやすさを基準に選んだような家具たちが並んでいた。

 

 社長椅子のような物に座っているエルヴィン団長がいる。団長は俺が部屋に入ったなりすぐ声をかけてくれた。

 

 

 

「久しぶりだな。ノア。」

 

「お久しぶりです。俺をリヴァイ班に配属してくださって、ありがとうございます。」

 

 本当にエルヴィン団長には頭が上がらない。エレンはともかく、何の功績のない俺も、リヴァイ班に加えてくれたのだから。

 

「いや、君は調査兵団の新たな戦力だからね。

 それより、私が前聞いたことを覚えているかな?」

 

 

 質問……?

 あの、意図の分からなかった質問か。

 

 

「『敵はなんだと思う?』という質問でしょうか?」

 

「そうだ。君はその質問に、君やエレンと同じような、巨人になれる人間だと答えたね。」

 

 

「そうです。……あ、もしかして、その答えによって俺の処遇が決まるとか…。

 

 ………いや、俺は何も知らないんです!ただ自分で考えただけで…。」

 

 

「いや、安心してくれ。これによって君が捕まるだとか、そういうことはない。」

 

 良かったー。

 

「ただこの質問で決まるのは、次の作戦について教えるかどうか、ということだ。」

 

「次の作戦……壁外調査ですか?」

 

「ああ、そうだ。

 単刀直入に言うが、次の作戦は、君と同じように巨人化できる人間が攻めてくると予想している。」

 

「そんな……そんな早急に……」

 

「それで次の作戦は、表向きはカラネス区からの行路の確保だが、実際は、その巨人の確保を目的とする。」

 

 ちょっと、混乱してきたぞ…?

 次の壁外調査で巨人になれる人間が攻めてくる。そして、その巨人を捕獲する…?

 

「そこで、君にはその作戦内容と、そこでの君の立ち位置、そして役割を話そうと思う。話の内容的にも、ここで覚えてもらうことになる。いいね?」

 

「は、はい!」

 

 まだ頭の整理はついていなかったが、まずは作戦を覚えることが先だ。

 頑張って頭に詰め込もう。

 

 

 

 

 

「………ということだ。覚えられたか?

 何か質問があれば、答えよう。」

 

「お、覚えました……。ですが、ということは…、俺は……。」

 

「ああ、君の思っている通りだ。この作戦が上手くいっても、行かなくても、君は大変な立場になるだろう。だからこそ、君にはこの作戦を遂行して貰いたい。」

 

「はい。この作戦の意図も、分かっているつもりです。エルヴィン団長の言うようには…上手くは行かないかもしれませんが、全力を尽くします。」

 

「何があっても、死んではならないよ。君は、エレンと同じく、人類の希望なのだから。」

 

「はい。分かっています。

 …では、失礼します。」

 

ガチャ

 

 

 

 びっくりした。

 まさか、次の作戦の、俺の役目は、

 …………だなんて

 

 

 

 

 俺は、リヴァイ班に入って、ここ1ヶ月くらい平凡な日常、ずっと戻りたかった日常に戻れたような気がしていた。

 根拠は無いけど、ずっとここにいるんだと思っていた。

 

 しかし、次から俺は、ここには居られないんだな。

 

 

 そう思うと、無性に寂しくなった。

 

 

 

 

 ああ、まただ。

 

 俺は、また悪夢を見た。

 

 これを見た後に毎回、何かが起こる。シガンシナ区の時も、トロスト区の時も、悪夢を見た後だった。

 今回は、十中八九、壁外調査の件だろう。

 

 今回見たのは、今まで訓練していた長距離索敵陣形を実際にやっている、同期達の姿。

 そして、異形の巨人がこっちに向かって走ってくる場面と、アルミンとライナー、ジャンがそれに立ち向かう場面。

 それに、リヴァイ兵長が馬に乗っている姿を後ろから見ているところ。周りにはリヴァイ班のみんな。そして、高い木々…巨大樹の森か?

 異形の巨人が走りながら調査兵を軽々と殺していく

ところ。

 

 それに、あれは、誰だったか。

 ある者は、首を切られて、立体機動装置のワイヤーに引っ張られて宙に浮いたまま、事切れていた。

 ある者は、胴体と下半身が切り離された状態で、地面に転がっていた。

 ある者は、木に横たわって、血を流していた。

 ある者は、強く打ち付けられて、無惨な姿で亡くなっていた。

 あの人たちは、誰だったか…

 

 

 

「リヴァイ班の皆…」

 

 

 

 どうして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁外調査の日がやってきた。

 

 昨日の悪夢のせいで俺はあまり気分が良くなかったが、今日は壁外調査だ。

 シガンシナの時も、トロスト区の時も、悪夢を見たんだ。あの時も、地獄だった。

 悪夢を見たということは、今回の壁外調査は悪いものになることだろう。

 

 しかも、今回の悪夢は、詳細を割と覚えている。だんだん悪夢の見え方も、時間が経つにつれて変わってきているのか?

 

 

 俺はそんなことを考えながらも、壁外調査の起点であるカラネス区で、エレンの隣に整列していた。

 

「エレン、これから起こることは、お前にとって悲劇かもしれない。けど、思い出すんだ。お前と約束しただろ?絶対、生きて戻ってくるって。」

 

「ああ、もちろんだ。」

 

 

 壁外調査の出発点であるカラネス区に集まった調査兵たちは、皆それぞれの思いを抱いていた。

 これから初めての壁外調査に向かう新兵は、ソワソワとしているし、

 今まで何回も行って仲間を亡くしている古参兵は、引き締まった顔つきをしていた。

 

 この作戦では長距離索敵陣形というものを組むため、俺たちは大量の信煙弾と、持てる限りの補給物資を馬に乗せて、向かうことになる。

 俺たちリヴァイ班は、中央後方の、1番安全な場所。エレンを守るためにも、これから起こるであろう悲劇を最小限に食い止めるためにも、俺たちはここの位置が最適だ。

 エレンを持ってかれることが『最悪の事態』だからな。

 

「付近の巨人はあらかた遠ざけた!開門30秒前!」

 

 

 

「いよいよだ!これより人類は、また1歩前進する!お前たちの成果を見せてくれ!」

 

 

 

「「「「「「おぉぉおおおお!!!」」」」」」

 

 

 

 

「開門、始めっ!」

 

 

 

 

「進めーー!!!

 第57回、壁外調査を開始する!

 前進せよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁外調査が始まってから最初に見たのは、荒れ果てた街だった。

 そんな場所に、巨人がウヨウヨいるのだ。

 

 俺たちの故郷、シガンシナ区も、こんな風に荒れ果てた姿になっているのだろうか。

 早く、故郷に帰って確かめたい。が、そんなに事は上手くはいかないようだ。

 少なくとも、今回は。

 

 

 旧市街地までは援護班が支援してくれる。

 が、そこから先はエルヴィン団長が考案した、長距離索敵陣形が正常に働くかどうか、に掛かっていた。

 

 

(アルミン視点)

 

 

 援護班に巨人を任せて突き進める、旧市街地を超えた先。そこから調査兵たちは長距離索敵陣形を展開していた。

 

 僕、ジャン、ライナーの3人は、右翼側の伝達の位置に配置されている。

 

 …赤い信煙弾は、通常種の巨人が迫ってきている合図だ。

 

 長距離索敵陣形では、兵を広く展開して通常種の巨人が見えたら赤の煙弾を。また、奇行種が見えたら黒の煙弾を。そして、それらの煙弾が見えた人は、同じように、赤や黒など同じ色の煙弾を打って伝達することで、最終的にその煙弾が見えた団長が緑の煙弾を打って進路を確定する。

 

 巨人を避けながら、被害を抑えて進んでいくための陣形だ。

 

 僕は赤い煙弾が見えたので、この1ヶ月で教わった通り、同じように赤い煙弾を打った。

 

 

 しかし、赤い煙弾が打たれてしばらく経っているのに、陣形が乱れていることに疑問を抱いていた。

 

 ――まさか

 

 そう思った時、黒い煙弾が見えた。

 ――奇行種が現れたんだ!

 咄嗟に僕も黒い煙弾を打つ。

 

 その後すぐに、奇行種がネス班長のところに現れた!

 そして、その奇行種の項をネス班長とシスさんが素早く削ぐ。

 

「やった!ネス班長!

 ……!!」

 

 …………あっちの方向から来るのは…

 

 また、奇行種か?凄いスピードだ!

 12…いや、14mくらいか?とにかく、デカいのは確かだ。

 

 右翼側の索敵はどうしたのだろうか。

 こちらに2体も奇行種が流れてくるなんて、何か巨人を倒せない理由があるのかもしれない。

 

 僕は咄嗟にまた、黒い信煙弾を打つ。

 

「アルレルトの方に行かせるな!シス!」

 

「はい!」

 

 ネス班長がそう言ったのを合図に、シスさんが奇行種に攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、

 その巨人は、ネスさんの立体機動装置のワイヤーを掴んで――

 

 地面に叩きつけた。

 

 

 「ヒッ……!」

 

 僕は馬を連れて、その巨人とは反対側の方向へ走り出した。

 

 違う、違うぞ!

 奇行種じゃない。奴には知性がある。鎧や超大型、エレンと同じ、

 

「巨人の体を纏った、人間だ!

 誰か、

 なんでこんな!

 まずいよどうしよう。

 僕も死ぬ!殺される!」

 

 巨人の足音が段々と迫ってくるのを感じる。

 僕は、馬だけは逃がそうと思い、予備の馬の手網を離した。

 

 「いけ、逃げろ!」

 

 知性を持った巨人が全速力ではしってくる。

 もうすぐ追いつかれる……っ!

 

 「こいつは、いや、こいつらは…何が目的なんだ……!」

 

 

 

 その巨人にとうとう追いつかれた僕は落馬して、無防備な状態のまま、地面に転がっていた。

 落馬した衝撃で、僕は調査兵団のマントのフードを被っていた。

 

 ……殺される。

 

 

 

 

 そう、思ったが、その巨人は…

 

 

 

 僕のフードを取った後、先程のように走り出して、そこを去っていった。

 

 

「殺さない…………のか?

 なんだ今の………。

 フードを摘んで、顔を…顔を、確認した…?」

 

 

「アルミン!!」

 

「ライナー!」

 

 向こう側からライナーが馬に乗ってこちらに来ているのが見えた。

 

「おい、立てるか?いやとにかく…馬を走らせねえと、壁外では生きてられねえぞ!急げ!」

 

「…うん!」

 

 

 ライナーはその後、連れていた予備の馬を僕にくれて、僕達は先程の巨人を追うように馬を走らせていた。

 

 

「奇行種の煙弾が見えたが、あのいいケツした奴がそれか?」

 

 ライナーがそう僕に聞いてくる。

 

 

 でも違う。……あいつは…

 

 

「奇行種じゃない…巨人の体を纏った人間だ!」

 

 

「なんだって!?」

 

「あ、ちょっと待って。先に煙弾を打たないと!い、急げ、あっちに緊急事態を…煙弾で……っ」

 

 早く伝えないと!

 そう思うほど、手元は狂って煙弾をセットできなくなってしまう。

 

 そんな時、

 

 

 

 パーンッ

 

 信煙弾の音が聞こえた。

 

 

 

「待て、ジャンが打ったみたいだ。」

 

 

 ライナーの言葉に、後ろをみるとジャンが馬に乗りながら黄色い煙弾を打っていた。黄色い煙弾は緊急事態、作戦続行不可の知らせだ。

 

 右翼側からも黄色い煙弾か上がっているのが見える。

 

「右翼側から上がったのか?

 作戦遂行不能ないだてってことか!」

 

 

 

 ジャンは僕たちに追いついて、状況を報告する。

 

「右翼索敵が、一部壊滅したらしい。

 巨人がわんさか来たんだ!

 なんだか知らねえけど、足の早え奴が何体もいる。今は何とか食い止めているが、もう索敵が機能してない。

 既に大損害だが、下手すりゃ全滅だ!」

 

 

 

 右翼索敵……あの、前を走っている巨人が来た方向だ。

 

「あいつが来た方向からだ。

 ……まさかっ、あいつが巨人を率いてきたのか!?」

 

「あいつ?……なんであんな所に巨人がいるんだよ!奇行種か?」

 

 ジャンが奇行種かと質問してくるが、あいつは……

 

 

「いや、違うんだ。あいつは…巨人の体を纏った人間。エレンと同じことができる人間だ!」

 

 

「アルミン、どうしてそう思うんだ?」

 

 ライナーに聞かれるがままに、僕は、自分の考えの根拠を説明する。

 

「巨人は人を食うことしかしない。その過程で死なせるのであって、殺す行為自体は目的じゃない。

 しかしあいつは、急所を狙われた瞬間に、先輩を握りつぶし、叩きつけた。

 食うためじゃなく、殺すために殺したんだよ。

 他の巨人とはその本質が違う。超大型や鎧の巨人が壁を破壊した時に、大勢の巨人を引き連れて来たのは、きっとあいつだ。

 目的は一貫して、人類への攻撃だ。

 

 ………いや、どうかな…誰かを探しているんじゃないかって気がする。

 もしそうだとすれば、探しているのは…もしかして、エレン!?」

 

 

 

「エレンだと?エレンがいるリヴァイ班なら、あいつが来た右翼側を担当してる筈だが…」

 

 

 

 右翼側だって?

 

 

「えっ」

 

「右翼側?俺の作戦企画紙には、左翼後方ってなってたぞ!」

 

「僕の企画紙には、右翼前方辺りにいると記されていたけど…

 いや、そんな前線に置かれている訳が無い。」

 

 

「じゃあ、どこにいるってんだ!」

 

 

「この陣形の、1番安全な所にいるはず…。

 だとしたら、中央後方辺りかな。」

 

 

「アルミン!今は考え事をしてる時間はねえぞ!

 奴の脅威の度合いを煙弾で知らせるなんて不可能だ!そのうち司令班まで潰されちまう。

 そうなったら…陣形は崩壊して全滅だ!」

 

 ジャンがそう叫ぶ。

 

 

「何が言いたい?」

 

 

「つまりだな…この距離なら、まだ奴の気を引けるかもしれねえ。

 俺たちで撤退までの時間を稼ぐことができる…かもしれねえ。

 ……なんつってな。」

 

 ジャンが、あいつに攻撃を仕掛けることを提案する。

 しかし、僕はさっきネス班長とシスさんが殺された瞬間を、シスさんの、ワイヤーを掴まれて地面に叩きつけられた瞬間を思い出して恐怖してしまう。

 

「あいつには、本当に知性がある。あいつから見れば、僕達は文字通り虫けら扱い。はたかれるだけで潰されちゃうよ。」

 

「マジかよ…ハハッ、そりゃおっかねえなあ。」

 

「お前…本当にジャンなのか?俺が知るジャンは、自分のことしか考えてねえ男のはずだ。」

 

「失礼だなあ、お前…。

 俺は…俺には今何をすべきかが分かるんだよ!

 ……これが俺達の選んだ仕事だ!力を貸せ!」

 

 

 あのジャンがそんなことを言い出すなんて、訓練兵時代では考えられなかった。

 

 『俺たちの選んだ仕事』…そうだよね。ただ外の世界を見ることだけが目的じゃない。僕達は、選んだ以上、調査兵団という組織を生かさなきゃいけない。

 

 調査兵団を壊滅させないために、ここで、足止めする。それが僕たちのすべきことだ。

 

 僕は、さっき僕があいつに殺されそうになった時を思い出す。フードを被っていたから、顔を確認するためにあいつはわざわざ僕のフードを取った。

 ということは……

 

 

「フードを被るんだ、深く。顔があいつに見えないように!あいつは、僕らが誰かわからないうちは、下手に殺せないはずだから!」

 

「なるほど。エレンかもしれん奴は、殺せないと踏んでか。気休めにしては上出来。ついでに奴の目が悪いことにも期待してみようか!」

 

「アルミン、お前はエレンとベタベタつるんでばっかで気持ちわりぃって思ってたけど、やるやつだって思ってたぜ。」

 

「え、ああ……どうも。でも気持ち悪いとか酷いな…」

 

 

 

 

(ジャン視点)

 

 俺は黄色い煙弾を打ってから、前を走っていたライナー、アルミンと合流した。

 

 その前には……巨人!?

 どうしてこんなところに…

 

 アルミンによるとその巨人は、エレンと同じ、知性を持った巨人であるらしい。

 

 奴が中央後方まで辿り着いて、エレンを殺したら、今までエレンのために死んだ奴らはどうなる!

 それに、そこまで辿り着くまでに何人殺される!?

 

 ここで食い止めなければならない。

 

 俺は、あいつの足止めをすることをアルミン達に提案した。

 

「俺は…俺には今何をすべきかが分かるんだよ!

 そして……これが俺達の選んだ仕事だ!力を貸せ!」

 

 トロスト区での補給作戦……あの時にマルコが俺に言った言葉だ。

 今何をすべきか分かる…その言葉の通り、俺にはどれが最善策か分かる…けど、それを実行するには何時だって、勇気がいるんだ。

 

 しかし、トロスト区で、俺が率いたことで死んで行った奴らを見ちまった…。俺は、あいつらの命を、死ぬまで背負わなきゃいけねえ。

 あいつらに、笑われない、胸張って生きていけるような生き方をしなきゃいけねえ。

 そして、俺にああ言ってくれたマルコにも。今はああなっちまったが、いつか、また笑って話せるようになったら、胸を張って報告できるように。

 そう、兵団選択の時に決めた。

 

 

 

 

 

 

 俺たちは、アルミンの言う通りフードを被ってから、あの知性を持っている巨人を追って、攻撃をしようとしていた。

 

 今だ!

 

 俺はそいつの腱を狙って、立体機動装置のアンカーを刺そうとした。

 が、そいつは急に方向転換をして、アンカーを弾きやがった!

 

 そして、そいつは馬に乗っているアルミンを狙う。

 

 アルミンは全速力を出して逃げようとしているが、その巨人はアルミンの進行方向から腕を振り上げて、馬ごと吹っ飛ばした。

 

 アルミンはその衝撃で、馬から落ち、立体機動装置も外れてしまったようだった。

 

 ……アルミンが、殺される!

 

「くっ、アルミン!」

 

 俺はアルミンを助けるために巨人にワイヤーを刺すが、すぐ掴まれそうになる。

 俺はワイヤーを刺し直すが、それもすぐ対応される。

 

 こいつ……運動精度が普通の奴の比じゃねえ!

 くそ、認識が…認識が甘かった!

 

 項にアンカーを刺したら、そいつは…

 

 ――項を守りやがった!?

 

 

 くそ、もう逃げられねえ。死んじまう!ワイヤー掴まれて終わりだ!

 

 その巨人が拳を振り上げて俺を狙ったその時だった。

 

 

 

 

「ジャン!

 死に急ぎ野郎の仇を取ってくれ!」

 

 

 

 

 

 アルミンが、そう大声で叫んだ瞬間、その巨人の動きが止まった。

 

「そいつだ!そいつに殺された!

 右翼側で本当に死に急いでしまった、

 死に急ぎ野郎の仇だ!」

 

 何が起こった!?

 

 アルミンが叫んだことをきっかけにその巨人は動きを止めたのだが、俺はアルミンの言っていることがよく分からなかった。

 だいたいエレンは右翼側に居ないんだから、死んでないはずだ。

 俺たちはさっきの会話で、エレンのいるリヴァイ班は、中央後方だと言うことで納得していたはずだ。

 

 何よりその、リヴァイ班は中央後方だと言ったのは、アルミンだ。

 

 さっき落馬した時に、頭打って混乱しちまったのか?

 まずいぞこんな時に!

 

 

 俺がアルミンの言葉に疑問を持っていた間に、ライナーがフードを取って、巨人に迫っていた。

 

 フードは被っておけと言っていたはずだ!

 まさか、巨人の気を引くために……?

 

「僕の親友を、そいつが踏み殺したんだ!

 足の裏にこびりついているのを見た!」

 

 ライナーはアルミンがそう叫んでいる間にも、巨人に迫って、巨人の項に、立体機動装置のワイヤーを刺した。

 

 まさか、項を直接狙うつもりか…?

 いや、いける!奴がアルミンに気を取られている今なら!

 

 

 ライナーが巨人に迫った時、

 その巨人は徐に手を上げて、

 ライナーを…

 

 握りつぶした。

 

 

「お、おい……」

 

 

 殺された…ライナーが、あの、ライナーが…

 

 

 

 

 俺もアルミンも、そう思っていたその瞬間――

 

 

 

 ライナーが巨人の指を切断して、巨人の手から抜け出した。その後すぐ、アルミンを持ち上げて巨人と反対方向に走り出す。

 

 ライナーの奴、やりやがった!

 ミカサが強烈で忘れてたが、あいつもずば抜けて優秀で頼りになるやつだったな!

 

 

「もう時間稼ぎは充分だろう!急いでこいつから離れるぞ!人喰いじゃなけりゃ、俺たちを追いかけたりしないはずだ!

 …見ろ!デカ女の野郎め、ビビっちまってもうお帰りになるご様子だ!」

 

 

「え、そんな……なぜ…。あっちは中央後方、もしかして……エレンがいる方へ…?」

 

 

 

 

 

 

 死線を潜り抜けた後、俺たちは、足止めをくらっていた。

 

 俺の馬が、帰ってこないのだ。

 ここには人間が3人いるのに、馬は1頭しかいない。

 誰かを1人、ここに置いていくしかないのか!?

 

 そう思って、最後の足掻きで俺たちは紫の煙弾を打った。そしたら…

 

 

 

 後方からクリスタが、乗っている馬の他にも2頭、馬を連れてやってきているのが見えた。

 

 

 

 

「よくあの煙弾でこっちに来る気になったな。」

 

「ちょうど近くにいたし、ジャンの馬がいたから。」

 

「お前は馬にも好かれるし、不思議な人徳があるようだな。命拾いした。」

 

 本当に、ライナーの言う通りだ。クリスタがいなかったら、誰か1人をあそこに置いていかなきゃいけなかったのだから。

 

 

 

 

「でも良かった。みんな……最悪なことにならなくて。

 ……ほんとに良かった。」

 

 クリスタが涙ぐみながら、そう言う。

 俺達には、クリスタだけに後光が差している幻覚が見えた。

 

 

 

(神様…)

(女神…)

 

(結婚したい。)

 

 アルミン、俺、ライナーの順で、クリスタのあまりの神々しさに、そう思っているのが、俺には分かった

 …………気がする。

 

 

「さあ、急いで陣形に戻らないと。」

 

 

 俺たちは女神クリスタに馬をもらって、再び走り出したのだった。

 

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