原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話 作:蘭 ノイ
(ノア視点)
近々、また作戦が行われる。が、俺はそこには参加出来ない…。
エルヴィン団長の言ったことが、頭の中でぐるぐる回っている。
作戦って、いつ頃なんだろう?
それに、皆は無事に作戦遂行できるだろうか?
そんなことばかり考えてしまう。
生憎この部屋の外は見えないし、外に出れもしない。俺の気は滅入ってくるばかりだった。
そんな時、人影が見えた。
エルヴィン団長か?
作戦は、終わったのか?
コツ…コツ…コツ…コツ…
地下室の廊下はどこも長いし、音が響く。
足音はだんだん大きくなって、俺の部屋の前で止まった音がした。
誰かが鍵を開ける。
カチャッ…
「エルヴィン団長!作戦は…」
俺はすぐさまそう言ったが……
「ちょっと、私はエルヴィン団長じゃないわよ!か弱い乙女の顔を見て、誰だか分からないの?」
そこに、居たのは…
「二ファ……」
「はい、お久しぶり。」
「二ファは、死んだんじゃなかったのか?」
アルミンから地下牢で、死んだと聞いたはずだった。
「なによ、失礼ね。人を勝手に死なせないでくれる?
私は今も、生きてます。
ほら、手足もついてるし、喋れるじゃない?」
「そっか……良かった。」
二ファも、俺と同じように、死んだことにするという作戦だったのかもしれない。
「時間が無いから単刀直入に聞くわね。」
「あ、ああ。」
壁外調査では、何をやっていた?そもそも、二ファはどうやって鍵を手に入れたんだ?そんな聞きたいことは沢山あったが、二ファの言葉に従った。
「貴方、悪夢を見るでしょう?」
「どうして、それを……!」
この話は、まだリヴァイ兵長にしかしていないはずだった。
「まあまあ、落ち着いて。
実は、私もなのよ。」
二ファも……?
あの悪夢の内容は、予知夢みたいなものだった。
それにトロスト区では、二ファがトーマスを助けた、と聞く。
二ファがあの時俺と同じような悪夢を見ていたのだとしたら、トーマスを助けられたのも納得だった。
「悪夢……。お前は、その内容を覚えているのか?」
「うん。私にとって大事な人なんかは、その人がどこでどうやって死ぬのか、とかが、それが起こる日の前日に分かるのよ。」
大事な人の生死が分かる…か。俺はそこまでは分からない。というか、指定できない。ランダムにどこかの場面を切り取って見せられている感じだ。しかし、その日の前日に見る、というのは同じだろう。
「俺のとは、多少は違うが、大筋は一緒みたいだな。」
「そうね。
このことを踏まえて、ノアには私と協力関係になって欲しいのだけど。」
「協力関係……って、二ファは、調査兵団じゃないのか?調査兵だったら、協力も何も、協力しないと生きていけないじゃないか。」
「あのね、覚えてる?
私が死んだのは、トロスト区の作戦のすぐ後ってことになってるはずだわ。
その時にはまだ兵団選択はしていないのよ?」
……と、いうことは、
「調査兵団じゃないってこと?
それに、死んだことは作戦でもなんでもない…と。」
「そう。兵団には入ってないし、作戦なんかでもない。
全て、私の意思よ。」
意思だとして、自分が死んだとすることに何の意味があるんだ?
「それってどういう…」
俺が言いかけた所を、二ファが遮るように言う。
「それはまだ言えない。でも、私と協力関係になってくれたら、いずれは絶対に言うから。」
「……じゃあ、もし協力関係になったとして、俺は何をすればいい?二ファは何をする予定だ?」
「君は、私の悪夢の内容と忠告を聞いて、救える人達を救うために動いて欲しいの。
私も、君の悪夢と自分の悪夢をすり合わせて、沢山の人が救えるように努力するから。」
二ファは、そう言っていた。
「なんだ、そんなことでいいのか。
しかし、まだお前が正確な悪夢を見るのかは確信を持てないな。
お前が巨人側のスパイだってことも有り得なくもない。」
「……なら、今回の作戦…は、貴方は参加出来ないらしいから、次の作戦の内容を話すわ。その後の結果で、私と協力関係になるか決めればいいじゃない?」
「それでいいのか?
俺にしか利益がない気がするが…」
「いや、私はみんなを救うことが目的だからね。君と協力関係になったら、より多くの人を救える。
私にもメリットがあるわ。」
みんなを救うことが目的…か。それは本当だろうか?まだ、二ファのことは、にわかには信じがたかった。
「さあ、ところでどうして今日、ここに来たと思う?」
「悪夢のことで協力関係になりたかったからじゃないのか?」
「もちろん、そうだけど…。ノア、ここ最近、君は悪夢を見なかったの?」
言われてみれば、見たような気がする…
ただ、前より大雑把な内容しか覚えていない。それに…
「悪夢なんて毎日見ている。」
壁外調査のことを色々思い出して見る悪夢もあるし、毎日見ていてどれが予知夢の悪夢かなんて、分からなかった。
「そう……そうよね。今のノアにとっては辛いことだろうし…
そしたらつまり、悪夢の内容は覚えてないってことよね?」
「そうだな。これから起こることは、見当もつかない。」
「そう…
じゃあ、私の今回の悪夢の内容を教えるわ。これで当たったら、次からは信用してね。」
「お前は、見れたのか?」
「私は他の悪夢はそうそう見ないからね。」
二ファは、あの予知夢が今回も見れたみたいだった。
「今回は…どんな内容だったんだ?」
――――――
今回の内容も、かなり濃いらしい。
「それじゃあ、今回の私の計画を伝えるわね。
これを聞いて、協力出来ないと思うのならそれでいいけど、そうした場合、十中八九、誰かが死ぬ。そのことを念頭に、考えてね。」
「お、おい…
お前勝手に話を…」
「それじゃ、説明するね。」
二ファは俺の言い分なんか無視して、今回の計画とやらを話し始めた。
――――――
「だから君は、ここで巨人の姿で助ける。
分かった?」
二ファから聞いた内容は、にわかには信じ難いが…
「ああ、分かった。」
俺は、二ファの話を聞きながら、自分も同じ内容を夢で見ていたことを思い出し、少し信用していた。
「いや、しかし……どうしてお前が俺の巨人化のことを知っているんだ?」
「どうしてって……トロスト区の時に、ノアを助けたのは私でしょ。ノアが巨人から出てくるところはバッチリ見てるわよ」
「そうだったのか……。全然驚いてないな。」
あの時既に、二ファには分かっていたのか。
「まあね。じゃあ、これから行くわよ。」
そう言って、二ファが扉を開けっ放しで外に出る。
「行くって…どこに?」
「もちろん、戦場よ。これから戦場になるところ。エレン達より早く、エルミハ区から外に出て、104期と合流しなきゃ。」
そう言われて、半ば強引に二ファは俺を外へ連れ出した。
…
…
(三人称視点)
その後、
ノアには知る余地も無かったが、ある作戦が進んでいた。
カラネス区で、女型をおびき寄せる作戦だった。
アルミン、エレン、ミカサ。3人の実行班が女型の巨人の中身と思われる、憲兵団の兵士、アニ・レオンハートに接触。目的の場所へと連れ出す。
地下道を通過できたなら、その地下道の途中で、拘束。
そして、通過する前に巨人になったら…
エレンが巨人化して、女型と戦う手筈だった。
目標を地下道に誘導するのには失敗し、エレンが巨人になる作戦に移行した。
エレンが巨人化する際、時間がかかり、地下道に3人が閉じ込められる事態となったが、アルミンの作戦を実行した後、エレンのみが負傷を負った。
負傷を負ったエレンが巨人になるのには時間がかかったが、その間にも女型は街中で暴れ回っていた。
エレンが巨人化するまでの時間を稼ぐため、第三次作戦である、捕獲装置を使ったが、捕獲は難しく、1度当たった捕獲装置のアンカーは、女型に振りほどかれた。
しかし、その後ようやくエレンが巨人になれたことで、状況は少しだけ良くなり、エレンと女型の直接対決となった。
巨人化時、エレンは正気を1部失っており、アニを食おうとしていたが、項の皮を噛みちぎってアニの姿を見た途端、殺すのを躊躇した。
その一瞬が命とりとなって、アニは結晶化…しかけた。
そこで、イレギュラーが発生した。
結晶化すると思われた、アニ・レオンハートは、何故か乱入してきた巨人に食われたのだった。
その場にいた一同は皆、呆気に取られていたが、リヴァイ兵長だけは女型を食った巨人を追跡していた。
しかし、その巨人は身軽で、女型の巨人が持っていた結晶化のような力を使いながら、壁を容易に超えてしまったのだった。
捕獲作戦は、事実上は失敗だが、その場にいた全ての調査兵には口止めがされた。一般人もその場にはほぼ居なかったことにより、公には、調査兵団は結晶化したアニ・レオンハートを拘束して、地下牢に閉じ込めている。そういうことになっていた。
…
…
(アルミン視点)
しかし、アニを食った巨人は、やはり、巨人化できる人間で間違いないだろう。
姿格好は、マルコを咥えて1日中逃亡劇を繰り広げた、あの巨人に似ているということだが、情報は定かではない。
あの巨人は、何を目的にアニを食べたんだ?
僕には意図が、全く分からなかった。
…
…
(ハンジ視点)
「おい、あれ……」「巨人…?」「壁の中に、まさか」
周りの調査兵たちがザワついているのを感じ、その視線の先を辿ると、そこには……
先程女型が登った衝撃で空いた壁の穴の中に、巨人がいた。
「分隊長、指示を!」
「ええ、何…ちょっと待って………」
あれは、たまたまあそこだけに居たもの?それとも…
もしそうじゃなきゃ……
ガシッ
ニック司祭?
「当てるな……あの巨人に、日光を当てるな!」
壁の中に巨人がいるなんて、誰が思っただろうか?
自分自身も戸惑ってはいたが、とりあえずはニック司祭の言うことに従って、壁の穴を塞ぐことにした。
…
「さて、そろそろ話してもらいましょうか。この巨人は、何ですか?何故、壁の中に巨人がいるんですか?
……そして何故貴女方はそれを…黙っていたんですか?」
ニック司祭には、聞きたいことが山ほどあった。
「私は忙しい!今回も信者は…めちゃくちゃにされた!貴様らのせいだ!後で被害額を請求する。
さあ、私を下に下ろせ!」
質問に何1つ答えなかったニック司祭を、私は壁上の端に立って、首根っこを掴んで持ち上げた。
もちろん私が手を離せばニック司祭は壁から落ちて、落下死だろう。
「いいですよ。
……ここからでいいですか?」
「分隊長!」
モブリットが静止をかけるが、私は止めた。
「寄るな!
……ふざけるな!
お前らは我々調査兵団が何のために血を流しているかを知ってたか!?
巨人に奪われた、自由を取り戻すためだ!その為なら…命だって惜しくなかった。
いいか?お願いはしてない。命令した。話せと!
そしてお前が無理なら次だ。
なんにせよ、お前1人の命じゃ足りないと思っている!」
どうにかニック司祭から情報を聞き出そうとして、脅してはいるが、相手は、
「ひいぃぃ、離せっ!」
そう言った。
「今、離していいか?」
「今だ!」
「……分かった。死んでもらおう。」
「ハンジさんっ!」
「私を殺して、学ぶがいい。我々は必ず使命を全うする。だから、今!この手を離せええぇぇ!
くっ……貴様…」
私は、もう、それ以上聞くのは無理だと考え、ニック司祭を壁上に投げ飛ばした。
「アハハハッ、ウソウソ、冗談。
ねえ、ニック司祭。
……壁って全部、巨人で出来てるの?」
私はニック司祭の様子を伺ったが、これ以上何かを話すつもりは無いようだった。
これが本当だったら……
「ああ、いつの間にか忘れてたよ…
こんなの、初めて壁の外に出た時以来の感覚だ。
……怖いな」
壁の中には、巨人がいる。
しかし、ということは、人類は巨人が入ってる壁に囲まれた中で、悠々と今まで百何年もの間、暮らしてきて、私達、調査兵団は壁の中に巨人が居るということも知らずに、壁外で巨人たちと戦っていた。そういうことなのか…?
…
…
(アルミン視点)
ウォール・ローゼ内に巨人が出現した。ウォール・ローゼは破られた。
そう報告が入ってから、僕達はそちらへ向かう準備を行っていた。
そして、もう1つ、耳よりの報告があった。
女型との戦いによって出来た壁の穴の中には…
巨人がいたらしい。
「一体…何がどうなってんだ!……くそっ」
エレンは苛立った様子で準備をしていた。
僕は気になっていることを聞こうと思って、エレンとミカサに話しかけた。
「でも、巨人がいる壁を、巨人が破るかな?」
「前にもあったろ。俺たちの町が、奴らに…」
「あれは門だった。」
あの時――シガンシナ区が巨人に襲撃された時は、鎧の巨人がシガンシナ区の内部まで侵略してきて、
「アルミン、何を考えてるの?」
「あの壁ってさ、石のつなぎ目とか、何かが剥がれたあととか無かったから、どうやって作ったのか分かんなかったんけど、巨人の硬化の能力で作ったんじゃないかな?
アニが食われる前、結晶のようなもので身を固めようとしていたように、そして、アニを食った巨人が壁を登る際にしていたように、硬化の汎用性は高い。」
「お、おい……その話は…」
「アルミン、その話は口止めされていたはず。ここで話すべきではない。」
「あ……ご、ごめん…。」
カラネス区の壁の中から巨人が現れた…いや、元から居たのか。ということは、他の壁の中にも巨人がいる可能性が高い。
……僕達はずっと、巨人によって巨人から守られていたのか…?
…
僕達はその後、リヴァイ兵長とハンジ分隊長、そしてウォール教の司祭、ニック司祭と共に、荷車に乗って、エルミハ区へ向かっていた。
ニック司祭はどうやら壁の秘密のことを知っているらしいが、口を割るつもりはないそうだ。ハンジ分隊長が既に脅したが、話さなかったらしい。ということは、命を賭しても言う訳にはいかないことがあるのだろう。
そのニック司祭は、自分の目で状況を見て、話すか話さないかは決めると言ったそうで、それを理由に今回のエルミハ区行きに同行するようだった。
…
…
(三人称視点)
――カラネス区での作戦から12時間前
ウォール・ローゼの南辺りでは、104期の兵士たちが集められていた。
私服で訓練も禁止と言われ、幽閉されている状態に、少なからず皆不満を持っていた。
――しかし、
机に伏せていたサシャがいきなり顔を上げて、
「足音みたいなっ…地鳴りが聞こえます!」
そう言った。同期の間では、サシャの悪い予感は当たるということは周知の事実だった。
「何言ってんだ?サシャ。ここに巨人がいるってみてえだな。それはウォール・マリアが突破されたってことだぞ!」
ライナーがそう言う。104期の兵士たちの心中は、皆、そんなことありえない、とは思いながらも、それぞれトロスト区での作戦、そして、先の壁外調査のことを思い出していた。
――同じくして、104期の兵士たちを警戒するために警備に回っていた兵士たちも、その異変に気づいた。
ミケ分隊長が匂いを嗅ぐ仕草をしているのを見て、ナナバは不思議に思った。
ミケ分隊長は、嗅覚が鋭い。遠くにいる巨人の匂いも嗅ぎ分けられるのだ。そんなことは、有名な話だった。
「ミケ…?」
「トーマ!早馬を出せ!お前を含めて4基。各区に伝えろ!
……南より、巨人多数襲来!ウォール・ローゼは…突破された!」
ミケの言葉で、ナナバは、104期達にこれを伝えようと動き出した。
…
「全員いるか?500メートル南方より、巨人が多数接近。こっちに向かって歩いてきている。
君たちに装備させている暇はない。直ちに馬に乗り、付近の集落や村に向かって、避難させなさい。
…いいね?」
ナナバの言葉に、サシャの発言はやっぱり本当のことなんだと思いながら、104期の新兵たちは慌てて外へ出た。
…
「ミケ…」
ミケは、偵察をするため、屋根の上にいた。
ナナバも横で巨人たちが来るのを偵察していた。
「前方、あの一帯に9体はいる。」
「ウォール・ローゼが突破されてしまった。私達は、巨人の秘密や正体に一切迫ることの出来ないまま、この日を迎えた。
私達人類は……負けた。」
「いいや、まだだ。
人は、戦うことをやめた時、初めて敗北する。
戦い続ける限りは、まだ負けてない!」
――そうして、急遽始まった、ウォール・ローゼ内での戦いは幕を上げた。
…
その後、104期の武器を持たない兵士たちと武装した兵士たちが混合で4つの班を組み、それぞれ東西南北に別れた。
巨人は南から来たとのことで、南班が1番危険ということは皆分かっていたが、南班は、南に故郷があるコニー、そしてそれについて行くと言ったライナーとベルトルトが入った。
そして、西班にはナナバ、ユミル、クリスタ。北班には、故郷があるサシャなどがそれぞれ巨人の脅威を伝えるために村を回って住民を避難させようとしていた。
…
…
(ノア視点)
俺達が1番中央の壁、ウォール・シーナの南に位置するエルミハ区についたのは、案外すぐのことだった。
エルミハ区は今回の戦場となるウォール・ローゼ南西側に1番近い場所だった。だからこそ、二ファは
エルミハ区から外に出てウォール・ローゼ内へと向かうルートを選んだのだろう。
ずっと二ファについて行っていたのもあり、俺が何処から来ているのかは見当もつかなかったが、とにかく、エルミハ区に近い位置の地下室にいた事は確かだった。
俺達は一心不乱に馬を走らせていたこともあって、結構早い段階でエルミハ区から出ることが出来た。
しかし、まだ出てから1回も二ファと話す時間が無かったため、さっきの計画の内容を練り直すことは出来なかったのだった。
エルミハ区から出て、これから起こるであろう、もしかしたらもう起こっているかもしれない戦いに出向くために、西に行っている途中、二ファは、
「ここで別れよう。
ここから先は、ノアはウトガルド城へ行ってね。」
そう言った。
そういえば、さっきの計画では二ファは俺の行動しか話されなかった。
「二ファは、どうするんだ?」
「私は、これから人生で1番忙しい時を体験するだろうね。」
そう言った後すぐ二ファは馬で北西の方向へ向かっていた。
人生で1番忙しい時………?
どういうことだろうか。計画のことを話していた時も、何やら俺に隠し事があるように見えたが、ついぞその隠し事が何かは分からなかった。二ファは俺と違って、隠し事が得意なように見受けられる。
俺は何かと怪しい二ファを追尾しようか一瞬迷ったが、ここまで来たなら、こっちのウォール・ローゼの戦いに専念しよう。
そう思ったし、二ファが敵であれ味方であれ、俺もウトガルド城の方を支援した方が良いだろうと思ったからあの計画に乗ったわけなので、今は計画通り、そちらへ向かおう。そうとも思ったため、俺は馬を走らせた。
…
…
(二ファ視点)
『私は、これから人生で1番忙しい時を体験するだろうね。』
私はこう言った後、ノアと別れた。
これからノアは、計画通りに動いてくれるだろうか?
ここから先は賭けの部分が大きい。ノアが、私の計画に乗ってくれるのか、そして、私が救った人達によって何か変わることがないか。そういう部分だ。
ここで何度失敗したか分からない。
けれど、この、ウォール・ローゼの戦いでは、1番、過去最高に忙しくなることは知っていた。
「体力持つかな……」
私はそんなことを呟きながら、馬を走らせていた。
…
…
(ミケ視点)
――あと4体。
俺は突然奇行種になった巨人たちを食い止めるため、104期と武装兵が散開したあと、単騎で複数の巨人のいる方向へ向かって、そいつらを倒しているところだった。
いや、潮時だ。充分時間は稼いだ。
俺は、馬を呼ぶために指笛を鳴らした。
ただ、気がかりなのはあの奇行種。何か妙だ。17メートル以上はあるのか?……でかい。獣のような体毛で覆われている巨人など、初めて見る。
こちらに近づくでもなく、ああやって歩き回ってるあたり、奇行種に違いないのだろうが…。
馬が来ているのが見えた…が、さっきの奇行種が戻ってくる馬を持ち上げて………
こちらに投げ飛ばした。
どういうことだ!?いくら奇行種でも、馬を狙うことはないはず。
俺は危機一髪のところで、物凄いスピードで迫ってくる馬は避けたが、屋根上から転がり落ち、残っていた内の1体の巨人に、足を食われた。
「待て。」
何処からかそんな声が聞こえた。
さっき馬を投げてきた、獣のような巨人だ。
俺の足を今も咥え続けている巨人が、さらに口を開けて、また、噛んだ。
「え?俺今…待てって言ったろう?」
獣のような巨人が俺を咥えていた巨人をひと握りで潰す。
「うわあ……
その武器は……なんて言うんですか?
腰に着けた、飛び回るやつ。」
巨人が、喋った!?
巨体の巨人に見下ろされて、足もやられて、絶体絶命の状況に、俺は恐ろしくなって言葉を返す余裕もなかった。
「…………うーん…同じ言語の筈なんだが…
怯えてそれどころじゃねえのか…
つうか、剣とか使ってんのか。
やっぱ、項にいるってことは知ってるんだね。
まあ、いいや。持って帰れば……」
獣のような巨人が俺に手を伸ばしてくる。
俺は、怯えて頭を抱え込んで目を伏せた。
「うわあ!
…………あああ!
ひぃっ……」
その時だった。
「ああああああああぁぁぁああ!」
さっきまで冷静に話していたその声が、悲鳴を上げているのが聞こえた。
あいつは攻撃を受けているのか?
……何が起きた?
そこには、そいつの左腕を引きちぎっている、巨人の姿があった。獣のような巨人の腹からは、結晶でできた氷柱のようなものが刺さっていた。
何が何だか分からないが、ここで逃げるしかない。そう思っていたが、両足のない俺には、立体機動装置も使えないため、ここから離脱するのは不可能だった。
途中で割って入ってきたその巨人は、今のうちは少なくとも、ヤツより優勢だ。
獣のような巨人は、左腕を無くし、腹を引き裂かれ、今度は右足を食われていた。
その巨人は、右足を切断した後、獣のような巨人がそこから動けないのを確認してから、俺の方に向かってきた。
まさか……俺は、あいつに食われるのか?
「嫌だ!
死にたくない……
あぁぁぁ!」
そこからのことは、よく、覚えていない。
…