原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

24 / 37
17話 激務(ウトガルド城の戦い)

 

 

(ノア視点)

 

 俺は、夜になるより遥か前に、ウトガルド城周辺についていた――はずだった。

 

 これからウトガルド城は、巨人が1番群がるであろう戦場になるはずだ。それは二ファとも話した。そういうことだから、俺は、ウトガルド城の戦いに専念する予定だったのだが…

 

 東側に巨人が集まっているのを見てしまった。

 そして、駐屯兵団の人達が戦っているのも。

 駐屯兵団の人達は、キッツさんを司令官に、ちょっとした集落のようなところで大砲を広げて、巨人を迎え撃っているようだった。

 

 ……思ったより数が多い。

 俺と二ファの夢にはこんなことが起こるなんて無かったはずだ。と、いうことは、ここは他のところに比べたら酷くはならないだろう。

 しかし、それで見捨てられるはずはなかった。

 

 俺と二ファの夢の内容も、全ての情報が合っている訳では無い。ここが、酷い戦場になる可能性も否めない。

 

 実際、ここの人達も最初の方は大砲で弱らせてから1体1体、倒していたようだが、今は多数の巨人が押し寄せてきて、その手法は使えなくなったようだった。

 

 大砲を使ってはいるが、大体の人達は大砲の近くで怯えているか、諦めている。

 

 しかし、戦っている者もいる。

 その中には、トロスト区で最後にエレンを助けてくれた銀髪の先輩、リコさんもいた。

 

 今、恩を返すときだよな。

 

 夢の内容を信じるなら、ウトガルド城での戦いは夜になる。いや、信じなくても、ウトガルド城で戦いがあるなら、夜だ。調査兵団がウトガルド城に篭もる条件なんて、夜を明かすためくらいしかない。昼に城に篭ってるなんて、巨人の餌にされるだろうことは目に見えているだろう。

 と、なると、あと10時間かそのくらいはまだ猶予があるはずだ。それまで、ここを援護しよう。

 そう思った。

 

 しかし…

 今、人間状態で誰かに会ったら、俺が生きていることが知れ渡って、俺は同期の中にいるであろうスパイに狙われる対象になるかもしれない。そういうこともあり、俺は巨人の姿で援護をする必要があった。

 ところが、巨人の姿には時間の制限がある。

 この時間制限があるからこそ、俺はウトガルド城だけに専念する必要があったのだが…

 

 やるしか、ないよな。

 

 これからウトガルド城でどれだけ戦うかは分からないが、俺は元々じっとしてられないタチなんだ。

 

 俺は、ウトガルド城へ向かう前にここで、巨人の姿で駐屯兵団の援護をすることに決めた。

 

 

 

 

 そう決めたのはいいが、実際援護には難航していた。

 

 それは俺が、巨人の姿で戦っているからだった。

 

 俺が巨人を倒していても、駐屯兵団の方々は全く気づかずに俺を攻撃しようとしている。

 

 

 ……調査兵団は、変人の集まりだったんだな。

 

 

 このことを今更感じた。

 

 普通は、巨人を倒す巨人を見ても、こういう反応だ。なんてったって、相手は仲間を食った仇、敵なのだという思い込みがあるからだ。

 しかし、トロスト区襲撃以降、調査兵団は巨人を倒したエレンという巨人、そして、不確定要素の多い、俺という巨人を匿っていた。

 

 俺は、非常にやりづらい援護をこなしながら、

 改めて、調査兵団はヤバい集団だったんだなと考えていた。

 俺は巨人の姿でも、きっと援護だって分かってもらえると思っていたが、いつの間にか俺も、考え方が調査兵団に染まっていたのかもしれない。

 

 

(三人称視点)

 

 

「キッツ司令、あの巨人は巨人を倒しています。私達の味方なのではないでしょうか?……少なくとも、敵では無いのでは?」

 

 駐屯兵団班長、リコはそう言った、が、

 

「巨人は全て、敵だ。

 そんな不確定な理由でその巨人を攻撃しなかったとして、何になる!?

 そいつがこちらに向かってきた時、攻撃するなという命令を出していたら、味方が為す術なく殺されるかもしれない。そんなことが起きたら、どうする!?」

 

「……」

 

 リコは司令の言葉に少しだけ納得すると同時に、あの巨人がいなかったらもっと被害が出ていたはずだ。自分の命さえ、無かったかもしれない。

 そう思って、更なる提言をしようとした…が、

 

「とにかく、あの巨人も敵だ。

 命令は、巨人を殲滅することだ。

 早くいかんか!?」

 

「…………ハッ!」

 

 そう言われてしまっては、上官の命令に従わないわけにはいかないリコには何もできることはなかった。

 

 

 

 

 104期と武装兵は、東西南北の4班で散開し、それぞれ住民に避難を促すために村を回っていた。

 

 北側に向かったサシャは、自分の故郷を見つけ誰もいない村に入ったところ、巨人に襲われそうな母子を見つける。

 助けようとはしたが母は助けられず、悔しくも、少女だけを連れて逃げた。道中、少女を逃がすために巨人と対峙し、逃げている間に父と再開する。

 サシャの故郷の住民は避難した後で、助かっていたのである。

 

 ところが一方、南にある故郷へ向かったコニーは、サシャと同じく誰もいない故郷の村へ入ったが、そこには悲惨な光景が広がっていた。

 家が、村が、壊されていたのだ。

 コニーは家族を心配して己の家へ向かったが、その家に嵌って動けなくなっている、やせ細った巨人がいた。コニーはその巨人から目が離せなかった。その巨人はコニーに向かって、「オアエリ」と、喋ったのだった。

 

 その後、南班と西班はそれぞれウォール・ローゼが破られたと思われる穴を探すため、壁に沿って進んでいたが、やがて両班は出会ってしまった。

 

 

 壁の穴は、見つからなかった。

 

 

 その後南班と西班は夜であること、そして、馬も人も疲労が溜まっていることを考慮して、近くにあったウトガルド城跡で一晩、休息を取る事にした。

 

 

(コニー視点)

 

 ウトガルド城に着くと、そこには、血まみれではあるものの、包帯で応急処置をされてかろうじて一命を取り留めたミケ分隊長がいた。

 

「ミケさん!」「ミケ!何があった…?」

 

 先輩達もこの状況には驚いているようだ。

 

 あの、リヴァイ兵長に次ぐ実力者だっていう、ミケ分隊長が、こんなにボロボロなんて、一体何が…

 

「俺は……1回殺されかけた。

 でも、二ファって名乗った奴が、助けたんだ。

 あいつは……巨人化できる人間だ。」

 

「巨人化できる人間?

 そんな人間が、エレン以外にいるんですか!?」

 

 ゲルガーさんは動揺しているようだ。

 俺たち104期の数名は、ノアも巨人化できることを知っている。あいつは……死んだことになっているけど。

 ノアができるということは、他にも出来るやつがいてもおかしくないってことだ。

 しかし、その名前が、二ファ……。二ファは、トロスト区で死んだ俺たちの同期と同じ名前だった。

 もしかして……同じ奴なのか?

 

「二ファって…亡くなったんじゃ…」

 

 クリスタはそう呟く。俺もそう噂に聞いていた。

 どういうことだ?

 頭が追いつかねえ。

 

「確かに、奴は二ファと名乗っていた。

 そいつは、これからこのウトガルド城に大量の巨人が攻めてくるだろうと言って、その為に補給物資を置いていく、と言っていた。

 それが、これだ。」

 

 そう言って、ミケ分隊長は座っている自分の隣に置いてある木箱を指さした。

 

「木箱…ですか?」

 

 先輩のリーネさんは不思議そうにそれを見る。

 

「開けてみろ。」

 

 開けた後、俺もその中身を見に行く。

 そこには、大量のブレードとガスがあった。

 

「こんなにいっぱい…

 どうしてこんなに補給物資を持っているんだ?

 一般兵にはここまでの量は与えられていないはずだぞ?」

 

「それは俺にも分からないが、これほどの量の物資が必要なほど、巨人が攻めてくるということだろう。

 二ファは戦え、と言っていたが…

 俺は、すぐさま撤退すべきだと考えている。」

 

 撤退?そんなことしたら、ウォール・マリアの時と同じように、今度はこの土地を明け渡して、ウォール・シーナに逃げ込むことになってしまう!

 

「撤退はすべきでは無いと思います!

 今俺たちが諦めたら、誰がやるんですか!?」

 

「私もゲルガーに賛成です。

 ウォール・ローゼが破られているのかどうかは定かではありませんが、巨人たちをこのままにしておけば、いずれウォール・シーナも破られるかもしれません!」

 

 ゲルガーさんとリーネさんはそれぞれミケさんの、撤退という案に反対しているが、残った先輩2人は、考えているようだった。

 

「ミケ分隊長、その二ファって子は、補給物資があれば俺たちは生き残れると思ったからここに大量の物資を置いていったんじゃないでしょうか?」

 

 ヘリングさんはそう言う。

 確かに、二ファは出来ないことは言わない奴だ。そいつの限界が分かってて、その限界ギリギリのラインの命令を飛ばすような奴だった。今はどうか分からないが、訓練兵の時はそうだった。

 

「ミケ……この戦いが始まる前、君はこんなことを言っただろう?

 『人は、戦うことをやめた時、初めて敗北する。

 戦い続ける限りは、まだ負けてない』

 諦めなければ、敗北はしないってことだ。

 ……私は、諦めない方がいいと思う。」

 

 

 

 

「ナナバ……俺はもう、負けたんだ。

 獣の巨人に。」

 

「獣の巨人……それって…」

 

「最初の頃に見た、毛むくじゃらのデカい巨人だ。そいつは桁違いに強い。恐らく、そいつも中身は人間だろう。」

 

 南北東西の班に離散する時に見た、巨人のことか。

 ミケ分隊長が、そいつに敗れた……。

 実力者のミケ分隊長でも勝てなかった相手なんて、どうやって勝つんだ、そんなの。

 

 

 

 俺たちは話し合いの末、撤退せずにここで巨人を食い止めることを決意した。

 

「しかし、104期兵だけでも逃がすべきだろう。武装していない状態でここに置いておくのは流石に危険だ。

 ヘリング!様子を見てきてくれ。

 ミケは、どうする?」

 

「俺は、ここで自分に出来ることをしよう。

 負傷しているから、ここにいても、撤退しても迷惑をかけることになるだろうが…

 申し訳ない。」

 

「分かった。

 ………私はミケに、今まで何度も助けられた。今度は私の番だ。巨人の相手は、私たちに任せてくれ。

 ミケは、巨人の気配を探ってくれないか?」

 

 ミケさんは了承の返事をしてから、匂いを嗅ぐ仕草をする。ミケさんは鼻が敏感で、匂いで色々なことが分かるらしい。

 巨人の接近さえも。

 

 

「……巨人が来る!10体から15体くらいか。」

 

「巨人が南より接近中!」

 

 周辺の確認に、屋上に向かったヘリングさんは駆け足で帰ってくるなり、そう叫んだ。ミケさんとヘリングさんの報告はほぼ同時だった。

 

「こりゃ、撤退は出来そうにねえな。」

 

 ライナーがボソッと呟いた。

 

「全員屋上に来てくれ、すぐにだ!」

 

 焦ったようにそう言うヘリングさんの後ろについて、俺たちは屋上に行き、そして驚く。

 

「月明かりが出てきて、気づいたら…」

 

 城の周囲には、大量の巨人がいた。

 

「なんでだよ……なんでまだ動いてんだ!日没からかなり時間が経ってるってのに!」

 

「どうなっているの…」

 

 日没を過ぎたら、巨人は動かなくなる。そういう習性だと訓練兵時代にも教えられていたはずだった。

 

 

「新兵!下がっているんだよ!

 撤退はもう出来ない!ここは私たちが食い止める!

 行くぞ!」

 

 ゲルガーさん、ナナバさん、リーネさん、ヘリングさんの4人はその言葉を合図に、ウトガルド城から飛び降りて、巨人を駆逐し始めた。

 

 やはり、何年も生き残っている人達だ。先輩4人は俺たちより遥かに経験を積んでいるようで、強いことは分かっていたが、それでも多数の巨人相手に、苦戦しているようだった。

 

 俺たちは、ミケさんと塔の中で待機。

 扉をバリケードで塞いだりして、中に入って来ようとする巨人の侵入を食い止めるために、試行錯誤する。

 途中俺が食われそうになって、ライナーに間一髪のところで助けて貰った。しかし、その影響でライナーは腕を巨人に持っていかれて骨折してしまった。

 

 危うく死ぬところだった……

 ライナーには感謝してもし足りない。

 

 

 

 そして、俺たちは塔の外に出た。

 しかし、そこにはもう、巨人は1匹もいなかった。

 

「な、何が……」

「先輩たちは…?」

 

 あれほどいた巨人が、1匹も、だ。この討伐の早さは異常だった。

 

「君たち、無事だったか!

 こちらも無事だ。

 途中で強力な援軍が来てな、巨人はあらかたやっつけたよ。」

 

「強力な援軍………?」

 

 何の事だろうか。

 

「そいつはこの事は君たちには話すなと言っていた。何かあるのだろう。そいつが何を思ってるのか知らないが、この事は秘密だ。」

 

 そう言われると気になるな。

 ここまで、巨人を倒せる能力の持ち主……

 俺の頭の中には、1人の顔しか浮かんでいなかった。

 

 

(ノア視点)

 

 

 やっとのことで、ウトガルド城に着いた。

 駐屯兵団のリコさんたちのところにいた巨人は倒し終わったが、巨人の姿では限界がある。

 ウトガルド城でも、俺の正体がバレないようにするためにも、巨人の姿でやらなきゃいけない。

 

 俺が城に着いた時には、もう巨人たちがウトガルド城の塔に群がっていた。

 

 間に合わなかったか…?

 

 俺は、速度を速めて、ウトガルド城周辺を見渡す。

 

 誰かが戦っている。

 

 大方、悪夢で亡くなる場面があった、調査兵団の先輩達だろう。

 

 俺は、彼らに項を削がれないようにしながら、巨人を倒していった。

 

 

 しかし、巨人の姿で倒すのには限界がある。

 俺が今日できる巨人化はあと1回だった。

 1回ごとに60分だから、あと持っても5分。

 

 ここで、人間になるか?

 たが、そうすると…俺が生きていることがバレる。

 

 104期にスパイがいるとなると、俺が生きていることがバレるとまずいのは、104期だ。

 そして、その104期は今、塔の中にいるらしい。

 

 残り5分は巨人の姿でいて、それでも殲滅できなかった場合は、人の姿で巨人を狩ろう。

 

 

 

 

 巨人化が解けた。5分経った証拠だ。

 

 俺は人の姿で、塔に立体機動装置を引っ掛けてぶら下がっている先輩たちに話しかける。

 

「調査兵団の先輩方!俺は調査兵団所属、ノア・シュナイダーです!

 信じられないかもしれませんが、俺はさっきまで巨人の姿でしたが、味方です!

 今は協力していただけませんか!?」

 

 先輩たちは心底驚いた顔をしていたが、さすが調査兵団。すぐに立て直して、

 

「ノア……。確かに、君の名は聞いたことがあるよ。

 トロスト区奪還作戦と、先の壁外調査で活躍した、ノアだね?

 君は、亡くなったって聞いたけど…」

 

「話すと長くなりますが、亡くなったことになっているだけです。今はエルヴィン団長の下についています。

 俺は、巨人の力がありますが、それも団長は分かっています。影から兵団を支えるようにと言われていて…」

 

「おい、ナナバ、嘘かもしれねえぞ。そんなこと聞いたことがない。」

 

「ゲルガー、恐らく、その情報は隠されていたのだろう。……ノア、君の言いたいことは分かった。ここは協力しよう。」

 

「ありがとうございます!

 一つだけ、お願いしてもいいでしょうか?」

 

「なんだ?」

 

「俺がいた事は、他の人には言わないで欲しいんです。俺は、あくまで死んだ者となっていますから。

 特に、104期には、絶対に。」

 

「ああ、何故かは分からないが……、そうすることにしよう。

 ところで、ここにいるということは、団長の許可を取っているということだろうな?団長は今は別の作戦の指揮を取っているはずだが…」

 

 痛いところを突かれた。

 二ファが部屋に入ってきて、俺を連れ出したもんだから、団長には何も言わずに出てきたことになる。これは、後で怒られるとして、今はこの場をどうにか切り抜けなければいけない。

 ちなみに二ファが計画上、団長の近くに行く時があるらしかったので、短い準備時間に団長への手紙を軽く書いて、二ファに渡した。

 それが、届いていればいいが…。

 

「……これも、話すと長くなるので、今は巨人との戦いに集中しましょう。」

 

 そう言い繕って、俺はそこを離れた。

 

 104期兵達が外に出てこなけりゃいいが……

 

 それまでに、ここにいる巨人を全部殲滅しなけりゃならない。

 

 

 

(コニー視点)

 

 

「もしかして……ノアか?」

 

 俺は、アルミンとジャンが前話していた、ノア生存説が頭を過ぎった。

 巨人を短時間で何体も相手にする技術を持っている奴は、俺が見たことある奴の中で、ノアただ1人だ。

 

「ノア?

 ノアは、死んでるはずじゃ…」

 

 クリスタが困惑したように言う。

 そうだ、アルミンはこの話は他の人に教えるなと言っていたんだったな。

 

「ああ……そうだよな!

 俺、頭おかしくなっちまったのか?

 ハハハハ……」

 

 ユミルはこっちを怪訝そうに見ている。

 

 

「そういや、獣の巨人は見当たらねえな。」

 

 ミケさんをあそこまで追い詰めた犯人がここを攻めてこないということは、些か変だ。

 

「どこかでぶっ倒れてんじゃないのか?」

 

 ユミルがそんな楽天的なことを言う。

 

「それは流石に早計だよ。」

 

 ベルトルトは不自然に落ち着き過ぎているように見えた。いや、こいつはいつも何も喋らないし、いつもこんな感じか。

 ただ、今は少しいつもより早口なような気もした。

 

 

「獣の巨人……今、どこにいて、何をしてるんだろう?」

 

 そいつが来たら、全滅するかもしれない。俺は少し不安だった。

 

 

(二ファ視点)

 

 

 私の今日のスケジュールは、

 朝1番に、ノアの地下牢……ならぬ、地下軟禁部屋に突入し、警備員を眠らせて鍵を拝借、ノアを連れ出す。

 ノアを、南に位置するエルミハ区の外辺りに連れていった後、ノアとは別れ、ミケの救済に向かう。その時獣の巨人の手足はズタズタにしておき、足止めをする。

 負傷しているミケを連れて、ウトガルド城へ。ここでノアと会おうと思っていたが、どうやら居ないらしい。恐らく暇で、どこかに頭を突っ込んでるんだろう。

 仕方がないから、ミケに手短に説明してから、補給物資を大量に置いておく。補給物資があれば、経験豊富なベテラン調査兵のナナバさん達なら生き延びることができるだろう。

 その後私は、一応獣の巨人を見に、北西へ。案の定先程の傷を修復中だったため、また手足を削ぎ落としておく。今回は、念入りに。

 そして、作戦が実行されるストヘス区へ。この間の移動は結構長いけど、兵士用の馬で走れば、何時間かで着く。

 作戦が完了しそうな所でギリギリその現場に着き、エレンがアニを喰いそびれそうなところを見て、巨人化してアニを結晶化する前に喰う。

 その後足早にその場を離れて、またウトガルド城周辺に戻り、獣の巨人を探し出し、今は手足を削いでいるところだった。

 

 今日はハードワークだった。

 こうなることは分かってはいたが、やはり大変だ。

 今日何回こいつの手足を削いだんだろう。

 

 もはや、作業だった。

 

 こいつは手足を無力化していれば、攻撃はほぼできない。特に、脅威は手だ。手があると近くのものを掴んで投げてくる。

 

「うあああああああああああ!!!!」

 

 断末魔はBGMだ。

 

 私は少々、このハードワークに疲れていて、斬撃もだんだん雑になっている。

 

 一通り切り刻んで手を休ませてる時に、そいつはこっちを見て後ずさる。

 

「な…………なんで、殺さないんだ……」

 

 こいつをここで殺したら、後々面倒くさい事になるんだよ。

 ただ、そんなことは教えてやらない。

 

「それを教えたら、あなたは帰りますか?

 帰りませんよね?

 祖国マーレにそんな醜態晒す訳にはいきませんからね?

 まあ、それでいいんです。

 ただ、ここで人を殺すのは許せない。

 あなた、同族を殺してるんですよ?

 まともな神経してませんよね。」

 

「どうして、そこまで……」

 

「どうして知ってるのかって?

 ……あなたが1番分かるはずよ。

『フィアン』という名に聞き覚えがあるでしょ?」

 

「お前……まさか…」

 

「『Fian』と『Nifa』なんだか似てるわね?」

 

「この、裏切り者!」

 

「裏切り者?あなたに言われるのは心外ね。

 あなたも裏切りたがってたじゃない。

 ま、ここで大人しくしててね。」

 

 私は、そいつを長いロープでぐるぐる巻きにして拘束してから、そこを離れた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。