原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話 作:蘭 ノイ
(ノア視点)
ウトガルド城での戦いを終えた後、俺は獣の巨人を探しに行った。それが、計画だからだ。
獣の巨人は、誰かが傍について、見張るのが無力化するために1番らしい。
俺は殺してしまってもいいんじゃないかと思ったが、二ファは飽くまでも獣の巨人を生かす道を選ぼうとしているのかもしれない。
案外優しいんだな。
「獣の巨人、獣の巨人……あっ」
その時俺が見たのは、手足は切断され、胴体もズタズタになっている、獣のような巨人だった。
二ファが、これをやったのか?
前言撤回だ。優しいなんて、口が裂けても言えない。
獣の巨人の傷跡は、死んだ方がマシとも取れるほどの酷さだった。拷問を受けた後みたいだ。
「これが、獣の巨人か。
……二ファよりは上手く削いでやるよ」
そいつの中の奴は、斬撃を受けすぎてもうとっくに気絶していた。
…
…
(ハンジ視点)
我々は、ウトガルド城に着いたが、そこではもう、巨人はほぼ殲滅されていた。
その後は、壁に空いたであろう穴を塞ぐために、トロスト区からウォール・ローゼの壁上を東に歩いていたところだった。
「本名は、ヒストリア・レイスって言うんだって?」
ニック司祭が話していたことだった。クリスタ・レンズの本名は、ヒストリア・レイス。
「はい。そうです。」
「レイスって……あの貴族家の?」
レイス家といえば、名門貴族だ。
「はい……」
「そう。
よろしくね、ヒストリア。」
…
…
(エレン視点)
俺たちは、ウトガルド城にいた兵士達と合流し、壁の上を歩いていた。ウドガルド城には、数名の先輩兵士と共に、俺の同期である、コニー、ライナー、ベルトルト、ユミル、クリスタも居た。
話によると、ライナーはコニーを庇って腕を巨人に食われかけたらしい。
前にも女型の巨人に掴まれて、間一髪のところで抜け出したと聞いた。
俺はライナー達と、それから後から来たアルミンと話していた。
「既にもう2回も死にかけた。
このペースじゃあの世まであっという間だ。自分で選んだ道だが、兵士をやるってのはどうも……体より心が先に削られてるみてえだ。
……まあ、壁を塞がないことには、しんどいなどと言ってる暇もねえが。」
ライナーは焦っている様子だった。
「ああ。お前ら2人の故郷も遠のいちまうばかりだからな。
……なんとか、ここで踏み留まんねえと。」
「そうだよライナー!
故郷だ!帰ろう!
もう帰れるじゃないか。今まで苦労してきた事に比べれば、あと少しの事だよ。」
ベルトルトが急にハイテンションで話し出す。
いつも寡黙なベルトルトの様子がおかしい。
「……そうか。あともう一息のところまで来ているんだったな。」
あともう一息ってなんだ?
故郷に帰るような物言いじゃねえよな。
「はあ?
何言ってんだ?お前ら。」
…
「壁の穴はなかった。」
俺らと合流した、今や駐屯兵団の班長になっている、ハンネスさんはそう言った。
ウトガルド城の人達から話には聞いていた。調査兵団も壁を調査したが、穴は無かったらしい。
「壁に穴がないのなら仕方がない。
一旦、トロスト区で待機しよう。」
ハンジさんの言葉を合図に、俺たちはトロスト区へ引き返すことになった。
…
「エレン、ちょっといいか?話があるんだ。」
トロスト区へ引き返そうとしていたその時に、ライナーは俺を引き止めた。
「なんだよ?」
「俺たちは5年前、壁を破壊して人類への攻撃を始めた。
俺が鎧の巨人で、こいつが超大型巨人。」
どういうことだ?意味がわからない。
「はあ?何言ってんだお前……」
「何を言っているんだ、ライナー!」
「俺たちの目的は、この人類全てに消えてもらうことだ。だが、そうする必要はない。
エレン、お前が俺たちと一緒に来てくれるなら、俺たちはもう、壁を壊したりしなくていいんだよ。
分かるだろ?」
「は?いや待て、全然わかんねえぞ!?」
ライナーが、まるで別人のようだった。
こいつは……誰だ?
今までのライナーは、仲間思いの兄貴肌なやつだった。こいつは……狂っちまったみたいだ。
「だから、
俺たちと一緒に来てくれって言ってんだよ。
急な話ですまないが、今から…」
「今から……?何処に行くんだよ?」
「そりゃ言えん。だが…まあ、俺たちの故郷だ。で、どうなんだよ、エレン。悪い話じゃ無いはずだ。一先ず危機が去るんだからな。」
「……どうだろうな」
参ったな……昨日からとっくに頭が限界なんだが…
昨日のハンジさんの言葉は衝撃的だった。
アニの身辺調査の報告から、ライナーとベルトルトがアニと同郷であると分かったらしい。
ライナーとベルトルトが、裏切り者かもしれない。それは信じたくないが、こいつらの今の言動は庇いきれないくらいには可笑しかった。
『もしライナーとベルトルトを見つけても、こちらの疑いを悟られぬように振る舞え。』
とりあえずはあのハンジさんの言葉の通りにしなくちゃならねえ。
「お前さあ、疲れてるんだよ!
なあ?ベルトルト、こうなってもおかしくないくらい大変だったろ?」
俺はライナー達が敵では無いことを祈りながら、そう言った。
「あ、ああ……
ライナーは、疲れているんだ。」
俺は、ウトガルド城での話をしていたが、ライナーとベルトルトはもっと違う…長いスパンの話をしているような気がした。
「大体なあ、お前が人類を殺しまくった鎧の巨人なら、なんでそんな相談を俺にしなくちゃなんねえんだ?
そんなこと言われて、俺が、はい行きますなんて頷くわけがねえだろ。」
俺がそう言うと、2人は驚愕といった顔をしていた。
「そうか。その通りだよな。何を考えてるんだ、俺は……
本当におかしくなっちまったのか?」
「……とにかく行くぞ!」
俺は、彼らが俺の故郷を、母さんを、俺の人生を、滅茶苦茶にした巨人だと、この時でもまだ信じたくなかった。
「そうか。
きっと……ここに長く居過ぎてしまったんだ。
馬鹿な奴らに囲まれて、3年も暮らしたせいだ。
俺たちはガキで、何一つ知らなかったんだよ。
こんな奴らがいるなんて知らなければ、俺は……こんな半端な、クソ野郎にならずに済んだのに!
もう俺には、何が正しい事なのかわからん!
ただ、俺がすべきことは、自分のした行いや選択に対し、戦士として……最後まで責任を果たすことだ!」
ライナーは傷ついていたはずの腕の布を取った。
それを見ると……傷から蒸気が出て、修復している途中だった。そりゃ、まるで、巨人じゃねえか。
「ライナー、やるんだな?
今、ここで!」
「ああ、勝負は今、ここで決める!」
俺は突然のことに全く動けずにいたが、ミカサは違った。
後方でこちらの様子を見ていたミカサは、2人が巨人化する前に素早く接近し、2人に攻撃を仕掛けた。
が、しかし、成功しなかった。
「エレン、逃げて!」
「エレン、逃げろ!!!!」
ベルトルトとライナーは…………
「この、裏切りもんがあぁぁぁ!!」
俺らの故郷を、街を、母さんを、めちゃくちゃにした……巨人だった。
…
…
(アルミン視点)
ライナーは鎧の巨人、ベルトルトは超大型巨人だった。
ライナーは巨人になった瞬間、エレンを拐おうとしたが、エレンはすぐ巨人になったようだ。
壁上にいた僕達は超大型巨人と対峙した。
鈍い動きで容易に接近出来ると思っていたが、敵は、蒸気を出して立体機動装置のアンカーを刺すことが出来ないようにしているせいで、接近できない。
「また消えるつもりか?」
いや、前と違う感じがする。
「いえ、様子が変です!
以前なら一瞬で消えましたが、今は骨格を保ったまま、ロウソクのように熱を発し続けています。このままあの蒸気で身を守られたら…
立体機動の攻撃ができません!
ど……どうすれば…」
「どうもしない。待つんだ。」
そう言って、ハンジ分隊長は、他の班に指示を出す。
「いつまで体を燃やし続けていられるか見物だが、いずれ彼は出てくる。
待ち構えてそこを狙うまでだ。
いいか?彼らを捕らえることはもうできない。
殺せ、躊躇うな!
アルミンと、1班は私についてこい!
鎧の巨人の相手だ!」
そうか、ベルトルトは、自らの体の1部を犠牲にして、この蒸気を出しているのか。だからこそ、この蒸気を出し続けられるのには限界があるということか。
僕はハンジ分隊長の指示に従って、鎧の巨人のいる場所へ急いだ。
殺す……か。3年間ともに過ごしたライナー達を殺すなんてこと、僕に…そして、同期の兵士たちに出来るのだろうか?
エレンは鎧の巨人に、アニの技術を使って対応していた。この関節技なら、硬い鎧に包まれている鎧の巨人にも効くらしい。
しかし鎧の巨人は走ってエレンに近づき、エレンを押し倒す。
「くそ、なんで急にあんな速く動ける!?
俺らじゃ何も出来ねえのか?」
「いや、本当に全身が石像のように硬いのなら、あんな風に速くは動けないはずだ。
昔の戦争で使ってた鎧にも、人体の構造上、鉄で覆えない部分がある。脇や股の部分と、あとは、膝の裏側だ。」
そのハンジさんの言葉を聞いたミカサは、エレンが技を決めて鎧の巨人を拘束している今のうちに攻撃するため、鎧の巨人に近づいて……膝の裏を削いだ。
「行ける!」「エレンやっちまえ!」「裏切り者を引きずり出せ!」
しかし、鎧の巨人は何故か、拘束を解こうとするのではなく、移動を始めた。
「な、何を……」
「無駄な足掻きだ。」
止まった?
……あの位置は…超大型巨人の真下だ。
そしていきなり鎧の巨人は叫び声を上げる。
「周囲を警戒しろ!巨人を呼んだぞ!」
「周囲に他の巨人は見当たりません!」「ただの悪あがきだ。」「てめえの首が引っこ抜けるのが先だ!馬鹿が!」「見ろ、もうちぎれる!」
何だか、嫌な予感がしていた。
――その時、超大型巨人の体を壁上に固定していた骨が折れて、落ちてきた。
「上だ!避けろぉぉぉぉ!!!」
僕達は超大型が落ちた衝撃と、その熱量で、吹き飛ばされそうになったが、かろうじて耐えた。
しかし、エレンは……
「エレン!!!!」
エレンは、ライナーとベルトルトに連れ去られた。
…
僕たちはもちろん、エレンを助けるために鎧の巨人を追いかけたかったが、超大型巨人が落ちた衝撃と熱によって負傷したものが多いのに加え、馬をウォール・ローゼの向こう側へ運ぶリフトが無いため、出来なかった。
リフトを待つしか、無かった。
こんな時、何も出来ない自分が嫌になる。さっきだって、もっと何か出来たことがあるはずだった。
ノア……君がこんな時にいれば…
いや、ノアを頼りにしてはダメだ。自分の力で状況を打開するんだ。
さっきの影響で脳震盪を起こして眠っているミカサを見ながら、僕はそう思った。
…
やがて、エルヴィン団長と憲兵団が来た。
「エルヴィン団長!間に合ったのですね!」
「状況は変わりないか?」
「はい!」
「よし、リフトを下ろせ!」
…
ハンジさんは傷を負っているのに、這いつくばりながら地図を指さして、鎧の巨人たちが向かう場所について、説明していた。
「ここに小規模だが、巨大樹の森がある。ここを目指すべきだ。
まあ、鎧の巨人の足跡は隠しようがないと思うけど……多分、彼らはここに向かいたいだろう。」
「何故だ?」
「賭けだけど、巨人化の力があっても、壁外じゃ他の巨人の脅威に晒されるようだし、あれだけ戦った後だから、エレンほどじゃなくても、えらく消耗してるんじゃないか?アニも寝込んでいたらしいよ。
彼らの目的地を、ウォール・マリアの向こう側だと仮定しようか。更に、その長大な距離を渡り、進む体力が残ってないものと仮定しよう。
どこか、巨人の手の届かない所で休みたいと思うんじゃないのか?巨人が動かなくなる夜まで。
夜までだ!夜までにこの森に着けば、まだ間に合うかもしれない!」
エルヴィン団長はハンジさんの提案を飲み、夜までに、巨大樹の森に向かい、エレンを奪還することを目的とする、エレン奪還作戦が始まった。
「行くぞ!」
…
…
(ノア視点)
俺は二ファの計画通り、獣の巨人を監視していた。
しかし、そろそろ計画も終わりだ。
ウトガルド城の人達の撤退も済んだはず。
そろそろ俺も……
そう思っている時、遠くからこちらに向かってくる、馬が見えた。
二ファだ。
「お疲れ様。
計画通り、実行してくれてありがとう。
ただ、昨日、昼間のうちにウトガルド城まで移動してなかったのは……どういうことかな?」
彼女は俺が計画通り早めにウトガルド城に移動しなかったことに少し怒っているようだった。
「なんでそんなこと知ってんだ?
まあ、いいや。
途中で巨人と戦っている駐屯兵団を見つけてな。
苦戦しているようだったから助けに入ったんだ。」
「ノア、自分の限界というものを見極めてよね。
今回はたまたま成功したから良かったものの…
あなたは巨人の力を持っていても、中身は人間なのよ?」
「だけどな、お前も、お前自身の行動の計画を話さないのはどうかと思うぞ?
これから協力関係になるってのに……信用出来ないじゃないか。」
二ファの行動が分からなかったから、安心は出来なかった。自分の救えていないところは二ファが救っているだろうか?それが分からなくて、不安だった。
「あ、そうだ!
協力関係ね。今回の予言が当たったら、協力関係になるって話だったわよね。
と、いうことは、協力関係は成立ってことでいいのかな?」
こいつ…俺の言い分を1ミリも聞いてないな。
「…ああ、全部当たってたからな。」
「良かった。
……ところで、昨日は寝た?」
昨日?昨日と今日は、巨人を倒すのに夢中で……
「あ、悪夢のことか?
昨日は忙しくて、仮眠程度だったな。
そのせいで、記憶が薄いけど……何か見たような気もする。」
「そう。
私はガッツリ見たわよ。」
「ってことは……」
「ええ。まだ、戦いは終わってないわね。」
また今日、何か大変な事が起きるのか。
「内容は?」
「そうね。まず…………ライナーは鎧の巨人、ベルトルトは超大型巨人よ。」
「は?いきなり何を……」
「本当の事よ。
彼らは壁の中の人類を大量に殺した、巨人なのよ。そして、あなたの復讐の対象でもある。全ての元凶は、あいつらに違いないからね。」
「二ファは、悪夢でそんなことも分かるのか。
……そうか、あいつらが……」
104期の中に裏切り者が居るとして、調査兵団に所属しているのなら、俺も知っている奴だとは思っていたが、まさか、あの2人とは……
「意外だった?」
「……いや、あいつら2人は昔から可笑しいと思っていたからな。俺を最初に見た時なんか…」
…
訓練兵団に入った次の日の夜、エレンとアルミンがライナーとベルトルトと話しているのを見て、俺もそこに混ざりに行った。
訓練兵になって2日間、あまり関わりはなかったため、俺もそいつらも、初めて互いの顔を見たのがその時だった。
とりあえずは自己紹介をする。
「俺は、ノア・シュナイダーだ。
ここにいるエレンとアルミンの、幼馴染。
これからよろしくな。」
当たり障りのない、平凡な自己紹介だったはずだ。
しかし、そいつらは、何故か驚いた顔をしていた。
「ノア………やっぱりそうなのか。
しかし、エレンとアルミンの、幼馴染……だと?」
ライナーはそんなことを小声で呟いていた。
ベルトルトは、俺に対して、
「ノア……
あの、戦士の…
いや、でも生まれ変わりなんて…」
そんなことを言った。
どういうことだ?と、思うと共に、少しギクッとする。俺は転生者だ。生まれ変わりという言葉は、俺の事を知られているようで怖かった。
だが、どうしてそのことを知っているんだ?
「ん?ノア、こいつらと会ったことあんのか?」
エレンがそう俺に聞く。
記憶の限りでは、こいつらと会ったことは1度もないはずだった。
しかし、俺にも何が何だか…
「俺は……お前らと会ったこともないし、そもそもこれが初対面だったはずだが…どこかで会ったか?」
俺がそんな事を言うと、目の前の2人は顔を見合わせる。
「もしかして、別人か?」「確かに初対面ではあるけど…戦士長の話していた通りの人だと思ったんだけどな。」「記憶喪失か?」「いや……」
2人は肩を組んで内緒話の体制だ。
「済まない、人違いだったみたいだ。」
奇妙な話だ。白髪に緑の目を持つ俺に容姿が似ているやつなんて、ほぼ居ないのに。
…
あいつらは、初対面がそんな感じだったんだ。
人のイメージは第一印象で決まるとはよく言ったものだ。あの初対面のおかげで、俺の中でのあの2人の印象は、変な奴ら、になっていた。
「意外……じゃ、ないよ。あいつらは最初から変だった。俺を知っているみたいだったし…。いや、俺に似ている別人の話か。」
「そっか…。
まあとりあえず、私の次の悪夢の内容を話そう。
まずエレンがその2人に拐われて、巨大樹の森に逃げるはず。
でも、調査兵団が追ってきたことを悟って、早めに森を出る。
そして、エルヴィン団長が巨人を引き連れてきて、鎧の巨人にぶつける。
その後鎧の巨人は纒わり付く巨人を兵士達に投げ始める。
でも、エレンの力が目覚めて、エレンは巨人を操れるようになり、ライナー達を撤退まで追い詰める。
そんな内容だったわ。」
やっぱり二ファは悪夢を詳細に覚えているんだな。
俺の場合は覚えているにしても、モヤモヤっとって感じだ。
確かに、俺の悪夢でもそんな内容が薄らとあったような気もする。
ただ、何か足りないような…
重要な所が、抜けているような……
そんな気がした。
「ってことは、今回は誰も死なないってことでいいんだな?」
「……ええ、まあ、飽くまで私の悪夢の中ではね。」
「だったら、俺たちが関わる必要は無いんじゃないのか?」
「あなた、自分の復讐の相手が近くにいるのに、よくそんな冷静になれるわね。
少なくとも私にとってはあいつらは仇よ。見過ごすなんてこと出来ない。
……悪夢の見せるものは絶対じゃないわ。
私達が居ない世界での事だもの。私達が今までやってきたことが、どう影響を及ぼすか分からない。」
「そうか、それで悪夢の内容が狂ってしまうのだったら、元から関わって自分たちの持っていきたい方向に軌道修正してしまおうということだね。」
「そういうこと。理解が早くてありがたいわ。
さて、じゃあ今回の計画を話そっか。
まず――」
――――――
一通りの計画の説明が終わった後、俺たちは、決戦の地となる、巨大樹の森へ馬で向かった。
…
「そういえば獣の巨人はあのまま放置でいいのか?」
俺はあの、ズタボロになった獣の巨人を思い出す。
「ええ。おそらく今回の侵略の目的は、威力調査だと思うわ。だから、結構負傷した獣の巨人はきっと一旦前線を離れるでしょうね。」
「いや、あの状態なら、とどめを刺せるじゃないか。なんで……」
「どうしてかは、後で話すわ。」
「お前……秘密が多すぎないか?
もう少し、話してくれても…」
「乙女の秘密は、暴かないのが紳士というものよ。」
「別に紳士になりたいわけじゃあないんだが…」
「まあまあ、ほら、着いたわよ。」
目の前には、名前の通り巨大な木々が生い茂っている森がある。
「ここにも、巨大樹の森があるんだな。」
「ええ、前にアニを拘束しようとした巨大樹の森よりは規模が小さいけどね。」
ここに、あいつら…ライナーとベルトルトが居るのか。
顔を見ても、俺はあいつらに攻撃できるのか?
巨人を何匹も殺してきた俺だが、仲間を殺す覚悟は無かった。
「なあ、あいつらは、殺す必要はないんだよな?時間稼ぎだけで…」
「そうよ。くれぐれも、間違って殺しちゃダメよ。あいつらを殺したら、不利益を被るのはこちら側なんだから。」
二ファは、顔を引き締めていた。
「よし、やるよ!」
「おう!」
俺たちは、虫の騒がしい声を聞きながら、巨大樹の森へ入っていった。
…
「とりあえず、二手に別れましょ。
前より規模が小さいと言っても、この森は2人で探すには広すぎるわ。
最善を尽くさなきゃ。」
「そうだな。もし相手に会った時は…」
「指笛をするの。
信煙弾も持ってないことだし…これしかないわ。」
「その時遠くに居たら、聞こえないかもな。」
「きっと、大丈夫よ。この森は小さいし、そこまで離れないと思うわ。そんなことが起こってしまったら、きっと今日の運勢は最悪ね。」
「まあ、そうだな。」
俺たちはそれぞれ東と西に別れて、森をくまなく探した。
…
森の中でも外側、1番壁から遠い場所に、あいつらがいるの俺はを発見した。
生憎二ファはまだ来ていない。
俺は、計画通り、指笛を思いっきり鳴らして、二ファの返事を待った。
……指笛をしたのが聞こえたら、指笛を返すことになっていた。
「誰か居るのか?
誰だ!!」
ライナーが動揺して叫ぶ。
まだ位置はバレていない。
指笛の返事は、いつまで経っても帰ってこない。
最悪の事態の想定が現実で起こってしまったということだった。
二ファは、指笛に気づけないほど遠くにいるようだった。
やるしかないか。
俺1人で、巨人化できる人間を2人相手するのか。
きついが、二ファが来るまでの辛抱だ。
まずは交渉で時間を稼ごう。
ライナーとベルトルトはそれぞれ別の枝にいるが、人質のエレンはベルトルトのすぐそばにいる。
俺は覚悟を決めて、ライナー達が休んでいる枝の近くに飛び乗った。
「ライナー、ベルトルト…そして、エレン!
久しぶりだな。」
俺の言葉に、3人が一斉にこちらを向く。
「ノア!
……どうしてお前がここに…
死んだんじゃなかったのか?」
エレンに対しては、もちろん俺は死んだという情報になっているはずだ。しかし…
「お前と、約束しただろ?」
『お前は、死ぬつもりはないんだな!?』
そうエレンが言った時、俺は、
『ああ!絶対に、俺は生きて巨人を絶滅させる!
俺を、信じろ!エレン!』
こう返したはずだ。
「そうか…俺は、お前が約束を破るクソ野郎かと思ったよ。」
「俺は、約束を守る男だ。今回のことで分かっただろう?」
「ああ。お前が生きてて、良かった……!!」
凄く心配をかけてしまったようだ。
「おい…
感動の再会のところ悪いが、ノア、お前は敵か?味方か?」
いけない。エレンと話しているのに夢中で、ライナー達のことは放ったらかしだった。
「そりゃもちろん……
お前らの味方だ。」
「おい、ノア!どういうことだ…?」
エレンは困惑しているようだったが、これは時間稼ぎだ。
初対面の時の会話を思い出す。
俺が初対面だと話した後、あいつらは、内緒話でこんなことを話していたはずだ。
『もしかして、別人か?』『確かに初対面ではあるけど…戦士長の話していた通りの人だと思ったんだけどな。』『記憶喪失か?』『いや……』
あいつらは、俺に似た誰かと会ったことがあるか、もしくは聞いたことがあるような口ぶりだった。そして、俺と会った時の顔を見るに、そいつは仲間だったらしい。
そして、記憶喪失…その疑いを、逆手に取れば、時間を稼げるかもしれない。
「ノア!お前は……こっちの味方だろ?」
エレンはまだ理解が追いついていない様子。
それもそうだ。
死んだと思っていた仲間がいきなり出てきて、敵の仲間だと言う始末。これですぐ、そうですか、となるやつはいないだろう。
エレンには悪いが……
「いいや、少し、思い出したことがある。
俺は、昔そっち側だったんだ。」
全くの出鱈目だが、核心にも迫っていない。
これなら騙せるかもしれない。
「ノアさん、思い出したんですか!?
俺らは1回もあなたに会ったことは無かったけれど、ジーク戦士長からずっとあなたの話を聞いてたんです。
その時から憧れでした!」
ベルトルトがいきなり早口になってそう言う。
全く、意味がわからない。
俺は普段見ないベルトルトの様子に、圧倒されていた。
「お、おい、ベルトルト、嬉しいのは分かるが、エレンもいるんだぞ!
話は最低限にしろ…」
「寡黙なフィアンさんも、あなたの話なら喜んでしてくれたし……」
フィアン…?
その名前は…
「おい、ベルトルト!」
ライナーの怒る声が遠く聞こえる。
俺の中にはその時、大量の、途切れ途切れで虫食いのような、記憶が入ってきた。