原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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20話 不明

 

 

(ノア視点)

 

 

「ノア、君はそれじゃあ、エルヴィン団長の指示で死んだフリをしていたってことなんだね。」

 

「そしたら、お前、今回の作戦は団長の指示に逆らったってことか?

 ……そいつは、やべえんじゃねえか?」

 

 俺はアルミン、ジャンと共に撤退していた。

 恐らくエレンの何かしらの力によって、巨人たちは俺たち兵団に見向きもせず、鎧の巨人の方へ向かっていた。

 

 ジャンは、気絶から目が覚め、己の力で馬を走らせることが出来るくらいには回復していた。

 

 比較的安全な場所に来てから、俺は今までの事をアルミンに聞かれ、全てを話したのだった。

 

 

 そういえば、色々と大変で忘れていたが、俺は図らずともエルヴィン団長の指示に逆らってしまったのだ。

 今も前を馬で駆けているエルヴィン団長の背中を見て、恐怖する。

 

「俺、壁内に着いたら、団長の説教が待ってるんだろうな…」

 

「団長の、説教…」

 

 

 普段は温厚な団長の説教はどんなものになるかは分からないが、きっと怖いんだろう…。普段温厚な人ほど怒った時は恐ろしいとよく言う。

 

 

「ノア、生きて帰ってくることを、願ってるよ。」

 

「おいジャン、見捨てるなよ!

 ……仲間だろ?」

 

「仲間に嘘ついて死んだフリする奴なんて、信用出来ませーん。」

 

 『嘘』か。こいつらと別れた、壁外調査での巨大樹の上で、俺はこいつらを少しだけ騙してから死んだことにしたんだっけか。

 

「今回助けてやったことで、チャラにしてくれよ。」

 

「あー、そう言われると、困るな…

 ともかく、今回はそれでいいが、次やったら…容赦しねえからな!

 …本気でお前が死んだかと思ったんだぞ?」

 

 ジャンは、こちらを睨みつけながらそう言う。

 

「まあ、団長の指示だったなら、しょうがないね。それが最善策だと団長は考えたのだろうから。

 ……でも、それに逆らうのはどうかと思うけど。」

 

 アルミンの正論が胸に刺さりまくって、痛い。

 

 

「そこの新人!

 ぺちゃくちゃ喋ってないで、帰ることに集中しろ!

 無事に帰るまでが、壁外調査なんだからな!」

 

 ……今回は壁外調査じゃないけど。どこかの班長がそう言いよこしたため、そこからは無言で巨人が来ていないか伺いながら、壁内へ帰っていった。

 

 

 

 

 それから少しの間は大変だった。

 ウォール・ローゼの壁は壊されていないが、中に巨人が入ってきたということで、ローゼ内は危険だと判断され、ローゼ内の住民は、ウォール・シーナの地下街に避難を余儀なくされた。

 しかし、食料供給が間に合わず、1週間も経たずにウォール・ローゼの安全宣言がなされて、ローゼ内の住民は、元の場所に戻って行ったのだった。

 

 兵団はその避難誘導や、食料補給なんかをしなくちゃならなかったため、その間は大変だった。

 

 

 忙しさも一段落した頃、俺は、エルヴィン団長に呼び出された。

 

 ここが、俺の墓場か。

 

 覚悟を持って俺は部屋に入った。

 

 コンコン…

 

「ノアです。入ってもよろしいでしょうか。」

 

「構わない。」

 

「失礼します…」

 

 ガチャ

 

 扉を開いた先には、ベットに腰掛けている団長の姿があった。

 やはり、先の戦闘で団長は腕を失ったのか。

 

 

「単刀直入に聞くが、ノア。」

 

「はい、どんな叱責も受け入る所存です!」

 

 

 

「君は、予知夢を見るそうだね?」

 

 

 団長に怒られると思っていた俺は、拍子抜けした。

 

「よ、予知夢…ですか?

 …予知夢ではなく、俺は悪夢だと思っていますが、それの事だったら、見ます。」

 

「そうか。

 最近見た悪夢の内容を、教えて欲しい。」

 

 急になんだ?

 最近見た悪夢……

 最近はずっと同じ夢を見ていた。

 

「最近は、なんだか非現実的な夢ばかり見ていました。

 兵団組織が機能しなくなって、調査兵団はほぼ全員捕縛されるが、革命が起こり、王家は陥落。

 そこで何故か地を這いながら街を目指す、とてつもなく大きい巨人が出現し、それをクリスタが倒していました。

 そして、その後、何故かクリスタが女王になる…という、信ぴょう性の無い夢なのですが…」

 

「それで、いい。

 君の言う言葉はほとんど真実だろう。

 ありがとう。助かったよ。」

 

「いえ…こんなことで良いのなら…。」

 

 

「もし覚えているならば、悪夢についてもう少し具体的に説明して貰えないだろうか?」

 

 具体的に、か。

 

「……すいません。悪夢の内容はどれもモヤがかかったような感じで、俺にも覚えていない部分の方が多くて、先程言ったことが覚えていることの全てです。

 もう少し具体的に覚えていたら良かったのですが…。」

 

 

「いや、そうか。

 貴重な判断材料だ。これでも十分だよ。」

 

 

「…ええと、団長、それより、お叱りはないのですか?」

 

 俺の今までの行動を考えれば、叱咤されることはあっても、感謝されることは無いはずだった。

 

「地下室を抜け出したことに関しては、確かに、君自身を危険に晒す行為だとは思っていたが、結果的に、君のおかげで多くの兵士を失わずに済んだ。

 私は君に感謝しているよ。

 今も、隠さず全てを話してくれた訳だしね。」

 

 これで、いいのだろうか?

 俺は違和感を感じながら、部屋を出た。

 

 

 

「ノア!どうだった?

 君の顔を見る限り、怒られたようには思えないけど…」

 

 俺が団長の執務室から出るなり、アルミンが駆け寄ってきて、そう聞いてきた。

 

「怒られなかった。むしろ、感謝されたよ。でも、なんだかスッキリしないんだ。俺に隠し事があるというか、なんというか。」

 

「ふーん、ま、怒られなかったなら良かったじゃねえか。団長にボロクソに言われてへこんでるノアも見たかったがな。」

 

 ジャンも近づいてきて、そう言う。

 こいつ、親友だってのに、酷くないか?

 

「まあ、そうだな。良かった。」

 

 すると、向こうから、エレン、ミカサ、コニー、サシャ、クリスタ、ユミルが歩いてきた。

 

 

「ノア!生きてたんですね!」

 

「俺は、天才だから、お前が生きてるって分かってたけどな!」

 

 サシャとコニーが口々にそう言う。

 

「コニー…お前はアルミンが言ってること1ミリも理解してなかったじゃねえか。」

 

「はあ!?1ミリは理解してたよ!」

 

 隣で売り言葉に買い言葉の応酬が続いている。

 

 

「とにかく、ノアが無事でよかったよ。

 ……みんなも、生きてまた会えて、良かった!」

 

「クリスタ!もういい子は辞めるんじゃ無かったのか?」

 

「あ、そうだった。……いきなり変えるのは難しくて…。」

 

 あの2人もあの2人で、いちゃついている。

 

 

 2人を横目に、俺はエレンに近づいて、話しかけた。

 

「……エレン、あの時は、本当に済まなかった。」

 

「いや、状況を理解していなかった俺が悪かったよ。

 お前は時間を稼ぐためにああ言ったんだろ?

 でも俺は、子供みてえに喚いてさ、本当に、何にも分かってなかった。」

 

「…それでも、騙したことに変わりはない。

 ここにいるみんなにもだ。

 俺は、絶対に守ると誓った、大切に思ってるお前らを、騙した。

 本当に、ごめん。」

 

 

 俺がそう言うと、周りは途端に静かになってしまった。

 何か変な事言ったか?

 

 

「…………よくお前、そんなこと言えるな。」

 

「おいおい、新手のプロポーズか?私はクリスタがいるから、お断りだな。クリスタも、私がいるから…」

 

 

 プロポーズ?さっきの発言のどこがそんな解釈になるのだろうか。

 こいつらの思考はよく分からない。

 

 

「お前、そんなこと思ってたのか?

 俺たちを守るって。

 自分自身を、犠牲にしてでも。」

 

 エレンがそう聞いてくる。

 

「前は、そうだった、けど、今は違う。俺自身も死なずにお前らを助けられる策を考えて、実行してきたつもりだ。」

 

「そう、なんだ。

 僕は…ノア、君のことがシガンシナ区襲撃の時から分からなくなっていたけど、そんなことを考えていたなんて。」

 

 アルミン…確かに、シガンシナ区にいた時と、今の俺は全く違う人物になっていた。

 

「ノア、もっと私たちを頼って。いや、私たちじゃなくてもいい。誰かを頼ってほしい。」

 

 ミカサ。ちょっと前までは、俺にも頼れる相棒みたいなやつがいたはずなんだ。だけど、そいつはすぐ行方不明になるんだよな。エレン奪還作戦の時から、二ファの行方は分からないままだった。

 

 

「俺はノアに守られなくても、死にやしないけどな!

 お前も他人のことじゃなくて、自分のことをもっと考えろよ。」

 

 コニーは珍しく、そんな良いことを言う。

 

「そうですよ!ノアはいつもいつも、他人を頼らずに自分1人で…突っ込んで…居なくなっちゃうんですから……、あれ、なんでだろ、涙が…」

 

 サシャは、言いながら涙を流していた。

 

「やっぱり、生きてるって分かってても、会えなきゃ不安だよ…」

 

 アルミンも、いつの間にか、涙声だった。

 

 

「ごめん、みんな。本当に。」

 

 

「そんな謝罪なんて、受け入れられないよな?

 なー、クリスタ。」

 

「ユミル!そんな意地悪なこと言っちゃダメだよ…。

 ノア、私は謝らなくてもいいと思うよ。

 だって、それがノアの任務だったんだし、結局はその任務があなた自身の身を守ることに繋がってた。

 やっぱり、寂しかったけどね。しょうがなかったんだよ。」

 

「ありがとう。クリスタ。」

 

「ノア、違うよ、私は…」

 

 困ったような顔で、クリスタは俺の発言を訂正しようとする。

 そうか、お前は…

 

「ヒストリア、だよな?」

 

「どうして、それを…

 ノアには言ってなかったはずなのに。」

 

 夢で見た。君が、女王になるところを。

 そんなことは言えないから、理由は説明できない。

 俺は曖昧に笑うだけに留めた。

 

「とにかく、私も、みんなを騙していたのは同じことだもの。

 改めて、自己紹介するね。

 私は、クリスタ・レンズじゃなくて、

 私の本当の名前は…ヒストリア・レイスっていうの。

 騙していて、ごめんね。」

 

 みんなは既にどこか分かっていたような顔をしていた。

 

 クリスタ…いや、ヒストリアのおかげでその話は打ち切りになり、その日は今までのことを少しだけ話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたに、話があるんだよ。

 ノア。」

 

 俺はある日の夜、急にユミルに呼び出された。

 

「なんだ?ユミル。」

 

「お前の、その力だよ。

 おかしいんだ。お前に渡っているのは!」

 

 ユミルはこちらを睨みながら叫ぶ。

 消灯時間はもうとっくに過ぎてんだから、静かにして欲しいものだ。

 

「どういう事だ?」

 

「お前の、巨人の力は元々、私のものだったんだ!けどある日、私の中から力が抜けていく感覚があった。

 その日から、私は巨人化出来なくなっちまったんだ。なにか、知ってるんだろ?」

 

「はあ?

 お前の勘違いじゃないのか?

 俺は生まれた時からこの力を持っていたぞ?」

 

「そんなこと、有り得ないんだよ!

 特別な巨人の力は、無垢の巨人がそいつを持っている人間を食うことで、発現するってのがお決まりだ。」

 

「じゃあ、お前は、元々…」

 

「ああ。無垢の巨人で、壁外を彷徨いてたんだ。でも、お前に似たやつを食って、そんで、人間に戻れたんだよ。

 ……どういう事なんだ?ノア、お前は、生まれた時からその力を持ってるって言ったよな?」

 

「いや、実際に使ったのはトロスト区の時だけどな。でもその前に、人間を食った覚えはないし、この力は元々持ってる力だって…根拠は何にもないけど、分かるんだ。

 そもそも……ってことは、無垢の巨人も元々人間だってことか?」

 

「ハア…。そうだよ。

 私の力が無くなったのは、ちょうどその、トロスト区の時だ。

 

 …………いや……そうだ。こんなことを聞いたことがある。特別な巨人の能力をもつ人間が、誰にも食われずに死亡した場合、その能力はランダムにエルディア人に受け継がれるって…

 しかし、私が絶対に、こいつに似た、顎の巨人の力を持つやつを食べたはずなんだ。

 でも、どういう訳か、受け継がれた…」

 

「考えているところ悪いが、そろそろ本当に寝ないと誰かに見つかるぞ?

 もう消灯時間は過ぎてるんだ。」

 

「ああ、とりあえず、今日のところはこれだけでいい。

 …………今話したことは絶対に、誰にも言うなよ?

 まあ、言っても相手にされないと思うけどな。」

 

「ああ、分かったよ。じゃあ、おやすみ。」

 

 ユミルが、無垢の巨人だった……か。それに、俺の力は元々ユミルのものだった可能性がある。

 どういう訳で俺に受け継がれたのかはさだかではないが、こんな力、持っていない方が身のためだろう。

 

 俺とユミルはそこで解散して、割り当てられている自室に戻った。

 

 

 

 

 俺は明くる日、また呼び出された。

 

 今度は紙で、

 

 『教会裏で待つ』

 

 とだけ書かれていた。

 

 大方、ユミルが面倒くさがって自分の名前も書かずに紙を寄越したんだろう、と思った。

 

 

 俺は、まんまと引っかかったわけだ。あいつの策略に。

 

 

 宿泊施設の敷地内にある教会の裏に着くと、そこには――

 

 

「二ファ…」

 

 

 エレン奪還作戦の時から行方不明だった二ファが、そこにいた。

 

 

「ちょっとだけ久しぶりかな?

 生きてて何よりだよ。

 まあ、世間話でもする?」

 

 

「……そんな気にも、なれないんだよ。

 お前は、元からハンネスさんを殺すつもりだったんだろ?

 分かってるよ。

 お前が俺に話した、目的も、悪夢も、計画も、何かしら俺を騙すための方便だったって。」

 

「違うんだよ、ノア。」

 

「何が、違うって?

 お前がハンネスさんを殺したも同然じゃねえか!」

 

「ハンネスさんが生きていると、エレンは力を使えないの。

 そして、エレンが力を使えないと、良ければ兵団が全滅。悪ければ、人類が全滅するのよ?」

 

「俺かお前が上手くやれば、その未来も、変えられるんだろ?

 そもそも、お前にはもう失望してるよ。

 今までだって、お前の行動は俺に知らされなかったし、お前が俺と同じように、死んだフリをしていた件についても、何も明かされなかった。それに、今わかったが、お前の悪夢は、俺のものより高性能で、もっと先のことまで分かるらしいじゃないか。

 なんでそれを言ってくれなかった?

 

 ……俺は、お前のこと、唯一の理解者で、相棒だと思ってたよ。

 

 協力関係は白紙だ。それでいいな?」

 

 

「そうね。

 理由があっても、人が死ぬのを見捨てることは許されないものね。

 …分かった。それでも、最後に言いたいことがあるの。」

 

「何だ?」

 

「これからの事は、あなたも悪夢で見ているでしょうから、何も言わないわ。それは、実際に起こることだし、そこには、私達は介入する必要が無い。

 

 ただ私が言いたいことは…

 私が見ているのは、悪夢じゃないってこと。

 昔の、記憶よ。私自身の。

 それに、あなたが見ているのも、悪夢なんかじゃない。記憶なのよ。

 そのことをよく考えるべきだわ。

 神の愛し子、ノア・シュナイダー。」

 

 

 神の、愛し子…?

 

 

(エルヴィン視点)

 

 

「エルヴィン、ノアが教会裏で発見された。

 意識不明だ。」

 

 

 リヴァイが、ノックもせずに入ってくる。

 

 ノアが、意識不明?

 やはり、今存在を明かしたのは愚策だったか。

 

「外傷は?」

 

「無い。

 意識が無い理由は分からねえが、俺が殴っても起きなかったってことは、意識不明と見ていいだろう。」

 

「とにかく、一般病院に運べ。」

 

「調査兵専用の、じゃなくてか?」

 

「一般の療養施設に、だ。」

 

「了解だ。エルヴィン。」

 

 調査兵専用病院となると、これから調査兵達が捕縛される時に、共に調べられることになるかもしれない。

 そこで、万が一にでもノアの力が明るみになったら、それこそ解剖に回されるだろう。

 

 それにしても昨晩、ノアの身に何があったのだろうか。

 

 

(エレン視点)

 

 一昨日ノアと再会し、和解した俺は、昨日はトロスト区で夜を明かしたが、今日は、ノアと共にリヴァイ班の皆さんに顔を見せに行く予定だった。

 

 そのために、俺とノアでリヴァイ兵長に頼み込んだんだ。朝から馬を走らせてリヴァイ班の先輩方の元に向かおうと、計画を立てていた。

 

 朝は、玄関ホールでリヴァイ兵長を待たせることのないよう、早めに集まると決めていたのに、あいつは、来なかった。

 

「おはよう」

 

「お、おはようございます、兵長…」

 

「お前だけか?」

 

「いえ、予定では、ノアも一緒に出るつもりだったんですけど…

 おかしいな…あいつは朝が苦手ですが、時間に遅れるような奴じゃなかったのに…」

 

「ハアー…

 エレン、お前、呼んでこい。

 万が一にでも、抜け出したとなったら、あいつは憲兵団にバラバラにされるぞ。」

 

 憲兵団に、バラバラ…

 そんなことになってはいけない。

 

「分かりました!」

 

 俺は勢い良く返事をして、ノアの部屋に向かった。

 

 こんな、大事な日に遅刻なんて、兵長に1発殴られても文句言えねえぞ!?

 

 

 ガチャ

 

 俺は、ノックもせず、ノアの部屋に入る。

 遅刻してる奴が悪いんだ。幼馴染なこともあり、特に遠慮はない。

 

「ノア、起きろ!お前、起きないと、憲兵団に引き渡されるぞ!

 ……って、いない…?」

 

 部屋は、もぬけの殻だった。

 

 

 俺は、リヴァイ兵長にこのことを説明すると、リヴァイ兵長は、青筋を立てながら、

 

「とにかく、敷地内を探すぞ。

 お前はエルヴィンや他の兵士にこのことを伝えてから、探せ。」

 

「了解です!」

 

 

 あいつは、本当に何をやっているんだ?

 

 こりゃ、1発殴られるくらいじゃすまねえぞ!?

 

 

 俺は、エルヴィン団長や兵士たちに事情を説明して、一緒に探してくれるよう協力を促した後、自分でも敷地内の隅々を探していた。

 

 そういや、敷地内には、教会があったはず。その裏で昨日、ノアがユミルと密談していたのを、俺は見たんだ。結構遠くからだったから、内容はよく聞こえなかったが…

 

 あいつがいるとすれば、教会の裏だ。

 これだけ騒ぎになっているんだ。

 何かあったのかもしれない。

 

 俺が教会を回って、その裏が見える位置に来た時。

 倒れている、ノアを見つけた。

 

「ノア!

 …おい、死んでんじゃねえだろうな!?」

 

 俺はノアに駆け寄って、生きているか確かめる。

 

 息は…ある。脈も、正常だ。

 

 ……寝てんのか?

 

 

 ペチペチと頬を叩く。

 

 おかしい。こいつはいつもなら、小さな衝撃なんかで起きちまうのに。

 

 昔、こいつに寝起きドッキリのようなものを仕掛けようとした時も、足音だけで起きちまって面白くなかったなんてことがある。

 

 いつものノアなら、俺が脈を確認した時点で起きているはずだった。

 

 とりあえずは、起きないノアを抱えて、兵長に報告しに行った。

 

 

「意識が、ねえってことか。」

 

「でも、息もあるし、脈も正常だし、起きていないのがおかしいくらいなんです。

 …寝てるんじゃねえかってくらい。」

 

 ノアの様子を見ていた兵長は、脈絡もなく、ノアを殴る。

 

「え!?ちょっと、兵長!?

 確かに、こいつを探すために俺たちは大変でしたけど、さすがに寝てるところを殴るのは…」

 

「意識不明…か。

 殴っても起きねえんじゃ、しょうがねえ。

 エルヴィンに報告してくる。

 全く、こいつに何があったんだか。

 ……お前はここで待機してろ。」

 

「…了解です!」

 

 意識不明、か。

 

 

 しばらくして、事情聴取のようなものがなされた。

 この宿泊施設にいた全ての兵士に対して、だ。

 

 俺はその場にいなかったが、同期たちは、昔ソニーとビーンが殺された時の犯人探しの様子と被るらしかった。

 

 俺の番が来て、エルヴィン団長から直接事情を聞かれた。

 

「昨晩は、何をしていた?」

 

「俺は昨日の夜は…今日の朝から馬でリヴァイ班のいる場所まで駆けていく予定だったので、早めに寝ました。9時頃だったと思います。」

 

「それを、証明出来る人は誰かいるか?」

 

「恐らく、アルミンが…

 俺はアルミンと同室だったので。」

 

「そうか。ノアを見つけた時の様子は?」

 

「教会の裏で見つけました。あいつはそこで仰向けに倒れていて、息をしているかと、脈があるかは確認したのですが、あるみたいで、起きないか頬を叩いたりして確認しても、起きなかったので、仕方なく担いでリヴァイ兵長の所に行きました。」

 

「教会の裏、というのは、なにか心当たりがあったのか?」

 

「あの、実は…

 一昨日の夜、ユミルとノアがそこで密談していたのを見てしまって…

 だから、今回もそうかな、と思ったんですけど…」

 

「…貴重な情報をありがとう。」

 

「ユミルはそんなことする奴じゃないと思うんです。

 口は悪いけど、ユミルはウトガルド城でノアに助けられたんです。だから、そんな恩を仇で返すようなこと…」

 

「エレン、君の意見も参考にさせてもらうよ。事情聴取は、これで終わりだ。

 くれぐれも君は、不用意な行動は慎むように。」

 

「分かりました。」

 

 そう言って、俺に対しての事情聴取は終わった。

 

 

 

(エルヴィン視点)

 

「リヴァイ、今更君に事情聴取なんて、要らないだろう。

 今回の事件に対する、君の見解を聞きたい。」

 

「今回は、何故ノアは意識不明になったのか、そして、それを引き起こしたのは、何、または、何者なのか、ということが全く分からねえから、どうしようもねえな。

 だが…ノアの部屋を調べたところ、こんな紙切れが見つかった。」

 

「それは…果たし状かい?」

 

「『教会裏で待つ』文面だけ見れば、果たし状だが、ノアがこれを見て、何の用意もせずに行くとは思えねえ。

 何の用意もしなかったってことは、差出人が誰か分かっていて、それも、信用出来る人物だったってことだ。」

 

「そうか。やはり、ノアに近い者の犯行で、それも信用されている者、ということだね。」

 

「一昨日の晩、ノアに接触した奴がいるらしいな。そいつが犯人じゃねえのか?」

 

「ユミルか。彼女は事情聴取で、自分のアリバイを証明していた。昨晩は、ヒストリアと共に一晩中語り合っていたようだ。

 見回りの衛兵も夜中に明かりが付いているのを見て、注意したらしい。」

 

「そうか、だとしたら、何奴が怪しい?」

 

 

 

「私も昨晩、突然の来訪者に会っていたんだ。」

 

「誰だ?そんなこと、聞いてねえぞ?」

 

「ああ、何しろ、予約の無い客だったからね。

 その来訪者の名前は…『フィアン』

 フードで顔を隠していたが、あれはきっと、トロスト区で行方を晦ませた、二ファという少女だった。」

 

 

 

 

 

 

 

 コンコン…

 

「夜分遅くに失礼するわ。

 少しだけお話したいことがあるの。」

 

 昨日はまだ残りの業務が終わっておらず、夜中まで書類整理をしていた。

 

「誰ですか?」

 

 聞きなれない声だったため、兵士では無いと判断し、それでは、取引先のご令嬢か何かだと思っていた。

 

「フィアンです。

 家名はありません。」

 

 フィアン、聞いたことの無い名前だった。

 

「フィアンさん、ご要件は?」

 

「話したいことがあるんです。調査兵団の、未来に関することで。」

 

「では、扉越しにどうぞ。」

 

 信用のできる部類の話ではなかった。

 その時はまだ、何かしら私の気を引くための小細工位にしか思っていなかったのだ。

 

「これから起きることを話しましょう。

 その代わり、今回のことが当たったら、次からは信用してください。」

 

 占いの類か。とりあえず、信用出来ないにしても、聞いておくに越したことはない。

 ついこの間、ノアから予知夢の内容を聞いたばかりだ。それと照らし合わせて、それから信憑性を考えればいいだろう。そう考えた。

 

「信用出来ると断言はできないが、今回のその、予知のようなものが当たったならば、私個人としては、それを考慮に作戦を立てることになるだろうね。」

 

 

「それで、十分です。

 では、お話させていただきます。

 

 近々、クーデターが起きますよね?このことに関しては、上層部の人物は知っていることでしょう。

 そして、調査兵団に所属している、クリスタ・レンズ、本名をヒストリア・レイスという少女が、真の王家として、この国の女王になります。

 その過程で、彼女の父親、レイス家の現当主は巨人になる薬を飲み、今までで最大級の巨人になって、地を這いながら北のオルブド区へ向かうでしょう。

 しかし、その化け物の娘が、無事父親を討ち取って、真の女王として君臨する。

 

 このクーデターの期間は、兵団組織は一部機能せず、調査兵団は人との戦闘をすることになるのではないでしょうか。

 この話は夢物語のように思うのかもしれませんが、これから起きることです。

 もしかしたら、あなたの頭の中にはこれからの作戦がもう出来上がっているのかもしれませんが、この情報が、お役に立てば、幸いです。」

 

 綺麗に、私の考えていた作戦、そして、ノアの予知夢と一致しており、さらに細かい情報まで入っている。

 この来訪者は、何者だ?

 

「ああ、見事な見解を、ありがとう。

 ところで、君はどこの、誰だ?」

 

「先程も言いましたが、私はフィアン。住んでいる場所は、ありません。

 私の役目はこれで果たしましたので、

 これにて、失礼します。」

 

 扉から遠ざかっていく気配がし、薄らと扉を開けて、彼女の様子を伺う。

 暗闇で顔は見えないが、赤茶の髪と、立ち居振る舞い。

 トロスト区で行方不明になったとされた、二ファという少女だろうか?

 

 

 

「彼女は、ピッタリ、私の作戦と、ノアの予知夢を当てて見せた。

 そんな人物が、夜中に、わざわざこんな所まで来て、助言をするだろうか?

 何の目的があって、ここまで来た?」

 

「とにかく、誰かに見つかりたくねえってことは分かるな。」

 

 夜中に、私の部屋まで警備を掻い潜ってきた人物。リヴァイの言う通り、見つかりたくないということは確実だろう。

 

「ああ、そうだな。

 ……しかし、私へそのことを話すのが、ついでだったとしたら?」

 

「エルヴィン、どういうことだ?」

 

「元から、彼女はノアに会うためにここに来たとする。そして、ノアを何らかの方法で意識不明にしてから、私の部屋に来た。ノアに会うということと、私に予知を話すということを、どうしても両方しなければならない理由があるとしたら。

 一日の内に、全て終わらせた方が、監視の目も掻い潜りやすいだろう。」

 

「ノアをあの状態にしたのは、二ファだってお前は考えてんのか?」

 

「ああ。

 それに、昨日は監視が少なかった日だった。

 その日を狙って侵入したのだろう。」

 

「そうなると、厄介だな。

 未来が見えるっつう預言者に、こっちはこっちの預言者を潰されちまったんだろ?」

 

「ああ。それに、問題は山積みだ。

 エレンの事も、前回の壁外調査で成果を上げられず、そのままだ。

 そろそろ、憲兵団も動いてくる頃合だろうな。」

 

「憲兵団が…。

 エレンを狙ってなりふり構わず、来るっつうことか?」

 

「いいや、エレンだけじゃない。相手方は、真の王家、ヒストリアも狙っているらしい。

 十分注意してくれ。

 リヴァイ、君の班には、新たに新人何人かを配備させて貰う。調査兵団の兵団組織が機能しなくなったら、その兵士達を使って、何としてもエレンとヒストリアを守れ。」

 

「了解だ、エルヴィン。」

 

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