原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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3話 訓練兵団

 

 

 エレン達を乗せた船は無事内地、ウォール・ローゼ内に着いたが、そこでは避難民として、ウォール・マリア周辺から避難してきた人達は虐げられている現状があった。

 

 ウォール・マリアが破壊された影響で食糧難は避けられず、避難民の食料は1日パン一個あるかないかといった状況だ。

 

 

 そんな中計画されたのが、領土奪還作戦。

 大勢の避難民などをウォールローゼの外に半強制的に連れ出し、ろくな武器も持たせずに行われた作戦。

 元から作戦成功なんてことは想定していないことは子どもが聞いても明らかだった。

 

 そんな作戦にアルミンの唯一の家族である、おじいちゃんが参加することになって、

 

 そして、

 

 

 帰ってくることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全部巨人のせいだ。あいつらさえ叩き潰せば…俺たちの居場所だって、取り戻せる。」

 

「アルミン…俺は、来年訓練兵に志願する。巨人と戦う力をつける!」

 

 

「僕も……僕も!」

 

 

「私も行こう。あなたを死なせないために行く。」

 

 

 

 俺は………お兄ちゃんを惨い姿で殺した巨人に罰を与えなきゃならない。

 

 

「俺も…訓練兵団に入る。」

 

「わかった。4人で…!」

 

「うん。」

 

 約束は違えない。

 

 

 

 

 

 いつからかは分からないが、エレンは鍵を首から下げるようになっていた。何の鍵かは知らないが、エレンにとって大切なものなんだろう。

 アルミンもミカサも深くは突っ込んで聞いていないようだった。

 

 ウォール・ローゼ内に来てから俺達避難民は大変な思いをして居たが、皮肉にも、俺たちの同志が無茶な作戦で大勢死んだ事で、食糧難は僅かながらも改善されていった。

 

 

 

 

 

 そして2年後…

 俺たちは12歳になった。

 幼馴染である俺達は、全員揃ってウォールローゼ南方面の104期訓練兵団に志願し、今、その入団式に臨んでいた。

 

 周りにいる兵士たちは硬い表情をしていて、強面のキース教官に怯えているものも多かったが、あの日の惨状を目にしたものは顔つきが違っていた。

 

 入団式では何人かがキース教官に酷い罵りを受けていたが、キース教官のその、『今までの自分を切り離す儀式』には俺達は参加する必要がなかったみたいだ。

 

 一部肝が座っているのか、馬鹿正直に、「安全な内地で暮らしたいから憲兵団に行きたい」だとか、敬礼の手が反対だとか、挙句には芋を食べながら臨んでいる者もいたが、案外こういう人達が3年後残るのかもしれない。

 そう。俺達は3年ここで落第することなく残らなければいけない。

 前世よりハードモードだ。

 でも、あの惨状を見てしまった俺は、最愛の兄を目の前で亡くした俺は、ここに来て、兵士になるのが運命だった。そういうことだ。

 

 

「心臓を捧げよー!」

「「「「ハッ!!!」」」」

 

 そう言って入団式は幕引きとなった。

 ここはまだ、スタート地点ですらないんだ。

 でも、慎重に行かないと、足を掬われるだろう。

 俺は改めて、気を引き締めた。

 

 

 

 

 まずは立体機動装置の適性試験かららしい。

 立体機動装置とは、この壁内で取れる特殊な資源を使って2本のワイヤーで人が空を駆け巡るための装置だ。

 対巨人用装置って訳だ。

 そして、立体機動装置の適性試験とは、ただワイヤー2本でぶら下がるだけなんだが…

 

 エレンは早速躓いているようだった。

 

 

「ノア、お前も立体機動装置の制御が上手かったんだってな!お願いだ!コツとかあったら教えてくれ。」

 

 男子部屋は比較的大人数で一部屋に集められる。

 それを利用して、エレンは立体機動装置の練習を上手くできていた奴らに片っ端から話しかけているようだった。

 

 というのも、今日の立体機動装置適性試験ではエレンはなんと、ひっくり返ってしまったのだった。

 

「うーん、コツと言ってもな。これはバランス感覚の問題だと思うけど…ちゃんと装置の調整はしたのか?」

 

「ああ、マニュアル通りやったはずなんだが…」

 

「マニュアルに無いところが故障しているとか……。いくらなんでもひっくり返るってのはバランス感覚云々の問題じゃないと思うが…」

 

「そうか。それもそうだな。入念に調べてみるよ。」「そうだ!お前たちも制御が上手かったらしいな。教えてくれよー」

 

 俺に一通り聞いた後、エレンは茶髪の長身と、ガッチリした体つきの金髪の青年、そしてアルミンの4人で、ベットの上で長話しに行ったみたいだ。

 

 その様子を見ながら、することも無くて手持ち無沙汰になっていた時、話しかけられた。

 

「お前、エレン・イェーガーの幼馴染だってな。」

 

 薄い茶色の髪をしている、2枚目顔の奴だ。

 そういえば、食堂でエレンにつっかかっていた。

 

「そうだが、何か?」

 

「もしかして……お前も調査兵団に入ろうとしてんのか?」

 

「そうだが。何が言いたいんだ?」

 

「うげっ、まじかよ!幼馴染が心配だから着いていきますってか!ハハハ、自分に素直になれよ。本当は、お前も安全な内地で暮らしたいんだろ?」

 

 ああー、こいつ、

「入団式で教官に頭突き貰ってた奴か。」

 

 こいつは、入団式で馬鹿正直に『憲兵団に入って、安全な内地で暮らしたい』と言ったところ、教官に頭突きされていた。

 

 

「あれは痛かった……ってそうじゃなくて!

 調査兵団なんて、辞めといた方がいいぞ。新兵なんか、初陣で3割死ぬらしい。」

 

「それは忠告か?わざわざご苦労さま。その言葉を胸に刻んでおくよ。」

 

 結局何がしたかったんだ?

 俺はその場を離れようとした。

 

 

「おい、ちょっと待てよ!あのさ……なんて言うか、その……」

 

「なんだ、さっきと違って歯切れが悪いな。」

 

 ジャンは顔を近づけて小声で言った。

 

 

「エレンとミカサって……付き合ってんのか?」

 

 

 ああー、そういう事か。

 これは、ミカサに恋してる純情男子ってクチだな。

 あ、ワンチャンエレンもあるか?

 あいつ、無意識で人を口説くからな。

 いや、無いか。

 面白いから聞いてみよう。

 

「お前…エレンに………恋してるのか?

辞めた方がいいぞ。あいつは誰にだって優しいんだから、勘違いしない方がいい。」

 

「やめろ!!俺はホモじゃない。俺は、ミカサがっ」

 

 

「好きなんだー。ふーん、そう。やっぱ顔?」

 

 今の俺は最高にめんどくさい奴だろう。

 人をからかうのは案外楽しいもんだ。

 幼馴染3人はからかいづらかったしな。

 エレンは大真面目に返してくるし、アルミンはちょっとからかっただけで自分が悪いと思って謝っちゃうし、ミカサは武力行使される。

 

 

「かかか、顔だけじゃねーよ!確かに最初は顔だけど……」

 

 なんだこの茶番。まじで照れてんじゃねーか。

 男の照れ顔なんて誰得?

 しかし、からかいがいのある奴だ。気に入った。

 

 

「お前、名前なんて言うの?」

 

「ジャン・キルシュタインだが、いきなりなんだ?」

 

「俺はノア・シュナイダー。これからよろしくな。」

 

「お、おう。……おい、俺の質問は?エレンとミカサは付き合ってるのかって聞いてんだよ!」

 

「それは……企業秘密だね。」

 

「きぎょひ…なんだ?秘密ってことか?」

 

「そういうこと!」

 

「お前……わかってんだろうな!」

 

 

 殴りかかってきたが、ミカサの連撃を受けなれている俺にとっては、その拳はスローモーションにしか見えない。

 ミカサが人間卒業してんだろうけど。

 

 

「俺には当たらないよーっと」

 

 俺は壁ジャンして2段ベットの上に乗り込んだ。

 

 皆が俺の奇行に一斉に静かになる。

 

「バケモンじゃねーか!」

 

 ジャンの大きな声に嫌な予感を感じた俺は、咄嗟にベットの中に潜り込んで寝たフリをした。

 

 

「おい今、真夜中だぞ?

 豚どもが来た最初の夜で浮かれているのは分かるが、静かにしろ!」

 

 バンッとドアを開けて入ってきたのは、キース教官だった。そして、ゆっくりとこちらに迫ってくる気配がする。

 正確には、ジャンに。

 

「ジャン・キルシュタイン、お前だな。」

 

「いや、教官、誤解です!ノアが!」

 

「寝ている奴に何が出来るっていうんだ。人に罪を擦り付けるなんて兵士のすることじゃあない。明日は、分かっているだろうな。」

 

「いや、あいつは寝てな……」

 

「分かっているだろうな。」

 

「ハイ…」

 

 

 可哀想な奴だ。

 同情はするけど後悔はしていない。

 自分で大声を出したんだ。自業自得というものだろう。

 

 

 俺は、その日の夜、

 皆が寝静まった頃、今日のことを思い出していた。

 

 今日、初めて立体機動装置を扱ったはずなのに、何故か、既視感があった。前、やった事があるような…そんな感じ。しかし本当に、立体機動装置を扱ったのも、間近で見たのすら初めてだった。

 

 あの、既視感はなんだったのだろう?

 予知夢かなにかを見たのか?

 

 俺は、そのことが頭に残って離れなかった。

 

 その日に寝たのは、月が落ちてくる頃だった。元々俺は、夜型なんだ。特に、兄が死んだあの日からは、夜更かしをして、色々なことを考えるのが習慣になっていた。

 

 

 

 

 

 翌日はまず、問題だった立体機動装置の適性試験があった。

 ここで上手く出来ないと即刻開拓地送りだ。

 昨日の時点ですら、態度や素行の問題で開拓地送りにされた奴らが何人かいた。

 今日は何人減るんだろう。

 

 自分の番はやすやすとクリアした。

 今世になってから、体が動きやすいし、軽い。重力が小さいような気までする。(調べたりしている訳では無いので、あくまでも感覚だが…)

 前世では考えられなかったミカサとの殴り合いのケンカ(?)ですら、まともに戦えたのだ。

 前世より戦闘力に関する能力は上がっていると考えていいだろう。

 

 

 そして、問題のエレンの番……になる前に、エレンが俺を尋ねてきた。

 

「ノア…!お前のおかげで俺が昨日できなかった理由が分かったよ!ベルトの金具が壊れていたんだ。」

 

「ベルトの金具?そんなところ、普通は壊れないのに…」

 

「どうだろう、俺が無理な体重移動とかしたのかもしれない。とにかく、壊れてないやつに変えてもらったよ。お前のおかげだ、ありがとな。」

 

「いや、俺は助言しただけだよ。それにしても、エレンのバランス感覚が桁外れに悪いとかじゃなくて良かったな。これで今日は乗り切れそうか?」

 

「ああ。」

 

 エレンも今日は大丈夫そうだ。

 

 

 そういえば、エレンがその試験で安定した姿勢を見せた時、キース教官が驚愕した表情を浮かべていたけどなんだったのだろうか。

 

 もちろんミカサはピクリとも動かず安定していたし、昨日話したジャンも全然大丈夫そうだった。

 

 

 それから俺達は過酷な訓練に励んだ。

 立体機動訓練、対人戦闘訓練に、座学。他にも何班かに分かれて、協力して巨人を倒すための訓練だったり、ブレードやガスの交換の仕方など、色々なことを学んだ。

 その間に何人か死んでいくヤツらを見たけど、同じ屋根の下で暮らしてきた仲間たちが突然居なくなるのって、やっぱりどれだけやっても慣れないんだな、ということを感じた。

 

 

 沢山の訓練をしていく中、この世界にも、色んなやつが居て、皆色んなことを考えていて…

 なんて当たり前のことを知った。

 この世界はどこかの物語の中の世界じゃない。

 みんな生きている、という、大切なことを学べた。

 死んだら、もうそれっきりなんだ。

 リトライなんてない。

 僕だっていつ死ぬか分からない。

 そういう世界にいるんだ。

 

 

 訓練や、分からないところを教え合ったりしていると、それぞれの得意不得意が浮き彫りになった。

 

 エレンは対人格闘訓練は他の人より真面目にやってる分、強いが、座学はまちまちなようだった。

 

 ミカサは天性の才能か、体を動かす分野に関しては一流で、誰にも引けを取らない。

 

 アルミンは体こそ強い訳では無いものの、座学で他に類を見ない才能がある。

 

 初日にエレンたちと話していた2人組はライナーとベルトルトと言って、その後俺も仲良くなった。

 彼らはどれも上手くやるが、特にライナーは立体機動、ベルトルトは対人格闘の分野で頭角を現した。

 

 ジャンは立体機動では1位と言えるほど上手くやるし、座学も奮っているらしい。

 

 マルコ…という、ジャンと良くいる奴は得意こそないものの、どの分野も平均より上を行く万能型だ。何より皆を纏める才能がある。

 

 エレンと良く対人格闘訓練で一緒になって、エレンをボコしているアニという奴はやはり対人格闘が得意だ。エレンは1発拳が入っただけで大喜びしていたものだ。

 

 コニーとサシャという、有名なバカ2人は、やはり座学は最下位を争うほど苦手なようだが、他の分野、特に立体機動では何かから解放されたようにビュンビュン飛び回っている。

 根からの脳筋なんだろう。

 俺が言えたことじゃないが。

 

 そして、クリスタとユミル。ここの関係性は謎で、よく分からないが、どの分野に関してもそつなくこなす、マルコとおなじ万能型だ。

 

 それと、二ファという奴も良くやる、のだろう。全てに関して平均よりちょっと上という感じだが、手を抜いている気配がする。強者の雰囲気というものが隠しきれていないのだ。

 他の奴らにはバレていないらしい。教官でさえも。

 俺からしたら、どうしてバレていないのか聞きたいくらいだが、なんだか裏がありそうなので、関わるのはよしておいた。

 

 俺?俺はミカサと同じようなタイプだけど、ミカサほどは目立っていない。前世の頃から大勢に囲まれるってあんまり得意じゃないから、本当に少しだけだが、俺も手を抜いている。

 

 

 入ってから2年。それなりに人と交流していた俺は、友達100人とは行かないが、狭く深い繋がりの友達が出来たのだった。

 

 その中でも幼馴染以外で一番仲がいいのはジャンだ。

 からかいがいがあって面白い奴だから最初は友達になろうと思っていたが、関わっていくと、友達思いで情に厚いなんてことがわかってさらに親しくなったような気がする。

 未だに、からかったら照れて反撃してきて、教官に怒られるってのが一連の流れだが…

 

 あいつ、俺のせいで何回ペナルティかけられたか…

 まあ何回も言うが、同情はするが後悔はしていない。

 

(ジャン視点)

 

 

 ノアに最初に会った時は、綺麗だと思った。

 感想がそれしか出てこなかった。

 ここが男子寮ということも忘れて、女子かと思った程だ。

 しかし、憎たらしい態度は、あの可愛らしい女子達からは一線を期していた。

 

 なんてったって会う度にからかってくるんだよ、あいつは。

 最初に罠に引っかかったが最後だった。

 

 

 初日、俺はエレンという、死に急ぎ野郎と少し口喧嘩になった。そして、エレンが食堂から出ていった後、着いていくように出ていった、黒髪の女子に一目惚れした。

 名は、ミカサというらしかった。

 不幸にも、あの子はエレンの幼馴染で、エレンに付きっきりのようだった。

 

 あの子はきっとエレンに何か弱みを握られていて、エレンの言うことに従うしかないに違いない。

 エレン、絶対許さねぇ。

 

 その後、ミカサにはエレンの他にもアルミンとノアという2人の幼馴染がいるらしいことが分かって、この2人とは同室なので、夜、あいつらが付き合ってるのか聞いてみることにしたのだ。

 

 

 そうして俺はノアに話しかけた。

 

「お前、エレン・イェーガーの幼馴染だってな。」

 

 正面からノアの顔を見た俺は、なんで女子がここ、男子寮にいるんだ?なんてとち狂ったことを考えてしまったほどに、そいつは女顔だった。

 

 

 

「お前…エレンに…恋してるのか?

辞めた方がいいぞ。あいつは誰にだって優しいんだから、勘違いしない方がいい。」

 

 頭狂ってんのか?エレンかミカサかって言ったら先にミカサの方を疑うだろ、普通。

 

 割と真顔で言われたから、冗談に聞こえない。

 俺はホモじゃねーよ

 

 

 あれから2年経って、俺達は互いのことを深く知り合っていた。

 あいつはからかう時以外、どこか冷めたやつだけど、大切なやつが困っている時は1番に優先して来てくれるような奴だ。

 

 俺は、ノアが心配だ。

 あいつだけじゃない。

 未だにエレンは憎たらしいけど、あいつのことだって、ちょっとは認めている。

 だが、やがて兵団選択の日が来て、あいつら幼馴染4人は全員調査兵団に行くんだろう。

 それだけ確固たる意思があいつらにはある。

 

 だが、俺は…?

 

 その時、俺はどうするんだろう。

 今まで内地で暮らすために頑張ってきた。

 このままいけば、10番以内に入れるはずだ。

 でも、入れたからって俺だけ、壁の外で戦っているあいつらのことなんか露知らず、内地で快適に暮らすのか?

 

 訓練兵団に入って俺の考えは揺れていた。

 

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