原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話 作:蘭 ノイ
(二ファ視点)
私は今までずっと、この世界を繰り返していた。
それは長い道のりで、絶望することも何度もあった。
それは何もかもが上手くいかなくてどうしようもなかった時。
私は願ってしまった。
誰かがこの状況を打開してくれることを。
誰かが救ってくれることを。
私が1度願ってしまったものは叶ってしまうと分かっていたのに。
そうして私のループにノアは巻き込まれた。
彼は元々ここにいるべき人では無かったはずなのに。
その罪の意識に耐えられなくて私は、塞ぎ込んだ。
そうして何日、何年…何ループ経ったかは分からなかったけど、その時思い出した。
これは、私が始めてしまったものなのだから、私自身の手で終わらせないと。
私が呼び込んでしまった、ループに巻き込んでしまったものも、私の手で元の場所に返さないと。
塞ぎ込んでいる場合じゃない。
そうして次のループとの間で彼と出会った。
それが、ノアだった。
…
彼は困惑したようにこちらを見ていた。
「二ファさん…ですか?」
彼は今回のループでは壁外調査辺りまでいったはずだ。そうしたらハンジさんの班の私にも会っていたかもしれない。
私がこの世界に来て、転生を繰り返していたのは、主人公でもその仲間でもなく、二ファ、という前世でも人気のあった脇役キャラクターだった。
今の外見も彼から見たら二ファのように見えるのだろう。
「どうしてここに…それに、ここは…?」
私は覚悟を決めて、話し始めた。
「ここは、ループの狭間の世界。まあ死後の世界と同じような物ね。
私はここを管理している者よ。」
ノアはどうやら状況が飲み込めていないようだった。
「分からないのも無理ないわ。ループしてたことも忘れてるのかしら?
まずはその記憶を、戻さないといけないわね。
でも、その記憶はきっと辛いことばかりだと思う。覚悟をして頂戴。」
「ループ?そんなことしていた覚えはないけど…
その記憶が戻るのは、ありがたい。今まで何があったのかさっぱりだ。
よろしく頼むよ。」
そうして私はノアに記憶を戻した。案の定ノアはその場で倒れて眠った。
記憶を取り戻した時は必ずこうなる。私は見たことが無くてもそのことを知っていた。
そうしてノアをベットに寝かせて何日か。
彼は目を覚ました。
「二ファ…
いや、お前は誰だ?
記憶を見たが、お前は……他の奴らと違うような感じがした。
俺と同じ、転生者なのか?」
「ノア、起きたのね。
無事に記憶を取り戻せて良かったわ。
転生者……と言ったらそうね。半分当たりで半分ハズレって感じね。
私は、貴方に謝らなくちゃいけないことがあるの。
謝っても許しては貰えないだろうし、殴ってもらっていい。」
「何のことだ?俺はお前に謝ってもらうことなんてないと思うが。」
「…………ごめんなさい。
貴方をこのループに巻き込んだのは、私だわ。
私は、この世界の管理者。
つまり、ちょっとした神様なの。
殴ってくれて構わないわ。本当に、申し訳ない事をしたもの。」
「神様だって?
俺をループに巻き込んだのは、お前なのか…。
……理由を聞いてもいいか?どうして、俺がループする羽目になったのか。」
「長い話になるけれど、聞いて貰ってもいいかしら?」
「ああ。」
そうして私は、自分自身の長い長い記憶を語り始めた。
…
私は元々、地球に住んでいた1人の人間だった。
『進撃の巨人』を楽しんでいた内の1人だった。
いや、『進撃の巨人』だけが私の唯一の趣味だと言っても過言では無かったほどのファンではあったけれど。
しかしある日、死因は何だったか思い出せないけど、私は死んだ。そして、今いるここと同じような、殺風景な場所に着いたんだ。
そして、神様に会った。
その人は私なんかとは比べ物にはならないくらい、凄い神様だったのは覚えてる。
そして、私は天国か地獄か、どっちに行くのか決められるのかな、と思っていたんだけど、その神様は、私にこう言った。
『お前は何か望みはあるか?』
と。神様が言うには、私は前世で善行を積んだから、何か1つ願いを叶えようって。
私は善行云々はした覚えが無かったし、よく分からなかったけど、1つ願いを叶えるとしたら、前世から決めていたことがあった。
『進撃の巨人』の世界をこの目で見ること。
私の好きな彼らの生き様を、この目で見ること。
その時は、確かに『進撃の巨人』の世界は悲しい事が多いのは分かっていたけど、彼らを見れれば満足だ。そう思っていた。
けどね。1回目、空の上から彼らを見ていた私は、思ってしまったの。
彼らを助けることができるんじゃないかって。
神様の願いをどうしても叶えようとするこの世界は、私を二ファに転生させて、ループを始めた。
私はその時は自分の力でどうにかなるし、どうにかしようと張り切っていたけど、何回繰り返しても助けることはできない。そうして私は絶望していった。
神様の願いは形になる。それを知っていたつもりでも、私は理解していなかった。そもそも私は神様なんかじゃない、普通の人間だと思ってたから、あんなことを思っちゃったのね。
私は、彼らを救ってくれる誰かが来てくれることを願ってしまった。
…
「そうして来たのは貴方だったの。ノア。
私は貴方にこのことを話さないといけないと思ってここに呼んだ。
殴られても文句は言えないわ。それだけの事をしたの。いや、殴られるだけじゃ足りないくらいの罪を私は犯したんだわ。」
「二ファが…
だけどそれは、仲間を助けるため、なんだな?」
「え、ええ…。私は最初から、皆を助けるためにずっと、何度もループしてきた。」
「俺も、そうだ。
毎回ループの記憶は忘れちまうもんだから、毎回最初はなんでこんな残酷な世界に転生したんだって疑問に思うが、訓練兵になって、仲間と出会って。
俺は彼らを守りたいと思うんだ。
確かに俺がループしたのはお前のせいだ。お前のせいで、俺はこんな大変な思いをしなくちゃいけなくなった。
けどさ、お前のおかげで、アイツらと会えたし、前世は何にも、目標なんか何にも無かった俺に、目標が出来たんだ。
お前に感謝はすれど、殴るなんてできないよ。
こっちの世界の方が、前の世界より楽しいしな。
…ずっと病室にいる生活よりも。ずっと。」
ノアはそう言ってくれた。
彼の優しさが身に染みる。私は貴方を理不尽に何回もループさせた張本人だと言うのに。
「ノア……
ありがとう。
貴方がいてくれて、良かった。貴方が来てくれて、良かった。」
「まあ、そういうことなら、またループして、転生しないとな。早く全員救って、こんなループ終わらせて、未練なんか1ミリもない状態でこの世を去りたいからな。」
「そうね。
あなたの言う通りだわ。」
私は最近は皆を救うことはもう無理に近いと思っていた。諦めていたけれど、彼の言葉を聞くとなんだか簡単なことのように思えてしまう。
「だけどさ、俺の記憶は受け継げないのか?
この記憶が無いとまた同じ結末を繰り返すだけだと思うが。」
「そうね…」
彼の次の生の記憶まで干渉できる権限は私には無い。
「私が出来ることと言えば、ちっぽけなことばかりなの。
その中でできることといえば、貴方が次のループで同じ結末を辿らないように祈ることね。
所詮ちっぽけな神様のできることなんてこのくらいだわ。」
「そうなのか…」
「でも、もしかしたら、今回今までのループの事を思い出したのだから、貴方の次のループに変化があるかもしれないわね。
例えば、夢でこれまでの記憶を見る、とか。」
「そうだな。そうなることを願ってるよ。
さあ、
あいつらを全員救わなきゃいけないんだからな、時間はどれだけあっても足りない。」
「そうね。
じゃあ、またループを始めるわ。
覚悟を決めてね。1度願ってしまったものは変えることはできないから。」
そうしてまた、ループが始まった。