原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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21.5話 【幕間】花瓶

 

 

(ノア視点)

 

 

「ノア、久しぶり!…元気でよかった!」

 

 そう言って病室に入ってきたのは、ペトラさん達、リヴァイ班の先輩方だった。

 俺が意識を失った次の日に、エレンと共に顔を見せようと思っていたが、それも叶わず、壁外調査の日からずっと顔を見せられないままだった。

 

「ノア、無事で良かったよ!」「お前、何があったんだ?ずっと顔を見せないで…心配したぞ?」「そもそもな、死んだフリってなんだよ。俺たちを騙すなんてな、100年早いぞ?」

 

「ペトラさん、エルドさん、グンタさん、オルオさん…。わざわざ来てくれてありがとうございます!

 顔を長い間見せに行けなかった件も、死んだフリをしていた件も、本当にすいません。」

 

「ノアが謝ることじゃないわ。死んだはずのノアが生きてたってエレンから聞いた時は、それはビックリしたけど…、団長の命令だったみたいじゃない?」

 

「それは、そうなんですけど…」

 

「顔を見せに来られなかったのも、意識不明で、大変だったらしいじゃないか。

 ノアの身体が1番だ。無理して顔を見せに来る必要はない。」

 

 ペトラさんもエルドさんも、優しい言葉をかけてくれる。

 

「それにしても、お前、痩せたな!

 もっと食わねえと、力つかねえぞ?」

 

「また筋力が、力が足りないって兵長に怒られるのが目に見えてるぜ。」

 

 グンタさんはお父さんみたいなことを言っているが、それにならうとオルオさんは近所のからかってくる、兄ちゃんって感じがする。

 

「2人とも、ノアは病み上がりなんだからしょうがないよ。」

 

 エルドさんがフォローを入れてくれる。

 

「確かにそうだな。

 …………そうだ、これ、皆で決めたものなんだけど、ノアのお見舞いに…って。使ってくれるとありがたい。」

 

 そう言って、グンタさんが渡してくれたのは、ルームフレグランスと呼ばれる類のものだった。

 

「これは……」

 

「リラックス効果のある匂いらしいんだ。

 最初は花束だけにしようかと思っていたんだが、花屋で進められてね。」

 

 エルドさんはそう言って、花瓶に花束を刺し、水を入れ替えに行く。

 

「ありがとうございます!

 水の入れ替えまで…本来は先輩にやらせることじゃないのに…」

 

「病人なんだから、お前はそこで寝てりゃいいんだよ。」

 

 オルオさんはそうぶっきらぼうに言うが、優しさが隠しきれていない。

 

「そうだ、手紙ありがとうね、ノア。あれがなかったらここの場所も分からなかったわ。」

 

「いや、本当に、俺が行くべきところを来ていただくことになってしまって…」

 

「そんなに恐縮しないで。

 私達もノアに会いたかったんだし、早く会えて良かったわ。」

 

 

 俺とペトラさん、オルオさんが話している間に、水を入れ替えてきたエルドさんが戻ってきた。

 さっきまで花瓶に刺さっていたのは、エレン達が持ってきた、黄色やオレンジを基調とした花たちだったが、先輩たちが持ってきてくれたピンクや白を入れた花束が入って、よりカラフルになっていた。

 

「エルドさん…ありがとうございます。

 花束、綺麗ですね。色も色とりどりになって、なんだか調査兵団みたいです。」

 

「調査兵団…か。

 変人の巣窟って呼ばれるくらいだもんな。

 もっとカラフルじゃないと、調査兵団にはなれないんじゃないか?」

 

 エルドさんはそう返してくれる。

 

「また私たちみたいに、お見舞いに来てくれる人達が来るかもしれないじゃない?その時にまた違う色が増えるかもね。」

 

「確かに、そうですね。」

 

 それから俺は今までのことを話して、先輩からも今までの事を聞いて、そして、先輩達は帰って行った。

 

 

 

 

 

 その日訪れたのは、ミーナとトーマスだった。

 

「ミーナ、トーマス!本当に久しぶり!

 最近見かけないから何しているのかと思っていたよ。」

 

 トーマスは、トロスト区で両足を失ったせいで、車椅子で病室に入ってきた。ミーナはそれを押している。

 

「ノア、久しぶり。」「ノア、おはよう。」

 

 久しぶりに見たトーマスはあまり変わらないが、ミーナはどことなく大人の顔つきになったような気がした。

 

「ノア、貴方が生きてるって知って、何処にいるのか探していたの。そしたら、入院してるって聞いたからびっくりしたんだけどね。まさか、トーマスと一緒の病院だとは思わなかったのよ。」

 

「トーマスと一緒の病院だったの!?」

 

「そうなんだよ。僕は1階だけど、ノアの病室は2階だね。」

 

「知らなかった…」

 

 ずっと、リハビリなんかをしていてもトーマスの姿は見かけなかったため、トーマスと同じ病院だなんて、1ミリも思っていなかった。

 

 

 

 

 それから、今の状況なんかをお互いに少し話してから、ミーナが深刻そうな顔でこう切り出した。

 

「突然なんだけど……あのね、私、ノアに言いたいことがあるの。」

 

「なんだ?改まって…」

 

 

「私ね、医療班に移ったの。だから、ノアも最近私の事を見かけなくなったんじゃないかな?」

 

 

「そう、だったのか。

 調査兵団の医療班は特に大変だろう?

 毎回負傷者は大量に出るし、その特性上、最前線について行かなきゃいけない。

 よく、医療班に、それも調査兵団の医療班に移る決心をしたな。」

 

「え、ええ…。調査兵団の医療班は大変でも、巨人と戦うことはない。

 私は巨人と戦うことは恐ろしくてもう出来ないけど、みんなの助けになりたいと思ったから、そこに移ったのよ。

 私は巨人と戦うのは凄いことだと思ってるわ。それも、最前線で1人で巨人を倒していく、ノアのことは、尊敬してる。私は何度も貴方に、直接じゃなくても助けられたもの。

 だから、私の決断を貴方に話しておきたくて。」

 

「そっか、ありがとう。

 ミーナの決断は、自分自身でしたものだ。きっと君にとって良い選択だったんじゃないかな。」

 

「うん、ありがとう…」

 

 ミーナが医療班に移ったことには驚いた。

 人生には何回か決断の瞬間がある。俺の長い長いループの間にも何回もあった。そこで他人に任せるのではなく、自分で決めることが大切だと俺は思っている。

 自分で決めたことなら、その結果が良いものでも悪いものでも、受け止められる気がするから。

 

 ミーナは自分で決断した。その結果は誰にも分からないけれど、彼女自身が決めたことなら何があっても役目をやり通せるんじゃないかな。

 

 

 

「トーマスは、最近はどうしているんだ?」

 

「…もう、ずっとリハビリの毎日だよ。

 ノアと同じだ。」

 

「そりゃ大変だ。

 ずっとリハビリなんて、気が滅入るよな。」

 

「ああ。だけど、何も目標はないけど、早く治して何かしたいってことは思っているんだ。だから、リハビリも毎日頑張ってるよ。」

 

「ああ。トーマスはそうじゃなくっちゃな。」

 

 ミーナとトーマス。彼らは特殊な才能はないが、才能が無くても、分析して、努力して、それを埋めていく才能があった。トーマスなんか、根性は人一倍ある。両足を亡くした後のリハビリなんて、俺のより何十倍も、下手したら何百倍も辛いだろうが、トーマスなら乗り越えられるだろう。

 

 

「これ、私たちから。」

 

 そう言って、ミーナが俺に渡したのは、花束。図らずとも、エレン達や先輩達が持ってきてくれたものとは違う色である、赤を基調とした花束だった。

 

「ありがとう!

 ミーナもトーマスも、大変なのに、わざわざ…」

 

 

「いいのいいの、元々ノアを探していたし…

 それより早く良くなってね!

 そうじゃないと、調査兵団全体の指揮に関わるわ。」

 

「え、流石に大袈裟すぎないか…?」

 

「大袈裟じゃないよ。

 ノアの評判は上々よ。皆貴方の名前を聞いたら、ああ、リヴァイ兵長と同じくらい強いひとか。ってなるもの。」

 

「それは言い過ぎだと思うけどな。」

 

 さすがにリヴァイ兵長と同じくらい強い訳では無いと思う。

 そこはどうしても訂正したかった。

 

 それからトーマスとミーナとも話して、そして解散した。

 

 

 

 

 

 それから数日後の夜。おれの病室にはまたもや来訪者が来ていた。

 アルミンだ。

 

 珍しいことに、今回はアルミン1人だけがこの部屋に来ていた。

 

 

 コンコン

 

 俺は突然のノックの音にびっくりしたが、

 

「誰だ?」

 

 冷静にそう聞いた。

 

 

 

「ノア、驚かせてごめんね。僕だよ。アルミンだ。

 入っていいかな?」

 

 アルミンか。先週お見舞いに来たばかりだ。何か話があるのだろうか?

 

「どうぞ。」

 

 そう許可を出したらアルミンの金髪が見えた。

 病室は暗いためあまり表情は見えないが、確かにアルミンだ。

 

「ノア、君に聞きたいことがあるんだ。」

 

「何を聞きたいんだ?」

 

「君が、隠していることについて。

 この前リヴァイ班の104期皆でお見舞いに行った時、何か隠してたよね?」

 

 あれの事か。俺の記憶と、マーレの話は流石に同期

には話すことは出来ない。

 俺がお前らを助けるために何回もループしてるなんて言えないし、そもそも自分の死に際を聞きたいやつなんていない。俺がループの事を話すってことは、それはつまり、彼ら自身の死んだ瞬間も聞いてしまうってことだ。

 俺だって、どれだけ頑張っても死んでいく仲間に絶望だってした事がある。

 彼らがこれを受け止められるかも分からないのに、教える訳にはいかない。

 

 それに、マーレだ。このことは二ファの言う通り、ここで知るべきことじゃない。

 ……俺が敵の主力だったって聞いたら軽蔑されるかもしれない。それもあって俺は話してこなかった。

 

 

「記憶のことは、いいよ。きっと団長からの作戦の話で聞かせてもらえるだろうしね。

 それとは違う、もう1つの秘密のことだ。

 何か、隠していることがあるよね?」

 

 アルミンはなんでもお見通しなのかもしれない。

 

 それでも、マーレの事だけは言う訳には…

 

 

「ハアー…

 黙りもいい加減にしてよ。

 何か隠していることは分かってるんだ。

 そもそも次の作戦は、きっと巨人達との最終決戦になるはずだ。その前に聞いとかなきゃ…。もしかしたら、その情報が僕たちの為になるかもしれないじゃないか?

 君が話してくれることで、僕たちの運命は変わるかもしれないんだ。」

 

 俺は、普段見ないアルミンの表情にびっくりしていた。暗闇の中で見えないと思っていたアルミンの表情は、彼が近づいて来たことで見えるようになっていた。

 

 もしマーレの事を話したとして、俺が軽蔑され、連携が取れなくなったら?今回の作戦を乗り越えれば、平和だと考えていたところに、他国からの侵略ということが分かってしまうと、指揮も下がる。それに、アルミンの作戦に、支障が出たら?

 

 

「お前らの運命が、悪い方向に変わるかもしれないじゃないか?」

 

 

「ノア、何を怖がっているのかは分からないけど、少なくとも僕は、その情報を使って敵を倒すことに注力するつもりだ。何か悪いことに使う気はないよ。」

 

「違う、そうじゃない。

 お前たちがその情報を知って、それでも今までと同じように動くことが出来るかが問題なんだ。」

 

「今までと同じように…?

 そんな必要はないと思うよ。そもそも敵は僕たちの今までを超えてくるような、敵だ。

 僕たちが変わらなきゃ、敵を上回ることは到底できない。

 それにノア、君の目的は…僕たちを生かすことでしょ?それなら尚更、僕たちに隠し事はしない方がいいんじゃない?その情報が僕たちの生存率を上げるかもしれない。

 いつだって戦いの場では情報の多い方が勝つんだ。

 僕だけにでもいいから、教えてくれないかな?」

 

 

 戦いの場では、情報の多い方が勝つ。

 確かにアルミンの言う通りだ。

 マーレの事を話してどうなるかは分からないが、きっとアルミンはこの情報を上手く使ってくれる。

 ミーナだって、勇気を出して俺に決断を話してくれた。俺が彼らに軽蔑されるんじゃないかって怯えてる場合じゃないよな。

 

 俺は、アルミンにマーレの事を話した。

 大体は団長と兵長に言ったことと同じだ。

 

「そうか、外の世界には、海がやっぱりあって、それを超えた先には国があって、僕たち以外にも多くの人が住んでいるんだな。

 しかし前世を覚えているなんて、信じられないけど、もっと信じられないのは、ノアがベルトルトやライナーと同じように、この壁内に侵略しようとしていた敵だったってことだ。

 ……今はそんなことはないよね?」

 

「もちろんだ。

 そもそもこの記憶はお前らがクーデターに奔走してた時、俺が寝ていた時に思い出したものだ。その前は全くそんなこと知らなかった。

 ……信じてくれ。」

 

「ノア、君の表情に嘘はないように見えるよ。

 信じるよ。

 マーレ、か。君は、その戦争とやらに参加してたってことでしょ?

 ってことは、人を殺したことがあるってこと?」

 

「ああ、そうみたいだ。

 銃撃戦の中、人を殺したことが、ある。

 お前らは軽蔑するだろうな。」

 

「いや、しないよ。

 この前のクーデターの時、僕も人を殺したんだ。

 それに、銃を持つ部隊とも戦った。

 君と同じだよ。」

 

 そうだったのか……。アルミンも、人を殺さなければいけない状況に陥ったことがあるんだな。

 

「そう…か。この情報が役に立てれば良いけどな。」

 

「いや、何もかも、役に立たなくても知っておくに越したことはないよ。

 

 …………忘れてたけど、花束だ。もう1杯貰ってるだろうけど、これくらいしか思いつかなくて…。」

 

 アルミンは窓の前に飾ってある花瓶を見てそう言った。

 

「もうエレン達と来た時に貰ったから、いいのに。」

 

「いや、僕がやりたくてやった事だ。お見舞いにはお見舞いの品がないと。

 もちろん君の隠していることを探ろうと思って来たのは事実だけど、君の事を心配しているのは本当だよ。

 

 それじゃあ僕はこれくらいで。

 真夜中にごめんね。

 リハビリ、頑張ってね。」

 

「ああ、アルミン、ありがとう。

 お前も訓練頑張れよ。」

 

 そう言った後、アルミンは病室を出ていった。

 花瓶には、俺が昔好きだった、あの青い野花が刺さっていた。ちまちましてて可愛いんだよな。

 アルミンがおれの好きな花を覚えていることに驚きだった。俺は1回もあいつに言ったことはなかったのに。

 

 

 

 俺が退院する頃には、最初に来てくれたエレン達なんかが持ってきた花は枯れてしまったが、それでも色とりどりの花が花瓶に刺さっていた。

 沢山の人が、見舞いに来てくれたり、見舞いの代わりに花を送ってくれたりしたからだった。

 

 感謝でいっぱいだった。

 

 まだ枯れていない花は、病院から持ってきて、今も自室の花瓶に飾ってある。そこには、個性がありながらも、全体として綺麗でカラフルな色合いになっている花たちが刺さっている。

 

 

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