原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話 作:蘭 ノイ
入団から3年、もうすぐ訓練兵団を卒業する俺達に、上位成績10名が発表された。
1位、ミカサ・アッカーマン
2位、ライナー・ブラウン
3位、ベルトルト・フーバー
4位、アニ・レオンハート
5位、エレン・イェーガー
6位、ジャン・キルシュタイン
7位、マルコ・ポット
8位、コニー・スプリンガー
9位、サシャ・ブラウス
10位、クリスタ・レンズ
残念ながら、俺とアルミンは入らなかった。俺は手加減してたのが100%の敗因だが…
どうせ入るのは調査兵団なんだから、成績なんて関係ないんだ!(ヒラキナオリ)
…
解散式の夜……
「ミカサ、エレン、おめでとう。って言っても、2人は憲兵団には行かないんだろ?」
「私はエレンに着いていく。」
「ああ、俺は調査兵団に行く。」
「僕もだよ。」
「…俺もだ。あの時の約束は違えないよ。」
俺達は運命を共にしている。
…
「ジャンも!おめでとう。これで、ジャンは夢だった憲兵団に入れるんじゃないか?良かったな。」
「夢なんて、そんな大層なもんじゃねえよ。ただ、自分が安全に暮らしたいだけだ。」
「そうか。でも、おめでとう。」
「俺はてっきりお前も10番以内に入ってると思ってたがな。手ぇ抜いたか?」
「まあ、そんなところ。調査兵団に入るって決まってるのに、せっかく憲兵団に入れる椅子を1個潰す訳には行かないからね。」
「お人好しだな。」
「体力温存できたし、自分のためだよ。」
今日は解散式の夜だし、もうすぐ俺達は兵団選択をして、容易に会えない立場になるかもしれない。
その前に、俺は言いたいことがあった。
「……ジャン、あのさ、もう会えないかもしれないから、言っておきたいんだが……
本当にお前は憲兵になりたいのか?
あれだけ立体機動訓練、楽しそうにやってたのに、披露する場所が無くてもいいのか?
それに……頭の回るお前なら、分かるはずだ。人類がこのまま壁に引きこもっていても、巨人が攻め来た時、為す術なく殺されるだろうことを…。」
ジャンが兵団選択のことで悩んでいたのは知っていた。だから、少しでもその背中を押せたらと思っていたが、お節介だったようだ。
ジャンは怒っているような、泣きたいような、落ち込んでるような、複雑な表情をしていた。
「お前に俺の何がわかるってんだよ!
俺だって、お前らみたいな確固たる目的があったら頑張れてたかもしれねえ。
調査兵団に入ることも怖くなかったかもしれねえ。
でも、俺は、失いたくないんだ。
仲間も、自分も。」
「そうだよな、悪かった。出過ぎたことを言った。お前が考えて、お前が決めるべき事だ。」
「……ああ、そうするよ」
命は重い。
失うことの辛さを知っていれば尚更。
…
俺は、また悪夢を見た。
104期訓練兵団の仲間と、駐屯兵団の人達が、次々と、壁内に入ってきた巨人に食べられる光景だ。
ジャンが先頭を切って立体機動で進んでいく場面。
ミカサが巨人に前後を挟まれて、食われそうになる場面。
エレンとアルミンが窮地に陥る場面。
ひとつの気味悪い映画を見たような感じだった。
沢山の人が死んだ。俺は何をやっていた?
「マルコ……」
…
…
(ジャン視点)
「マルコ……」
おいおい、俺はマルコじゃない。ジャンだ。
あの後さすがに言いすぎたかと思い心配になって、ノアのところまで来ていた。
さっきは兵団選択の事がまだ決まらないことが不安で、どうにかしてた。
イライラして、ノアに当たっちまった。
あんなことを言ったことを、今更後悔していた。
初日に人外壁ジャンプを俺らに見せた時から、俺の二段ベットの上はあいつの場所になっていた。
あいつは珍しく早寝していて、マルコ…なんて呟いてた。
白い髪と白い肌が、月明かりに照らされてさらに白く見えて、こいつ、生きてるのか?なんて思ってしまった。
「マルコ………ごめん。おれのせいだ」
こいつは何をそんなに謝っているのだろうか。マルコの大切なものを何か壊したりしたのだろうか?
謝ることは叶わなかったので、今日はお暇して、今度謝ろう。
訓練兵団に3年間居て、分かってたはずだった。
明日また会えるかは、分からないということを。
自分と相手に今度が来るかは、分からないということを。
…
翌日、俺達は壁の上で固定砲整備をしていた。
すると、サシャが突然肉を取り出した。
肉なんて何年ぶりに見ただろう。
前世では何百円で売っているあの肉たちも、こっちになると死ぬほど高級品だ。少なくとも何千円はする。
「サシャ、そんなもの、どこで…」
「上官の保管庫から、貰ってきました…ジュルリ
みんなで食べましょうよ!」
「貰ってきたって、…お前、盗ってきたのか!?おいおい、勘弁してくれよ…」
「いいじゃないですかー。土地を奪還したら、これからお肉なんて何個も食べられるんです。」
そうか。そうだよな。
「俺は…食べるぞ。」
「俺も」
「俺もだ」
「私も!」
「僕も!」
104期生の心がひとつになった瞬間のように思えた。
…
ドォン!!
また、あの音だ。
花火のような音。
心臓に響く音。
前より近い距離かもしれない。
音とともに発生した眩しい光に目がくらんで、一瞬目の前が真っ暗になった。
その後、俺達は信じられない光景を目にした。5年前に現れた、超大型巨人が突然現れたのだった。
プシュー
自転車から空気が抜けた音みたいな音を出して、超大型巨人は蒸気で壁上の人々をぶっ飛ばす。
俺達は咄嗟に立体機動装置を使って壁に張り付いて助かったが、助からずに落ちていった人もいた。
いきなり始まった実践に104期訓練兵達は混乱していた。
ノア以外は。
…
俺は巨人の姿を認めるなり、項に飛び込んで行った。
パシュッ シュゥーン
立体機動の音が鳴り響く。
あいつ、大丈夫なのか?という、下の兵士たちの心配そうな気配は俺も感じていた。
が、ここで出ていかなきゃ、兵士になった意味が無い。
こいつらは5年前の惨劇を起こした張本人だ。
絶対に許さない。
いや、許されちゃいけないんだ。
カキーン!カキーン!
ブレードが弾かれた音が2回分、聞こえた。
訓練兵程度の斬撃なんて通さないらしい。
いつの間にか、エレンも攻撃に参加していて、ほぼ同時に項を削ぎ落とそうとしたが、ブレードを弾かれたらしかった。
超大型巨人はさすがに項を狙われたことに焦ったか、姿をくらました。
前と同じように、大量の蒸気と共に。
…
あれから訓練兵達は集められ、精鋭班と、それ以外に分けられた。
精鋭班では無いものとして集められた俺達は、前線の中衛の位置に配置されることになった。
おいおい、まだ訓練兵なのに前線なんて、上は何を考えているんだ。
あの調査兵団に入るような変人の新人でさえ初陣は3割死ぬんだぞ。
俺達第104期訓練兵は、今日何人生き残れるのだろうか。
…
少しだけ俺にも状況が理解出来てきた。
調査兵団は、今日壁外調査に出向いているらしかった。
巨人殺しのエキスパートがいないんじゃあ、訓練兵が出なくちゃいけないのも、納得ではあるが、せめて後衛がベストなんじゃないのか?
さらに精鋭班としてミカサもいない状況だ。
ミカサがいるといないじゃ大違いだ。主に、俺たちの心象が。
もちろん、他の奴らが使えないってわけじゃない。
平常時ならば。
しかし、本物の巨人を前にして、怖気づかないと言える者はミカサくらいしかいない。
命を預けられる相手が1人でもいたら、安心だろう。
……上は、何を考えているんだ。
…
一応班分けの時間があって、俺にも班が割り振られた訳だが、いくら俺でも、班の奴らのことを考えていれば、他の奴らを助けることが出来なくなってしまう。
俺の目標は兄を食った巨人の討伐だが、訓練兵団にいて、色んなやつがこの世界で生きているということを知って、俺は、こいつらが死にかけている時に助けられるくらい強くなろうと決意していた。
ここでの巨人との戦いで、同期、特に俺の守りたいヤツらは絶対に死なせない。
大抗議と大口論の末、俺は、一人班という名の単独行動を許された。
最終的に、お前が死んでも知らないからなというような諦めの口調で許された遊撃部隊だった。
俺に何の期待もされてないことから通った遊撃部隊だ。
これだけやったからには、巨人を沢山殺さねば。
俺はこの時、人を救うということがどれだけ難しいのかを分かっていなかった。
(7/26に編集しました)