原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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5話 巨人たちの宴(トロスト区攻防戦1)  

 

 

 

 トロスト区でまた壁が破られた。

 ミカサは精鋭班として住民の救助に当たっている。

 3年間共に苦楽を分かちあった仲間を、絶対に死なせる訳には行かないと思った俺は、1人での遊撃部隊の許可を取ったのだった。

 

 

 早速、俺はトロスト区の超大型巨人が現れた付近を狙って立体機動装置で進んでいた。

 スピードよりも、ガス量を気にして進んだ。

 この巨人たちに勝とうと思うんだったら、長期戦が予想される。ガス、ブレードはいくらあっても足りないだろう。

 

 まだ住民の避難はやはり終わっていないようで、ところどころ逃げ遅れている住民を比較的安全な場所まで誘導してからまた進む、ということを繰り返していた。

 

 今のところ同じ訓練兵団104期の仲間が窮地に陥っているところは見ていない。

 が、きっと今もどこかで戦って、誰かが傷を負っているか、死んでいるんだろう。

 それくらい、巨人と戦うということは受ける被害が大きいんだ。

 

 俺は、偉そうに仲間を助けると言って遊撃部隊として1人出てきたが、体は一つだけだ。

 トロスト区全域を回って、窮地に陥っている仲間をその都度助ける、というのは夢物語だったのだ。

 

 俺は、ようやく自分の考えの間違いに気づいたところだった。

 

 

 

 巨人は今も超大型巨人が開けた穴からこのトロスト区内に入ってきていることだろう。

 せめて、これから入ってくる巨人によって仲間たちが傷つけられ、食われることの無いように。

 

 俺は、超大型巨人が開けた穴の周辺に向かった。

 

 

 

 その頃、エレンやアルミン達の班は、上の司令通り、中衛を担っていた。

 

「……アルミン、こりゃあいい機会だと思わねぇか?調査兵団に入団する前によ、この初陣で活躍しとけば、オレ達は新兵にして…

スピード昇格間違いなしだ!!」

 

 このエレンの言葉で奮起したアルミン、トーマス、ミーナ、ナック、ミリウスの5人は、エレンに付いて行くように、立体機動装置の速度を早めて、巨人たちのいる方向へ向かっていった。

 

 

 その時、

 

 

「奇行種だ!全員止まれ!」

 

 そうエレンが叫んだ直後、一体の奇行種が高い塔にぶつかった。

 

 

 

 そして、塔からそいつが顔を出すと、

 そこには――

 

 

 トーマスを口にくわえた巨人のおぞましい顔があった。

 

 もう無理だ、トーマスが食われる。

 現状を理解できない頭で、その場にいた全員が、その未来は容易に推測できた。

 

 そう思った瞬間。

 

 

 パシュッ、シュゥーン

 立体機動装置の音が響いて、そいつの腕を削いだ奴がいた。

 

 同じ104期訓練兵の、二ファだ。

 

 

 腕を削いだ後、すぐにトーマスを助けようとした二ファだったが、その努力も虚しく、腕を削いだ衝撃で巨人は口を閉じ、トーマスの足は切断された。

 

 エレン班全員が信じられないものを見ているような気がして、動けないでいた中、

 アルミンの隣ではエレンが「よくもトーマスを」と言ってその奇行種を追うために、出せる最大の速度で追いかけているところだった。

 

「エレン、単独行動は危険だ!」

 

 そう仲間は叫んだが、エレンは聞く耳を持たず、巨人を追って、もう遥か先へ行っていた。

 

 二ファは両足がちぎれたトーマスを背負ってこちらに来るところだった。

 

 一瞬の間、エレン班の全員が考える。このまま、ここで待ってトーマスの本部帰還を助けるべきか。それとも、単独行動をしているエレンを助けるべきか。

 しかし、その結果はすぐ出た。トーマスには二ファが付いている。本部への退路は巨人も少ないし、二ファだけで大丈夫だろうと。

 そう思って動こうと思った瞬間。

 

「止まりなさい!」

 

 二ファの言葉に全員がそれは間違いだと気づいた。

 

「周りに班もいない中、全速力で奇行種を追っているエレンに今から行って追いつけると思う?

 それに、この辺はもう前線みたいなものよ。エレンのことだけを考えて全速力で突き進めるほど巨人達は少なくない。

 つまり、このまま行ったらあなた達は死ぬ。」

 

「でも……

 でも、だからってエレンを見捨てるっていうの!?」

 

 アルミンが叫ぶ。エレンの幼馴染であり、親友のアルミンは、エレンが心配でならなかった。

 しかしながら、自分が行ってもただ巨人に食われるだけというのは、さっきの場面で理解した。

 アルミンは、先程トーマスの両足を巨人が食った場面が頭の中で再生されて、今にも恐怖でどうにかなりそうだった。

 このまま前線を上げても、さっきみたいに一瞬で食われるだけだ、と。

 しかし、頭では分かっていても、エレンを見捨てられるほど心が強いわけではない。

 自分ではどうしようもない状況に、アルミンは二ファの答えを待つばかりだった。

 

「このまま君たちが行けば、ということよ。

 私なら、エレンより早く立体機動装置を扱えるし、巨人とも充分戦える。

 時間が惜しいから、私はエレンの援護に行くわ。

 あなた達は本部にトーマスを送り届けて、撤退して。」

 

 二ファは、自分の言いたいことを全部言って、すぐ立体機動装置で飛び立って行ってしまった。

 

「ちょっと、二ファ……!待ってよ!君も単独行動は危ないだろ!」

 

 アルミンの叫びは二ファには届かなかった。

 

 

 

「二ファって…あんなやつじゃ無かったよな?」

 

 ナックが呟く

 

「少なくとも、俺たちの知っている二ファは、エレンより立体機動装置の扱いは下手で、巨人の討伐もまあまあだったはずだ。」

 

 ミリウスもナックに同意するように呟く。

 

「二ファに思うことがあるのは僕もだけど、ここは戦場だ。トーマスのためにも早くこれからの行動を決めるべきだ。」

 

 アルミンが話す。

 

「「そうだな、悪い。」」

 

 残されたアルミンたちは、二ファの言う通り撤退するのか、どうするかということを早急に決める必要があった。

 

「アルミン……どうする?戦略とか、判断とかはこの班の中でアルミンが1番だと思うわ。あなたが決めて。」

 

 ミーナの言葉に他の2人も賛成する。トーマスは出血が酷いので、一応止血はしたが、まだ気を失っている。

 

「トーマスもこのままじゃ命が危ない。

 エレンのことは……心配だけど、だからって僕達が行ったって、巨人に食われるだけだ。二ファに任せよう。

 僕達は、トーマスを本部まで送り届けて、適切な治療をしてもらうんだ。」

 

「「「分かった。」」」

 

 そうしてアルミン達は本部へ戻る、撤退の道を選んだ。

 

 

(二ファ視点)

 

 

 その頃、二ファは全速力でエレンを追いかけているところだった。

 自分の腕に自信はあったつもりだが、前より訛っているらしかった。

 

 しかし、エレンの行った方向にいくら行っても、彼を見つけることは出来なかった。

 

 

 エレンは、巨人に食われたのだろう。

 

 

 そう考えて、二ファはエレンを探すことを諦めたのだった。

 

 

(ジャン視点)

 

 

 一方その頃、104期訓練兵達は屋根の上に留まっていた。

 ガスやブレードが補給されずに、立ち往生しているのだった。

 

「おい、ジャン!どうすんだよ」

 

「どうもこうもねえよ。

 やっと撤退命令が出たってんのに、ガス切れで壁を 

 登れねえ。そりゃ死ぬんだろうなあ、全員。

 腰抜け共のせいで。」

 

 補給班は戦意喪失して本部に篭城していたのだった。

 ジャンはこの状況に焦ってはいたが、本部へのルート、そして、本部の中にいる巨人たちに勝つには、どう見ても戦力が足りないのは明らかだった。

 

「はあーつまんねえ人生だった。こんなことだったらいっそ言っとけば…」

 

 

 

「やりましょうよ、みなさん!さあ、立って。みんなが力を合わせれば、きっと成功しますよ!わたしが先陣を引き受けますから。」

 

 サシャが発破をかけてはいるが、この絶望的な状況で、自ら地獄に足を踏み入れるものはもう誰一人として居なかった。

 

 

 

「みんな!」

 

 そこへ、アルミンたちの班が現れた。

 両足を失ったトーマスを見て、誰かが悲鳴をあげる。

 

「アルミン!」

 

 ジャンはひとまずアルミンたちの命が無事であったことに安堵した。

 

「無事だったんだな。」

 

「ジャン!この状況は…撤退命令が出ただろう?どうして、壁を登っていないんだ?」

 

「補給班の腰抜け共のせいで、ガス切れだ。壁を登らないんじゃない、登れねえんだ。」

 

「……そうか。状況はわかった。ともかく僕達の班はトーマスを送り届けなきゃ行けない。そうして、援護を呼んでくるよ。」

 

「ああ、頼む。あと、もし壁を登る分より多くガスを持ってるやつがいたら、少ない奴らに分けてくれないか?」

 

 ジャンは、アルミンの登場に、少しだけ希望を見出していた。

 

「勿論だよ。」

 

 

 アルミンとは、ガスを分けてもらった後に別れた。

 アルミンたちから貰えたガスは雀の涙程だったが、それでも今の訓練兵たちにとっては金銀の財宝に等しい価値のあるものだった。

 

 アルミンたちの援護を待って、本部に突入しよう。

 そう思って、ジャンたちは、しばし援護を待っていた。

 

 

(ノア視点)

 

 

 ノアは一通り穴から入ってくる巨人を駆逐し続け、もうそろそろ仲間の様子が気になる頃だった。

 まだ巨人たちが入ってくる様子はあるが、それでも数は減り始めていた。

 仲間の近くにいないと出来ないこともあるかもしれない。そう考えて、ノアは同期たちを探しに行くことにした。

 

 

 

 最前線から後退していくと、屋根の上に立っている人影がポツポツと見えた。

 

 同期たちだ!

 ジャン、コニー、サシャ、アニ、ベルトルト、ライナー、アルミン。そして、ミカサ。無事だったんだな。

 

 ん?ミカサ?

 ミカサは後衛だったはずだ。何故ここにいる?

 

 それに、巨人を倒すでもなく、こんな戦地で、仲良く屋根の上で雑談しているというのも、変な話だ。

 撤退命令が出たなら壁を登るだろうし、何も命令がないなら巨人たちを倒すために駆け巡っているだろう。

 

 なにか、あったのか?

 

 エレンが居ないことも、なんだか悪い予兆のようなものを感じる。

 

 

「あ、ノア!無事でよかったよ!」

 

 アルミンがノアを見つけて叫ぶ。

 

 ノアはその声に手を挙げて反応し、アルミンやミカサ、ジャンたちが話し合っているところに着地した。

 

「状況は、どうなってる?なんでこんなとこで話しているんだ?」

 

 1番聞きたいことだった。

 

「補給班が戦意喪失して本部に立てこもっているせいで、補給が途絶えた。俺たちは撤退命令が出たが、ガス欠で壁を登れない。そこにガスが残ってたアルミンの班が内門に行って、援護を連れてきた所だ。」

 

「援護って……ミカサだけ?」

 

「キッツ司令に話を通してもらうように言っても、忙しいって追い返された。

 上としては……死地に仲間を送り込んでこれ以上死なせたくはないんだろう。

 援護要請は……却下された。」

 

「だから、私が付いてきた。元々屋根上に集まっている人達は何かあったのだろうと気になっていた………から、アルミンに提案した。」

 

 上は、無能か。兵団も腐ったものだな。

 

「そうか。そういうことなら仕方がない。ガス切れって言ったって、まだ残ってるんだろ?本部までは持つか?」

 

「持つはずだ。最短で行けば、な。」

 

 本部までの最短ルートである大通りを見ると、巨人がうようよと彷徨いているらしい。

 俺が穴に着く前で、取り逃した巨人たちらしかった。

 

「巨人か…巨人は、俺とミカサでほぼほぼ殲滅できるだろう。

 あとは…同期たちがパニックにならなければ、本部まで進めるかもしれない。

 殲滅できるったって、俺らの同期たちが通る前に全て削ぎ終わってるってことはないだろう。横の仲間が巨人に食われたって、前に進まなきゃいけない。

 その覚悟が今のこいつらにあるようには見えないが…」

 

 俺らの近くにいる、成績10番以内と、アルミン以外は、この地獄に疲弊しきって、現実逃避をしているものさえいた。

 

「そうだ。この状況がどうにかならねぇかってことをお前が来る前に話してたんだ。」

 

「そうか…。」

 

 人の心を変えるのは容易ではない。己を奮い立たせる何かがないと、人は立ち上がれない。

 

 

「ところで、エレンは?アルミンの班だったろ。」

 

 もう1つ、気になっていたことを俺は聞いた。

 

「エレンは…トーマスの両足を食いちぎった奇行種を、単身追いかけて、それ以来見ていない。」

 

「見ていないって………、アルミン、お前がエレンを見殺しにしたってことか?信じられないが。」

 

 俺はエレンを見殺しにするアルミンなど、到底思い浮かべられなかった。

 

「いや、そうじゃないんだ。僕達はトーマスを助けるために撤退したけど、二ファがエレンを追って、援護しに行ったはずだ。」

 

 二ファ、か。あいつは訓練兵団で手を抜いていたやつだった。エレンにも容易に追いつけるだろうし、巨人とも迷いなく戦えそうだ。

 

 ちょうど二ファの話をしていたら、二ファがこちらへ向かって飛んできた。

 エレンは……いないようだ。とても、嫌な予感がする。

 

「二ファ!君は無事だと思っていたけど、

エレンは…?」

 

 アルミンが問う。

 

 

 

 

 

「エレンは恐らく……死んだよ。」

 

「あいつは私が追いつかないくらい早く飛んで、巨人と戦って、きっと食われた。私は全速力を出したが、エレンの影すら見えなかったんだ。周辺を探したが、彼の痕跡は見つけられなかった。」

 

 

 

 

 

「いま、なんていった?エレンが、死んだって?巨人を駆逐してやるって叫んでた、あいつが?」

 

 俺は信じられなかった。俺が門の前で巨人を殺している時に、あいつは、俺の取り逃した巨人に殺られていたって言うのか?

 

 

 

 おれは、また、せんたくをまちがった?

 

 

 

 

 軽い気持ちで考えていた。なんだかんだ言って、エレンもミカサも10番以内に入ったし、アルミンも判断力はピカイチだ。3人とも、生き残るんだと思っていた。

「でも、まだ死んだかは分からないんでしょう?見つからなかっただけで。なら、探しに行くべき。」

 

 ミカサが冷静に見えるような顔で、ハイライトの消えた目を二ファに向けて言った。

 

「でも、あの最前線まで行く余裕も、体力も、君には無いんじゃないかな。」

 

 二ファがそんなミカサにも怖気づかずに言う。

 

「……」

 

 現実を突きつけられて、幾許かはミカサは冷静になったようだ。

 

「でも…お前がもっと早く行けば、エレンは助かったんじゃないのか?」

 

 俺は、今からじゃどうしようもない、エレンの死、という問題に、どうにかこうにか自分の選択は間違っていなかったことを証明する答えを求めていた。

 

「…じゃあ聞くけど。その時君は何をしていたの?私が君の言葉をそのまま君に聞きたいけどね。

 あなたが行けば、エレンは助かったんじゃない?」

 

 全くもって正論だった。

 

「悪かった。自分の責任を、お前に押し付けようとしていた。俺は、間違ったんだな。そうだよな。

 

 ハハ、アハハハ。

 

 …3年間、何のために巨人を殺す訓練してたんだ。」

 

 家族が殺されて、幼馴染が殺されて、このまま黙っていられるかよ。

 

 俺は、屋根の上を歩いて、104期訓練兵達の中心の屋根で止まった。

 

「俺が、本部までの道を切り開く。巨人は、俺が、全部駆逐してやる。お前らはここで、俺が巨人を全部駆逐するまで、突っ立って待っていればいい。」

 

 俺は、巨人を駆逐すること以外が全て、どうでもいいような気がしていた。

 俺の、命でさえ。

 

 

 

(ジャン視点)

 

 

「お前らはここで、俺が巨人を全部駆逐するまで、突っ立って待っていればいい。」

 

 その一言を最後に、ノアは屋根から飛び降りて立体機動装置を展開して飛んでいってしまった。

 

「おい、あいつ…一人で行く気か!?無茶だ……っ」

 

「私も行く。」

 

「ミカサ!?無茶だよ!」

 

 ミカサは、ノアが飛び立ったその場所まで、ゆっくり歩きながらみんなに訴えかけた。

 

「私は、強い。あなた達より、強い。すごく強い。ので、私はあそこの巨人どもを蹴散らすことが出来る。あなた達は腕が立たないどころか、臆病で腰抜けだ。とても残念だ。

 ここで指をくわえたりしてればいい。

 くわえて見てろ。」

 

 そう言って、ミカサまでそこから飛び立ってノアの後をついて行ってしまった。

 

 

「…………ええい、しょうがねえ、

 ……おい、お前ら!お前らは仲間に、1人で戦わせろと学んだか!?お前ら、本当に腰抜けになっちまうぞ!」

 

「……そいつは心外だな。」

 

 ノアとミカサの後ろ姿、そして、ジャンの言葉を受けて、成績10番以内のもの達が続々と動き出す。

 

「やい、腰抜け、弱虫、阿呆!」

 

 サシャは語彙力のない、サシャにできる最大限の罵りで、発破をかけた。

 

 ジャンの言葉に続き、成績10番以内のもの達まで動き出したことで、他の訓練兵の心にも火がついたようだった。

 

 

 

「あいつら、畜生……やってやるよ!」

 

「「「「うぉぉおおおおおお!!」」」」

 

 

 




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