原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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6話 補給作戦(トロスト区攻防戦2)

 

 

 俺はこの力があれば、なんでも出来ると思っていた。

 が、結果はどうだ?俺の取り逃した巨人が、エレンを食った。

 

 訓練兵団にいて、いつの間にか俺の目的は、同期の仲間を守ることに変わっていた。そして、そのために巨人を倒す力を身につけるために、3年間、一生懸命やってきたつもりだった。

 

 その結果が、これだ。

 兄の時と同じ。また、選択を間違った。あの時に戻れれば……、なんて考えてもしょうがない。

 

 

 そう考えている間にも、俺は巨人の項を削いでいた。

 

 今は、本部への道を切り開くことを考えよう。俺のお粗末な発破について来るやつは、ほぼ居ないだろうが、あとはジャンがどうにかしてくれるだろう。

 

 俺は、冷静じゃない頭で、冷静らしいことを考えていた。

 

 また、項を削ぐ。

 

 とにかく巨人を殺せば、あいつらは助かるはずだ。エレンもきっと生きている。

 

 1体、また1体と巨人を倒していく。先程まで壁に空いた穴周辺で集団の巨人相手に戦っていた俺にとって、1体1の巨人との相手なんて作業に等しかった。

 

 しかし、俺も補給物資の量が厳しい。ガスはもう底を付きそうだった。ブレードもボロボロだ。

 

 でも、こういう終わり方も良かったのかもしれない。最後にみんなの為に死ねるんだ。意味のない死よりは、有意義だろう。

 そう思って、ガスが尽きるその時まで、俺は、巨人の項を削ぎ落としていた。

 

 そうして、ガスが尽きて、俺は足から巨人に食われた………はずだった。

 

 

 ドォン!

 

 またこの音だ。これはさっき超大型巨人に会った時より近い。

 俺の近くで、超大型巨人が現れたのか?

 やめてくれ。俺が命をかけて守った命を、簡単に屠らないでくれ。

 

 そう思いながら、

 そして、ちぎれたはずの両足の痛みが引いていくのを感じながら、

 俺は、深い眠りについた。

 

 

(アルミン視点)

 

 

 あの後、ノアとミカサは、宣言通り、本部へのルートにいる巨人たちを端から端まで駆逐していった。

 

 あれだけ僕たちが手を焼いていた巨人たちを、簡単に倒していく光景は、巨人たちの所業より、どこか恐ろしかった。

 

 僕は、自分の幼馴染達の、普段見ない顔を見て、畏怖していた。

 

 しかし、ミカサは飛び出して行ったのはいいが、ガスを吹かせすぎだ。このままでは、ガスが尽きる。

 そう思った瞬間、ミカサは減速して、ミカサの体は屋根に叩きつけられ、その下に落ちていった。

 

「ミカサ!」

 

 僕は咄嗟に立体機動装置の軌道を変え、ミカサの方へ駆けつけた。

 

(三人称視点)

 

 

 ミカサが屋根に叩きつけられた。

 アルミンが立体機動装置の軌道を変えてミカサの方向へ向かったのを見て、本部に一直線に向かっていたコニーは飛びながら、ジャンに話しかける。

 

「ジャン!お前はみんなを先導しろ!俺がアルミンに付く!」

 

「いや俺もっ!」

 

「何言ってんだ!巨人はまだいるんだぞ。お前の腕が必要だろうが!」

 

 コニーも、ミカサとアルミンの援護に駆けつけた。

 ジャンも援護に行きたがっていたが、コニーが諌めた。

 

ドォン!

 

 その時だった。腹の底に響く音がして、雷が見えたのは。

 

「また超大型が現れたのか!?」

 

 しかし、いくら経っても、何が起きたのか、分からなかった。

 

 雷の落ちた場所には、見た限り超大型巨人は現れていないようだった。

 

 

 

 アルミンはミカサの落ちていった場所へ、無我夢中に向かう。

 道に蹲っているミカサを見つけるなり、アルミンは素早く抱えて屋根の上へ連れていった。

 

「ミカサ!怪我はない?」

 

 一瞬後に遅れて来たコニーも到着した。

 

「アルミン、ミカサ、無事か?」

 

 

(アルミン視点)

 

 ミカサの話によると、15メートル級の巨人2体に挟まれて、食われそうになったところを、挟まれたと思っていた2体の巨人同士が、ミカサに目もくれず、戦い始めたので、助かったらしい。

 

 巨人に攻撃する巨人?聞いたことがない。

 

「奇行種だろ。そう思うしかねえ。」

 

 コニーはそう言うが、奇行種の範疇を超えている、と僕は考えた、が、まずは、ミカサの空のガスをどうにかしないと!と思い、自分のガスをミカサに差し出した。

 

 

 

 僕は自分のガスをミカサに全てあげてしまったため、屋根の上で救援を待とうと思っていたが、ミカサが自分を連れていく、と言って譲らなかった。

 

 また、僕は足手まといになるのか……

 

 自分が信用されていない気さえしてきた。

 

 勿論ミカサにはそんな気持ちは無いのだろうが、小さな頃から近所のいじめっ子達にいじめられていた時には、エレンとミカサとノアが助けてくれていたのだ。

 その頃から僕は自分は強くないし、何の才能もない、足手まといな人間だと思っていた。

 僕を連れて立体機動装置を扱うなんて、速度も落ちるし、巨人に食われる可能性が高まる。

 

 足手まといになるのだけは嫌だった。

 

 

 

 必死に考えて、僕はあの、巨人を攻撃する巨人のことを利用して、本部にいる巨人たちを一網打尽に出来ないだろうか、とミカサとコニーに提案した。

 

 ミカサは、このままでもどうせ死ぬから、作戦に乗った方がいいと言って、協力してくれた。コニーもそれに、賛同してくれたようだ。

 

 あの巨人の事は僕には分からないが、巨人を倒す巨人。

 この巨人の強い眼差しを見ると何か不思議な力を持っているように感じてならなかった。

 

(ノア視点)

 

 

 …………死んだ…と思ったら生きていた。

 

 どうしてだろうか。俺の両足は巨人に食われたはずである。それが、血を1滴も出していない、完璧な自分の両足が俺の下半身にはあるのだ。

 

 目覚めた時はもっとびっくりしたものだ。何せ死んだと思っていたし、俺は恐らく、倒した巨人の上で寝っ転がっていたのだ。

 

 空にはこの地獄を嘲笑っているように見える程、雲ひとつ無い青い空が広がっていた。

 

 

 ――遠くに本部の大きいはずの建物が、うっすらと見える。

 俺は、本部に一番遠い、ウォールローゼの壁の近くに横たわっていたようだ。

 

 この死んだと思ったら生きていたという、奇妙な現象には理由が付けられないが、まだあの地獄――ひっきりなしに現われる巨人と戦うという地獄――は続いているようだ。

 

 俺は勿論、同期たちを助けに行こうとしたが、立体機動装置を使おうとしたら、ガス切れで使えなかった。自分にはもう、ガスもブレードもないし、ボロボロの状態なことを今思い出したのだった。

 

 ……ここで、自分が巨人に食われるまで待ってるしかないのか。

 どうして延命させたのだろうか。

 こうなるなら、あそこで俺の人生終わりで良かったのに。

 

 

 

 ほとんど諦めていたその時――

 

 

 

 二ファの姿がちらっと見えた。この辺で何かを探しているようだった。

 

「二ファアアァァ!」

 

 人生で1番の大声だと思うほど、俺は叫んだ。自分の生死がかかっているのだ。

 

 

 

 何かを探しているような素振りを見せていた二ファは、俺が叫ぶなり瞬時に反応してこちらに来た。

 

 ……俺を探していたのか?

 何故だろうか。

 俺は、二ファに安否を心配されるほど仲が良かった訳でもない。訓練兵団では任務以外あまり話さなかったし、俺も目立つようなことは避けていたはずだ。

 

 あいつが俺の事を探す必要が、無い。

 

 

 しかしながら、俺は死に瀕していた時は自分の死を受け入れて、仲間を守った結果死ぬのなら良いとさえ思っていたが、あとから思えばやっぱり死というものは怖いものだ。

 

 それに、前も考えたことがあるが、自分が死ぬと、悲しむ人がいる。そんな大事なことを忘れていた。

 

 今となっては絶対に死にたくない、死ぬわけにはいかないので、俺にとっては、どういう考えがあるにしろ、二ファがここにいるのは好都合だ。難しいことを考えるのは後にしよう。

 

 

 シューン

 

 二ファがこちらに向かって来た。

 

「無事だったんだね!君があんな事をするなんて…ヒヤヒヤしたよ。」

 

 とにかく心配してくれたようだ。

 

「……ごめん。あの時は自暴自棄になっていた。エレンが生きていると信じていたが、

 あいつがやっぱり死んでるんじゃないかって思ったら、何かしないとやってられなくて……」

 

「そっか。とにかく、もう死にに行くなんてこと、絶対しないでね。あなたが死んだら、他の誰かが巨人を始末するために奔走するんだから。」

 

 二ファは俺の腕を買っているようだ。俺の実力は筒抜けだったって訳だ。

 俺も二ファの隠している実力は訓練兵時代に知っていたので、お互い様だ。

 

「そうだな。ごめん、これからはしないようにするよ。」

 

「そうして。私だってノアに期待してるもの。」

 

 期待してる……か。そりゃあ尚更死ねないな。

 

「そうなのか?それは知らなかった。ありがとう。」

 

「素直に返されると照れるわね……

 とにかく、こんなところで長話してるのはまさに自殺行為よ。早く屋根上に登らなきゃ。」

 

 そう言って、屋根の上にのぼってから、二ファは俺にガスを分けてくれた。

 しかし、戦闘開始からこれまでで二ファは3分の1もガスを使っていなかったようだ。

 

 二ファは……俺が思っているよりも数十倍は強いのかもしれない。

 

 

 

 

 その頃、本部へ向かう補給作戦の部隊は――

 

 

 目の前で死んでいく仲間たちをただ、見ていた。

 

 事の発端は、1人の訓練兵がガス切れになって、地面に落ちたことだった。

 成績10番以内のものなどは、もう助からないことを理解していたが、何人かは「トム!」と叫んで助けに行こうとした。

 ……いや、あいつらも助からないことを分かっていたのかもしれない。3年間訓練兵団で生き残っていたのだ。それくらいは理解していたのかもしれない。でも、あいつらは、助けに行った。

 

 

 その結果が、これだ。

 

 最初にガス切れを起こした奴は勿論、その後助けに行った奴らも全員巨人に食われたか、まさに今、食われそうになっている。

 勿論、現場は阿鼻叫喚。この世とは思えないような光景が、目の前に起きていることに、全員が唖然としていた。

 

 

 

 しかし、ジャンは己が率いた部隊で仲間が死んでいることに、(あいつらが助けに行こうとした時に、もっと強く止めれば良かった)と、後悔していたが、頭は冷静だった。

 この、巨人たちがあいつらに群がっている状況はこちらにとっては好都合だ。

 

 そう考えてジャンは、

 

 

 

「今のうちだ!本部に突っ込めーーー!!!」

 

 

 

 そう叫んだ。

 

 

 立体機動装置で本部に向かって飛んでいる最中、マルコがジャンに話しかける。

 

「ジャン!ありがとう。お前のおかげで逃げきれた。」

 

「ああ?」

 

「お前のおかげだ。前にも言ったろ。ジャンは指揮役に向いてるって!」

 

「は、どうだか!わかりゃしねえ。」

 

 その会話の間にも、仲間が食われていっていた。

 

 

 

 そうして、補給作戦の、本部に到達する、ということは達成されたのだった。

 

 しかし、本部にいるジャン達は喜ぶことは出来なかった。あまりにも犠牲が多すぎた。

 あの、ガス欠で死んだトム、そいつを助けに行った奴ら。他にもガス欠で死んだやつ。立体機動装置で飛んでいる時に巨人に食われたやつ。挙げたらキリがない。

 それに、ミカサとアルミンとコニー、そしてノアも行方が分からない。その4人が死んだとは思えないが、エレンは、ここに来ない以上、二ファが言っていたように、死んでいるのだろう。

 と、すれば、あの4人も無事だとは言いきれない。

 

「ジャン、報告があるんだけど…」

 

 マルコがジャンに悲壮な顔で話しかける。

 

 

「ノアが……

 

 ノアが、巨人に両足を引きちぎられたのを見た人がいて、恐らく死んでるだろうって……」

 

「は?あいつが……?」

 

 ジャンはいつも余裕で訓練をこなしていたノアが、いつも飄々としているノアが、死んだとは信じられなかった。

 

「んなわけねえだろ。あいつが死んでるわけない。俺は、あいつの顔を見るまで信じねえからな。」

 

「ジャン。誰だって死ぬ時は死ぬんだ。現実逃避は辞めた方がいい。後で苦しむのは、ジャンだよ。」

 

 マルコはジャンを心配して言ったが、ジャンの決意は固い。

 

「いいや、あいつは生きてるね。両足が無くても、巨人の一匹や二匹、余裕で倒してるだろう。」

 

 そう言いながら、ジャンは本当にノアは死んだのかもしれないと、心の底では思っていた。

 

 そして、先程の「トム!」と叫んで助けに行った彼らを思い出す。自分もほぼ同じ状況になってやっとあいつらの気持ちが分かった。助けに行ったら自分が死ぬって考える暇もないくらい、一瞬で体が無意識に相手を助けようと動く。自分が犠牲になってもいいから、どうにか相手を助けたい。自分が出来ることは何も無いって頭では分かっているのに。

 マルコが言ったようにノアは死んでいるのかもしれない。そう思うと、俺も助けに行った彼らと同じように、何も出来ることは無いはずなのに、足が無意識に本部の外に向かおうとしていた。

 

 

 

 

 本部にいるものは皆一様に悲観的になっていた。

 

 それもそのはず。本部に訓練兵と元々居た補給兵など、大勢の人が集まりすぎて、本部はさらに巨人に囲まれることになったのだ。

 

 

 もう、ここが死地かもしれない。

 

 ジャンは向かった先の窓の外にいた2体の巨人と目が合って、そう本気で思ったその時――

 

 

 その巨人たちが一瞬で目の前から消えた。

 いや、何者かに殴られて倒れた。

 

 巨人を殴れる程体躯が大きいやつなんて巨人しかいない。

 巨人を殴る巨人?聞いたことがない。

 

 

 

 ジャンが混乱しているところで、立体機動装置の音が聞こえた。

 

「アルミン、コニー、それにミカサ!良かった…」

 

 ジャンは少なからず安心した。ノアが居ないことに、不安を覚えながら。

 

 

 アルミンから説明を受けたジャンは、まだ混乱していた。

 

 やっぱり、あの2体の巨人を屠ったのは、巨人を倒す奇行種なんだそうだ。そんなの聞いたことがない。

 

 ミカサはあいつに助けられて、そのことをきっかけに、アルミンが本部にあの奇行種を連れてきて、一網打尽にする作戦を立てたらしい。

 

 あの巨人が本当にちゃんと本部の巨人を倒してくれんのかは心配だが、俺たちは猫の手も借りたいような状況下にいたんだ。本部で巨人に囲まれているこの状況を打破する存在がいるってんなら、そりゃありがたいこった。

 こっちはこっちで補給に専念しよう。

 

 

 補給班の奴らから聞いた情報によると、

 補給室には5m級の巨人などが、計7体いるらしい。

 増えている可能性もあるが、俺たちはその情報を元に、作戦を立てることにした。

 

 

 アルミンの考えた作戦は、

 ①、補給室に降りるための装置に乗った訓練兵達が、巨人を引き付けて、銃を巨人の体に打ち込む

 ②、巨人が弱ったところで、補給室の張りの上に潜んでいた7人が一斉に巨人の項を狙う

 

 というものだった。

 

「作戦上、巨人の項を狙う7人は、最も成功率の高い7人にやってもらうけど、その7人には皆の命を預けるようなことになってしまって、申し訳なく思っているよ…」

 

 アルミンはそういうが、作戦上仕方の無いことだ。巨人の項を狙う7人になった、ジャン、ミカサ、アニ、コニー、サシャ、ベルトルトとライナーは、そのことを受け入れていた。

 

 

 

 結果から言うと、作戦は成功した。

 しかし、コニーとサシャは危なかった。2人は巨人の項を削ぎそびれて、食われる…と誰もが思ったところを、ミカサとアニに助けられたのだった。

 

 決死の作戦の後は、それぞれがそれぞれの場所で補給を始めた。

 

 

「俺が指揮役に向いてるとは思えねえな。もう、ああいうことは言うな。」

 

 ジャンは補給をしながらマルコに話しかける。

 

 

 

「…怒らずに聞いて欲しいんだけど、ジャンは強い人ではないから、弱い人の気持ちがよく理解できる。

 

 それでいて、現状を正しく認識することに長けているから、今、何をすべきか、明確にわかるだろ?

 

 ジャンの指示は正しかった。

 

 だから僕は飛べたし、

 こうして生きている。」

 

 

 

 マルコの言葉はジャンに強く響いたようだった。

 

 

 

 

 

「準備は出来たか!脱出だ!」

 

 

 この言葉を合図に、訓練兵たちは本部から脱出し、壁の向こう側へ、飛んで行った。

 

 




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