原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話 作:蘭 ノイ
二ファにガスを貰った俺は、壁を登るためのガスの量を気にしながら、本部にいるであろう104期の皆を助けに行こうと思った。
俺の助けはもういらないかもしれないけど、今何かしなきゃ、後で後悔するだけだ。
…
本部に着いた俺は、驚愕の光景を目にすることになる。
エレンが、巨人の項から出てきた。
俺は本部の近くで、屋根の上に固まっている104期を見つけたので、何事かと思って近づいていった。
そこには幼馴染のアルミンとミカサ、同郷だと言っていたアニ、ベルトルト、ライナー、そして、ジャンがいた。
皆、無事だったんだな。少なくともここにいる皆は。
そう安心していた。
が、皆の表情を見て、俺は不思議に思った。
皆一様に驚いた表情をしていたのだ。
その視線の先を見ると…
死んだと聞いていたはずのエレンが、五体満足で巨人の体から出てきたではないか。
俺はこの光景にちょっと心当たりがある気がした。
しかし、何だったか思い出せない。
でも、生きていたなら良かった。今はそれだけを喜んでおこう。
…
あの後、ミカサがエレンを本部の上まで運んだ。エレンは衰弱しているようだ。
まだ意識が覚醒しそうに無かったので、僕達はとりあえず、当初の目的の撤退をするために手動エレベーターのような機械に乗って壁を登っていた。
そんな時、ジャンが俺に話しかける。
「お前が生きてて良かった……!お前が両足を巨人に食われたのを見たって聞いて…死んでんじゃねえかって……。あれは、嘘だったんだな。」
ジャンは顔をクシャッと歪ませてそう言った。ジャンがそこまで心配してくれるなんて、思ってなかったな。
しかし…………
「俺が巨人に両足を食われたっていうのは、本当なはずだ。なんで生きてるのか、両足が元通りになってるのか、俺も分からない。」
「はあ!?なんだよ、それ…。お前、夢だったとか…」
「夢じゃない。両足が無くなった感覚があの時はあったんだ。でも、目覚めたら、両足が生えている状態で、死んだ巨人の上に寝っ転がっていた。」
狭いエレベーターのような箱の中だ。勿論俺たちの会話は、幼馴染達と、ライナー達に聞こえていた。
アルミンはノアの話を聞いて、深く考え始める。
「エレンも、僕と一緒にいた時には既に細かい切り傷なんかがあったはずだ。それが、今は、戦いなんて嘘だったかのように、五体満足でここにいる。
……ノアも、そうってことだよね?」
「ああ、そう言われてみれば、前、ヘマしてやった傷なんかも消えてるな。」
ノアのその言葉を受けて、アルミンは追い詰められたような表情を浮かべる。
「それって……」
ジャン、ライナー、ベルトルト、アニもアルミンと同じことに気づいたようだった。
ジャンは無意識に俺から1歩下がった。
「うん。ノアも、エレンと同じように巨人になっていたんじゃないのかな。巨人になって、両足を再生した。
……巨人になることで、両足を再生できるほど治癒能力があるかは分からないけど、そうとしか説明がつかない。」
アルミンは俺にそう説明した。
俺が巨人?冗談じゃない。俺は、ずっと人間として生きてきたんだ。それが、今になって本当は巨人でしたってか。
「俺は、人間だ!
アルミンだって、俺の母さん、父さん、兄さんを見ただろ!今までだってずっと人間だった!」
俺は、思いがけない事実にパニックになっていたが、それでも、俺が巨人になっていたということに心当たりがあった。アルミンの言うことは正論だし、それに、俺は目覚めた時、エレンと同じように死んだ巨人の項の近くに寝っ転がっていたのだ。
口では人間だ、と言いながらも、心の中では本当は巨人だったのかもしれないと思っていた。
「ノア……。分かってるよ。今まで僕達は人間だった。
でも、エレンだってそうだ。
……エレンだって、ずっと人間で、僕らと過ごしていたんだ。
僕らは君が脅威では無いことを理解出来る。ノアと何年も過ごしてきたし、今回の戦いだってノアはここにいる誰よりも巨人を倒していた。
……でも、壁の中にいる人はそうじゃないかもしれない。
エレンは多くの人に巨人から出てきたことを見られてしまったけど、ノアは一人でいたんだろう?
それなら、ノアが巨人になれることは秘密にしておいた方がいい。」
アルミンにそう言われて、ハッとなった。
俺は、人に怖がられる存在になったのか。
ジャンが俺から1歩引いてる位置にいるのがその証明だ。3年間共に過ごして、親友のように仲良くしていたとしてもこうなのだから、壁の内側の人達にとっては、俺は巨人そのもののように思われるだろう。
「そう…だな。アルミンの言うことは正しい。
俺は…巨人なのかもしれない。でも、そのことは周りに絶対にバラさないようにしよう。ここにいる皆にも黙ってもらうことになるけど、大丈夫だろうか。」
「あ、ああ…もちろんだ。」
「そう…だね。」
「分かった。」
ジャン、ベルトルト、アニは戸惑いながらも了承の返事を返した。
「あれ、ライナー?」
ノアはライナーに返事を促す。
「お、おう…。勿論黙っておこう。」
一拍遅れてライナーはそう返した。
…
そうして、僕達は壁を降りる昇降機に乗っていた。その最中、嫌な予感がした。
その着地地点に多くの駐屯兵団が待機しているのが見えた。
俺たちが昇降機から降りると、その周りを囲んでいる駐屯兵団の兵士たちがこちらに刃を向けてきた。
それは巨人用じゃなかったのか!?
俺は、自分の存在がバレたのかと思った。
しかし、あちら側の指揮官のような人が、
「エレン・イェーガーはどいつだ!?」
と、叫んだことで、俺の正体がバレていないことに、少し安堵した。と、共に、エレンは死罪なんかにならなきゃいいが…と、心配していた。
…
その後、エレン、ミカサ、アルミンはあの場所に残ったようだ。どうにかこうにか、エレンを殺されるのを避けるために、エレンを助けるために、残った。
案の定、エレンは人類の敵、巨人として死罪にされそうな状況になっていた。
俺も残ろうとしたが、アルミンが、
「ノア、君はジャン達と一緒に行くんだ。万が一君の力がバレたら、君の事も擁護しなければならなくなる。エレンのことは僕とミカサに任せてくれ。」
そう小さな声で言われて、俺が残ると逆に足でまといになるのか、と考えて、ジャン達と一緒に生き残った104期達の元へ行き、束の間の休息を取っていた。
休息と言っても、心は休まらなかった。アルミンとミカサ、そしてエレンが心配だ。
俺は心配になるとじっとしてられないタチだ。
ジャンに、
「ごめん、そこら辺歩いてくる。」
と、一言だけ告げて、そこから離れた。
…
「なあ、お前さ、もし俺が死んだらどうする?」
エレンがそう聞いてきた時、なんて答えたんだっけ。
「は?…縁起でもないこと言うなよ…」
「いや、気になっただけだ。勿論死ぬ予定は無い。」
「そうだろうけど…」
「で、どうする?」
「どうする?って……そりゃ、悲しむよ。1週間くらい、食事は喉を通らないかもな。今は割り切ってるけど、兄貴の時だってそうだった。」
兄が死んだ後……シガンシナ区の住民はウォール・マリアの内側に避難した。その時、食料も補給されていたが、俺は食料も、水でさえ喉を通らない日もあった。
兄の死に際を思い出して、あの巨人の顔を思い出して、気持ちが悪かった。
エレンが死んだら……そんなこと、考えたくもない。
「……俺は、ノアが死んだら…」
あいつはなんて答えたんだっけ。
…
歩いている最中、俺は物思いに耽っていた。
そんな中、ドーン、という音が聞こえた。
心臓に響く音…
そういえば、俺も巨人になった瞬間であろう、両足を食われた時に、この音が聞こえた。
この、ドーン、という音は、巨人化の合図なのだろう。
俺は、自分が巨人だということを認めざるを得なかった。
しかし、さっきの音はいつもと違うような気がした。巨人化の音…というのもあるが、大砲の音のようにも聞こえたが……
もしかして、
俺はエレンたちのいる方向に目を向けた。
硝煙が立っていた。
エレンを生かすってのは失敗したのか?!皆は無事か!?
俺は硝煙の方向へ急いだ。
…
俺が辿り着く前に、事は終わっていたようだ。
俺が先程の昇降機付近に着いたときには、エレンとアルミンが壁上で、なんだか偉そうな人と話していた。
とにかく、3人は無事なんだな。良かった。
ホッと一安心した。
俺はミカサを見つけて、今の状況を聞いた。
俺たちが行ったあと、エレン達は1度は大砲を打たれたらしい。しかし、エレンが巨人化で防いで、その後アルミンが駐屯兵団相手に説得を試みたところ、あの、今壁上で話しているお偉いさんが来て、エレンたちを殺すのを止めたそうだ。
なんて危ない橋をわたってるんだ。
「ところでミカサ、あの二人は何の話をしているんだ?お偉いさんと話すことなんてないと思うけど…」
「次の作戦の話…だと思う。」
「作戦はさっき終わったのに、次の作戦があるのか?」
「エレンが人類の驚異にならないということは、エレン自身が示さなきゃならない。」
相変わらず話が飛躍しすぎて何言ってるか分からねえ……
「つまり…??」
「エレンが次の作戦の鍵になる。」
…
再び兵士達が集められた。
『トロスト区奪還作戦』という名を掲げて。
(7/26に編集しました)