原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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8話 巨人に勝つために(トロスト区奪還作戦)

 

 

 

 再び兵士達が集められた。

 

 『トロスト区奪還作戦』という名を掲げて。

 

 

 

 

「ちゅうもーーーーく!」

 

 

 

 先程のエレンたちと話していた司令が、ザワザワしていた俺たちを静まらせるくらい、大声でそう叫んだ。緩んでいた心がキュッと引き締まる感覚。

 前世の学校を思い出す。マイクも無しに、よく俺たちに届いているよな。

 俺の位置からは、司令…だと思われる人は、壁上に居て、米粒ほどの大きさだった。

 

 

 

 

「これよりトロスト区奪還作戦について、説明する。この作戦の成功目標は、破壊された扉の穴を塞ぐことである!」

 

「穴を塞ぐ手段じゃが、まず、彼から紹介しよう。訓練兵所属、エレン・イェーガーじゃ。彼は我々が独自に研究してきた、巨人化生体実験の成功者である!彼は、巨人の身体を生成し、意のままに操ることが可能である。」

 

 エレン…が、隣にいるのか。巨人化生体実験っていうのはおおよそ出任せだろう。

 

 

「ん"ん"!?

 なあ!今司令が何言ってるのか分からなかったが、それは俺が馬鹿だからじゃねえよな!?」

 

「ちょっと黙っていてくれ……………バカ」

 

 

 コニーとユミルがコントみたいな会話をしていたのを見てしまった。

 気持ちが暗くなっていた俺は笑いたい気分だったが、周りはそうでも無いみたいだ。

 

 それもそうだ。

 自分の同僚や、先輩後輩。中には兄弟とか愛する者を失った者も居るんだ。

 

 俺は、今回失ったものはほとんど無い。俺の、人間としての自覚くらいだろうか。

 人間というものは自分本位な生き物だ。

 俺は、自分の周りの人達が無事なら、それでいいんだ。亡くなった人達には申し訳ないと思っているが…。

 

 

 

「巨人と化した彼は、前門付近にある例の大岩を持ち上げ、破壊された扉まで運び、穴を塞ぐ。諸君らの任務は、彼が岩を運ぶまでの間、彼を他の巨人から守ることである!」

 

 

 

「この巨大な岩を持ち上げる!?そんなことが……人類は、遂に巨人を支配したのか?」

 

 誰かがそんな声を上げる。

 …いや、エレンと、俺だけに当てはまる話だと思うが。

 

 

「嘘だ!そんな訳の分からない理由で命を預けてたまるか!俺たちをなんだと思ってるんだ!俺たちは、使い捨ての刃じゃないぞ!」

 

 同期のダズだ。彼は司令が話し始める前も、そんなことを言って、戦場から離れたがっていた。

 ダズの気持ちも分からないでもない。でも、今はその言葉は、今回の作戦に疑問を持っていた者達の心を折るのに十分だった。

 

 

「今日ここで死ねってよ!……俺は降りるぞ!」

 

「俺も!」「俺もだ」「俺も降りるぞ!」

 

 

 訓練兵駐屯兵に関わらず、この作戦に命を掛けられないと判断したもの達が、この場から去っていく。

 

 

「覚悟はいいな反逆者共!今この場で叩き切る!」

 

 

 エレンを死罪にしようとした人だ。偉そうな人だが、ここで止めないと、規律が乱れることは目に見えて明らかである。

 

 

しかし、

 

 

「ワシが命ずる!今この場から去るものの罪を免除する!1度巨人の恐怖に屈したものは二度と巨人に立ち向かえん!巨人の恐ろしさを知ったものは、ここから去るがいい!

 そして…その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟、愛する者に味わわせたいものも、ここから去るがいい!」

 

 

「…それだけはダメだ。娘は私の…最後の…希望なのだから。」

 

 

 凄いことを言うものだ。司令という肩書きに嘘偽り無しというような、カリスマ性と、重みのある言葉だった。

 

 去りかけていた兵士たちの足は、徐に止まって、今来た道を戻り始めた。

 

 

 

 ピクシス司令の演説が続く。

 4年前の、アルミンのおじいちゃんも亡くなった、奪還作戦……あれは、口減らしだった。はっきりとそのことを司令が言うなんて、思ってもみなかったが………。

 そのことを黙っている俺たちにも罪がある……。

 

 彼らのおかげで、俺たちは生きている。

 

 

「しかし、今度はどうじゃ!このウォール・ローゼが破られれば、人類の2割の口減らしをすることだけじゃ、すまんぞ!?ウォール・シーナの中だけじゃ、残された人類の半分も養えん!

 

 人類が滅ぶなら、それは巨人に食い尽くされるのが原因ではない!人間同士の殺し合いで、滅ぶ!

 

 我々はこれより奥の壁で死んではならん。

 

 どうかここで、ここで死んでくれ!」

 

 

『人類が滅ぶなら、人間同士の殺し合いで、滅ぶ』………か。

 全くもってその通りだ。

 俺は、そうやって人類が滅びかけた時を、習ったはずだ。

 

 ……あれは、なんだったっけ?

 

 

 

 

 トロスト区奪還作戦の作戦内容は、エレンを守る先鋭班と、巨人を引きつける囮班に分かれることになった。

 

 俺のことを、ミカサが『先程の作戦での功績から考えて、先鋭班が妥当なはずです!』と、珍しく敬語を上手く使って先鋭班の班長に訴えていたが、その努力は実らなかった。

 

 俺は、結局囮班に配属された。

 それもそうだ。俺がさっき倒した巨人たちの大半は誰も見ていないところで倒していた。証拠がないなら、それは不確定要素という訳だ。

 まあ、俺が空いた穴付近で戦っていたのは周知の事実だったわけだから、そこから考えるとある程度巨人を倒していることになる訳だが…

 

 囮部隊でも何かできることはあるはずだ。何せ、同期の大半はこっちに配属される。先鋭班の方に配属されたのは、ミカサとエレンだけだ。

 ということは、囮の方に居れば、皆を助けられる機会が増えるかもしれない。

 

 ……そう、思っていたが…

 

 今回はさすがに俺も1人班という訳にはいかなかった。何せ、囮部隊だ。1人では囮として機能しない。

 さらに、囮なのだから、巨人を倒すのではなく、引きつけるのが目的だ。

 

 

 つまり、俺が居たとしても、

 味方が窮地に陥った!助けよう!

 と、なった時にはその人は食われている。

 

 

 そのくらい、引き付けてから逃げる、という作戦だったのだ。

 俺は、その事を作戦が始まってから知ったのだった。

 

 俺はこのトロスト区の襲撃が始まる前までは、この世界では転生者という特別な存在だし、他のものより戦闘力も高いことから、皆を助けられるはずだと、何の根拠も無く思っていたが、この戦いが始まってから、己の無力さを痛感させられることが多い。

 どれだけ力を持っていても、どれだけ他のものとは違くても、出来ないことは出来ない。死んでいく者はそこで死んでしまう。助けることが出来ない命がある。

 

 認めよう。

 

 ここは、本物(リアル)だ。

 

 

 どうにもならないことは、どうにもならない。自分に都合のいいことは起きやしない。そう思って、精一杯生きていくしかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 ドーン

 

 雷が落ちるような音が響き渡り、エレンは巨人化した。

 

 先鋭班として配属されていた、リコ・プレツェンスカは、本当に巨人になったことに若干の驚きと、希望を持っていたが、その考えはすぐ覆された。

 

 

 エレンがミカサを攻撃した。

 

 

 その行動は、先鋭班を失望させるには充分すぎた。

 

 

「作戦失敗だ。分かってたよ。秘密兵器なんて存在しないってことを。」

 

 

 ミカサはエレンの説得を試みるが、それも虚しく、エレンはミカサを攻撃しようとして自分に拳を当てた。自滅したエレンは、大岩を背に座り込んでいた。

 

 

 

 その時は、先鋭班達は撤退しようと考えていた。

 

 

(イアン視点)

 

 

 ところが、ピクシス司令に先鋭班の指揮を任されたイアンは、このまま撤退していいのか、迷っていた。

 

 

 この班の命運を決めるのは、自分だ。

 

 リコとミタビは撤退しようとしているが、ミカサは残ろうとしている。

 

 このまま撤退したとして、作戦開始から今までに落とした命はどうなる?無駄死にということになってしまうのでは無いか?

 

 そう考えたら、このまま撤退してはいけない。いや、俺たちは退()()()()んだ。

 

 

 イアンは、作戦続行をすることに決めた。

 

 

 

 

(ジャン視点)

 

 

 壁上に居る時、赤い信煙弾が見えた。作戦は失敗したのか?

 

 隣ではアルミンが煙弾の見えた方向へ走り出していた。

 

「おい、アルミン!」

 

 コニーがそう叫ぶが、アルミンは止まらなかった。

 

 その後から、ノアがアルミンを追いかけて行った。

 

 おいおい、規律はどうした、命令はどうした……?

 お前ら、幾ら何でも自由すぎだぞ!?

 

 

(ノア視点)

 

 

 壁上でアルミンを追いかけていた俺は、アルミンに追いついてから、こう切り出した。

 

「このまま行って、何をするつもりだ?俺たちにも出来ることがあるのか?」

 

 俺は少なくとも、自分が行って何か大きく変わることがあるとは思えなかった。

 

「僕達だから、出来ることがあるはずだ。今の状況がどうなっているか、見てみないと分からないけど、そもそも行ってみないと何も始まらない。」

 

 確かに、アルミンの言う通りだ。

 俺はアルミンについて行くように、壁の上をまた走り出した。

 

 

 

 

 俺達は、大岩のある場所に着いて、大岩にもたれかかっている巨人のエレンを見つけた。

 

「何をやっているんだ、エレン…。」

 

 アルミンは、死んでいった仲間たち、先輩達を思い浮かべているようだった。

 アルミンはそう呟いた後、ノアに、

 

「ここは僕がどうにかする。ノアは近づいてくる巨人と戦ってくれ。」

 

「どうして…。いや、お前達が心配だ。ここに残る。」

 

「ダメだ!人には適材適所というものがある。僕だって、巨人と戦う力があったら、ここにいる巨人を全部殲滅させて、皆を助けたいよ。でも、出来ない。けど、君にはできるだろう!?」

 

 俺は巨人の項を削ぐことしか出来ないが、アルミンには、状況を考える力も、判断力もある。アルミンならこの状況をどうにかできるのかもしれない。

 

「……アルミン、エレンのことはアルミンがどうにか出来るんだな?」

 

「…確証はないけど、やってみるよ。」

 

「そうか……絶対に、生きてまた会おう。」

 

「うん、勿論。」

 

 俺は、腹を括って、エレンたちを守るために、戦っている先輩達を助けるために、巨人を倒しに向かった。

 

 

(アルミン視点)

 

 

「ミカサ!作戦はどうなった!?エレンはどうなっているんだ!?」

 

 アルミンは、ちょうど屋根の上にいるミカサを見つけ、そう問いかけた。

 

 

「アルミン!危険だから離れて。その巨人にはエレンの意思が反映されてない!私が話しかけても反応がなかった!もう誰がやっても意味が無い!」

 

 

「作戦は!?」

 

 

「失敗した。エレンを置いていけないから、みんな戦っている!だけど、このままじゃ、巨人が多くて全滅してしまう!」

 

 

 このままじゃ、先鋭班が、全滅…。

 

 そんなことになる前に、いち早くエレンをどうにかしなければいけない。この瞬間にも、先鋭班の皆は、囮班の皆は、ノアは、戦っているんだ。

 

 

「ハッ……くっ………後頭部から項にかけて、縦1メートル、横10センチ。」

 

「アルミン!」

 

「僕がエレンをここから出す!ミカサはここを巨人から守ってくれ!…巨人の弱点部分からエレンは出てきた。それは、巨人の本質的な謎と恐らく無関係じゃない。大丈夫。真ん中さえ避ければ、死にはしない。

 ただ、ほんのちょっと、痛いだけだ!」

 

「アルミン!無茶はやめて!」

 

 

「ミカサ!今、自分に出来ることをやるんだ!ミカサが行けば、助かる命があるだろう!エレンは僕に任せて、行くんだ!」

 

 

 ミカサはそう言われて、巨人がいる方向へ向かった。

 

 

 

(イアン視点)

 

 

 

「そこの訓練兵!何をしているんだ!お前は囮班だろう!?」

 

 俺は、見つけた白髪の訓練兵に向かって問いかける。

 

「すいません、援護に来ました。理由は後で説明します!ここを一緒に守らせてください!」

 

 戦力が増えるのはありがたい限りだが、一体なんで…?

 考えるのは後だ。

 

「戦力が1人増えるのは、こちらにとってはありがたい。しかし、班はもう出来ていて、班員たちもそれぞれの役目をこなしている。お前が入ったとして、班には入れられないのだが、それでもいいだろうか?1人で巨人を倒せる程の実力があるようには見えないが…。」

 

 同じ屋根の上に飛び乗って、そう伝える。その訓練兵を一刻も早く前線から退かせるべきだと思い、無茶を言ったつもりだったが、その訓練兵は、

 

「ええ、はい。大丈夫です。むしろそちらの方が、力が出せますので。」

 

 予想外の答えに、イアンは一瞬フリーズしてから、

 

「そうか、なら、遊撃部隊を任せよう。お前の判断で巨人を倒してくれ。」

 

 そう言った。

 

 

(ノア視点)

 

 

 俺はまたもや、1人の遊撃部隊に任命された。

 

 俺は巨人を何体も倒すことに関しては誰にも負けないと誇っている。特に、固まっている巨人は、細かいアンカーの動きを駆使して首筋を狙える。俺は立体機動装置を繊細に動かすことを得意としているからだ。

 しかし、1発の重さには自信が無い。その点ミカサは1発が重い。俺はたまに1発じゃ巨人を倒せないことがあるので、ミカサの戦闘面でのことは大いに尊敬している。

 

 しかし、今回必要なのは、エレンに群がろうとする巨人たちを早く、倒すことだ。立体機動装置の扱いが上手いと役に立てるだろう。

 

 俺は、街中を飛び回って、巨人を何体も駆逐していた。

 

 

 

 

「ジャン、何してるんだ!?」

 

 巨人を倒すために街中を飛び回っていたノアは、立体機動装置を使わずに巨人に追われて走っているジャンを見つけた。

 

「装置の故障だ!こんな時にっ…」

 

 装置の故障だって!?ジャンは今までそんなことなかったはずだ。なんで今…!!

 

 考えるのは、後だ。

 

 

 

「ジャン、俺が援護する!お前は、この状況をどうにかしろ!お前は、判断に関しては一流だからな!」

 

「おい、ノア!」

 

 俺はそう言って、今度は親友を助けるために巨人を駆逐していた。

 

 

「ノア!俺達も加勢する!」

 

 

 コニーが叫んだ。アニとマルコも一緒なようだ。

 

 ジャンは俺より重い。

 けど、コニーかマルコと2人がかりなら屋根上までは連れていけそうだ。

 しかし、その後どうする?

 さすがに俺らでは壁上まで連れて行けるか怪しい。でも、やるしかないのか?

 

 

 俺がそんなことを考えている間にも、状況は刻一刻と変わっている。

 ジャンの方を見たら、どうやら、兵士の死体の立体機動装置を貰おうと考えているようだ。

 そっちの方が俺の案よりいい。

 やっぱり、判断力は一流だな。

 

 

 ところが、上手くいっていないようだ。

 

「ジャン、落ち着け!」

 

 俺たちはジャンを助けることに専念した。

 

 

 俺たちはジャンを助けるのに成功した。

 

「無茶しやがって!」

 

 壁上に着いてから、ジャンはそういうが…

 

「無茶はお前だろう!生きた心地がしねえよ…」

 

 コニーが俺の気持ちを代弁してくれた。

 

「ジャン、お前、死ぬかと思ったぞ……。」

 

 ジャンが、死ぬかと思った。俺らも、死線をくぐった。

 しかし、全員無事で良かった。

 

 

「ハッ!あれを見て。」

 

 アニがそう言う…と、共に、ドシン、ドシンという音がトロスト区中に響き渡る。

 

 

 ――エレンだ!

 

 

 アルミンは成功したんだな。

 

 アルミンは己の役割を全うした。俺も自分に出来ることを精一杯するだけだ。

 

 

「邪魔をさせるな!エレンを援護するんだ!」

 

 ジャンがそう言って、俺たちは飛び立った。

 

 

「ごめん、ジャン!俺は単独行動に戻る!絶対無事でいろよ!」

 

 俺が自分の力を最大限に出せるのは、1人の時だ。仲間がいると迷ってしまう。

 

「ああ、分かった!お前は1人でも大丈夫だろうが、そっちも死ぬなよ!」

 

 ジャンは俺が、仲間がいると迷ってしまうということを理解していた。

 

 

 

 

 エレンの進行方向には、10メートル級が5体。

 その下には、立体機動装置を使わずに走っている兵士たちが大勢。

 

 何を……してるんだ?

 

 そんなことをしていたら命が幾つあっても足りない。

 

 でも、俺がやることは1つだ。巨人を駆逐すること。

 敵は5体、集団だ。複数対1の戦闘は誰にも負けない自負がある。

 

 2体は先程3人の兵士が遠ざけたから、まずは手前の3体からだ。

 

 

「フッ!!」

 

 

 出来るだけ力を込めて刃を振るう。

 一撃で仕留めなきゃ、時間がかかって、下で走っている兵士たちが死んでしまう!

 

 俺は、3体連続で項を狙って…

 倒した。

 

 

「そこを走っている兵士3人!離脱してください!俺がそこの2体を倒します!」

 

 離脱してもらった方が、兵士たちが巨人に食われる心配もないので、迷わずに済む。

 

「おう…、任せよう!」

 

 リーダー格らしき人がそう答えて、その3人は離脱した。

 

 

 そして、間髪入れずに2体の項を連続で狙い、また、成功した。

 

 さっきやったような、連撃が成功する確率は今のところ50%行けばいい所だった。2回連続で成功するなんて、今日はツイてるな。

 

 俺は、他にも兵士を食べようとしている巨人の項を間一髪のところで削いで、助けたり、地面を走っている者達にある程度引き付けられて、エレンから距離がある巨人を優先的に倒していた。

 

 

 俺がそんなことをしている間に、エレンは穴付近に辿り着いたようだ。

 

 

 

 しかし、

 

 そこには1体、取り残した巨人が立ちはばかっていた。俺は、今、エレンと距離が離れている。間に合わない。

 

 そう思ったその時――

 

 1人の、白髪の駐屯兵がその巨人の目を刺してから、エレンの前を走っていたミカサが項を削いだ。

 

 どうなる事かと思ったが、エレンは穴を塞げたようだ。

 

 人類が…巨人に勝ったんだ!

 

 

 

 

 

「皆…、死んだ甲斐があったな……人類が今日、初めて、巨人に勝ったよ。」

 

 白髪の駐屯兵、リコ・プレツェンスカは死んだ仲間を思いながら、作戦成功の信煙弾を打ち上げた。

 

 

 

(アルミン視点)

 

 

 アルミンはエレンを巨人の体から出そうとしていた。しかし、巨人の体とエレンの体の一部が合体して、上手く引っこ抜けない。

 

「アルミン!」

 

「体の一部が、一体化しかけている!引っ張っても、取れない!」

 

 ミカサとアルミン、リコの3人は、エレンを回収してから壁へ登ろうとしていた。

 

「切るしかない。」

 

 リコは素早くそう判断し、エレンの巨人と繋がっている部分を切り離した。

 

 しかし――

 エレンを引っ張っていたアルミンとエレンが、エレンの巨人の上から勢い余って落ちた場所の近くには、10メートル級が2体。

 

 今度こそ、死ぬかもしれない。そう思った時…

 

 パシュッ、シューン

 

 回転しながら2体の項を一瞬で削いだ、1つの影があった。

 

「あれは…」

 

 

 

 自由の……翼。

 

 

 

「おい、ガキ共!これはどういう状況だ。」

 

 

 

 

 

 

 その後、急遽駆けつけた調査兵団と、駐屯兵団後衛部の活躍により、ウォール・ローゼは再び巨人の侵入を阻んだ。

 トロスト区に閉じ込めた巨人の掃討戦には、丸1日が費やされ、その間、壁上固定砲は火を吹き続けた。

 壁に群がった巨人のほとんどが榴弾によって死滅し、僅かに残った巨人も、主に調査兵団によって掃討された。

 その際、4メートル級1体と、7メートル級1体の巨人の生け捕りに成功する。だが、死者・行方不明者142名、負傷者804名。人類が初めて巨人の進行を阻止した快挙であったが、それに歓喜するには、失った人々の数があまりに大きすぎた。

 

 




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