【拠点・廃協会】
「……オコ様、大丈夫かなぁ」
待機中の【小倉あんこ】が備え付けの椅子に寝転びながら一人呟く。そわそわと落ち着きがないあたり、それ相応に心配しているようだ。
「いや、大丈夫でしょ。オコなんだし。あんこと合流する前は一人でずっと生き抜いてたくらいだし」
「それは……そうですけど……」
一方で、同じく待機していたミレアは、オコサンデーの戦闘を間近で見る機会が多いため、それなりに信用しているようで、逆に落ち着いていた。
「でもおかしくないですか?ミレアとオコ様がここ最近かなりの数のゾンビを倒してるのに、減らないどころかむしろ増えていってる気がするんですよ?」
「……確かに。それは僕も前からそんな気はしてたけど…言われてみれば確かにこれは異常だよね。僕とオコがかなりの数を倒してるはずなのに全滅するどころか、減ってる兆しもないし……」
あんこの意見により、ミレアも改めて違和感に確信を得た。拠点周りのゾンビは毎日掃討している為いなくなったが、他の場所も物資を回収する際にそれなりの数を倒している。場所的にもそこまで人が多く住んでるような場所でもない。先程から感じる違和感を胸に二人はステンドグラスを見上げていた。
【街道・商店通り】
「ぜェ…ぜェ…っ。クッソ!こいつ無駄にしつけぇ!」
「オォオオォォォォ!!!!」
「吠えるしか脳が無ェのかテメェは!!」
あれからどれだけ時間がたったことだろう。何分……何十分……それどころか数時間経過してるようにも錯覚する。バールで殴りかかろうと、ハンマーで潰そうと、ナタで斬りきざもうと、手斧で叩き斬ろうとも……、奴には効かず、潰れず、再生し、刃を止める。それにパワーが尋常じゃない。さっき防御に使ったバールが一撃でオシャカになった。その際に左手が痺れて感覚が麻痺してしまった為、今は右手のナタだけでなんとか耐えている状態だ。
隙を見つけて逃げようが、奴はひとっ飛びで間合いを詰めてくる。……正直言って生存は絶望的。圧倒的な身体能力の差に諦めざるを得ない。
「──でも俺はなぁ?あの日誓ったんだよ…」
あの日、おぐりんを助けた日。眠ったおぐりんの目から一筋の涙が出てた。怖い、助けて…って言ってたんだ……。
「命をかけてでも!あの子を守り通すってなァ!!だから俺はこんな所で絶対にくたばってやらねってんだよこのバァァァァァカッ!!」
言葉が通じないのは分かってる。これは俺自身に対する魂の誓いだ。そう簡単にくたばってたまるか!
ウェストポーチから黒い粉だ大量に詰まった袋を取り出して投げる。それを奴は反射的に爪で切り裂き、中身の黒い粉が舞う。……それを待ってたんだ。
「こいつで弾け飛べやデカブツ」
寸前でマッチの火を着け、奴に向けて投げる。瞬間……
──閃光と爆音
凄まじい衝撃により、俺まで吹っ飛ばされる。
奴に投げつけたのは、たっぷりの火薬がつまったミレア特性の爆薬だ。……それにしても凄い威力だな。それなりに離れていたのに危うくこっちまで巻き込まれる威力だったぞ……。ミレアまじでミレア。
「いッてて……、マジでヒビはいったかも…」
痛む体を引きずりながら爆発で発生した黒煙を見る。ヤツがこっちに来る様子は見えない。あれだけの威力の爆発を至近距離で受けたんだ。倒してなくとも、少なくは再起不能くらいにはなっててほしい。
「…は……はは…。マジかァ……」
黒煙の中から影が見えたと思ったら、ヤツが足音をたてながらこちらへ歩いて来るのが見えた。所々、抉れてたり、体のパーツが吹き飛んでいたりしたが、物凄い勢いで傷が再生していく。
──絶望はまだ終わらない。