・オコSunday、左腕消失の痛みと衝撃で戦意喪失
・ギリギリの所でミレア&あんこの援護が間に合う
・新たに覚悟を決めて立ち向かう
ミレアとおぐりんが戦いに加わってから、戦況が大きく傾いた。
「頭をぶち抜くッ」
ミレアが頭部を中心とした狙撃で注意を惹き──
「どこを見てるんですか?」
おぐりんが大量の弾幕で動きを鈍らせ──
「っしゃオラァ!!足元がお留守じゃああああ!!」
俺が隙をついて斬る。
そして、この戦いで気づいたことが1つある。
ヤツは大なり小なり傷がつけば再生する。その時、少しではあるが肉質が全体的に柔らかくなるのだ。お陰様で1人のとき弾かれてたナタが面白いくらいにサクサク入る。
しかしそれでも一筋縄ではいかず、足の靭帯を斬って膝をつくまではもっていけるが、頭部をカチ割ろうとすると異常な程に大きな腕を振り回して妨害してくる。非常に厄介極まりない。
「あー!もー!オコ!!こいつメンドイ!」
「しゃーないだろ!俺だって1人で頑張ってたけど、コイツすぐに再生するんだって!」
「オコ様ぁー!弾無くなっちゃいましたー!」
「オイイイイイイイイイイイ!?確かにあの弾幕攻撃はありがたかったけど、よりによってこのタイミングぅ!?」
「そんな事だろうと思って予備のマガジン持って来てるよ」
「「ミレア、ナイスー!」」
なんだろう……。さっきまでシリアスな雰囲気だったはずなのにいつの間にかコミカルになってない?いやまぁ、殺伐とした雰囲気よりはマシだけども……。なんなら順調にじわじわとヤツの動きが鈍ってきているあたり、ものすごい手応え感じてるくらいだし。
それにしてもあのデカい腕が邪魔すぎる。爪が異様に鋭いうえに長いから、至近距離で戦ってる俺の服が切り跡だらけだ。幸いにも肌までは傷はついてないので今のところ感染するリスクは低い。
『ォ………グォォ……ッ』
「………ん?なんだ?」
なにか様子がおかしいと思ったら、ヤツの大きい腕がまるで虫が這っているみたいでグロテスクに蠢きだした。ものすごく気持ち悪い。
『……ォオ゛オオオ゛オオオ゛オ゛オ゛ッ!!!』
ヤツがひときわ大きく吠えた。
骨と肉が混ざってるような音をその大きな腕から響かせたと同時に、異常な速度でヤツの腕が更に大きく、太く、鋭くなっていく。
肩から骨のような角が皮膚を突き破り、二の腕は裂けて二本に分裂し、二本に別れた右腕の先には合計10本の爪が先程よりも大きく鋭利になった。
………明らかに第二形態ですねわかります。
「ここで一つ。第二形態とかけまして、スゴロクととく」
「……その心は?」
「どっちも、ふりだしからでしょ〜」
「上手い!」
「「HAHAHA!」」
「いや、なぞかけしてる場合じゃないんですけど!?2人して現実逃避しないでくれませんか!?」
おっと失礼。あまりにもショッキングすぎて現実逃避してたわ。
だってアレはさすがに無理だろ〜…。明らかに俺達を絶対殺してやるとばかりに殺意をビシビシと肌で感じる。
───ミレアが消えた。
いや、正確には吹っ飛んだんだ。後方へと。
「「ミレアッ!?」」
「がァっ!?………ぐぅううう…ッ!」
ミレアが後方へ飛んだ先に瓦礫の山があり、そこへ背中を打ち付けてしまったみたいだ。とっさにガードしたのか、頑丈なはずのスナイパーライフルがありえない方向へと曲がってしまっている。幸いにもライフルが犠牲になったおかげでミレア本人は打撲だけで済んでいた。
なんだ今のは!?全然見えなかった……。
しかも俺たちがいる場所とはそれなりに離れていたはずだぞ!?
右腕の二本に別れた片方の腕が触手のようにうねうねと軟体動物かの如く動いている。まさか……あの触手のような腕がゴムのように伸びて一瞬でミレアを攻撃したとゆうのか!?俺たちに視認できない速度で……!?
『グロロロロロロ……』
そう呻いたヤツの顔は笑っているように見えた。
……いや、明らかにこちらを嘲笑っている。
「テメェ………何笑ってやがんだァァァァァ!!!!」
「オコ様!ダメ!!」
我慢できなかった。お前らなんぞこの程度だ、と言われているみたいに思えて頭の中の何かが切れたんだ。
怒りの衝動と共に馬鹿正直にヤツに向かってナタを振り下ろした。
──ナタが折れた。
「………え?」
全力で切りつけたつもりだった。だが、その刃はヤツの肉を切り裂くことは無く、まるで鋼鉄に打ちつけたかのような感覚と共にナタは根元からポキリと折れてしまった。
その一瞬で惚けてしまったのは完全に致命的だった。
ヤツの二本に別れていた右腕が交差して、1本の束のようになった肥大化したその腕で俺は殴られた。
「ごぶゥ………ッ!!」
殴られた俺の体は簡単に宙へと飛ばされ、その拍子に内蔵をやられてしまったのか大量に吐血した。そのまま地面へと叩きつけられ、ボールのように2、3回バウンドしながら後方へと飛ばされた。
……ダメだ………今意識を失ったら………おぐりんが危ない……ッ。
それだけはダメだと、痛む体に鞭を打って無理やり立たせる。足が産まれたての小鹿のようにガクガクと震える。
ミレアの方を見ると、使い物にならなくなったライフルを杖の代わりにして立ち上がっていた。
先程の早さで攻撃してこなかったとゆうことは、こちらを完全にバカにしているうえに舐め腐ってる。
クソがッ!舐めプしてんじゃねぇよッ!
待てよ……………まずい!今前にいるのはおぐりんだけだ!
前へ振り向くとヤツがおぐりんに向けて、その大きな爪で貫こうとしているのが見えた。
「あ………あぁ……あ……ッ」
ヤツの威圧感と殺気で声も出せない状態になっている。
俺は軋む体を無理やり動かして、おぐりんの元へとその足を走らせる。
頼む!!間に合ってくれ!!
ヤツは無慈悲にもその爪をおぐりんへと振り下ろした。
「オコ………様?」
「ははっ…………良かった……。間に……合っ……た…」
突き飛ばしたおぐりんが呆然とこちらを見ている。
腹が熱い……喉から何か熱いものがまた込み上げてきた。
「ゴバァ……ッ!!」
──おぐりんへ矛先を向けていたその爪は、突き飛ばしたおぐりんの代わりに俺の腹を貫いて真っ赤になっていた。
「オコッ!!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
2人の悲鳴が響く。
ヤツがその方向を見るがそうはさせない。俺はヤツの腕を掴み全力で抑え込む。俺の頭のリミッターが外れたのか、ヤツも上手く身動きが取れないほど力が出ているようだ。
「ミレア……頼む……このままおぐりんを連れて……逃げろッ!」
「オコ……でも……ッ」
「いいから行けぇぇぇぇぇぇええええ!!!!」
俺は振り絞って声を荒らげた。
「ッ!………分かった。行くよあんこ」
「嫌っ!いやぁ!!だって……だってオコ様が!!」
「このままじゃ全滅だって!オコの覚悟を無駄にする気!?」
「いやぁ!オコ様ァァ!!」
ミレアがグズるおぐりんを引っ張って遠くへ離れていく。
そう……それでいいんだ……2人だけでも生きてくれ……。
2人が小さくなるまで見守ったあと、俺はヤツへと向き直る。
『グウウウウウ……ッ!』
「よぉ……随分と……お行儀がいいじゃねえか……。……って俺が抑えてたから動けねぇのか……すまんすまん」
笑いながらそう言うと、ヤツの俺を見る目がとんでもない殺意で満たされた。
……そうだ、それでいい。俺を見ろ。そうすればアイツらは安全に遠くへ逃げることができるからな。
こんなこともあろうかとさっきミレアのバックからくすねといて良かったぜ。
俺はズボンのポケットからミレア印の爆弾を取り出してヤツの口へとねじ込んだ。
「こうすりゃあ流石のお前も再生出来ねぇだろ?」
『ゴ……ォ………』
「………あばよ」
そのままマッチで火を灯し──
───閃光と爆音に包まれた。