アレクサンダーのとこ書いてたんですけど、いつもの半分くらいの文字数になってしまったです……(›´ω`‹ )スマヌ
あと、後書きの方にヴィエラの精霊使い、赤魔道士、召喚士イメージのイラストを描いてみましたので、興味がある方は覗いてみてあげてください。
マダイン・サリに戻れば、モーグリ達は慌てていて、エーコも自分の家に走って行った。
追いかけてみれば、倉庫になっているような部屋に置かれている宝箱が開かれていて、村の皆が守っていた大事な宝珠が無くなってしまって事にエーコが落ち込んでいた。
半分泣いているけど、大人だから泣かない!って意地張っていて、ジタンに、大人でも泣くときは泣くさと言われていた。
「エーコがイーファの樹の結界を解いたせいかな……約束破ったからかな……」
そう悩めるエーコをジタンが励まし、盗んだやつが悪いんだから、とにかくそいつを見つけようと言うことになった。
私も適当にマダイン・サリの中を跳び回っていれば、エーコ捕まえたラニを見つけた。
ラニはエーコの背中を掴んで持ち上げていて、召喚壁の中へ入っていった。
私はとりあえず様子をうかがっていると、ジタン達もやってきて、救出のために中に入った。
「この子の命が惜しければ、宝珠を渡しなさい」
ラニはエーコをスリプル草で眠らせてしまったようで、エーコには意識が無かった。今の状況は少々厄介である。
ダガーのもっていた宝珠はジタンが預かっていて、ジタンは手渡すその時に反撃に出ようと考えていたのだろうけど、ラニに見破られてしまい、ビビに持ってこさせることにしたのだった。
これでは何も出来そうに無い。
「村の宝珠を盗んだのもお前か」
ジタンが聞けば、ラニはこれで大金持ちになれるわ!と高笑いをしていた。
正直、私なら一気に距離を詰めて腕を飛ばすことは出来るけど、そこまでするほど悪人ではないのでちょっと大人しくしている。
すると、その時どこからか「待ちな!」と声が響いた。
そしたら召喚壁の上から大柄の男性が飛んできて、ラニとエーコの間を割った。
エーコは弾みでジタンに抱えられ、ラニはラニでこの村で盗んだ宝珠をその男に取られたようだった。
「なにすんのよ!邪魔する気!?どういうつもりよ焔のダンナ!!」
その言葉でダガーはトレノに貼られていた賞金首の事を思い出し、それがここ人なのかと理解した。
「助けたわけじゃ無い、戦いを汚されたくなかっただけだ」
「なんのことよ」
ラニは意味が分からずそいつを睨むが、彼には失せろと言われてしまった。
「先走った挙げ句に人質を取るような卑怯なやつとは組まん。それだけだ。……それとも、やるかい?」
男は構え、そう言い放たれたラニは激昂して斧を地面に叩き付けてじろりと睨み付けた。
「覚えていなさい!いつか私があんたを狩ってやるわ!!」
そう言ってラニは壁を蹴って登り出て行ってしまった。
そして焔の旦那と呼ばれたそれはジタンの正面に立ち、戦えと言ってきた。
大体意味不明ですよね。
助けてくれたのかと思いきや、戦えって。
「この感じだと、最初っからジタンと戦いたかったんだろうねぇ」
私は傍観を決める気で居たので、ぴょんと飛んで召喚壁の上に腰掛け、ジタンがんばれーって応援してあげた。
男二人の戦いが始まり、素早い動きの焔の旦那に翻弄されつつも、ジタンの方が優勢だった。
カウンターを受けつつ、それでもナイフで牽制し、そして隙を突いて蹴りを食らわせて召喚壁の柱にぶつけてやった。
これで戦いは終わった。
「さあ殺せ!」
戦いに負けたからさあ!というが、ジタンや我々は命を奪いたいから戦っていたわけじゃ無い。
必要ないので拒否をすれば、それが意味が分からないと彼は言う。
「行けというのか」
「ここで去るなら放っておくさ」
「何を企む」
やっぱり彼は見逃してくれる意味が分からなくて、裏があるんじゃないかと言ってくるが、正直お前の命なんて要らねぇンだよね、まじで。
「別に、勝負がついてお互い命があったんだからそれでいいだろ。盗まれたものも返してもらったしな」
もはや面倒くさそうにジタンは言い、その様子に呆れたように男は言った。
「殺しが怖いのか?ハッ、牙を持たない野郎に敗れるとはな!」
「牙を持つ野生の獣こそ、無駄な殺生はしないもんさ」
そう言ったら沈黙の後に男は去って行った。
宝珠も無事に取り返すことが出来て、今回は一段落である。
私はエーコの家に行って、残った料理を持ってマダイン・サリをぴょんぴょんと跳んでみている。
焔の旦那……サラマンダーさんが居ると思うんだよねぇ。
と、瓦礫の影に腰掛けているサラマンダーさんを見つけて、目の前に着地。
ジタンとの戦いもあって怪我をしていて、ポーションも持っていないのかしらと首をかしげた。
「何をしに来た。首を取りに来たのか」
「そうですねぇ、お腹すいてそうだからこの料理を食べて欲しいんですけど、食べてくれないだろうから、あなたに言うことを聞かせたくて戦いを挑みたいなぁと思いました」
料理を置いてポーションを掲げ、一戦お願いしたいと言えば、薄く笑ってサラマンダーはポーションを受け取り怪しむこともなく飲んだ。
体力も傷も完治し、ベストコンディションとなっただろう。
「私はレイピアで戦うの。魔法も使えるけど、あなた魔法返し持ってたきがするわ」
「随分とオレに詳しいんだな」
「賞金首さんだものー、すこしくらい調べておかないとねぇ」
料理にホコリが入ってしまっても困るから、遠く開けた場所まで移動して、剣を構える。
「こちらのルールでは敗者は死ぬのではなく勝者の言うことを聞く、でいいかしら」
「何でもかまわん。いくぞ」
私は俊敏に駆けるサラマンダーの攻撃をレイピアでいなす。
そしてすかさずレイピアでサラマンダーに突き攻撃をしていくとまた距離を置き、また一気に距離を詰めていくのでそれもレイピアでいなす。
あえて魔法を使わないでレイピアで戦っていき、段々と私の移動の速度を速くしていき、サラマンダーにぴったりつくように執拗に背後に回る。
「クソ……っ!」
「こっちこっち」
私はいたぶるように小さく小さくサラマンダーを斬っていき、サラマンダーも遊ばれているというのが感じられただろう。
「なんのつもりだ」
「遊んでるんですよ。私にとって戦いは、楽しむものだからね。殺すんじゃ無くて、負かしたやつが力を付けてまた挑んで来てくれることを願っているの。何度来ても、私は負けないけどね」
それから今度はレイピアさえ使わず蹴りでサラマンダーに攻撃を仕掛ける。
横からの蹴りを腕で防いだが、思っていた以上の威力だったのか受けきれずに横に吹っ飛んだ。
「くぅ……っ!!」
「ホーラホラァ後ろだよぉぉ」
一気に距離をつめて後ろに回って人差し指で背中をツンと付いてやれば、サラマンダーはとっさに腕を振るってナックルで攻撃しようとする。
でもその動きも見切っていて、流れるようにその腕をいなして懐に入る。
まるでスローモーションのような時間の感覚を味わう中、サラマンダーと目が合う。
驚いているのか目を見開いていて、歯を食いしばっていた。
「あらイイ腹筋」
さらりと腹を撫でてから水平チョップをかまして地面に叩き付ける。
完全に遊んでるし完全にリンチです。
ベアトリクスは強かったけど、サラマンダーさんはそこまでだな。ジタンと一騎打ちして負けちゃうくらいだからね……
「ぐ、う……っ」
「ごめんごめん、大丈夫?」
流石に遊びすぎたかなぁって思って手を差し出したけど、ナックルで斬られそうになって後方へと避難した。
よろけながらサラマンダーは立ち上がり、肩で息をしている。
ジタンと戦ったときより明らかにダメージがデカい。
もう勝算は無いよねぇ。
「ねぇ。今から魔法を交えて戦うけど、あなたに勝算はあると思う?」
するとサラマンダーは負けを認め、また怪我だらけにしてしまったのでポーションを分けてあげた。
「あなたにちょっかい出した理由は、なんかジタンに因縁があるみたいだから面白そうだったってのも一つね。ひひ」
回復したサラマンダーに、食事の残りを差し出した。
「勝者の私の言うことは聞かなければならない、それが今戦ったルールだね。さあ、食べてちょうだい」
「……毒でも入れているのか?」
「かもしれないよ?毒で苦しんで死んでいく姿が見たいなぁ」
そう言ったのにサラマンダーはモグモグと食事を食べていく。
マジで死ぬことに恐怖は無いみたい。
「ま、怪我したキミが気になっただけだから、それだけね。じゃあね」
私はぴょーんと飛んでエーコの家に戻ってみたら、どうやらダガーが急に倒れてしまったらしい。
それからすぐに目を覚ましたんだけど、何か思い出したらしい。
そのことを話してもらったら、ダガーは六歳くらいまではマダイン・サリで暮らしていて、天変地異が起こったときに本当のお母さんと一緒に小舟で逃げたらしく。そしてたどり着いたのはアレクサンドリアだったんだろうという話しだった。
だけど、それから何故王女になったのか、角が無くなったのか、記憶も無くて何も分からないらしい。
「少しでも思い出したならヨカッタネ」
それから召喚壁に行って、毎日祈りを捧げていたことも話していて、少しずつだけど記憶が戻ってきていた。
「ダガー。おかえりなさい!」
エーコはそう言って笑い、村に帰ってきたダガーはただいま、と微笑んだ。
あんまりにも良い雰囲気なので、私は召喚壁を去って、エーコの家で先に一休みすることにした。
それから陽が昇って再びイーファの樹を目指すことになる。
エーコもついてくることになり、怖いものなしだね、何て話していたら、サラマンダーも顔を出した。
「何だよ、またやるってのか?」
ジタンも面倒くさそうに戦闘態勢に入るが、今回は違うようだ。
「勝者は生者、敗者は死者。お前もこの鉄の掟の中で生きてきたはずだ。だが昨日の行動は全く理解が出来ん。言え!殺さなかった理由は何だ!」
「理由ってのもなぁ。そんなに死なずに生きていることが不満なのか?」
「訳の分からん状態で生きるより、けりがついた方がマシだ。
昨日のお前の行動なら理解できる、敗者を従わせるのは勝者のみだ」
そして私に向かってそういった。
「私は殺すより負けた悔しさをバネにしてもう一回挑んで来てくれる方が良いんだよね。戦うのは楽しいから、殺してそこで終わりじゃつまんないよ」
そう言ったらジタン達数名が引いてた。引かないで。
「ていうか……あの後お前ら戦ってたのか?」
「うん、ちょっと面白そうだなって思って喧嘩売っといてボコった」
「ヴィエラほんと怖いな……」
「怖くないよー!それに、なんだろ、この人根はまっすぐだと思ったからさ、悪人では無いなって思って」
彼は指名手配されているけど、それは誤解で、実はトレノのキング家という貴族の用心棒をやっていたサラマンダーだったんだけど、キング家に盗みに入ったジタンにサラマンダーが対峙し、他の警備の者が来た瞬間ジタンがサラマンダーが盗みの首謀者だとホラを吹き、そのまま逃げていった。
サラマンダーは力があるのにそれを見せないと言うのが分からないらしく、ずっとジタンを追っていた様だった。
しかも、自分は濡れ衣だと言うこともしないでそのままお尋ね者になってしまうちょっとお茶目ちゃんなのよね。このツラで。
「お前ははっきりしているな、従えるために力を使う。お前らもソイツの手下と言うことなのか」
「え、いや……オレたち手下とかそういうのじゃないけど……」
「ならば何故つるんでいる」
「えーと、仲間だから?」
「仲間……?」
やっぱり一匹狼をやってきたサラマンダーさんには理解が出来なかったようで沈黙してしまい、ジタンはそうだと案を出した。
「じゃあオレたちと一緒に来いよ、行動を共にしてりゃ、理解できるかもしれないぜ?」
その言葉にダガービビエーコもびっくりしてたけど、命を狙ってきたやつに一緒に行こうって言うのはマジでジタンは心が広い。肝が据わってるよねぇ。
「それにオレたちはこれから一戦交えなくちゃならねぇんだ、あんたなら強い戦力になりそうだ」
「……そこの女を引き連れてもなお戦力を欲するのか」
「化け物みたいに言わないでくださいましー」
「オレをあれほど弄んでおいてそう言うか」
「いやぁ戦闘狂なら楽しんで貰えるかなって思ったんだけど」
「……あれほどまで差を付けられたのは生まれて初めてだ。いつかその首もらい受けるぞ」
「あれ?標的がジタンから私に変わってるぅ?」
「ヴィエラなにしたんだよ……」
「ちょっとお戯れを……」
「その戯れで殺されるかと思ったぜ」
「い、生きてるでしょー!さあ手下一号くん!今日からはジタンの言う通り一緒に行こうじゃないか!」
なんだかんだサラマンダーさん言葉のキャッチボール出来るじゃん、なじんでるよ。
「そう言えばなんて呼べば良いんだ?確か焔の旦那って呼ばれてたけど」
仲間になることが決まったが、名前が分からない。
彼は「サラマンダー」と答え、イーファの樹へと一緒に向かうことになったのだった。
「私はヴィエラ。ヨロシクね手下一号くん」
「…………」
手下一号くんと言うのに彼は無言。否定もしない。
目だけはこっちを見ているけど別に睨んでいるわけでも無い。冗談通じない。
「ご、ごめん冗談です。サラマンダーさん、嫌なら嫌って言って良いから……!主従関係は求めてないから!私たちは平等よ!」
「……何故平等にする必要がある。強者が弱者を……」
「あああああつべこべ言うな!逆らってこい!いつでも手合わせしてやるからいつでもうぇるかむだからね!!ほれパンチ打ってこい!」
そう言ったらパンチを打ってきて、それを拳で受け止めた。
私の方が遙かに手が小さいのに、彼の大きな拳はピタッと止まってしまった。
べちん!って音は大きかったけどね……
「いいパンチだね!フォームきれいだったよ!」
「……あんたに追いつくまでどれほどかかるんだろうな」
「一緒に戦っていけば経験値が上がると思うよ!」
それから他の皆の自己紹介も終えてマダイン・サリを出た。
まさかサラマンダーさんの目的が二個になるとは……
ジタンの見逃した意味とか、私の首とか……
サラマンダーさんとあんまり関わらないかと思ったけど、ちょっかい出したらえらいことに。
「で、何処に向かうてんだ」
サラマンダーさんには事の詳細は説明していなかったので、道中で話してあげる。
大陸の霧を止めたりしてたんだけど、それの大本の首謀者がいるから、ソイツが霧を止めたから姿を現すんじゃないかって言うことを伝えた。
サラマンダーは無言で聞いていて、頷くこともしてないけど話は聞いていると思う。
それからイーファの樹までたどり着き、去る時よりも霧が晴れてすがすがしい景色になっていた。
霧が無いっていいねぇ。
「新たな霧は発生していないな。ってことは、クジャもまだ来ていないってことか」
「少し待ってみよっか……あれ?上のアレ、銀竜じゃん?」
私が待ってみよっかって言った瞬間、遠くの空から飛行物体が確認出来た。
クジャが来たんだ。
「間違いない、クジャだ!ブルメシアで会った後、アイツは銀の竜に乗って飛び去っていったんだ!」
銀竜を追いかけて私たちもイーファの樹を登ろうと進んでいく。
以前の道は下へ向かった道だったから、別なルートを探して上へと進んでいた。
追いかけて行くと、クジャが上の方の幹に降りたのが見えて、そこまで登るには道という道は正直無かった。
「ねぇジタン、どうやって登るの?エーコここを登るのは自信ない……」
エーコが不安げにジタンを見上げ、確かにこのうねった幹を登っていくのはキツいだろう。
ほぼ崖登りに近い。
所々にある出っ張りに足をかけて跳んで登っていくのが理想だろう。
「何を迷う、自分一人で行きゃあいいじゃねぇか」
「サラマンダー、オレ一人で行っても意味が無いんだよ。皆アイツに言いたいことあるからな」
大体皆因縁があるんでね。
だけどサラマンダーはずんずんと幹を歩いて、ジタンに突っかかってくる。
その際に横切られたダガービビエーコ三人が足下のおぼつかない場所だったからふらふらとしていた。
「あぶないじゃない!」
エーコが怒るけどサラマンダーはガン無視である。
ちなみに私はジタンの後ろに居るので被害はありません。
「足手まといは捨てる!それが生き残るための鉄則だろう!?」
彼はそう言うが、ジタンは首を振る。
「オレたちにはオレたちのやり方がある」
「お前らに考えがあるようには見えねぇがな」
サラマンダーさん一々突っかかってくるねぇ。
「ジタンに負けたくせに文句言わないでよ!」
エーコが噛み付くが、「ガキは黙ってろ」と一蹴。
ひどい。
「そうだサラマンダー、貸しがあったよな?ここで返してくれよ。この辺にガルガン草が生えてるからガルガントが生息してると思う。一匹捕まえてきて欲しいんだ。そうすればここも登っていける」
確かにそうだろうけど、ガルガント捕まえてくるってのは結構無理矢理よね。
居るのかなーって辺りを見渡してみるけど、ガルガントの姿は見えない。
探すの大変よこれ。
「……そんなことするよりもガキ共を担いで登っていけば良いだろう」
そういってサラマンダーさんはビビとエーコを小脇に抱える。
「あんたは必要なさそうだな」
私を見てそう言うから、背中に担いでくれても良いんだけど?と笑ったら「断る」って言って幹を飛び移っていった。
断るって……ちと傷つくわぁ。
「そんじゃ、ジタンはダガーをお願いね」
私はサラマンダーの後を追って幹を跳んでいく。
ジャンプ力が売りのヴィエラさんは難無く上までやってきた。
後から来たけど私が一着です!
こうして皆無事に上に辿り着き、クジャを見据える。
銀の竜は美しいけど、その隣のクジャはやっぱり本能的に威圧感があった。
彼がどれだけ強いのか知っているから怯えているのだろう。
「……ヴィエラ、あの男はそれほど強いのか」
急にサラマンダーさんが話しかけてきて、ビクッと肩を震わせてしまった。
顔に出てたから声をかけたんだろうな……
「私が怖いって思うくらい強いよ……本能がそう感じてる」
私の言葉で場の空気がひんやりしてしまったけども、行かなきゃならねぇ!ってジタンは遠くのクジャを睨んだ。
幹を登っていき、クジャと同じ目線の高さまで登り、ついに対峙する。
「あなたがクジャですね……!」
ダガーは震える手を握りしめながらクジャに問う。
私は樹の幹の影にもたれかかってるサラマンダーさんと一緒に影に立っていた。
クジャと顔を合わせるのは怖くて出来なかった。
「……アンタ、何で隠れてんだ」
「私が怯えるほどの相手だからだよ……!!アレはシャレにならないくらいヤバいのよ」
「アンタがビビるほどの相手にあいつらが勝てると思えねぇがな」
「……勝敗が分かってても挑まないと行けないときもあるのさ」
影に隠れながら皆のことを見守っている。
ずるいけど、ジョブチェンジなんかが知られたら変なこと考えないか心配で……
今のところは召喚獣に入れあげているから、その他の力なんて見向きもしてないけどね。
こっちで話していると、クジャがブラネ女王をたぶらかして戦争を始めたのかと言う話をしていた。
「ボクはただレシピをあげただけだよ、魂を寝かせた霧という名のスープをコトコト煮込むんだ。そしてまごころ込めて作った黒魔法のボウルに入れて温めて……」
「やめて!!!」
クジャの言葉をビビが遮り、クジャはクツクツと喉で笑っていた。
「最後まで聞かないのかい?魂の残りカスからできた魂の無い人形の作り方をさ!!」
彼からしたらそりゃただの人形だ。
常に支配者だし、使う側だからこそ、他人の命何でどうでも良い。
彼は弄ぶのが大好きだから更にまずい。
「魂の残りカス?霧の事か?!」
ジタン達は霧がどういったものなのか知らないから、魂の残りかすというのが分からない。
あの霧が星へ還ることを許されず破棄された人々の魂の欠片だとはおもわないだろう……
「知りたくないと行ったと思えば今度は教えろというのかい?やれやれ注文が多いね。だけど、君たちが知るには早すぎる事だよ」
そうあざ笑って、でもダガーが「人の命を奪って何も感じないの!?」と言うが、クジャは更に笑った。楽しげに、馬鹿にしたように愉快に笑った。
イイ声だけどクズなのは救えない!
「かなり狂ってやがるな」
「でしょ?あれにちょっかい出したらシャレにならないからね」
サラマンダーさんも流石に狂気を感じ取れたらしく、ふうと溜め息を吐いた。
まぁ、彼には何も因縁が無いからどうでも良いんだろうけどもね。
「なら何で付いてきた」
「皆を抱えて逃げる事は出来るから、守るためだよ」
「そうか」
それ以上サラマンダーは口を開くことは泣く、私は皆さんの言葉に耳を傾けた。
「奪った数、多いと言えば君のママだね!手に入れなければ生きた心地がしないという、限りなく乾いた心を持つ君のママのこと!戦争がボクのせい?いや、違う違う!アレは君のママ自身が望んだ行為!!ボクは背中を軽く押しただけに過ぎない」
「嘘よっ!お母様は優しい人だったわ!あなたが惑わしたの!!」
ダガーは優しかったブラネ女王の事を想い、怒りで拳を握りしめ、だけどクジャは笑うだけだった。
「ふふ、舞台の幕が上がる時が来たよ!丁度良い、ボクの小鳥。君の信じるママの本性を見せてあげよう!第一幕、『醜い欲望の終わり』、開演だ!」
クジャが指さす方には、海の方からブラネの艦隊が連なっているのが見えた。
クジャを追い詰めるためにブラネ女王がやってきたのは一目瞭然。
あんな艦隊を出した挙げ句に大砲はこちらへ向いている。
「ねぇ、ここに居たら危ない気がするんだけどー」
私が小さく手を上げてそう言うが、皆さん全く聞いてくれません。無視しないで……
「君のママは大陸一つでは満足できないみたいだね!感動的に醜く愚かだと思わないかい?」
そしてクジャは喉で笑った後に、それも想定内だけどね、と呟いた。
それを聞いたジタンはどういうことだと睨み付けるが、君たちは指くわえて見ているがいいと、自分の邪魔をさせないように霧の魔獣を作り出して私たちに放った。
「くそ!クジャ!!待ちやがれ!!」
後を追をうにも霧の魔獣が邪魔をして進めない。
少し起き上がったワラジムシみたいな霧の魔獣の脚に上から突き刺されないように避けるが、とにかく足場が悪い。
「スリッピィレイン!」
最近この技ばっかり使ってる気がする。
霧の魔獣に水弾を当ててスロウをかけ、ついでに足下にも当ててビチャビチャにした。
「ビビ!ブリザドで濡れたトコ凍らせて!」
「分かった!ブリザド!!」
濡れた箇所が固まり、つるつるの幹になった。
「シャイニングエア!!」
そして光と共に突風で押し出し、霧の魔獣は幹から落っこちていった。
「よっしゃあ!連携最高だね!!ないすぅ!」
ぴょんと飛び上がって勝利ダンスを踊るけど、凍った幹は自分たちも進めないので溶かすのだった。
「止めないと……!」
ダガーは焦るが、サラマンダーはほっとけという。
「敵さんの潰し合いか……だったら放って置いて生き残った方と戦えばいい。だが、残るのはクジャだな」
「……サラマンダーのいうことにも一理ある、ここが巻き込まれる前に一旦退こう」
ジタンがそう言うけど、私さっきそう言ったのに無視したじゃんかあ
だけどダガーはブラネ女王を守りたくて、方法はないかと頭を悩ませていた。
「どうしてだよダガー、アイツは君から召喚獣も奪って戦争を起こしたんだぜ?」
「それでも死んで欲しくないのよ!!ジタンに分かってもらわなくたっていい!!」
彼女にとって、最後の家族だから、彼女は優しかったブラネ女王の事が忘れられなくて助けようともがいた。
自分が殺されそうになったというのに、それでもダガーにとっては母親なのだ。
そしてダガーはエーコにこのイーファの樹に封印されている召喚獣が何処なのか聞いて、場所を見るやいなや走り出してしまった。
「ダガー!!」
ジタンも追いかけ、私も軽く後を追いながらぼやく。
「召喚士一族が手が付けられないって封印したその巨大な力で何が守れるんだかねぇ」
そのぼやきを聞いていたエーコは、何が封じられているのか知らないらしくて知ってるの?と後ろから聞いてきた。
「海で召喚されたって言うのがヒントだよ。海の召喚獣は一体だけ、リヴァイアサンさ。大津波で全てを飲み込む強大な力では守りたいものも守れない。ダガー!リヴァイアサンは強すぎるけど取っといて損は無いよー(聞こえてないかー)」
「ヴィエラってどっちの味方なの!?」
「私は風吹くままに、気の向くままに、流れるだけさエーコ嬢」
ダガーを追って封印の地まで来たが、ダガーはその召喚獣と交感したけど、あまりの力強さに絶望して膝をついていた。
「こんな力じゃ……お母様まで……!」
「ダガー、ひどいこというけど……どんなに強い力を持っても、救えない命もある」
私も、カーゴシップでの黒魔道士達や、そのほかの黒魔道士達も助けるどころか殺してしまっていた。
あの中に、何人目覚めるはずだった子が居ただろう。
「……っ!!ヴィエラ!あの召喚獣でお母様を助けて欲しいの!!」
「……ゴメン、その、……クジャの前で使うわけには行かないんだ……」
「ヴィエラは隠し事ばかり!!クジャのことも最初から知っていたんでしょう!?クジャが何者なのか知ってて……!!」
彼女の拳が私の胸を叩いて、ダガーがぽろぽろと泣き出してしまった。
やっぱり、召喚獣が使えるって言うべきじゃなかった。言いたくなんてなかったんだ。
「クジャが何者かなんて私だって知らないけど本能的にやばいってのを感じているの……それに、ダガーから奪った召喚獣は誰が持っていると思う、ブラネ女王でしょ。クジャとその召喚獣、どっちが強いと思ってんの」
私はダガーの手を掴んで止め、ダガーの召喚獣の強さを語る。
クレイラを一撃で消滅させ、リンドブルム城では何もかもを吸い込み、そしてまだ見ぬ召喚獣がいることを。
「ダガーにはバハムートの力が眠っていたんだ、抽出されたあの部屋でその残りを微かに感じたから分かる。バハムートは文献にも載ってるほど恐ろしい力を持つって知ってるよね?」
「私に……バハムートが……?」
適当に鎌かけてみたら、本当に文献にバハムートのことが書かれていたみたい。
バハムートは強力な召喚獣だからね、アトモスのことを知ってるならバハムートだって残ってるだろうと思ったよ。
「その力を今ブラネ女王が握ってる、助けなんて居ると思う?」
「……お母様を信じるわ」
ギュッと拳を握りしめ、取り乱してごめんなさいと謝られたが、嘘をついている私が辛くて苦しかった。
でもここで全部クジャ達のことを話してしまえば、ガイアとテラの話になってしまう。
芋ずる式に色々暴露することになるから言うわけにはいかない。
飛んでいる銀竜に向けて砲弾や魔法を打ち続けているブラネの艦隊を見下ろしながら、私はダガーの肩を抱いてあげる。
大丈夫だよ、きっと、なんて嘘を吐いてあげた。
その時、海がマグマのように真っ赤に染まり、そしてその中から一体の召喚獣が姿を現した。
大きな翼に大きな二つの角……その姿はまるで悪魔の様であった。
「あれが……バハムート!?」
ダガーが驚き、そしてバハムートはイーファの樹の海岸沿いに居たクジャめがけて火球を放つ。
あれはメガフレアではないけど、何なんだろう。FFⅩでいうインパルスなのかなぁ。
「す、凄い力……!!」
驚くダガー。
その火球は広範囲を爆破し、焼き尽くしていく。まるで炎の津波のように辺りを飲み込んでいった。
「あれで誰を助けるってんだ……」
私がぼやけば、申し訳なさそうにダガーがうつむく。
「あの力だって取り戻さないといけないんだからね」
私の言葉にダガーは返事を返さないが、アレと対峙するってのは恐怖は覚えるだろうな。
その時、エーコがモグが何かに怯えているって言い、辺りを見渡す。
私たちも見渡してみても、これと言った変なものは見えない。
見えるとすれば強力な召喚獣バハムートくらいですね。
「竜王バハムートは最強の召喚獣よ!クジャが勝てるはず無いわ!」
私の腕から抜け出してエーコに目線を合わせるダガー。
だけどエーコはモグの感じている何かに嫌な予感がしているみたい。
「バハムートに勝てるような召喚獣もいないっちゃいないだろうがね」
アレキサンダーを除いて。
刹那、上空に真っ黒な雲がかかる。
「皆!上に何か……!!」
私が指さしたと同時にその黒雲からギョロリと目玉が覗いた。
そして広範囲に謎の光線を放ち、我々には届かなかったものの、なにやら艦隊も大混乱に陥っているみたいだ。
「な、なんなのあれ……!」
エーコは胸元のモグを守ろうと胸を押さえていて、ダガーは目を見開いたまま固まっている。
見覚えがあるだろう、それを見た唯一の生き残りなのだから。
「なんか変!バハムートが何か変な動きしてる!!」
私はわざとらしくバハムートに視線を移させ、そのバハムートはクジャを狙っていたはずなのに、いつの間にかブラネの艦の前に移動していた。
その口からは赤い光が灯り始め――
「お母様あああああ!!!!」
バハムートの息吹により、艦は吹き飛ばされてしまった。
それから次々と残りのブラネの艦隊を破壊していく。
それを見ていたら、壊されたブラネの艦から脱出艇が出ているのが見えた。
ブラネ自体はもう助からないけど、焼き尽くされてたわけじゃ無い。とりあえずまだ生きてるのは確認出来たので胸をなで下ろす。
それにしてもゲームのなかでつかったメガフレアとかと全然違って、ちょっと軽く使おうもんなら大地が壊れるわってくらい半端ない力だ。
こんなのポンポン使っちゃダメだよホント。
「おい!逃げた脱出艇にまた向かってるぞ!」
ジタンの言葉で「え?」って間の抜けた声が出た。
バハムートは去らず、一匹残らず消し去らんと言わんばかりに息吹を溜め始め、私は背筋が寒くなった。
原作通りじゃ無い、ちがう!!ブラネをここで殺させるわけにはいかない!!
「ジョブチェンジ召喚術士!バハムートッ!!!殴り落とせッッ!!!」
咄嗟だった。
息吹が放たれる前にバハムートを召喚し、空から降下したバハムートが両手を組んでバハムートの背中に拳を叩き付けて海面に落とした。
その衝撃でバハムートの息吹は空へと放たれ、誰も傷つけることは無かった。
「ヴィエラ!?」
驚く皆をよそに、私はバハムートに指令を出し続ける。
「クジャに対してインパルスで牽制!バハムートには肉弾と黒魔法で応戦を!!」
クジャめがけて光の球が飛んでいき、クジャは銀竜に掴まりその光を避ける。
その間に水面に落ちたバハムートの顔面に拳を叩き込んだ。
痛みでバハムートは吠えていて、それを黙らせるかのようにもう一発拳が入り、海へと沈んだ。
「インパルス牽制!」
すかさずインパルスでクジャの手が空かないように攻撃をし、そろそろこちらもチャージが貯まる頃だ。
「チャージ完了後、バハムートへメガフレアを放て!!」
言うと同時に力は溜まり、燃えさかるブラネの艦隊の延長線上にならない海岸に降り、バハムートは爪を大地に食い込ませ、背中のリングが回り始める。
「メガフレア、撃ぇえ!!」
そしてメガフレアは海面から出ようとしたバハムートに当たり、片翼をもいだ。
バハムートは吠え、そして光になって消えていく。
死んだわけでは無いが、逃げたに等しい。
あれくらいならしばらく経てば元に戻れるだろう。この世界の召喚獣の仕組みって分からないから、怪我したらそのままって事は無いよね?
心配ではあるが、インビンシブルからの光線が怖いのでさっさとバハムートを退かせないと。
「もう大丈夫です、危険です、急いでお戻りください!」
そう伝えればバハムートは空に向かって飛んでいき、魔方陣を突っ切って消えていった。
それを確認してから私はリュックの中身をぶちまけて頭からかぶり、クジャにバレないように隠れた。
「な、なにやってんだよ!」
「バレたくないの!!クジャが去ったら言って!!それまで私動けない!!こわい!!!」
本音をぶちまけてます。
角の付いた私を見たら、きっと私が術者だと分かるだろう。
今なら記憶にも残ってないただのケダモノくらいだろうから、そのままならばれない!!!
「ちょっと!さっきのあれは何!?バハムートって言ってたけど、なんでバハムートが二体居るの!?」
「古文書に描かれていた姿と異なっていたわ!どういうことなの!?」
「ううううやめてよおお訊かないでええ」
「ヴィエラ!これ以上隠し事するってのは流石にひどいと思うぞ!」
「人には言えない事だってあるんだよお、私は召喚士一族とかと全然関係ないのおおおウエエン」
どうやって誤魔化せば良いか分からない。どうやって説明していけば良いか分からない。
「……クジャはどこかへ飛び去ったぞ、もう見えなくなった」
サラマンダーがそう言い、私はリュックからゆっくりと顔を出した。
キラリと輝くエーコのような真っ白な角が私の額に生えていて、エーコは私とおんなじだと言った。
「……その、わたし……異世界から、きたんだ」
言うしかなくなって、ぽつりと吐けば、サラマンダー以外が驚いてた。
「……えっと、私の世界だと、召喚獣は祈り子様って呼ばれてて、その人たちの思いが形となった姿なの。だから、この世界の召喚獣と勝手が違って……ヴィエラもこの世界にはいないし……」
「い、異世界って、どういう……」
「迷い込んだんだよ私だってまさか異世界に来るなんて思ってなかったし、だったら楽しもうって楽しんでて……皆の力になりたくて頑張ってたけど……信用できないよね……ごめん」
皆に拒絶されそうで段々怖くなってきてぽろぽろ泣いてしまう。
言わずに最後まで行こうと思ってたのに、隠しきれなかった。
「……異世界からきたなんて……ごめんなさい、詮索ばかりして……」
ダガーが謝り、そして「ずっと助けてくれていたのに」と呟いた。
「お姉さんがどこから来たかなんてどうでもいいよ!お姉さんはいつも僕たちを助けてくれたじゃないか!」
ビビが駆け寄って、泣かないでって言うから、もっと涙腺が崩壊してしまってビビにすがるように泣いてしまった。
「そうだよな……ヴィエラがどこから来たかなんて聞く意味なかったはずなのに……ゴメン」
「クジャの一味とかって思えたんでしょ……しかたないよ……」
鼻声で言えば、皆に謝られてしまう。
なんかホントゴメン。
「何言ってんだ……信用なんてどうでも良いだろ、力でねじ伏せて従えりゃ良いだけだろう」
「サラマンダーさんそれは強引すぎます……」
彼の一言で私はアハハって笑えてしまった。
もうこっから召喚獣を出し惜しむことは無いし、流石にインビンシブルも去っただろう。警戒しつつ、もう一度バハムートを呼んだ。
「バハムート、周辺に敵が居ないか確認してください」
こちらに降りてくる前に上空から確認してもらい、インビンシブルもクジャも居なかった。
それから側に降りてもらい、ズズンと重たい音と共にバハムートは腕を組んだ。
「これが……バハムート?」
「この世界のバハムートと比べたら結構小さいけど、威力は申し分ないよ。融通も利くし」
近寄り、頭を下げ、そしてブラネの乗った脱出艇のところまで運んで欲しいとお願いした。
「乗せてもらいましょう、この人数なら腕に抱えてもらえるよ」
「うえっマジかよ」
「文句言わないで、下まで降りるの大変でしょ」
と言うことで腕に抱えられて滑空している。
「カーゴシップの時の召喚獣じゃダメなの?」
「ヴァルファーレは腕が無いから抱えてっての無理だし、背中に乗せるにしては多過ぎんのよダガーさん」
そして岸に着いていた脱出艇に到着して、バハムートには帰ってもらった。
脱出艇には虫の息のようなボロボロになったブラネ女王が乗っていて、運び出してケアルをかけるが、もうそんなものは効果がなかった。
今はそっとしておこうと、ダガーをブラネ女王と二人きりにしてあげる。
しばらく見守っていたけど、ダガーがわんわん泣き出したから、ブラネ女王は死んだんだと理解できた。
それからブラネ女王を艦へと運び、我々はアレクサンドリアに戻ることになった。
誰もダガーには声をかけることが出来ず、ほぼ誰も喋らない。沈黙だけが支配した。
私は異世界から来たことを皆に話したことで、皆からのわだかまりというのは無くなったようだった。
これからクジャとの戦いが始まっていく。
下手に改変しないよう彼らを見守りながら、私も生きていこう。