私のいつか帰るところ   作:にくはるまき

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現在イプセンの古城手前まで執筆しました。

サブタイトルはいつも場所を書いてるんですけど
今回トレノ〜アレクサンドリア〜リンドブルムなのでタイトル長いから途中で切りました……

アレクサンダーって書いてるから、どこのシーンなのかわかるだろうし(笑)




トレノ〜アレクサンダー〜…

 

 

トレノに着いた我々は各々行動するようでぞろぞろとトット先生のお宅から離れていく。

ビビもこのタイミングで一度クワン洞に顔を出すんだっけな。

 

私も散歩がてらぴょんと建物を跳んでいき、街を見下ろす。

リンドブルム、アレクサンドリア、ブルメシア三国がボロボロになったといえど、この街の活気は変わらない。

いつも通り貴族が闊歩し、煌びやかに宝石達を輝かせている。

それを眺めながら屋根を渡り歩き、ふと脚を止めた。

そう言えばこの酒屋でギルガメッシュとごはん食べたなぁ、何て思い出しながらふふっと笑ったら、息を乱して走り、そして品物が入っている木箱の影に身を潜めた何者かがいた。……ギルガメッシュだ。

何やってんだろ?と走ってきた方向を見たら、クイナさんが居た。

 

「見失ったアル……!美味しいものを食べ損なったアル!!!お腹すいたアル……」

 

クイナさんはそう言ってもと来た道を引き返していき、そして水面をのぞき込んで数秒、飛び込んでいった。

南無…………

 

「はぁ……っは、死ぬかと思ったぜ……」

 

ギルガメッシュはクイナさんが居なくなったことを確認して出てきたが、その隣に私が上から降りてポンと肩を叩いたら「ぎゃああああ!!」って叫んで飛び上がってた。

 

「あはははは!酷い怯えようじゃん!!」

 

「あれ……お前確か……ヴィエラだったな?びっくりさせんなよー!」

 

寿命縮んだぜ……て胸に手を当ててるから更に笑った。

 

「久しぶりに会ったことだし、ちょっと飲も!もちろんおごるから!」

 

「やったぜ!」

 

席について注文し、私は肉の串焼きを食べておいしさににっこり微笑んだ。

クイナさんが作った料理も美味しいけどこっちも美味しいー!

 

「ヴィエラ聞いてくれよ、この街にあの賞金首の焔色のサラマンダーがいてよ。それがガキ連れてたんだぜ!アイツそんな趣味があったのかって驚いちまったんだ」

 

ガキを連れている。恐らくエーコのことだろう。

 

「んで、その子を誘拐してサラマンダーさんをおびき出して賞金もらおうかなって思ってたのかな?」

 

続けて出された野菜のグリルにフォークを刺しながらモグモグしていると、ギルガメッシュはそのガキに護衛がいたんだ……さっきの白くてデカいやつ……と嘆いていて、ドンマイと言ってお酒を勧めた。

 

「そういうときはパーッと飲んで忘れよう!キミは運が良いよ?だってただで飲ませてもらってるから!」

 

「そうだ!オレは運が良い!!」

 

そしてジョッキの酒をぐいーっと飲んでニッコリ微笑んだ。

 

「オヤジー!あと三杯追加!」

 

そしてぐいぐい飲んでいくギルガメッシュ。

これ初めて会ったときもこうやって飲んで潰れちゃったよな。今回は私、またアレクサンドリアに戻らなきゃ行けないから、彼の面倒を見ている訳にはいかないんだよね。

私の分は食べたし、そろそろおいとましますか。

 

「ごちそうさま。5千ギル置いておくから、払っておいて」

 

「なんでぇ、もう行くのかー」

 

ちょっと出来上がってるギルガメッシュさんは4本の手全てにジョッキを握っていて、カメラがあれば撮りたいくらいふ抜けた絵にふふっと笑みがこぼれた。

 

「まだやることあるからね、また機会があったら会おう」

 

多分……ダゲレオとかくらいかなぁ

 

「じゃぁねギルくん」

 

「おー」

 

と、外に出たらサラマンダーさんと出くわした。

飲みに来たって感じではなさそう。

 

「お前でもこんな飲み屋には入るんだな」

 

「んん?つまりもう少し小洒落たトコで飲んでるイメージって事で良いのかな?」

 

「ごろつき共が来るような店だからな」

 

「そんなごろつき友達と飲んでたのー」

 

「お前に友達が居たのか……」

 

「サラマンダーさん手合わせしたいのかな?ん?」

 

「今はやめておこう」

 

今のは彼なりの冗談だったのかなぁ。

サラマンダーさんはそのままどこかに歩き去って行き、私は酔いを覚まそうとカードスタジアムの屋根の上でのんびり風に当たった。

スタジアムを出入りしている人を見ていると、ジタンも参加しているのか何度も出入りしていた。

 

すると大きなブリ虫を連れた船乗りエリンが現れ、外野がブリ虫気持ち悪いといっていて数歩下がっていた。

私はぴょんと飛び降り、久しぶりに大公へと挨拶した。

 

「こんばんは、今宵は良い風が吹きますね。さあ勝敗はいかに」

 

「おおヴィエラではないか、まったく、この姿ではかっこがつかんブリ!」

 

ブリブリブリブリと文句を垂れながらスタジアムに入っていき、そして戦いは始まる。

ジタンは決勝まで上り詰めていたようで、ブリ虫マスターと激しいカードの攻防の末、惜しくも負けてしまったのであった。

 

「ジタンドンマイ。あんまりカードゲームやってなかったからイイの集まってなかったもんね」

 

負けたジタンに言えば、ブリ虫マスターに少し引いていた。

うん、カード全部ブリ虫って大分やばいよね。

と、引き気味に何でシド大公がここに居るのか聞いてみたら、彼がチャンピオンだったらしい。

自分の姿がブリ虫なのになぜカードまでブリ虫デッキにしてしまったんだ……

 

「実を言うと大会に出る以外にも、他にもちょっとテストしたかったことがあったブリ。新型の飛空挺、ヒルダガルデ2号の試運転ブリ」

 

「霧が無くても飛べるって言う、あの新型飛空挺か?」

 

元々シド大公は霧ではない動力のものを求めていて、ヒルダガルデ1号も同じように霧機関を使わない最新型だったのだが……嫁さんを怒らせて乗って出て行かれてしまったと言う悲しいお話……

 

「そうブリ、まだ速度を上げることは出来ないブリが、何とかここまで来られたブリ」

 

「何で今頃そんなテストを……」

 

戦争を引き起こしていたブラネは死んだし、もう戦争は終わったから、新型の飛空挺を急いで作らなくても良いのでは?とジタンは言うが、シド大公は何か嫌な予感がしているらしく、気が抜けないらしい。

 

気が抜けないけどカードゲームはしているというのはツッコまない。

 

「心配要らねぇさ、ご立派なガーネット女王様が何とかしてくれんだろ?」

 

何だか嫌みったらしく言うジタンをジロリと睨めば、ぷいっとそっぽを向かれた。

なんだかんだ、まだまだジタンは子供だもんな。

 

と、その時エーコが「たいへんたいへん!」と慌てて走ってきた。

トレノのモーグリから、アレクサンドリアが襲撃されている話を聞いたらしく、急いで助けに行こうと言うことになった。

 

どうやって伝わったのかは知らないけど、モグネットで大変だ!って手紙が届いて知らせてくれたのかもしれない。

 

私たちは急いでアレクサンドリアに向かうため、街に散らばってた仲間達を収集し、ヒルダガルデ2号に乗り込んだ。

ヒルダガルデ2号はふらふらとした動きで空へと浮かび上がり、ガルガントのゴンドラのようになんだか不安になる揺れと、時々鳴る軋みや異音が何だか怖い。

 

「おいおい……この船大丈夫なのかよ……」

 

皆も不安になりつつ、だけどガルガントで行くよりも早いとは思うから乗っているのだけれども……これは怖い。

 

「ヴィエラ、バハムート呼んでくれよ……」

 

「いやこの人数はちょっと……。あとジョブチェンジに制約があって、24時間経たないと召喚士にはなれないんだ。時間的にはあと……3時間くらいかも」

 

「そんなに待ってられないぜ」

 

すると私とジタンの会話を聞いていたシド大公が、バハムートを呼べるのか!?と驚いていたが、召喚士の力をちょっと借りられるだけだよと言っといた。

 

シド大公が詳細を聞こうとするも船は更にガタガタと揺れ始め、船員に色々指示していて忙しくなってしまう。

 

そうしている間にビビの表情も段々と悪くなっていき、高いところが苦手だというのに船が揺れまくっていて船酔いしてしまったようだ。

 

「ボク……何だか、気分が悪く……なってきた……」

 

ふらふらしながら我々のいる船首の方へ歩いてきたけど、倒れそうである……

そしたらサラマンダーさんが船室で休んでくるといいって優しい気遣いを見せてくれて、私はサラマンダーさんはやっぱり根は悪い人じゃないんだなって思ったのだった。

 

「う……うん。そうするよ……」

 

ふらふらしながら船室に向かおうとしたその時、エーコの横を通ろうとしたらエーコから何か光が漏れた。

 

「エーコ?なんか光らなかった?」

 

ビビは首をかしげ、エーコはハッとしてダガーの声がしたと呟き、そして船は限界が近いのか更に大きく揺れ始めた。

エーコはそんなこと気にしないで船首まで走って行き、聖なる審判の時が来た!と船から飛び降りて行ってしまった。

 

がたつく船に気を取られていて、いつの間にかアレクサンドリア城の真上にいたことに気が付いた。

ジタンは飛び降りたエーコをみて取り乱していたが、私が大丈夫だと肩を掴んだ。

 

「エーコは聖なる審判の時が来たって言ったでしょう?それはとある召喚獣を呼び出すためなの。召喚獣で悪しき道をいくものは、聖なる審判……大いなる召喚獣でお仕置きよ!……ってね」

 

なんて冗談をかましていたが、ホントに船が爆発し始めてプロペラが止まり、プリマビスタが魔の森に落ちたときみたいに墜落していくのであった。

 

何とか城の側に落っこちて、そして皆たいした怪我もして無くてヨカッタネって言っているけども、ダガーやエーコが心配だといって急いでアレクサンドリア城を駆け上っていく。

こうやって皆で登っていくのは、ダガー奪取大作戦の時みたいだ。

 

「上って言ったって何処良きゃ良いんだ!」

 

ジタンも城の内部を分かっている訳じゃ無いから、どこから行けば良いのか悩んでいたので、ゲームで見たことある景色になったから、私がこっちじゃん?って引っ張っていって、城の上の祭壇までやってくることが出来た。

 

「さあ、二人を助けに行くブリ!」

 

シド大公が祭壇への階段を登ろうとしたが、ジタンが止めて行く手を塞ぐ。

 

「ここは俺が行く!皆は他の人たちを助けてやってくれ!」

 

ジタンは自分だけで行くと言い、ビビがボクだって一緒に……と零すが、ジタンはゴメンと頭を下げた。

 

「今オレはダガーのことで頭がいっぱいで、ダガーのことしか考えられないんだ……だから、そんなオレが他の皆を助けるなんて、自信が無いんだ……」

 

ジタンは自分の思いを吐き出し、サラマンダーさんは「情けねぇやつだ」と言って去って行った。

 

ジタンだけで助けたいという気持ちを汲んで、この場は任せることになり、私たちは城に残っている人たちや街の人々を助けようと動き出した。

 

「お姉さん!この召喚獣のこと、分かる!?」

 

走りながら後ろでビビが質問したので、全ての攻撃を無に還し、悪を滅ぼすバハムートより遙かに強い召喚獣だと話せば、街の人々を城に集めた方が良いと言うことになり、急いで救出活動が始められた。

 

「城って言ってもなるべく地下がいい!召喚獣の戦いはあまりにも激しすぎる!」

 

私の言葉で城の近くに居たもの達を中に避難させ、道は長くなるがガルガントの穴を歩いてもらうのもアリだろう。

そうやって街で活動していくと、風が一陣頬を撫でた。

 

振り向き、見上げれば、美しいアレクサンダーの翼が空を覆った。

生で見るとあまりの迫力に魅入ってしまう。何て美しいんだろう。

 

他の皆も同じで魅入って居たが、バハムートはアレクサンダーへと攻撃を始める。

だがその火炎は全て真っ白な翼にかき消され、そして大きく羽ばたいたかと思えば無数の光が放たれてバハムートを追う。

当たれば爆発し、バハムートは宙を飛び回り光から逃れようともがくも、逃れきれず光によって消し飛ばされてしまったのだった。

 

「バハムートをやっつけた!やった!!」

 

近くに居たビビがぴょんぴょん跳ねているけど、私はこれから起きる悲劇を思い出し、まずいといってその場にいる皆に城の地下へ走れと叫んだ。

 

「ど、どうしたのお姉さん……」

 

「嫌な予感がするんだ……はやく!!」

 

私も早く城の中に逃げないと、インビンシブルからの攻撃でこの辺りが全て破壊されてしまう。

瓦礫の下敷きも、インビンシブルからの光線もノーセンキューです!!

 

ビビを掴んで私は死に物狂いで地下へと駆ける。

ガルガントステーションに着いた途端、大きな地響きが鳴り響き、立っていられないほどの揺れに避難していた住民が声を上げた。

恐らくインビンシブルからの攻撃を受けてアレクサンダーが消滅したのだろう。

 

「……ゆ、揺れがおさまった?」

 

「私見てくる!」

 

「え!ボクも行くよ!」

 

私はビビとガルガントステーションを出て城内へ向かえば、フライヤや、サラマンダーさんとも合流し、彼らも何とか無事だったみたい。

一緒にジタン達を探せば、廊下で倒れているジタンダガーエーコ三名を発見し、気は失っていたけど無事ではあった。

 

「……一体、何が起こったと言うのじゃ」

 

呟くフライヤ。

中に居た我々は誰がどんな攻撃をしてきたのかすら見ることはかなわなかった。

我々は破壊されたアレクサンドリアに留まる訳にはいかないので、ブラネの艦隊の一つであるブルーナルシスという船舶を使い、リンドブルムに向かうのであった。

 

 

……それから数日、エーコやダガー、そしてジタンも目を覚ましてこれから先のことを話し合うべく、リンドブルムの城の会議室に皆で集められた。

その中にはダガーだけがおらず、エーコが探しに出て行き、話はそのまま進められる。

アレクサンドリアが壊滅状態になり、復興まで時間がかかること、そしてやはりクジャの目的が分からず、やつがどこに居るのかを突き止めなければならないと言うことになった。

 

「武器商人だっていうなら、武器を買ってくれるアレクサンドリアまで破壊することはないだろうし、もし召喚獣の力を欲していたのであれば、やつは何と戦っているんでしょうねぇ」

 

私は小さなヒントを交えながらクジャって何だろうねと知らぬフリをした。

 

「ヤツの力を見ただろう、ヴィエラですら震え上がるほど強い相手にどうしようってんだ」

 

サラマンダーさんはそう言い、ジタンもそれなんだよなぁと解決策が見つからず悩んだ。

 

「そのクジャなんじゃが、ワシはアレクサンドリアで信じられない光景を見たブリ!最後の爆発の直前に、ヒルダガルデ1号に乗って逃げたブリ!!しかもヒルダガルデ1号には”普通に喋っている”黒魔道士兵がのっていたブリよ!」

 

シド大公がそう言い、喋っている黒魔道士達となると、黒魔道士の村の皆なのかもしれないと、ビビは震えていた。

 

私はそこよりもシド大公が何処でそのクジャが逃げていくのを目撃した挙げ句に、インビンシブルからの攻撃で街がめちゃくちゃになったのに無事だったのが気になるとこなんだけど……

シド大公は一緒に城の中には行ったし、そこから郊外まで離れるには時間がかかるだろうし……街中だとしてもあのデカいヒルダガルデ1号を駐められる場所無いだろうし何処で呼んだのか分からんから……うん、ツッコまないでおこうか。

必要なのはシド大公がヒルダガルデ1号とクジャと黒魔道士達を見たことなのだろうから。

 

それからヒルダガルデ1号がクジャの手に渡った経緯を調べないといけないのだが、以前我々には「何者かがワシにブリ虫になる魔法をかけ、ヒルダガルデ1号と妻を盗まれた」と言っていたので、ここで訂正するそうだ。

 

街に居た美人に見とれていたら優秀な魔女の嫁が嫉妬してブリ虫になる魔法をかけてヒルダガルデ1号に乗って出て行ったと話し、恐らくその際にクジャに奪われたのだろうとシド大公は言った。

 

だが、クジャから飛空挺と妻を取り戻そうにも、こちらには足が無いのである。

ヒルダガルデ2号も全壊してしまってもはや直すことも出来ない。

新たな飛空挺を作りたいのだが、あいにくブリ虫の姿では設計図がまともに書けず建造は難しいという。

そこでトット先生の知恵を借りて、ブリ虫の姿から人間に戻る方法を聞こうと言うことになった。

 

魔の森の石化を直す白金の針を持っていたり、マダイン・サリや召喚獣ことも詳しいトット先生ならその魔法も何とか出来るだろうという。

 

その時、エーコが大慌てで会議室に入ってきて、ダガーが喋れなくなった!と知らせてくれた。

会議は一時中断になり、心配になった面子で客室に居るダガーに会いに行く。

 

私も流石に行かないのは酷いと思って付いていき、トット先生が診察して、失語症と判断された。

 

「立て続けに悲しいことに見舞われ、心に深い傷を負われたのが原因でしょう……」

 

トット先生はうつむきながらそう言い、ジタンとスタイナーさん、エーコも悲しそうな顔をした。

 

「おい!ダガーはずっとこのまま喋れないままなのかよ!」

 

「……いや、これは一時的なものですが、いつ話せるようになるのか明言することはできませぬ。姫様の心の傷が癒やされれば、お言葉を取り戻されるでしょうが……」

 

トット先生がそう言うので、私はダガーを抱きしめてポンポンと背中を撫でた。

 

「ダガーはさ、姫様だから頑張んなきゃ、女王になるから頑張んなきゃ、召喚獣を取り戻さなきゃって頑張りすぎなんだよね。たくさんたくさん失って、大事なものも守れなくて、だから更に頑張んなきゃってなってるんだよ」

 

ダガーの肩が段々と震え始めた。

泣くのもずっと我慢してたもんね。

 

「たくさん泣いていいんだよ、自分の気持ちに嘘ついちゃダメってエーコも言ってたでしょ?ダガーはたくさん辛い目にあった。いいんだよ、泣いて。支えてくれる仲間がいっぱい居るでしょ?」

 

そう言ったら声は出てないけど、震える息と涙が私の肩を濡らしていった。

 

それからジタンはここは任せると言い、クジャのヤローをぶっ飛ばさねぇとと怒りを露わにしていた。

ここまで全部クジャが手を引いていた。黒幕であるクジャをやっつけないと!と息巻いてトット先生と一緒にまず飛空挺を作るためにシド大公を戻そう!となった。

ジタンとトット先生は部屋を出て行き、スタイナーさんは嘆き悲しんでるし、すぐ泣き止んだダガーは話せないからただうつむくだけだった。

 

何か気を紛らわせるものって無いかなぁ……

 

「……ねぇ、気晴らしに空飛ばない?」

 

「…………!?」

 

ダガーは目を見開いていて、私は目の前で召喚士へジョブチェンジする。

 

「流石に我々単独でクジャを探しに行こうって言うのは無しで、ちょっと遊びに行こうぜって事。もう一度訊くよ?一緒に空飛ばない?」

 

そしたらダガーはゆっくりと頷いたので、エーコには嘆いてるスタイナーさんを任せてダガーの手を取った。

見張り塔へと登っていき、そして望遠鏡のあるとことまでたどり着いてから、ヴァルファーレを呼び出した。

 

「カーゴシップの時はあんまり見られなかっただろうしね。二人だったら乗れると思う。大丈夫ですか?」

 

ヴァルファーレに聞いてみれば、うんと頷き、早速ヴァルファーレの背中に乗って空を飛んだ。

私の後ろで私の腰に掴まっているダガーの手が強くなったけど、周りを見てごらん!といって世界を見てもらう。

 

霧が晴れていて大地がキレイに見渡せる。

とりあえずアレクサンドリアとブルメシアには近付かないように、世界を飛び回る。

 

「こうやって飛び回れる召喚獣ってダガーにもエーコにも居ないと思うよ!良いでしょー!」

 

私はゲームでの画面と違ってリアルで綺麗な景色に私も見惚れてしまった。なんてキレイなんだろうか。

 

しばらく飛んだ後、霧の大陸から出て行き閉ざされた大陸に向かう。

何でかというと、輝く島を見せてあげたかったからだ。

あそこはとりあえずキレイな場所だから、観光には良いだろう。

 

「見てダガー!島が光ってるよ!!」

 

ダガーは返事が出来ないのでぎゅ、ぎゅと私の服をにぎって返事を返した。

 

「不思議だねー!街はあるけど、今回は空の散歩だから入らないよー」

 

それからダゲレオの上も通ったり、忘れられた大陸の上も飛んでいく。

ここには建物がほぼ無いけど、知らない大陸に「冒険って楽しいねー!」って笑ってあげた。

彼女も知らない世界に、少しでもわくわくしてくれたら嬉しいな。

 

そしてある程度飛び回り、日が段々傾いてきた。

夕方になりそうな時間になったので、リンドブルムまで戻る。

 

だけど寄り道でチョコボの森に降りてもらい、森の中にいるチョコとメネに久しぶりに会ったのだった。

 

「クポ!久しぶりクポねヴィエラ!隣はお友達クポ?」

 

メネはチョコの隣から飛んできて、ダガーにこんにちはと挨拶をした。

ダガーはぺこりと頭を下げ、私は彼女はちょっと声は出ないんだけど気にしないでねと説明しておいた。

 

「ダガー、チョコは人見知りだからギサールの野菜をあげて懐かせて」

 

いきなりのチョコボのふれあいに戸惑っていたけど、ダガーはギサールの野菜を受け取りチョコに歩み寄る。

チョコも警戒気味だったが、野菜の匂いに負けて、差し出されたギサールの野菜をパクパク食べて喜んでいた。

 

チョコチョロ過ぎんだろ。

 

「メネ、ここ掘れチョコボやりたいんだけど、前金で一万ギル渡すわ」

 

「多いクポよ!?い、いいけどクポ……」

 

そしてダガーにはチョコの上に乗ってもらい、チョコと一緒に穴掘りを始める。

ダガーは気になる場所を指さし、そこを掘ってもらい出てくるポーションやフェニックスの尾などを見つけて笑顔になってた。宝探しに夢中になっていてくれていて、チョコにも笑いかけていてホッとしたよ。

 

しばらく掘ってもらっていたら、ハイポーション、エリクサー、万能薬やアンクレット、カチューシャを手に入れたらしく、土まみれになっているそれらを抱えてニッコリ笑った。

 

「たくさんとれたね!すごいや!リンドブルムに戻ったら洗ってもらおうね!」

 

そしてチョコ、メネと別れ、チョコボの森から出て、私はふふっと笑ってからまた召喚獣を呼び出した。

 

「イクシオン!!」

 

黒い空間が現れ、そこから杖で雷の綱を引くようにイクシオンを引っ張り出す。

これもこの世界に居ない召喚獣だから、初めて見る召喚獣にダガーは目を輝かせていた。

 

「雷を司ってるんだ、背中に乗せてもらおう」

 

イクシオンの背中に乗せてもらい、今度は高原を駆け回る。

流石に崖は登れないので走れる範囲は決まっているけど、空を飛ぶのとまた違った楽しさがあるだろう。

 

「チョコボに乗ったときより速いでしょ!イクシオンもっと速くお願いしますぅ!」

 

速度を上げてドリフトするようにカーブしたり、ダガーは怖いのかギュッと掴まっていて私だけケラケラ笑っていた。

 

「さて、日が沈んじゃうからそろそろ帰ろうねぇー!!イクシオンっっリンドブルムの入り口までおねがががが」

 

速すぎて呂律がおかしくなってしまっていたが、理解してくれたみたいで地竜の門まで走ってくれたのだった。

 

イクシオンから降りたらダガーがぐったりしていて、振り回したことを謝れば、声は出てないけどケラケラとダガーが笑った。

かなり豪快なことしたもんな今日は。

世界を先に飛び回り、チョコボに乗って掘りまくり、イクシオンで爆走し……

 

「中々出来ない体験だったでしょ?」

 

コクリと頷き、そしてダガーは私を指さしそして今度は自分を指さす。それから指で一を作ってから、手を伸ばして空を指さした。

 

「……もう一回私と一緒に空を飛び回りたいって?」

 

うんと頷いて、「こんど」と口が動いた。

 

「また今度飛ぼう!それと、また見せたことの無い召喚獣も紹介してあげるね!」

 

ダガーは微笑み、二人でリンドブルムの城に戻ったら勝手に外に出て行ったことをめちゃくちゃ怒られるのであった。

 

「だって引きこもってても億劫だなぁと思ったんでぇ、召喚獣に乗って世界中飛び回ってからチョコボの森でお宝発掘してましたぁ」

 

「お宝発掘……だからダガー泥まみれなのか……って、うわ、エリクサーとか掘ったのか!?凄いな!!?」

 

戦利品を見てジタンが驚き、ダガーはふふんと微笑んだ。

それからとりあえずお風呂タイムになり、そして会議は再開される。

 

するといつの間にかシド大公がブリ虫からカエルの姿へと変わっていたのであった。

私たちが飛び回っている間に元の姿に戻ろうとしてみたが、なぜかカエルの姿になってしまったという。

結局飛空挺を作ることは出来ないという事になり、クジャ捜索にアレクサンドリアから脱出したときに使ったブルーナルシスという船舶を使うことになった。

 

「当ては無いからな……まずは黒魔道士の村に行く方がいいな。ダガーはどうする?」

 

ジタンが聞けば、ダガーは一緒に行くという素振りを見せた。

 

「エーコや私が一緒だから大丈夫さ、一緒にいこう」

 

「わかった、行こう」

 

ジタンの言葉に皆がうんと頷き、皆で港へと向かうのであった。

 

 

 

 

 


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