勢いで書き始めて、エタらないように急ぎ目で打ち込んでおります……
誤字脱字めちゃくちゃ多いと思いますがお許しください……
とにかく勢いのまま打ってます。筋、オチは考えてあります。
毎日が苦痛だった。
毎日毎日決まった時間に帰れず休みも返上、朝も早くて眠ってる時間も短い。上司は怖いし言う事があべこべだし仕事を押し付けてくるし文句言うと長いし。同僚もどんどん辞めていって、辞めた分更に仕事が増えていくのを、残った同僚達と終わらせて行く日々。
なのにいくらやっても仕事は終わらなくて終わらなくて終わらなくて終わらなくて終わらなくて終わらなくて…………
今日は終電まで逃してしまい、しまっている改札口を見つめながら呆然とする。一緒にいた同僚は彼氏の家に行くと言ってタクシーに乗って行った。
私の家は電車で30分なのでタクシーは困るから、今日はネカフェに泊まるか、と、踵を返して進んだ。
こういう事は月に5、6回あるから慣れている。
行きつけのネカフェがあるのでそこに向かっていたのだが、ビルとビルの間に小さな鳥居とお社が見えた。
こんな所に神社なんてあったかな?なんて思いつつ呼ばれるようにそこへと足を踏み入れる。
深夜だし、誰もいないせいか少し怖い。なのになぜか鳥居をくぐりお社を覗き込む。掃除されているのかとてもキレイではあったが、古ぼけた賽銭箱さなどを見るとやはり最近作られたものではないのがわかる。
お社の中には小さな丸い鏡が置かれていて、暗いので光を反射することはなく、私の顔すら写すことはなかった。
とりあえず何かの縁だと思い、お財布から小銭をいくらか取り出して賽銭箱に入れてみた。
コツンコツン、と何も入っていなかったのか板にぶつかる音だけが響き、ちょっと寂しく思いながら手を2度叩いてから手を合わせた。
今思う事はただ一つ、「自由になりたい。どっか異世界転生したい」である。
ここ最近は異世界転生物が流行っていて、大体は社畜の人が飛ばされていたりするし、もう私も自由になりたくてこんなことを願ってしまっていた。
ちょっと気晴らしに、ツイッターで愚痴をこぼすような気持ちでお願いをしただけだったが、その時突然お社の中の鏡が光を放ち、眩しさに目を開けていられなくなった。
光が眩しすぎて目が痛い。バ○スを食らったム○カみたいになってしまう。目が、目がぁぁ。
『その願いを叶えて差し上げましょう』
まだ光り輝く中、透き通るような声が聞こえた。いきなりの怪奇現象もあり、流石に背筋が寒くなってしまう。幽霊とかそういうの結構苦手なんです。
『我が社を見つけられたのも、何かの縁……あなたの願いを叶えましょう。何処が良いでしょうか。私は俗世の物には疎いので、指定していただければ案内いたしましょう』
「……え?ホントに言ってる?私疲れすぎて夢でも視てんのかな……あはは、じゃあ、この前久しぶりにプレイしたFF9ってゲームの世界に行きたいな」
子供の頃に初めてクリアした思い出のゲーム、私の青春である。
幼い頃、これのまねをして木の棒を振り回したり、魔法を唱え、宝石に興味を持ったり星座に興味を持ったり色んな事を教えてくれたゲームだ。
社畜だけど、これのリマスター版が出るって聞いて速攻買ってムービーの美しさに泣いた。お陰で寝る時間が無くてしばらく飲み物がモンエナになったのを覚えている。流石に30連勤の中での3徹は道端に倒れて搬送されたなぁ……
そんな思い出のゲームの世界に行くのが私の望みだ。
夢の中だけでも良いから、この世界に触れてみたいんだ。
「あ、ちなみに何かしら力が欲しいです。ただの一般人で行ったらつまんないですー。異世界転生と言えばチートですから!」
どや顔して胸を張るが、ちょっと目を開けちゃってまたム○カになった。目がぁああ。っていうかいい加減光りどうにかしてくれませんかまぶしすぎるんですけど。
あんまりにもまぶしいから背を向けたら、そこは何も無い暗闇が広がっていて、引きつるような悲鳴を上げてしまった。
私の居た路地じゃ無い。何も無い暗闇……なにここ。
『チート……とはなんでしょうか』
困惑している私と、知らない単語に困惑している主さん。私はまぶしいけど背を向けて話すのは失礼と思い、目をつむりつつお社の方を向いた。
お社の主にチートは通じなかったので、誰よりも力も能力も兼ね備えることです。と言えば、なるほどと返す。
『では具体的におっしゃってください、どんな力をお望みですか』
「うーん、ジョブチェンジってのが欲しいですね。ジョブチェンジ出来れば色んな職業になれるから、剣士でも魔法でも使えるんで楽しめそうです!」
『ふむ、では媒体となる物語などを教えてください。あなたが使えるようにしましょう』
設定するのに結構細かいんですね……
「FFにはTA(タクティクスアドバンス)って言うのがありまして、そこの職をすべてジョブチェンジで使えるようにしてください。……あ、あと召喚獣って言うのがあるんですけど、私だけFF10の召喚獣を使えるようにして欲しいんです(バハムートのパンチかっこいいし、イクシオン乗りたいし、アニマしゅき)」
『要望が多いですね』
「訊かれたから答えたのに!?」
確かに注文が多いと思いますけどもね!!
『TAのジョブ、10の召喚獣を使えるようにする、ですね。流石に数多の力を代わる代わるいつでも使えるようになるのは、私の力では限界があります。職が変えられるのは24時間に一度です。職を変わってから24時間後、です』
「はーい、ありがとうございます。これでいい夢見られそうです」
『それではいってらっしゃいませ』
そして光は無くなり、目が慣れたと思えば知らない高原にたたずんでいた。
夜空には赤と青の月が二つ浮かんでいて、爽やかな風が頬を撫でる。
…………え?嘘でしょ、夢じゃ無いの?
頬をつまんで引っ張ってみれば、痛みを感じる。夢じゃ無い。
気が付けば服装も替わっていて、腰にはレイピアが下がっている。
何だか踊り子みたいな服装だなと思って頭に触れたら、ピンと上へ伸びたウサギ耳があるではないか。
ま、まさかヴィエラになってる!!!??要望は出してなかったけど、美人であれば嬉しいんだけど、この世界にヴィエラいないんだよね!?……まぁいいか。
自身の強さが分からないので、アイテムも持ってないようだし、試しにステータスと言えば、ステータスが映し出されて現在が精霊使いというジョブになっていることを確認できた。
レベルは2。1ではないけど、強くてニューゲームは望んでいなかったので、これから自分で頑張らないとなと意気込んで右手を上へ突き上げた。
社畜人生からおさらば!夢の異世界転生生活を満喫してやるぜ!!
『そうでした、元の世界に戻るためには、エンディングをむかえることです』
突然話しかけてきたお社の主だが、この人の正体は一体何なのだろう。
「あなたは一体何者ですか」
『気まぐれな神ですよ』
ただそう言ってからは、もう声が聞こえることは無かった。
とりあえず見渡してみると、街らしき建物が見える。ゲームと違ってただの野原ではなく、木が生えていて思ったほど遠くは見ることは出来ない。
でも高台にあって大きな街だと、選択肢は限られてくる。
城があって大きな剣がそびえ立つならアレクサンドリア城。リンドブルムは要塞。私が見えている建物はとてもキレイな外装の集まり……つまりトレノだろう。
ダリ村であれば田舎だからお屋敷なんて建ってないし。
まず最初のスタートがトレノだとは思わなかったな。とりあえず行ってみよう。
見えている明かりを目指して進んでいけば、鳥のモンスターに出くわした。
この辺に出てくるモンスターって多分弱いよね。大丈夫かな?
ステータスで自分の技を確認済みなので、レイピアの先を向けて唱える。
「ファイアウィップ!」
レイピアの先から炎の輪が放たれ、鳥モンスターに絡みついて焼いていく。FF9には無いシステムだが。この技にはドンアクというステータス異常を付与できる。ドンアクは技が出せなくなるので、攻撃される心配が無くなるのは良いことだ。
鳥は地に落ち、飛べなくなった羽をバタバタと振り回してなお残っている炎を払っている。可哀想なのでとどめにレイピアでひと突きにして終わらせ、私に経験値が入ってくる。
レベルは3になった。うん順調。
だけどモンスターはギルを落とさなかった。
まぁ普通にモンスターと戦ってお金落とすっておかしい仕様よな、何て思いながら歩き続け、向かってくるモンスターをバシバシやっつけていった。
現状の精霊使いはステータス異常を添えた攻撃魔法が主なので、とても戦いやすい。この周辺に居る敵も強くないのが更に良いところだ。
段々と街に行くことを忘れて夢中で戦っていたせいで、モンスターが寄ってこなくなった。私の足下にはたくさんの死骸が積まれ、散らばっているから血のにおいが凄いんだけど、おそらく動物的勘と言うやつなのか、モンスターが寄ってこないってのは危険を感じたんだろう。
いくつか手触りの良いモンスターを背負って街に向かい、モンスター狩りをして旅している事を門番に伝えたら中に入れてくれた。
「毛皮は貴族が喜んで買うからね、左の奥に毛皮を中心に買い取っている店があるから行ってみてくれ。良い皮が入ればオレも新しいグローブが買えるぜ」
門番は笑みを浮かべ、私は教えて貰った店へと入る。
玄人感を醸し出している職人じいさんが一人毛皮を選別していて、声を掛ければ買い取りか、と私の持っているモンスターを手に取った。
「ふむ、傷が少ない。一発で仕留めたのか」
「そうですね、剣でひと突き」
生まれてこのかた、剣なんて握ったこと無かったけど、転生効果で使えるよ
うになってました。アリガタヤアリガタヤ。
「これ一匹か?」
「いえ、林に100匹ほど」
「……それは大量じゃな。荷車を出してやる、運んでこい」
そしてじいさんは奥から弟子達を呼び、一緒にモンスターが散らかっている林まで来て貰い、荷車に乗っけてトレノまで運んでもらった。
そこから選別して買い取りになったんだけど、丸焦げになってたり、血まみれになっているもの、切り傷が多いもの、切断されてしまっているものは大分買取額が下がってしまっているようだった。
「買い取り価格は……10万ギルだ」
初っぱなからかなりの額貰っちゃったよ!?確かトレノのオークションだって一万とかのやり取りを貴族がするんだよ!?
「驚いているようだが、普通の客が持ち込むモンスターの量は多くたって10匹ほどだ。それなのにお前は113匹持ち込んだ」
「あっ……100匹超えてるぅ……」
「ほとんどが状態の良い皮が多いからな、良い素材になる。貴族は毛皮や羽根を好むから、量があるのはこっちも助かるからな。受け取ってくれ」
こうして私は一夜にしてお金持ちになり、とりあえずよさげな宿屋に泊って一夜を過ごしたのであった。
目を覚ませば日が昇っていて、トレノにも朝が来るんだな、と寝ぼけながら身体を伸ばす。
とりあえず転生は夢じゃ無かったと言うのには段々頭が理解してきたし、お金は昨日のモンスター虐殺で儲かったから問題は無い。
あと気になるのは今が何処の時系列か、だ。
トレノだと国のあちこちの変化を感じ取れないと思うから、物語が始まっていないならアレクサンドリアに向かわないと、主人公達に出会えないではないか!
せっかくこの世界に来たのなら堪能しないと!
まずはアイテムを買いそろえたりしないといけない。ちなみに私のレベルはどうなってるかな……?
ふかふかのベッドの上で胡座をかいて、画面を呼び出す。
「ステータス」
レベルは10まで上がっていて、HPが500を超え、MPは80。うん、序盤って感じ。上げといて怖いことは無いから、暇があればバンバン上げちゃお。
外の大陸に出たときにサボテンダーに出くわして、はりせんぼんに耐えられるくらいには強くなっておきたいものだ。
レベル10だったら平均的に、リンドブルムからブルメシア間のところかなというイメージだ。
だけどブルメシアであればベアトリクスがいる。アレと戦うとなると、手加減されて瀕死くらいで止めて貰えるけれども、やっぱり渡り合ってみたいものもある。
ストーリー上、戦闘で彼女に勝っても大技出されて強制的に負けるんだけど、私が介入したらどうなるかちょっと気になっちゃうかも。
一人怪しくニヤリと微笑み、アイテムなどを買いに外に出た。
貴族は優雅に歩き、そしてごろつきは端っこで座っている。うーん、異世界。
この空気を満喫しつつアイテムも買いそろえ、私のバッグは異次元バッグだというのを今気が付いた。
RPGあるある。そんな装備の山は何処に持っているんだい?ってやつよ。
ウエストポーチみたいに腰に巻いて準備万端。あとは情勢を聞き回ったりするだけだ。
――その時、遠目に一人の男がこちらへと歩いているのが見えた。
私はその男の方へ駆け出し、おーい!と大手を振って笑顔で彼を呼んだ。その男は一瞬驚いたのか”四本の腕”を降参したかのように少し手を上げて後退り、ちょっと逃げ腰であった。
「こんにちわー!会いたかったですー!!」
ようやく目の前までやってきた私は挨拶しつつキラキラと憧れを込めた瞳で見つめれば、自分を捕まえに来た人じゃないと理解してくれたみたいで四本の腕を下げた。
「オレに会いたかったとなると、カードかな?それともファンかな?ひひひ」
ちょっと鼻の下を伸ばしていたけども、彼はFFVでエンキドゥとエクスカリバーを探しに来たって設定だったはずなんだよね。間違ってなければ。
12時間以内に最終ダンジョンに行かなきゃ行けなかったって言うのはなんとなく覚えている程度。実際にエクスカリバーⅡを取ったことは無いしね。
「ギルさんのファンです!」
「えっっ?? え。まって、何でオレの名……」
「ファンですもんそりゃあ知ってますよ!四本の腕がかっこいいですねぇ!」
ギルガメッシュ……愛称なかんじでギルさんと呼んだが、普段なら通り名で過ごしているから本名を知っている人が居るわけが無かったから、驚いたんだろうね。
それにしても、この世界に来て始めて会ったキャラがギルガメッシュになっちゃうってのも不思議なものだ。
「かっこいいだなんて、へへへ。お嬢ちゃんも見かけない種族だな」
「ヴィエラって種族なんです。”この世界には”居ませんね」
私の最後の一言でギルガメッシュは全て理解したのか、なるほどと言いながら腕を組んだ。
「よそから来たんで、オレのことも知ってた訳か」
「同じ世界では無かったですけどね。私の世界では様々な世界を覗き見することが出来たんです。さて、こんなところで立ち話もアレなんで、どこかでお食事でもいかがです?是非おごらせてください」
「いいぜ、とっておきの店があるんだ」
ギルガメッシュに着いていくと、貴族が入るような店ではなく、一般市民が立ち寄れる酒場のような場所であった。まぁ高い店はちょっと緊張しちゃうしね。
席に着き、ギルガメッシュは料理とお酒を頼み、私はフルーツジュースにする。
「実はこの世界に来たのも昨日なので、あらかたの情報は得ては居るんですけど、情勢が分からないんです。何か知ってますか?例えばアレクサンドリア城でそろそろ劇団が見られるとか」
先に運ばれてきたお酒をギルガメッシュはグイッと一気に流し込む。
「きゃー、良い飲みっぷり!素敵ー」
「え、そう?そんじゃあ、じゃんじゃん頼んじゃおっかな」
まぁ、払うの私ですから。
そしてまたお酒をぐいーっと飲み干し、幸せそうに微笑んでいた。
ここでの旅はスリをしたりして生計を立ててたって言うから、こうやってお酒をあおるのも中々なかったのではないかな。
「っぷは。えっと、そうだな。近々リンドブルムの劇場艇がアレクサンドリア城で公演をするんだと。君の小鳥になりたいだったか、そんなのを演目にしてたな。チケットはまだ売ってるぜ、観に行くなら買いに行くといい。オレも明日アレクサンドリアに向かうつもりだったから、一緒に行ってやっても良いぜ」
「ホント!?うれしい良かった!!」
更に詳しく話を聞くと、ここの貴族の方々も飛空挺に乗ってアレクサンドリアに行くらしく、飛空挺がたくさん来ているそうな。
ギルガメッシュは忍び込もうと言ったので、とりあえず乗車賃を聞いてみたら一人五千ギルだと言われる。
リンドブルムの狩猟祭で優勝したとき貰った値段てそんなもんだったよね。
やっぱり10万って恐ろしいほど大金だと思うよ。
「ギルさん、あなたの分の乗車賃を私が払うんで、一緒に乗りましょ」
「え!いいの!?やったぜ!!」
ギルさんはただ乗り出来るから大喜びでまたお酒を追加。
そしてどんどん追加して最後に潰れてしまいました。
「ギルさん宿屋何処ですか?歩けます?」
「うーん、うーん」
だめだ、これはまともに会話も出来ないだろう。
支払いを済ませ(3千ギル)とりあえず迷惑なので引きずって店から出す。
でも彼の宿屋も分からないから彼を引きずって近場の宿に入ることにし、適当に部屋を借りて彼を投げ込み、私は隣の部屋でぐっすりと眠ったのであった。
翌日、目が覚めたギルがフロントから私が引きずって連れてきたという経緯を聞いたようで、わざわざ部屋に来てお礼を言われた。
「そんじゃ、早速飛空挺の乗車券買ってくるから金くれ!」
彼のこういう軽いノリが好きよ。
「二人合せた乗車賃一万ギル……と、お小遣いに千ギルあげちゃうわ」
「もしかしてきみ、どこか良いところのお嬢さんなの?」
「君と同じく別世界から来たんだよー。やたら金があるのは外のモンスターを虐殺して毛皮ハンターになったからだよ。ギルだって弱くはないだろうから、モンスター狩りして集めるのもアリよ」
「めんどくさいからヤだなぁ」
結局スリしているのが良いらしく、モンスター狩りはしないそうだ。今アレクサンドリアに行こうとしている理由も、公演で貴族たちが集まるからそいつらからお金を盗もうって算段みたい。
それから彼はお金を受け取って乗車券を買ってきてくれた。自分たちが乗る艇はお昼に出るらしい。その時間まで一時間あるけど、先に行って待っているのが安全だよね。
時間になり、たくさんの貴族達に交じって飛空挺に乗り込み、そして飛空挺は大空高く飛び上がる。甲板で外気を肌で感じながらこうやって空を飛ぶというのは私の世界でも普通は出来ないことだ。
「すごーい!下が霧で何も見えない」
もくもくと霧が邪魔して下の方が上手く見えない。
崖や山は見えるから、それを眺めていようと甲板でのんびりする。
ギルさんは貴族達からスリをするのに忙しいようで、私は一人で外を眺めているのだった。
あっという間にアレクサンドリアに到着し、ギルさんとはここでお別れになる。
「色んな観光客が集まるだろうから、しばらくはここに滞在するつもりなんだ。じゃ、またな!」
「がんばってねー」
ギルさんは街の中へと走って行き、私は逆に街の外へと足を運んだ。
物語が始まるのはまだ先、プリマビスタすらまだアレクサンドリアに着いていないのだ。私が今やるべき事はレベル上げだ。
レベル上げはとにかく重要です。この近辺はバンダースナッチが出てきたと思うから、それと難無くやりあえればしばらく怖くないな。
街から離れ、適当に歩き回ればモンスター狩りの始まりになる。
ゲームと違って色んなモンスターが現れるので中々楽しい。お目当てのバンダースナッチも出てきて、ポンポン切り捨てていった。
それから段々日も沈み始め、辺りが夕焼けに染まっていく。
自分のレベル上げのためにこうも簡単に斬っていくのは良いんだけど、死骸がその辺に散乱しているのが問題だ……
申し訳ないがこれはそのままにして、ステータスを開けば15レベルまで上がったみたいでしばらくはレベル上げをしないで済みそうだ。
バンダースナッチも二発か運が良ければ一発で倒せるようになってるし、攻撃力は申し分ない。
魔法の攻撃はレイピアの攻撃より弱いみたいだけど、その代わりにステータス異常を付与できるのがおいしい。
「HPは……700ちょっとか。割と高めかな」
とりあえず今の状態ではベアトリクスと渡り合うのは難しいので、ブルメシアまでにはもう少し上げておこう。
レイピアをしまってたくさんのモンスターの死骸の中を歩き、アレクサンドリアに戻ってきた。
ストーリーが始まるまでは、普通にこの街を観光して回ろうと思い、宿屋を探す。
まだ宿の空きはあってくれて、なんとか泊ることは出来た。
一日身体を休め、そして次の日はアレクサンドリアの観光を始める。他にも貴族達がガイドを雇って散策していたり、街は賑わっていた。
私は名物を食べて回ったり、アイテムをあさったり、カードバトルに興じたりもした(全敗)
その時ついに大きな音が鳴り響き、空を見上げればあのプリマビスタが頭上を通り過ぎていく。
ついに物語が始まる。
私は興奮と喜びに子供みたいにぴょんぴょん跳んでしまった。ああどうしよう、本当に私物語の中に入ってるんだ!なんでだろう、今なんかやっと実感した……!モンスター狩りは作業だったから何も感じなかったせいなのかもしれない……
跳ねている心臓を通常の速度になるまで深呼吸で落ち着かせる。
ああ、どうしよう。嬉しすぎて頬もつり上がったまま戻らない!!
――刹那、背後でドテっと音がした。
何かと振り向けば、尻餅をついている黒魔道士、ビビがそこにいた。
あれだけ騒がしかった心臓が止まるかと思った。そして数秒間止まった心臓はまたけたたましく鼓動を始めて息苦しさに胸を押さえた。
やっと出会えた重要なキャラクターに動揺しすぎてまともに動けない。嬉しくて泣きそう、感情がパニック起こしておかしくなりそう。
「……あの、」
もだえながらもずっとビビのことを見つめすぎたのか、ビビが声を掛けてきた。
私は彼のあまりの可愛いさに膝をついた。
「え!あ、大丈夫ですか…!?」
ビビは立ち上がり私に駆け寄ってきて、私はめちゃくちゃ泣いてしまった。
そんでもってビビに抱きついてしまった。
「な!な、なに!?あの……!?」
私は我に返って離れてから、深呼吸を繰り返し、演技モードに入る。
というか、演技して話しかけないと「かわいい」とか「しゅき」とかいって全く会話が成り立たないからやらないといけない。
それに、黒魔道士の事を知っているのは間違いなくまずい。頑張れ私。
「ああ、ごめんね。私カワイイものに目がなくてつい抱きついちゃった」
やっと絞り出した言葉は、演技しているんだけど胸の内をさらけ出して悲惨なことになってしまった。カワイイ少年に抱きつく怪しいお姉さん。おまわりさん案件です。
「……ボク、かわいい……の?」
少年は初めて言われた言葉に衝撃を受けているのか困惑しているもよう。私は慌てて「人の感性ってそれぞれだからさ!」って言ったんだけど、とりあえず抱きつくのはダメだったと思う。初っぱなから何やってんだよ私!
「そ、そうだ、今上を通り過ぎていったのが劇場艇プリマビスタなんだよ!有名な劇をやるみたいなんだって!知ってる?」
とりあえず話題を変えようと、先ほどの劇場艇の話をしたら、その劇を見るためにトレノから来たとビビは答える。
トレノから来たのは私も同じなので、私も昨日トレノから来たんだよーって言って親近感をわかせて近づく作戦に出た(きたない)
「チケットはスタンプを押して貰わなきゃいけないから、チケットブースに行こう。場所を知っているから案内してあげる」
ニコッと微笑んでこっちだよ、と歩き出せば、ビビも歩き出す。
何この生き物全てがカワイイ辛い、生きるのが辛い。
「あの、お姉さん、どうして……その、怒ってるの……?」
「怒ってる!?いや怒ってない逆よ幸せで死にそうなのよ!?」
……は!もしかしてこのニヤけるのを我慢しているせいか!?それで表情がおかしくなって怒っていると思われていたのかも……
「……ごめんね、ニヤニヤとしているのが恥ずかしくて我慢しているだけなの……怒ってないんだ、幸せなんだ……」
「幸せ……」
この時のビビは幸せや生きる意味、とかそういうのよく分からないんだろうから、ちょっと戸惑っている感じだった。
でも劇を観たいとかそういうのがあるっていうのは、自分の意志があってイイよね。
「街が賑やかで、色んな人と出会えて私は幸せ!ずっと狭い世界で生きてきて、こうやって自由に歩けるって楽しいの!」
ずっと仕事ばかりで、休みなんて無いに等しくて、交流ができる人間も会社の人とだけになっていた私にとって、この世界に来たというのは自由を得たと言うことなんだ。
それに、好きなキャラクターとってのがもう幸せでああああああ
「お姉さん、ホントに楽しそうだね――うわっ!」
ビビの言葉は後ろからぶつかってきたネズミの少年によって止められる。
ネズミの少年は自分がぶつかってきたというのに「気をつけろよな!」とか言って走り去っていく。
それを横目にビビに手を差し伸べて立たせてあげて、ポンと背中を叩いた。
「びっくりしちゃったね、元気な男の子だったなぁ」
「う、うん」
ビビは帽子のずれを直しながら頷き、そしてチケットブースへと向かっていく。
ブースのおじさんにチケットを見せれば、偽物だと言われてビビががっくりと頭を垂れ、哀れに思ったおじさんは励ましの言葉と共にカードをくれたのだった。
「偽物だったのはかなしいね。もうチケットは売り切れてるから買えないし……せっかくアレクサンドリアに来たのに何もしないのは悲しいから、お姉さんと観光しよっか!」
「え、お姉さん、劇観るんでしょ?」
「実はチケット買いそびれちゃったんだー、ほら売り切れてるじゃん?だから私も観られないんだ。観られない同士仲良くしよ!」
私もビビを励ましてあげながら路地の方へと誘導し歩いて行く。
ストーリー的に、こうしないといけないからね。
路地に入れば意味深にはしごが置かれていた。おそらく看板の取り付けに使っていてそのまま放置されているのだろう。
そこに先ほどぶつかってきたネズミ少年がやってきて、我々に声を掛けてきた。
「先ほどチケットが偽物と言われていただろ。オレの家来になれば今日の芝居を観せてやるぞ?家来になれ!」
なんと強引な子供でしょう。
とはいえ、正体はブルメシアのパック王子なのだから偉そうなのは当たり前である。
私は大人しく家来にしてくださいと答えてあげれば、パックは満足そうに微笑んでいた。
ビビも渋々家来になり、置き去りにされていたはしごを持ち去るパックのあとを追いかけ、鐘の塔を登っていく。はしごを片手にはしごを登っている王子様って結構なすごさよね……?
私たちもはしごを登り、そして屋根の上まで出てきた。屋根には隣の屋根に渡れるように板がかけられているが、一体誰がかけたんだろうか。
パックが事前にかけて用意したのかそれはわからない。
「ボク……高いところが苦手なんだ……」
板を渡れずに立ちすくむビビが、少し声を震わせながら怖いと言った。
私はぴょんと下へ飛び降り、ビビとパックがびっくりして声を上げたが、私はヴィエラ族になっているので高所からの落下は全く痛くもかゆくもない。
この世界に居るネズミ族と同じような身体能力だと思う。
「私こういうの得意だから、落ちても助けてあげられるよ!安心して渡ってね」
無事だよと手を振れば、パックに驚かせるなと怒鳴られて私は屋根の上へと戻った。
「全く!寿命が縮んだかと思ったぜ!」
「は、申し訳ありません王子」
私が「王子」という単語を使った瞬間顔が強ばり後退ったから、茶化すように「ワタクシ家来ですから、主人を呼ぶならは王子かなって?」と笑えば、ぎこちなくパックは「そ、その通りだ」と腕を組んだ。
「そういえばお前達の名前を訊いてなかったな。オレはパックだ」
ようやくここで自己紹介タイムが始まり、ビビも自分の名前を名乗る。
私は……この美人なヴィエラの見た目で日本名を名乗るのは気が引けた、というか……元の世界の事を思い出してしまうから、本名を名乗る気にはなれなかった。
「私はヴィエラ」
名前はこの種族であるヴィエラでいいだろう。この世界にはいない種族だから名前がかぶることはないだろうしね。
「二人とも変わった名前だな、まあいい、これからよろしくな!ここから先が城内になってるから、忍び込めるぜ!」
足りなかった足場に持っていたはしごをかけて渡っていく。
無事に不法侵入が完了したのである。
そんなことをしているうちに陽が落ちていき、二つの月が昇って辺りを照らす。
私たちは貴族達が座っている席の後ろに行き、劇が始まるのを待った。
「お芝居楽しみだねビビ!」
「うん!」
「ここまで連れてきてくださり、誠にありがとうございます王様」
「お、おう」
パックは最後の王様でまた動揺しているのでクスリと笑えばちょっと睨まれたのだった。
そんなことをやっていると開演したようで、花火と共にステージが下から現れ、派手な演出に皆が心を躍らせ、遠目に見えるブラネ女王が嬉しそうに舞っている。
わかる、この始まり方ってだけでも楽しいよね。
「すごい!キラキラしてる!」
「花火って言うんだよー、すごいね!たのしいね!」
「たのしいね!」
ビビは前に座っている貴族の頭が邪魔でよく見えないから左右に揺れながら眺めているが、もう私はそれが可愛くて胸射貫かれて死にそうです。
それから劇は始まり、お馴染みのタンタラスがお芝居を披露していく。私はお芝居を観ながら裏でガーネット姫をさらう経緯と光景を脳裏に浮かべて楽しんだ。
それにしてもタンタラスお芝居上手いなぁ……
「おい、ここじゃ前が邪魔でよく観えん!移動するぞ!」
パックはせっかくのお芝居がよく観えないから前へ行こうと言い出した。
だからいつの間にか前に居て舞台に入り込めたんだな。
私たちはパックに続き最前列まで移動し、ジタンとブランクがチャンバラを繰り広げたところまで出てきた。
ビビとパックは小さいから良いんだけど、私は大人のサイズなので邪魔にならないように四つん這いになりながら客席に見えないよう進んだ。
そこから話は段々とクライマックスになり始め、舞台の下からガーネット姫とジタン、そしてそれを追いかけてきたスタイナーが現れて、それさえも劇の一部にして進められていく。
そして恋人役のマーカスがレア王を突き刺そうとしたら、恋人コーネリアもといガーネット姫に庇われ彼女を刺してしまう。
コーネリアは死に、そしてマーカスも自分を刺して後を追ってしまった。
私は内容を知っている(裏側も含め)ので、ニヤニヤしながら観ていたが、ビビとパックは泣いていたので、私も泣いているフリをしといた。
その時、パックが「ヤバい逃げるぞ!」と声を上げ、カシャカシャと金属が擦れる音が聞こえ、その方向を見たらプルート隊員が「コラー!」と大声を上げて走ってきていた。
私たちはタダ観の不法侵入者ですので、急いで逃げ出したのだが、逃げているうちに舞台に入り込んでしまう。
ていうかいつの間にかパックがどこかに逃げてしまって、今追いかけられているのは私とビビだった。
ビビは倒れているガーネット姫の上を飛び越えて、威嚇にファイアを放ってしまい、その火がガーネット姫の顔を隠していたフードに燃え移り、彼女は慌ててそのフードを脱ぎ捨てた。
そのせいで顔をさらしてしまうこととなり、家出をしようとしていたガーネット姫が舞台にいる姿をブラネ女王に見られてしまった。
レア王もとい盗賊の首領バクーは潮時だと告げ、部下を連れて引っ込んでしまう。
私はファイアを放った際に後ろに飛んでったビビを抱き起こしていた。
「大丈夫?」
「う、うん」
するとジタン達もこちらに駆け寄り、コケてたビビを心配してくれた。彼優しいよね。
「姫様!観念なされよ!」
スタイナーはガーネット姫を連れ戻そうと手を伸ばすが、ジタンが間に割って入って邪魔をし、二人は剣を交えた。
プルート隊の部下もマーカスが追い返し、私も加勢して部下を追い返してやれば、マーカスがこちらを見てニコッと微笑んだ。
「やるッスね」
「でしょ?」
こっちもニコッと微笑み返してみたら、急に劇場艇が動き始めて空を飛び始める。舞台に残されている私たちは大きな揺れに振り回されて、物にしがみついたりしている。
だがそんなのもつかの間、ブラネ女王の放った鉄の杭が発射され、劇場艇がこれ以上進めないようにと鎖でつながれてしまった。
鉄の杭は舞台にも突き刺さってるので、姫がどうなっても良いというのがここで見て取れる。ひぃ。
そんなことにも気が付かず、スタイナーはまだ姫を連れ戻そうと向かってくるので、ジタン達が相手をしている。私はレベル高いからワンパンで終わっちゃうので後方で見ております。
しばらくしたらブラネ女王がこちらにボムをぶち込んできて、劇場艇は大爆発を起こした。
爆風から逃れようと私は舞台裏に入ったのだが、爆発の規模が大きく私の隣の壁に大きく亀裂が入り、置かれていた物がこちらに一気吹き飛ばされてきたから慌てて外に逃げる。
煙が立ちこめている舞台だったが、爆発に耐えたプリマビスタが加速したことで視界は良くなった。
転がっていたビビに駆け寄り怪我がないか確認すると、大丈夫だよと身体に着いているススを払う。
よくあの爆発の現場に居たのに大丈夫だったよな……
「この艇も長くはもたないと思うから、しっかり掴まっててね」
「う、うん!」
近くにあった物にしがみついたのを確認してからガーネット姫に声をかけて、怪我がないか確認。
ジタンもスタイナーも多少の怪我で済んだみたいだ。
劇場艇はアレクサンドリアを抜け、霧の上を飛んでいたが徐々に高度が下がり始め、魔の森へと落ちていく。
揺れが激しくて近くの柱に掴まっていたのだが、墜落した瞬間の衝撃は思っていた以上で、掴まっていた柱ごと遠くに吹き飛ばされてしまった。
微かに他のメンバーも投げ出されているのが見えたが、空を飛ぶ魔法は知らないのでそのまま森の中へ落ちていく。
高所からの落下はヴィエラの身体能力的には問題なく着地し、辺りを見渡してみれば、大きな黒煙が奥の方で立ちこめていて、あっちにプリマビスタがあるのはすぐに分かった。
「さてさて、この辺のモンスターはどんくらい強いのかな?」
レイピアを抜いてモンスターの襲撃に備える。
正直一番最初のステージだから、一番弱いはずなんだよね。
すると早速ファングとゴブリンが現れたが、レイピアで簡単に切り捨てる事が出来た。うん、この辺はチュートリアルも兼ねているからやはり弱いな。
とにかく劇場艇に向かっていき、上下の移動も難無く熟せるヴィエラ族になって良かったと心底神様に感謝した。
「皆さーん無事ー?」
消火活動をしているタンタラスの皆さんに声をかければ、火を消し止めたいから手伝ってくれと言われて劇場艇の中に入り込む。
そう言えば私の今のジョブで水を使った技があったな。
「スリッピィレイン」
水の塊が落ちて飛び散り、雨のように周りを濡らし、火の勢いはかなり弱まった。
だけど水塊が落ちた部分はおもいっきり穴が空いてしまって、魔法の威力の強さに眉をひそめる。レベル上げすぎると調整が難しいな……仕方がないからどうでも良いとこに当てて、それで飛び散らせた方が良いかな。
すでに壊れている可動部に当てたり、エンジンに当てたりして水浸しにし、消火活動は終わった。
「火は消し止めたかな?」
ふうと息を吐けば、シナさんが助かったズラと喜んでくれて、ブランクさんも顔を出してありがとなと言ってくれた。
「でも消火の際に色々壊しちゃった、ごめんね」
「いいさ、どうせもう飛べなかっただろうし。もう一つ頼みがあるんだが、この周辺に飛ばされた連中がいないか探してくれないか。あんたの強さなら任せられる気がする」
ブランクから周辺の捜索を頼まれ、元気よく任された!と手を上げれば、そうだ、と止められる。
「少ないがポーションを渡しておく、持って行ってくれ」
ポーションを3個渡してくれたが、私はポーションを30こもっているので、ここで怪我した人に使ってと断った。
それに私回復魔法も使えるし。
「エーテルは持ってないですか?」
「それはないな……ボスなら持ってるかもしれないが」
「じゃ、ならいいです。周辺の捜索行ってきますね!」
ぴょんと壊れた小窓から飛んで森に侵入する。
薄暗いけど神秘的で美しいよね、この森。
すでにジタンが他のメンバーを探しに入っているから、何かしら物音がしそうだ。
木の枝を跳んで移動していくと、少し遠くで爆発音が聞こえ、ジタン達が居ることを確信してその方向へと跳んで行く。
そしたらプリゾンケージに掴まっているビビがいて、それに立ち向かうジタンとスタイナーが見えた。
降りようと思ったその時に戦いが終わってビビはプリゾンケージから脱出することが出来た。だがつかの間、そのモンスターが息絶えると同時に何か胞子をまき散らして、吸い込んでしまったビビとスタイナーが地面に倒れ込んでしまう。
ジタンはとっさに飛び上がって胞子から逃れたから無事でした。
「なんだ、もう終わっちゃった。来るのが遅かったなぁ」
枝の上で残念だなと肩を落としていたら、残っていたジタンに新たなプリゾンケージが襲いかかった。
不意を突かれてジタンまでもケージの中に閉じ込められてしまう。
彼は持っているダガーで抵抗するも、体力を吸収された際に持っていたダガーを落としてしまった。
「しまった……!」
唯一の武器を落としてしまった彼だったけど、大丈夫!私がいるのだから!
「ファイアウィップ」
枝から飛び降りると同時にプリゾンケージに炎の輪で攻撃すれば、威力が高くて真っ黒焦げになった。
ケージの中にいたジタンもちょっと食らってしまったみたいなので、急いで回復魔法を唱えて回復させてあげた。
「ホワイトフレイム」
白い炎がジタンを包み込み、彼の傷を全て癒やした。
これで大丈夫だろう。だけど魔法を使うときは慎重にならないとな……仲間まで巻き込んじゃう。
「驚いた、あの時のウサギのお姉さんじゃないか」
「ごめんね勝手に舞台に入り込んじゃって。まさかこんなことになるなんて思ってなかったよ、怪我は大丈夫だね?でもこの二人は毒を受けちゃったみたいだから早く運ばないと」
ビビに駆け寄ると、苦しそうに呻いているのが聞こえた。
確か種を植え付けられてるから、毒消しは効かないんだよね。
「この子は運ぶからその方をお願いします」
ビビを抱き上げれば、ふんわりと柔らかいぬいぐるみみたいでちょっとほっこりしてしまう。可愛すぎるでしょうんもー!!
ジタンはスタイナーを引きずっていて、まぁあんな甲冑のおっさんなんかまともに運べないよなーと、一足先に戻ってからタンタラスのメンバーに応援を頼んだ。
それから劇場艇に戻ってから、二人は解毒剤を与えられて休ませてあげていて、その間にこれからのことを話し合っていた。
「ガーネットが連れて行かれたんだ!早く助けないと!」
ジタンは姫の救出を訴えるが、怪我した仲間も多いので、下手に動けないと頭領に言われて却下されてしまっていた。
私はそれを横目にタンタラスに持っていたポーションを分けていたのであった。
魔法で治してあげるのも良いんだけど、エーテルを持っていないのでMPが枯渇したら私困っちゃうんで使っていない。
ポーションいっぱい買ってて良かった。
「こんなにポーションを持っているって、ヴィエラさんて薬屋さんか何かッスか?」
マーカスさんが倒れてる楽団にポーションを使いながら訊いてきたけど、旅してるからいっぱい買ったんだと答えれば納得したようでそれ以上訊かなかった。
「とにかく助かったよ。消火もしれくれたあげくにクスリまで分けて貰って。ありがとなヴィエラ」
「いえいえブランクさん、私もいきなり舞台に入り込んじゃってごめんなさい。お芝居おもしろかっですよ。また次の公演を楽しみにしてますね」
「実はオレたち楽団員じゃなく盗賊なんだ」
「あらーびっくり」
「全然驚いた顔してねぇぞ」
「正直楽団やってるようなツラには見えなかったんで」
「これでも毎日手入れしているズラ!!」
遠くからシナさんの声が聞こえてみんなで笑った。
よかった、タンタラスと仲良くなれるのはめっちゃ嬉しい。
「まぁ、理由は詮索しないでおきます。それよりこの森を抜けることを優先にしないとですからね」
「そうだな……」
ぽっかりと空いた壁の向こうに広がる森を見つめ、全員口を閉ざしてしまった。
誰も生きて出た者が居ないと言われる魔の森……みんな不安でいっぱいだったんだろう。
私はジタンがガーネット姫救出に出るのを待つために、ビビの寝ている部屋で身体を休めるのであった。