「――え?」
カタカタとキーを叩く音、カシュカシュと紙を排出する音、真っ黒な窓の外。
「ん?何だここ……全然見たこと無い雰囲気の場所だ……」
カチカチ、と、私は歯を鳴らした。そして背筋を氷らせながら全身が震えていて、息が乱れていく。
『#※藤!この書類まだなのか!?』
『あ、あの、△%商事の件がまだで……』
『それは$◇田にやらせろ!@≠川はオレの書類を優先しろ!』
『え、あ、&#課長の件がまだ終えてないので……』
『お前口答えするのか!?おれの書類は※△課長から催促来てるんだ!これ以上遅れて何かあったらお前が責任取れ!オイ誰だプリンターいつまでも使ってるヤツ!使えねぇだろ中断しろ!』
真っ黒な人のようなモヤがそこに居て、何人も無言でキーを叩いている。
だけど一部はとある一人に怒鳴られていて、私は後ずさっていた。
「……ヴィエラ?」
『コレが終わるまで帰れると思うなよ!?』
『まだ終わらないのか!?』
『なにノロノロしてるんだ飯なんか食ってる暇なんて無いんだぞ!』
『終電!?知るか!歩いて帰れ!!』
――私は逃げ出した。
その場所に居ることがあまりにも辛く苦しく、私は無我夢中で道を戻った。
後ろから呼ぶ声が聞こえたけど、それも怖くなって止まれなくなった。
帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ 帰リタクナイ
あのまま進んでしまったら
このまま物語が終わってしまったら
私はあの場所に帰ることになるんだ
いやだ、いやだ
あんなところに帰りたくない
「ヴィエラっっっ!!」
サラマンダーさんの声と共に、腰を捕らえられ後ろから抱き締められた。
本気で走ったんだろうから、彼が息を乱していて、私は震える息を吐いて呼吸をしていた。
「オレがついている」
そう言って彼は私を抱く腕に力を込める。
ほろほろと涙がこぼれて、情けなく泣いた。
声を出して、子供が泣くように泣いた。
「……つまり、あそこがヴィエラの……元の世界の記憶ってことか」
ジタンも寄ってきて、正面に立ってぽんぽんと頭を撫でた。
私の方が年上なのに。
「……アレを見る限り、ヴィエラも酷い扱いを受けてきたんだな」
「…………」
声を出そうにも泣いていて何も言えなくて、そしてサラマンダーさんが腕の力を緩めたかと思ったら、向きを変えられて正面から抱いてくれた。
あやすように背中を撫で、一緒にテントで寝ていた時みたいに優しく包んでくれた。
「お前、なにか弱みでも握られてるのか?」
サラマンダーさんはそう言うけど、別にそういうわけじゃ無いから首を振れば、鼻で笑われた。
「逃げりゃ良かったじゃねぇか」
「……でも、そしたら皆に迷惑かかるから……」
「いつもお前は人のことばかりじゃねぇか。正直あんなもん、お前がやめたところで代わりは居るだろうし、代わりが居ないような余裕の無い場所に価値なんてないだろ。逃げちまえば良かっただろう」
「……そんなの上司に言えば何を言われるか」
「バカ言ってんじゃねぇ、オレ達を半殺しにしたやつの台詞か。こっちでは度胸がある癖になんであんなバカが集まってる場所では縮こまってんだ」
抱いている私を離して、視線がぶつかる。少し呆れたような表情のサラマンダーさんはそう言うけど、私は……
……私は、なんで
「なんで、辞めようって、思わなかったんだろ」
確かにそう。辞めたら皆に迷惑がかかるとか、上司が怖いとかそんなことばっかり考えていたけど、いつの間にか洗脳されていた気がする。
辞めて何が悪いんだろう。
「そうだぜヴィエラ。あんなスタイナーのおっさんが怒鳴り散らしているみたいな頭の悪い場所にいつまでも居る理由なんて無いだろ?世界は広いんだ、もっと色々見てみれば良いじゃ無いか」
ジタンがそう笑い、私は涙を拭ってうんと頷いて、皆に謝ってから私の記憶の場所へと再び戻る。
怒号が飛び交い、深夜になっても帰れず皆パソコンの前に居てキーを叩いていて、書類をまとめていたり、エナドリを積み上げて起きていたりなんだりと皆ずっと仕事をしている。
そうだよ、なんでこんな会社にこだわっているんだろうか。
なんでここに居ないと行けないと思ったんだろう。
カタカタとキーを打っている、見覚えのあるデスクがそこにある。
「……私の背中、小さいな」
そう仕事をしている私自身の背中に触れようとした途端、そこにあった全ての黒いモヤが消え失せ、静寂に包まれた職場の一室だけが残された。
「私、元の世界に戻ったら自由になる。洗脳されていたみたいでさ、辞めちゃだめだ、逃げちゃダメだって思い込んじゃってたの」
ばかみたい。そう笑って言ったら、みんなも同意していたみたいでうんうんと頷いた。
「ヴィエラ殿であればなんでもできるのであります!」
「まさかこんなことに恐怖を感じていようとは、思わなかったのう」
「おじいさんもいってたけど、行こうと思えばどこにでも行けるんだよ!あたしがマダイン・サリを出た時みたいに、自由になって良いんだよ!」
「クエール師匠に言われたときのように、ワタシずっとあの沼に居るつもりだったアルが、世界を見てたくさんの食の出会いがあったヨ。同じ場所にとらわれる、よくないアル」
「ヴィエラは一緒に世界を飛んでくれたじゃない、あのときみたいにヴィエラなら、元の世界でも自由に生きられるわ。貴方を縛り付ける鎖なんて、最初からなかったのよ」
「そうだぜ、ダガーの言うとおりだ。ヴィエラはお宝探しとか好奇心旺盛なんだし、色々やってみようぜ!」
「ボク、お姉さんがこんなに苦しんでいるなんて知らなかったけど……、ボク達をを支えてくれたお姉さんなら、なんでもできるよ!」
「もしまだ不安でも、元の世界に戻るその時までオレが支えてやる」
皆が私にそんなこと言うから涙腺崩壊してまた泣き出しちゃった。
でも、今度はさっきと違って嬉しくって泣いてるだけ。
もう、怖くない。
「ごめんね、メソメソしちゃって。もう大丈夫!進もう!!」
静かになった職場を後にし、私達は扉を開いて踏み出す……が、足下がなくて宇宙空間で、先頭に居た私が驚いて一歩戻れば、私の職場が消え失せて、ギルガメッシュと別れたあの空間に戻ってきた。
やっぱり、私は異世界人だから記憶の場所の中にその記憶を形成するのはすこし難しかったんだろうな。
人も全部黒いモヤだったし。
「はぁー、ねえ、一旦ここでテント張って休まない?私のこと追いかけて疲れただろうし、ていうか私が泣いたりだのしたから疲れてるというか」
この場所は星空満点の良い景色だし、一休みするには良いと思う。
リッチも倒しているし、次はデスゲイズとトランスクジャ、そして永遠の闇だろう。
もうボスも数えるほどだ。
皆も精神面が疲れているのもあるから、ちゃんと休もうと言うことで一息つくことに。
恐らくこの先だとクリスタルワールドになるから、休める場所もほぼないだろうしなぁ。
「ごめんよ、少し寝るね」
「ヴィエラ、来い」
サラマンダーさんに手招きされて、寄っていけば膝に乗せられたので、遠慮なくその腕の中で眠ることにする。
他の皆も幾人かは同じく少し眠るようで、ジタンはダガーを支え、エーコはビビとクイナ三人でもたれ合っている。
コレが最後の休憩だな……
すぅ、と眠りにつき、体も心も休まったと思う。
目が覚めたときにはサラマンダーさんも寝ていたみたいで、頬を撫でて起こしてあげた。
「おはよ」
「ん」
短い返事を返してから頬にある私の手に自分の手を重ねて頬ずりして、そして私を降ろして立ち上がる。
皆も休めたみたいで身体を伸ばしたりして、ついに準備は整った。
「ま、進むって言っても道がねぇんだけどな……」
今までは道というものは存在したのだけど、今回はもう道は無くそこにあるのは果ての無い宇宙だった。
ガーランドもそこは宇宙だと答え、私はウンウンと頷く。
「ヴィエラは宇宙って分かるのか?」
ジタンが宇宙ってのを良く分からないらしくて首をかしげていて、私に聞いてくる。
「まぁね、私の世界だと宇宙まで行ったりしてたし月にも行ったり、隣の惑星に探査機を送ったり、遠くの銀河を調査するために衛星を飛ばしたり……」
「更にこんがらがってきた……」
「テラより文明は進んでないけど、ガイアよりかは進んでるからねぇ。まぁ、見えない道がそこにあるから進んでみよう」
私が試しに何もない空間に行ってみたら足場があった。どこまでが足場なのかは流石に試す勇気は無いけどね。
それから上も下も分からない道を歩いていてば、ガーランドは記憶について語っていく。全ての物は繋がっている。なぜなら生まれる時には何かから生まれるから、そこから連なるように生まれていく。辿れば1つなのだと。
無からは生まれない。
「ここが謎なのよね。では宇宙は何から生まれたのか……それは我々の世界でも仮説でしか答えられないし、気が遠くなるほど遙か大昔の事だから誰も知らないし、その記憶も埋もれてるのよね」
ガーランドは私の言葉に笑った。異界でも同じなのだと。
『異邦人よ、貴殿に出会えたことを嬉しく思う。……貴殿の言葉には救われた』
そして最後にクジャを倒せと願い、ガーランドの声は途絶える。
「最期にデレて逝っちゃったか……」
「結局、記憶って何なんだろうな」
「……うーん、色んな仮説を立てて謎のままの方がロマンかもね。宝の地図を見つけて、見つけた喜びもそうだけど、見つけるまでのワクワクがあるでしょ?」
お宝と例えたら、ジタンは笑った。
そして道の果てが見えて、そこにはクリスタルの道が続いている。
「ついに中枢に来たね」
「んねぇ、ヴィエラって何でも知ってるみたいに言うところあるよね」
エーコが突然そう言って、私は苦笑いをした。知っている物語だから、その通りなんだもの。
「ナンデモって訳じゃ無いけど……いろいろな物語を見てきたから、想像力が豊かなのと、私の文明は進んでいるから仮説が立てやすいの」
「ふぅん……」
ちょっとはぐらかして進んでいき、ついにクジャの目の前にやってきた。
クジャの背後にあるのはこの星の中枢、クリスタルだった。これを破壊すれば全てが消え失せる。
クジャはまず最初にデスゲイズを我々にぶつけ、我々は連携をしてあっという間にぶち倒してやった。
「覚悟しやがれクジャ!」
「フン、デスゲイズを倒したからといってボクに勝てると思っているのかい?ボクは1人で死ぬ気なんて無い……!道連れにしてやる!」
クジャはフレアスターを唱えて、私は皆より後ろへと下がった。
私は、ここから先の戦いに介入はもうしない方がイイ。
ここは皆のガイアなんだもの、よそ者で消えゆく私じゃなく、皆で守って欲しいんだ。
「そこのウサギは臆して逃げちゃったのかな?逃がさないよ?」
クジャは笑って私の側まで距離を詰めたけど、精霊使いの私はレイピアも使わず拳で綺麗な顔面をぶん殴ってやった。
「残念だけど私とあなたの力の差が開いているんだよ」
アルテマすら凌いでしまった私は、今の実力なら彼に負けることは無いだろう。
「でもね、私はよそ者で、この星で生きていく皆に未来を掴んで欲しいの」
クジャは口の端から垂れた血を拭って私を睨み、そしてそんな彼の背後を皆が攻撃していく。
「目障りなんだよ、全て……!なんでボクだけ死ぬんだ!許せない!!」
「自分の不幸に他人を巻き込んでんじゃねぇよ!!」
「巻き込まれて死んだ人達はもっと不幸だったわ!!」
ジタンとダガーが叫び、皆が続いて行く。
ついに追い詰められたクジャはアルテマを放つ。
「ボクだけ死んでたまるか……!!」
アルテマの雨を浴びて皆が倒れ、クジャは最後の力を使ってアルテマの反動で吹き飛んで落ちていった。
私はある程度アルテマを弾いたりしたけど、やはりあちらこちらに落ちたからぶち当たって多少怪我をした。多少……ね。
「ホワイトフレイム!」
癒やしの炎を皆にかけてやれば、皆は目覚め、そしていつの間にか知らない場所に来ていて、目を覚ました皆が辺りを見回していると声が聞こえてきた。
『ここはお前達の世界とは別の次元、そして私は永遠の闇』
急に現れて私も初見の頃は誰だお前ってなった。
作中詳しくは書かれてないけど、クジャの願いで呼び寄せられちゃったヤバい奴らしいね。
永遠の闇は死ぬこと、消えることが全ての終着点だとか言ってくる。
全て消えれば悲しむこともないし、それが運命とか言ってきた。
「命を繋いでいくのが生きるって事だ!死ぬために生きているんじゃ無い!」
「そうアル!オイシイ物を見つけるためアル!!」
「だいすきな人と一緒に生きるのが幸せなのよ!このヘンテコツルツル!」
「確かに人や物は死んで消えていくが、それを繋ぐために人々は生きるのである!」
「人が紡いでいく物語を勝手に解釈するでないわ!」
「短い命だって、生きている喜びを壊させない!!」
「一緒に笑って、泣いて、その日々を送るために生きるのよ!」
「ようやく生きる意味ってのを分かってきた所なんだ、邪魔するな。例え別れが決まっていようがな」
皆は戦闘態勢に入り、私は皆の背中を見つめた。
異界から来た破壊を司る存在。
懸命に戦い、何度も瀕死になり、私は手を出しそうになるけど必死に止めた。
私の物語じゃ無い。私は、皆を見守ろう。
皆を鍛えたりしたけど、これ以上の介入はダメ。
がんばれ、がんばれ
私は手を握り、祈った。何に祈ったのか分からないけど、ただ祈った。
そしてついに永遠の闇を滅ぼし、我々は異世界からテレポートしてイーファの樹から離れたところに降り立った。
イーファの樹は暴れていて、伸ばした根がうねりムチのように暴れていた。
そんなのを眺めていたらヒルダガルデ3号が降りてきて、シドが乗るんだ!と誘導してくれた。
だけど、ジタンだけは足を止めた。クジャの声が聞こえたんだろうけど、私には聞こえなかった。
ジタンはクジャを助けに行くといい、必ず帰ると言って我々と別れてイーファの樹へと向かっていった。
「ジタン……」
「大丈夫だよダガー。ジタンなら、きっと大丈夫」
私は不安で泣きそうになっているダガーの肩を抱いて、帰ってくるまで泣いちゃダメだぞ。って笑ったら、そうねと彼女は無理に笑った。
ヒルダガルデ3号はどんどん遠ざかり、私達はリンドブルムへと戻ることが出来た。
それから色々話し合いがあった後、ダガーとスタイナー、コック役としてクイナはレッドローズでアレクサンドリアへと戻り、復興に向けて行くと言い、フライヤもブルメシアのために去ることになって、エーコはリンドブルムでシド立ちが預かると言った。
「しばらくお別れになっちゃうわね……」
ダガーが寂しそうに言って、スタイナーが姫様……と同じく寂しそうに背後に立っていた。
「アタシはシドのおじさまに言って飛空艇を飛ばしてもらって会いに行くわ!」
「そうだねエーコ。私も召喚獣に乗って近況報告とかモグネットみたいな感じで情報交換しにいくよ。スタイナー、ベアトリクス。ダガーをお願いね」
「分かっているであります!」
「もちろんです」
「フライヤも頑張ってね!じゃ、またね!」
レッドローズ、ヒルダガルデ3号は飛んで行き、残った私とビビ、そしてサラマンダーさんは黒魔道士の村に滞在することを決め、バハムートで空を切り、あっという間に黒魔道士の村に到着した。
ジェノム達は以前と比べて少し表情が現れていて、黒魔道士達と仲良くなっているようだった。
「いつ元の世界に戻るのか正確な日付は分からないのか?」
サラマンダーさんがそう訊いてきたけど、分かるはずは無かった。
「そうか……。共に過ごせるように、あの丘に家を建てたい」
いつもテント生活だから、分かったと言って私や他の皆で我々の新居を数日で作った。
三角屋根のカワイイ小さな家。私と2人だけなら十分な広さで、屋根裏もあるからロマンがあるよ。
作業が長くなったからすっかり日も落ちてしまって、ランプに火をつけて淡い光で部屋照らした。
「ベッドはここで、それからクローゼットはここで!」
ウフフって笑っていたら、サラマンダーさんが背後からぎゅっと抱き締めた。
「抱かせろ」
耳元でそんなこと言うからゾクゾクッと身体を震わせてしまって、真っ赤な顔をしながら振り返ったら、ひょいと持ち上げられてベッドへと沈められた。
「……やさしく、してね」
それから私達は、初めて1つになった。
離れないように手を握り合って、身を寄せ合って鼓動を聞いた。
そんな日々が続いていく中、黒魔道士達は次々と止まっていく。
お葬式をして、また会おうねって言って土に埋めて、ジェノム達も死というものを理解し始めたのか、段々と涙を浮かべるものも出た。
「…………」
沈黙しているビビだけど、私は気が付いてた。
徐々に身体が動かなくなっていることに。
「ねぇビビ!ヴァルファーレで霧の晴れたこの世界を飛ぼう!高いの苦手だけどさ、私がしっかり掴まえておくから!」
もっともっと色んな世界をこの子に見せたい。だから私はそれを提案したら、少し迷ってからビビはうんと頷いてくれたので、召喚士に姿を変えてヴァルファーレを呼び出した。
「また背中を貸してください」
頭を下げればヴァルファーレは微笑んでくれて、そしてビビを上に乗せて私も背に乗った。
「サラマンダーさん、行ってきます!」
「楽しんでこい」
大きな翼で宙を浮き、まずはダゲレオに向かった。ここはサラマンダーさんとデートしただけでまだビビと来たことは無い。
「わぁー!凄いところだね!!」
「でしょ?水を使って床が動いたり、ここに原石を置くとアクアマリンになるんだぞ!」
その様を見せたらビビははしゃいで、手を引いてダゲレオを練り歩く。それから次はアレクサンドリアへと向かった。
「久しぶりのアレクサンドリアだね!ダガーやスタイナーさんは元気かな?だけど私の書いた演劇をまず見て欲しいの!」
「前に言ってたお姉さんの劇?」
「そうそう!」
小劇場に連れて行って、ルビーに久しぶり!って挨拶してからランプの魔神の劇を観る。今度白雪姫とか美女と野獣とか教えてあげたいな。
「歌って踊って凄いね!前見た君の小鳥になりたいと違う!」
「こっちは歌って踊ってって言うのがメインだからね!こういうのも楽しいでしょ?」
「たのしい!」
それから私はルビーからすべすべオイルを分けてもらう。
色んな世界のなかにモグネット本部があるからだ。
そこにも連れて行ってあげたいんだ。
劇を観た後は城に向かい、久々の再会を迎えて、スタイナーさんも嬉しそうだった。
ビビがメンバーの中で一番仲が良かったからね。
「ヴィエラ、ジタンの情報は……来てる?」
「いや、全くない。大丈夫、まだ一年も経ってないんだから!」
ダガーはジタンの情報が無くて不安な顔をしたけど、絶対に帰ってくるよと頭を撫でてなだめてあげた。
「次はリンドブルムだね。行こっかビビ!」
私は皆にまたねーって手を振って、今度はリンドブルムに降り立った。
エーコと久々に再会して、エーコはレディの作法をヒルダから教わっているんだからって胸を張っている。そういう所レディじゃないぜ。おっといけない。
「じゃ、次はチョコボの森に行こっか!」
「チョコボの森?」
「ボコ(ボビィ=コーウェン)と違って大人のチョコボが居るし、穴掘りゲームもさせてくれるんだよ!いこ!」
「え!ナニソレ!!わたしも行くわ!!」
てなわけでエーコもつれてチョコボの森にいき、野菜でチョロく背中に乗せてもらい、穴掘りゲームをしていく。
私は遠くで見ているだけだったけど、ビビがエーコと楽しそうに穴掘りしているのが嬉しかった。
「はー!いっぱい取れたわ!見てみて凄いでしょー!」
「ボクもたくさん集まったよ!」
2人とも泥だらけの手で発掘したものを見せてくれて、えらいえらいと2人の頭を撫でた。
それからエーコと分かれて、今度はブルメシアに向かう。
すると全く誰も居なかったブルメシアに少ないが人が戻ってきていた。
壊された物などを直していて、再建に向けて動き出しているみたいだった。
「おお!ヴィエラにビビではないか!」
「フライヤさんおひさ!」
「久しぶり」
「ブルメシアは少しずつだが再建が始まっているのじゃ。そしてフラットレイ様も、各地に散らばった同胞達を集めるためにまた旅に出た。でも、フラットレイ様は私が恋人だったことを思い出してくれたのじゃ。それ以外は思い出せなかったが、私はそれだけで十分じゃ」
どうやらフラットレイと上手くやれているみたいだし、そして同胞達もどんどん戻ってきているから、ブルメシアもこれで安泰だな。
「じゃ、がんばってね!」
「ヴィエラも気をつけていけ……いや、お主に敵う者などおらぬか」
3人で笑って、今度はモグネット本部へと飛んで行く。
「どこ行くの?」
「モグネット本部だよ!モーグリ達がお手紙配達してるでしょ?アレの本部があるんだ」
私はとある島に降り立ち、亀裂の入っている岩壁を拳でぶち破った。
私のパラメーターどうなってんだろうな。
振り返ったらビビがヒエエって怯えてて面白かった。
中に入ればモグネット本部が機械が動かず右往左往していて、アルテミシオンがゴメンナサイと謝っている。
「わぁ、よくここが分かったクポね!今モグネットの配達システムが停止してて困っているクポ!」
一匹のモーグリが寄ってきて状況を教えてくれて、私とビビは上の階に向かい、アルテミシオンに手を振った。
「すべすべオイルを使い過ぎちゃったんだって?」
「う……どうしても病みつきになってしまって……でもそのせいで皆のお手紙が届けられなくなっちゃったクポ。反省しているクポ……」
しょんぼりしているから、私はそっとルビーから分けてもらったすべすべオイルを差し出したらみんな大喜びでクポクポ鳴いて、そして早速オイルでシャフトの動きが良くなり、活気あるモグネット本部が戻ってきたのだった。
「ありがとうクポ!!本当にありがとうクポ!!」
「オイルはほどほどにね!」
こうして私とビビはそこを後にし、あ。って思い出してウイユヴェールに行こうってなった。なにせ魔法が使えない場所だから行ってないしね。
ヴァルファーレの背中に乗ってウイユヴェールに降り立ち、金の針を準備して中に入る。
ここはテラ博物館だから、私が分かる範囲で教えてあげた。
「ねぇ、お姉さん」
「ん?なぁに?」
初期型のインビジブルを見ていたら、ビビが私を呼んだ。
「……お姉さんは気が付いてるんだよね。ボク時間がもう無いこと」
ビクッとした。その口から言われると、怖くなる。
「……それもあるけどさ、ビビがもっと長生きできたとしても私が元の世界に帰っちゃうから、お別れは同じなんだよ」
ぎゅっと抱き締めたら、ビビもきゅっと抱き返してくれた。
もっと一緒に居たい、もっと笑わせたい、たのしいもの、たのしいことを体験させたい。
「今日は沢山のものを見られて楽しかったよ!」
「実を言うとジタンより色んな場所に連れて行ったと思うよ?モグネット本部やダゲレオは行ってないと思うし」
「え!そうなの!?」
「黒魔道士の村に戻ったら皆に今日のこと話そうね!」
こうして私とビビは村に戻り、ビビは興奮気味で今日のことを皆に伝えて、それをサラマンダーさんの隣で微笑ましく眺め、太い彼の腕に腕を絡めた。
「今日はね、沢山色んな場所に行ったんだよ。モグネット本部は今度一緒にいこ!」
「お前がオレとどうしても行きたいならな」
「なにそれー!行きたくないのー?」
「行くさ、お前となら」
腰を抱かれて引き寄せられ、そして私達の家に戻り、彼の腕の中で眠ってそしてまた時間が過ぎていく。
そんな時、ふらりと村を訪れた客人が現れる。
「あれ!ラニちゃんじゃん?」
マダインサリに居たラニちゃんだったけど、ふらりとコチラにやってきた。
サラマンダーさんやダガーとかがパーティーに居ると話しかけられず逃げちゃうアレね。
まさか来るとは。
「……久しぶりね」
「マダインサリの生活だとモーグリ達とだけだからけっこう寂しいでしょう」
「…………うん」
1人がかなり堪えたらしい。
ラニちゃんは裏家業とかだから、今の世の中では生活できないよなぁ。
モンスター狩りくらいだろうけどうーん。
「ラニちゃん、劇に興味ない?」
私がニチャァと汚い笑顔を見せたから、ラニちゃん引いてた。引くな。
私はサラマンダーさんに行ってきますと手を振ってからヴァルファーレでラニちゃんをアレクサンドリアへと送る。
そう、ルビィの小劇場につっこもうと思いまして。
「こ、ここ?」
「うん。ここの団員になってみたら楽しいかなーって」
ルビィに説明して、今回は美女と野獣を公演する。
流石に半年も経てば白雪姫やらシンデレラやら教えてあげられたよ。
ラニちゃんは初めて観るタイプの演劇に観劇していて、瞬きしてないんじゃ無いのかと思うくらい魅入っていた。よかった。
ラニちゃんは身軽さもあるから、演技をせずともバックダンサーとしてやれると思うんだよね。
と言うことで仮入団と言うことになりました。
合わなかったら用心棒とかやるって言ってたし、後は大丈夫だろう。
何せ、一緒に居るはずだろうサラマンダーさんを私が取っちゃったから心配だったんだよね。良かったー。
アレクサンドリアを後にして村に戻り、それからの日々はいつものように狩りをして、黒魔道士を送って、ジェノム達に色々教えていた。
そんな時だった。
ヒルダガルデ3号が村の側に降りたのだ。
そこから顔を出したダガーにびっくりしたよ。
「ダガー、どうしたの?」
私達はびっくりして駆け寄ったら、スタイナーさんはもちろんエーコやフライヤ、クイナまで居た。
どうしたんだろ。
「みんな!アレクサンドリアの地下を調べていたら出てきたのよ!」
リンドブルム兵が大きな布に卵のような何かを何個も乗せて運んできた。
まさか、これって……!
「プロトタイプの卵……?」
私が小さく零せば、ダガーはうんと頷いた。
「どうしようか考えて、みんなの……とくにビビの意見が訊きたかったの」
「ぼ、ボク?」
ビビはゆっくり卵に歩み寄り、そっと撫でた。
霧が無い今、卵をかえす方法はあるのだろうか?
「ガルガンルーにはまだキリが残っているわ。ダリの村に行けばまだ機械があるし動かせるはずよ」
「……孵して、いいの?」
「あなたの仲間じゃない」
ダガーが微笑んで、そしてビビは卵を孵したいと言った。
それから皆でガルガンルーに残っている霧を樽に詰めて沢山集め、そしてダリの村の機械もシドに手伝ってもらって動かし、そして全ての樽を使ってプロトタイプの卵を孵すことに成功した。
でも、意思はなく瞳に明かりは点っていない。
村に連れて帰り、どうしようかと悩んでいたビビに、私はポンと肩を叩いた。
「ビビ、沢山話しかけてみて。もしかしたら目が覚めるかも知れない。クワンおじいちゃんもそうやってキミを起こしたんだと思うから」
私は頑張れと彼の背中を撫で、ビビは帽子を直して人形のように座り込んでるプロトタイプに話しかけていく。
カーゴシップに乗ったときにビビは沢山話しかけていたけど、あのときと違って希望に溢れる顔をしていた。
ビビは自分の冒険を語った。何度も何度も、長い彼の人生という冒険を語った。
私達はそっと見守り、そして一日中話しかけた甲斐があったのか、プロトタイプは目が覚めた。
みんなビビと同じ姿をしてるけど、皆個性豊かで1人1人ちがった。
「やったよ皆!!」
ぴょんぴょんと跳ねて喜んで、皆に名前をつけようってなった。
「ビビがお父さんだから、お父さんの名前から取ろう!」
「え!お父さん?!」
「ビビが孵したんだからお父さんだよ!6人かぁ、ビピ、ビキ、ビイ、ニビ、ミビ、リビ!みんなビビから1文字取ったぞー!」
安直とか言うな。
お名前分からなくなりそうだからしばらく名札貼っとこ。
近くに干してあった布をもらって、裁縫を始める。カタカナで書いてやろ。この世界の文字知らんし。
「卵食べないで我慢したアル。イイ物見られたアル」
「孵化して安心したわ、後は大丈夫ね」
「頑張ってねオトーサン!」
「ふふ、先を越されてしまったのぅ」
「ビビ殿!では達者で!!」
「そんじゃ、皆またね!!」
大きく手を振って遠ざかっていくヒルダガルデを見送る。
振り返ればビビはみんなにまた冒険を語っていて、皆は好奇心が抑えられなくてワイワイと賑わっていて、ビビは生き生きしながらずっと語っていた。
いいお父さんになれるな。
「オレ達も子供が欲しいな」
「サラマンダーさん、それは純粋に子供が欲しいのか私を抱きたいのかどっちなのかなあ?」
「両方だ」
そんなわけで、私とサラマンダーさんは家に戻り、今日も激しい夜になった。
私の声は、少し遠い丘にある家だし、ビビの冒険譚にかき消されて聞こえることは無い。
「ガキが欲しいなんて思うとは、オレも随分変えられたもんだ」
私のお腹を撫でながら彼は笑い、変わったキミは素敵だよなんて言えば二回戦が始まっちゃったとか。