緋弾のアリア Side Shuya 〜Reboot〜   作:希望光

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第01弾 Cross shout

 ここ、東京武偵高校はレインボーブリッジの南に浮かぶ南北およそ2キロ・東西500メートルの長方形をした人工浮島(メガフロート)の上にある。通称『学園島』と呼ばれているここは武偵の総合教育機関である。

 補足として説明すると、武偵とは凶悪化する犯罪に対抗するために作られた国際資格だ。正式名称を『武装探偵』と言い、武偵免許を取ったものは武装を許可され逮捕権を有するなど警察に近い活動ができる。

 また名称の中にも記されているように()()であり、警察と違い個人個人が精鋭として活動すると言った側面も持っていたり。

 そんな武偵を育成する機関に在している、俺こと『樋熊(ひぐま)シュウヤ』は強襲科(アサルト)と呼ばれる学科の至って普通の2年生だ。

 さて、俺の事についてはこの辺にして現在の状況を整理して見よう。俺の眼前に立つのは、世界に名を馳せたSランク武偵『神崎・H・アリア』。普通の俺に対しては過剰とも呼べる能力を持った彼女が立ちはだかっていると言う現実に、正直目を背けたいと思った。

 新学期始まって3日目だってのに……なんでこんなに慌ただしいんですかね。

 

「……って、言ってる場合じゃないかッ」

 

 辺り一体を駆け巡る銃声と共にこちらへと飛来する弾丸(.45ACP弾)を前にした俺は思考を現実へと戻す。弾道は大まかに見積もっただけでも、俺の四肢へ確実に当たるような位置を飛んでいる。それぐらい、彼女の射撃は正確なのだ。

 その射撃を前にした俺は、危なげなくもそれに反応し、近場にあったコンテナ裏へと転がり込み弾丸を退けると共に、彼女から射線の通らない位置へと移動した。

 

「危ねっ……」

 

 自身の手にしたデザート(D)イーグル(E)安全装置(セーフティ)を外しスライドを引き、撃鉄が降りた状態——弾がしっかりと薬室へ装填された状態であることを確認する。

 

「チッ……まさか安全装置の不調で薬室に弾が入って無いとは……最悪だな」

 

 2挺目のDEのスライドを引きながら舌打ちする。間宮の合図と共に始まったこの戦い。俺は合図と共に銃を構え引き金を引いたが、それは空砲と化した。この時のDEは装弾こそされていたが()()()()()()()()()()のである。つまり俺の先制攻撃は、不発となりそのまま彼女の一方的な攻撃へと姿を変えてしまったというわけだ。

 

「とりあえず……大人しくしてても——蜂の巣、だもんな」

 

 自身に言い聞かせるよう呟いた後にDEを両手に握った俺は、勢いよく遮蔽を飛び出す。しかしながら、相手はそんな俺の動きを予想していたらしい。

 

「そこッ!」

 

 遮蔽を飛び出し走り始めるのとほぼ同時に、彼女の持つ『コルト・ガバメント』が激しい火炎と鉛玉を吐き始める。右足の半歩前、鼻先と言った具合に放たれる彼女の攻撃を体に掠めながらも、新たな遮蔽へと駆けて行く。そして、目標地点まで残り10メートルを切った辺りで軽く跳躍し、スライディングの動作を行う。

 

「……ッ!」

 

 地面を脚部裏側で滑り始めると同時に、上半身の身を軽く彼女の方へと捻り、両手のDEを構え彼女目掛け発砲する。これなら……! 

 ダブルアクションの機構を搭載し、フルオートと3点射(バースト)機能を備えた、魔改造を行った俺のDEは激しい反動を携え『.50AE弾』を、弾倉(マガジン)が空になるまで吐き続ける。その反動と慣性による射撃位置の修正を掛けるが、彼女のわずかな隣を飛んだのみで両手のDEのスライドが開放される。

 

「……やっぱ下手になってんな」

 

 目標としていた遮蔽に滑り込んだ俺は、両手のDEの弾倉を地に落とすと新たな弾倉を手早く詰め直す。最近無茶な動作からのフルオート射撃を、このDEではやっていなかったせいか思うように射撃が行えず、とても歯痒さを感じる。

 

「サボったツケが回って来たかな……」

 

 再度スライドを引き装填を終えた俺は、遮蔽から僅かに身を晒し相手側へDEを向けるが、その先に彼女の姿は無かった。消えた……いや、違う。

 

「上かッ」

 

 遮蔽として利用していたコンテナの上部へ視線を移すと、俺を見下ろすようにしながら2挺のガバメントをこちらへと向けた彼女の姿があった。

 

「判断能力自体は高いけれども反応力がイマイチ、ってところかしら」

「そうかい」

 

 短い会話の後、互いの武器(えもの)が幾度目かの轟音を放つ。俺は攻撃の手を休める事なく走り、フェイクを踏みつつターンを行って弾除けをしながら相手側の足元ギリギリへと滑り込んでいく。補足として述べるが、高所と低所の撃ち合いに於いては現在俺が居る側である低所の方が不利である。その反面、高所は自身の直下となる位置へは攻撃を行いにくいという欠点も存在しており、俺はその欠点を突く形で動作をおこなった。

 

「この位置ならどう動く……?!」

 

 予想を立てに入った途端、俺は僅かだが硬直してしまった。突如俺の視界、それも上部から小太刀を携えた少女が現れたため。

 

「——次の動作がまでが遅いわよ」

 

 彼女の言の葉は、鋭く素早い一閃へと姿を変え俺は襲い掛かってきた。対する俺は、一切の動作を行うことができずに振り下ろされた刃の軌跡を眺めているだけだった。その時、俺の脳裏をとある思考が過ぎる。

 

 ——俺は、ここで負けて、()()のか? 

 

 その言葉が俺の脳裏に響き渡ると同時に、演習場内にはある音が駆け巡った。俺のDEの弾倉部が彼女の刃と衝突することによって生じた、金属特有の甲高い音が。

 

「……今のを、反応した」

 

 目の前の少女はその光景に対して驚きを隠さないでいた。対する俺もまた、彼女の能力の高さに驚きを隠さないでいた。まさか……使うつもりのなかった()()()()()()()の俺を引き出されてしまった、という事実により——

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