あたり一面が炎を上げて燃えている。
燃えているのは、戦車、瓦礫、森といった物だけではなかった。ソレは、かつて人だったモノ。正に其処は地獄だった。そして、その中央には一人の少年が立っていた。まだ、13、4歳くらいの男の子が立っていた。両手に二丁の銀の銃を持ち、辺りを見渡していた。その眼には目の前の惨状には目もくれていなかった。ただ、殺し損ねた者はいないか確かめていただけだった。
そして、そんな少年を護るかのように二メートル近くある体躯をした蒼いライオンのような生き物がいた。
「クウゥゥ~~ン」
少年にじゃれ付く様に頭をこすりつけてきた。
「よしよし。じゃあ、次行くぞ。シロ」
「ガウッ!!!」
少年の呼びかけに答えるように鳴くと、共に空高くに跳び次の戦場に向かって跳んでいった。
事の発端は、『魔法』がただのお伽噺の産物ではなくなったのがそもそもの原因なのか。それとも人の欲望が発端なのか、だがそれは、もう解らない。何故ならもうそんなことは意味をなさないほどの人命が失われた。だからと言って、どんなに魔法の才能があってもどんなに国の命運が掛かっていても年端もいかない子供が戦場を駆けることを容認してはならないだろう。
そう今は、戦争中なのだ。多くの殺傷魔法が飛び交い、多くの怒号、悲鳴,そして爆発音が辺り一面に轟いていた。そんな中少年は最前線で歴戦の兵士に負けない、いやそれ以上の働きを見せていた。後どれだけの命を奪えば終わるのか。後どれだけ血を流せば終わるのか。そんなことすら考えられない。今目の前には、自分を殺そうと魔法術式を展開。或は、展開し終えて魔法を放ってくる 敵 がいるのだ。敵は殺す。でなければ自分が死ぬ。ソレはダメだ。とっくに後戻りはできない場所に足を踏み入れた。元より退路はないのだ。自分は、人殺し。だが、足を止めるわけにはいかない。ここで死んだら『彼女』は、どうなってしまうのか。それだけが、いまにも薄れゆく意識を繋ぎ止めて戦う理由。
二丁の愛機を的確に迅速に照準を合わせ、魔法を放つ。一つのミスもなく敵を葬っていく。
少年を動かすものはただ一つだけ。栄誉も、勲章も、国も関係ないただ、護りたい人のために闘う。例え彼女がそのことを知って、涙を流しているとしても此処で死ねば彼女が悲しむから。だから死ねない。彼女が彼女でいられるように。彼女に降りかかる火の粉を総て排除する。そう決めたのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
戦争が終わりを告げようとしていた。
陸から10㎞の地点海上に軍用艦見えている。敵国の最新兵器が今まさに日本の最前線であるここ沖縄に向けられていた。
そんな時、あの少年が沿岸部に立っていた。その間にも目の前の軍艦から次々を魔法による攻撃が降り注いできていた。そして少年は、銃を構えて魔法式を展開した。そして一言。
「正義の鉄槌(ジャッジメント」」
一条の光の玉が軍艦の上空で弾けた途端辺り一面に強い閃光が覆った。そして次の瞬間、軍艦は轟音と共に爆発した。
これが戦争の終焉となった。休戦とはいえお互いに続ける余力がなかったのだ。日本はこれ以上の戦力が投入できる余力がなく、敵国は切り札を失ったのだから。
これにより休戦協定が双方の国により取り交わされた。「沖縄防衛線勝利」という形で幕を閉じたこの戦いが第三次世界大戦の日本最後の戦地であり、大勝利ということで政府は公表した。少しでも戦争での政府への不満を和らげようとした結果でもあった。
そんな政府の思惑は関係なく少年は、帰ってきた。彼女が避難しているシェルターに。