違法改造のチート転生者   作:ミソカッスン

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 続きは無いです。気が向いたら別の国に転移した話の出だしだけ書くつもりです。


竜王国に転移した場合の物語
パターン1/竜王国に転移した場合


 永田健介が異世界に転移してから二日が過ぎていた。その間の彼がやっていたことは状況確認と情報取集だ。

 

 ユグドラシルのサービス終了の時刻が過ぎてもサーバーダウンが起きない事を不審に思い、拠点の外に出た彼が見たのは森だった。自分の拠点は確かに砂漠の真ん中にポツンと立っていた筈なのに、これは運営がサーバーダウンに失敗した影響か何かか、それとも噂に聞くユグドラシルⅡの先行体験か。

 

 とにかく拠点から一歩踏み出した彼は、更に信じられない事実に気が付いた。風を感じる。風が運んでくる青臭い臭いを感じる。生暖かい気候を感じる。じっとりとした湿気を感じる。それらはどれもあり得ない事だった。電脳法で禁じられているし、デバイス側にそれらを感じさせる機能が搭載されていない以上、ユグドラシルの運営が何をしても、それらをプレイヤーに感じさせることなど出来やしない。それではこれは一体どういう状況なのか。永田健介は思考の渦に囚われようとしていた。しかし、状況はそれを許さなかった。

 

 「ニンゲンダ。餌ダ、俺ガ食ウ!」

 「イヤ、俺ガ食ウ!」

 

 声のする方に目をやると、二足歩行の白い毛むくじゃらの生物がこちらを日々指していた。次の瞬間、その獣たちは口を開き牙を剥き出しにして永田に襲い掛かってきた。しかし、永田にはその動きがとてもゆっくりに見える。まるでスローモーションの様なその動きに気が抜けた永田は、考え事をする余裕すら出来た。

 

 (あんな見た目のモンスター、ユグドラシルにいたかな?とういうか今コイツ等言葉を話してたよな?という事はイベントか?にしては会話が短すぎる気がするし、それに何でスローモーションなんだ?これもバグの一種か?……というか、此処は本当にゲームの中なのか?匂いまで感じるのは明らかに電脳法違反だ。どうなっているんだ、一体……)

 

 永田が思考を巡らせていると、漸く毛むくじゃらの生物は手の届く距離ぐらいまで近づいてきた。永田はとにかくこの世界がユグドラシルというゲームの中なのかどうかを確かめるべくコンソールを開き魔法を使用としようとしたが、コンソールは開かなかった。しかし、何となく魔法の使い方が頭に浮かんできた。まるで初めから魔法の使い方をこの体がしっているかの様な不思議な感覚を覚えた。

 

 永田は手を翳し魔法を唱えた。

 

 「<雷撃(ライトニング)>」

 

 永田の手から放たれた雷撃は、毛むくじゃらの生物の内一体の胸を貫くと、その先にある大木に風穴を開け、それは何処までも続いているのではないかと思う程の痕跡を残した。つまり魔法は問題なく発動した、しかしそれは永田が本来知る雷撃の威力とはあまりにかけ離れていた。おそらく違法改造によりレベル999になった影響だろう。もしかしたら、自分が今置かれている状況も、自身が違法改造なぞに手を出した影響なのかもしれない、そう考えた永田は自虐的な笑みを浮かべた。

 

 仲間がやられたのを見て他の毛むくじゃらな生物たちは一斉に逃げ出した。まだ魔法を色々と試したかった永田は先ほど唱えた第三位階の魔法よりさらに弱い第一位階の魔法でどれ程の威力が出るのか興味を覚え魔法の矢(マジック・アロー)の魔法を唱えようとした。しかし、視界の端に先ほどの毛むくじゃらの生物の死骸が映ると、彼は魔法の発動するのを止めてしまった。そして、ゆっくりとその死骸に歩み寄る。

 

 ユグドラシルでは倒したモンスターはデータクリスタルになり、一定の時間が経てば死体は消滅する。しかし今、永田の目の前に在るのは確かに生物の死骸であった。幸いな事に腹部が焼け焦げているだけで臓物などが飛び散っているわけでは無い、決してグロい映像では無いが、肉の焦げる匂いに、永田は僅かに吐き気を覚えた。永田はしゃがんで死骸を触ってみる。それは温かく、毛皮には確かな感触があった。

 

 永田は確信した。これはゲームなどでは無い。現実の世界なのだと。しかも、目の前にいる生物は間違いなく人語を操っていた。つまり知的生命体なのだ。そんな相手を殺してしまった思うとゾッとした。永田がそれでも冷静でいられたのは彼らの会話の内容のお陰だった。彼らは永田の事を、人間の事を餌だと言っていた。つまり彼らは人を食う種族なのだ。そんな相手ならば殺してしまっても問題無かった。そう自分に言い聞かせ、永田は自分の精神衛生の管理を行った。

 

 とはいえ、このままこの場に居てまた襲われたとすると、また殺さなくてはならなくなる。永田は直ぐに拠点に入るとロックを掛けた。高レベルのプレイヤーでもない限り、この拠点に入り込むのは不可能だろう。

 

 安全を確保した永田はすぐさま二階に上がった。そこにあるチェストから幾つかのマジックアイテムを取り出す。情報収集に必要なマジックアイテムだ。それから永田は一昼夜、ずっと情報収集に時間を割いた。遠くの映像を映し出す鏡型のマジックアイテムに、遠くの音を拾う蓄音機型のマジックアイテムを併用し、情報系の魔法を妨害するスクロールを使う。更に鏡の視野角を広げるスクロールと室内にも自由に見れるようになるスクロール、聞こえるようになるスクロールを併用した。

 

 「こんな事になるなら全部のアイテムを9999個ぐらい複製しておけば良かった……」

 

 この世界では手に入るかも分からないスクロールが蒼い炎に包まれて消える姿を見て永田がぼやくが後の祭りだ。というかこんな事になるなど誰のも想像出来るはずもないのだ、しょうがない。

 

 永田が集めた情報だと、この国は竜王国という国らしい。そして、永田を襲った二足歩行の白い毛むくじゃらの生物はビーストマンという亜人で、この国は現在そのビーストマンの侵攻に晒されており、国が亡びるのも時間の問題かもしれないという事だった。この竜王国にいるのは殆どが人種で、ビーストマンと人では基本的な能力に開きがあり過ぎるのだとか、現在この国でビーストマンと真面に戦える戦力は少なく、外部の国から援助を受けているがそれも少なく、あまりに数がたりないらしい。そこで永田はふと考えた。自分ならば、レベル999の力を持つ自分ならば、この国を救えるのではないかと。しかし、先ほどのビーストマンの死体が、その焦げた匂いが脳裏にこびり付いている。この国を救うという事は多くのビーストマンを殺すという事だ。これが相手がただのモンスターならば話は簡単だ。人間は生きる為に他の生物を食べる。それは人間だけじゃない、それが自然界のルールでもある。しかし、相手は人語を扱う知的生命体だ、いかに人間を食う化け物だとは言え、それは殺人と変わりないのではないか、そんな考えが永田の思考から離れない。

 

 永田はベッドの上で天井を見上げながら、今後の方針を考えていた。ビーストマンと戦うのか、この国の人たちを見捨ててこの国を去るのか。暫く悩んで永田が出した答えは戦う事だった。しかし、それは虐殺ではない。この国にある冒険者組合と言う組織に登録して、この国の冒険者としてビーストマンと戦う。全てのビーストマンを殺すのでは無く、この国に攻め込んできたビーストマンを徹底的に倒すことにした。相手が好んで人を襲い食らうというのならば、それを知的生命体だからと言って見逃すことは出来ない、しかし、ビーストマンの中にも人を食らう事に反対している勢力もあるらしい、そんな思考を持つ者までは殺したくはないし、殺さない。それが永田が出した結論だった。

 

 永田は重い腰を上げると、拠点を出て竜王国の冒険者ギルドのある街を目指して歩き出した。

 

 

 

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