ようこそ悪正義の教室へ   作:ざきあ

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10.覚悟

 

 

特別棟の屋上へ出ると空は赤く染まっていた。

 

「それで?話って何かにゃ?」

 

一之瀬がそう言うと真は冷酷な表情をしていたので一之瀬は思わず息をのむ。

 

「あ、浅桜君?」

 

「一之瀬、先に言っておく、これは取引だ」

 

「と、取引?」

 

「とりあえずこれを見てくれ」

 

真は端末の画面を一之瀬に見せ、画面に映っている動画を再生すると一之瀬は驚いた顔をした。

それは昨日の放課後、審議が始まる前に一之瀬と清隆がCクラスの生徒に偽の監視カメラを使い、審議を取り下げろと脅している動画だった。

 

「え、な、なんでこの動画を浅桜君が?」

 

「なんでも何も、この動画は俺が設置したカメラの映像だ」

 

「そ、そっか、それで、その動画を私に見せてどうしたいの?」

 

「学校、もしくはCクラスに提出しようかと思ってな」

 

「ッ!?」

 

真の言葉に一之瀬は絶句した。

もし動画が学校側、Cクラスに渡れば一之瀬と清隆は停学、最悪の場合退学も有り得る。

 

「ま、待って浅桜君!そんな事したら!」

 

「恐らく2人は退学だろうな」

 

「な、なんで!?綾小路君も私も浅桜君の友達だよね!?その上私はクラスメイトだよ!?私が退学になったらcpも減っちゃうんだよ!?」

 

「そんな事分かってるさ」

 

「だったら!!」

 

「だから取引をするんだ」

 

「え?」

 

一之瀬は困惑した。

当たり前だ、真はクラスメイトである一之瀬を脅して取引をしようとしているのだから。

 

「2つ条件がある」

 

「じょ、条件?」

 

「ああ、まず1つ目、お前は今日から命に関わる事や退学になる以外の俺の命令を全て聞く。」

 

「え、あ……」

 

「2つ目、俺に100万ppを支払う、この2つの条件をのんでくれれば動画は消してやる、そうすればお前と清隆は退学しなくても済むぞ?」

 

「なんでそんなこと言うの!?同じクラスの仲間なんだよ!?」

 

条件はどちらも厳しいものだった。

1つ目は要するに体を要求されたり等の命令もされる。

2つ目はクラスメイトから集めたポイントを渡さなきゃならないからだ。

真は一之瀬を更に追い込む。

 

「タイムリミットは30秒だ」

 

「ま、待ってよ!!」

 

「……」

 

「浅桜君!!」

 

「残り20秒」

 

「う、うぅ……」

 

「残り10秒」

 

「あ……」

 

「9.8.7.6.「わかり…ました……」…条件はのむか?」

 

「のみ……ます、だから、動画は消して下さい……」

 

そう言われた真は一之瀬の近くへ行き端末の画面を見せながら動画を消した。

 

「動画は消した」

 

「あり、がとう、浅桜君……お願いがあるんだけど」

 

「なんだ」

 

「2つ目は条件少し変えてくれないかな……」

 

「……言ってみろ」

 

「皆から集めたポイントじゃなくて、私が今持ってる個人のポイントじゃダメかな…」

 

「足りないだろ」

 

「今後入ってくる個人のポイントは全部浅桜君に回すから……」

 

真は少し考え了承した。

 

「いいだろう、合計100万になったら回さなくていい」

 

「ありがとう……」

 

「じゃあまず1つ目の命令だ、目を閉じて顔をこっちに向けろ」

 

「な、何するの?」

 

「……言わなきゃわからないか?」

 

「えと、浅桜君は松下さんと付き合ってるんだよね?」

 

「ああ、だが別にバレなきゃいいだろ」

 

「そ、そんな……松下さんに申し訳ないよ……」

 

「……黙って言う事を聞け、ボイスレコーダーで録音もしているんだぞ」

 

「はい……」

 

一之瀬は瞳に涙を溜めながら真へ顔を向け目を閉じた。

一之瀬は千秋への罪悪感と真に対して裏切られた気持ちになった。

 

(松下さんごめんなさい……浅桜君は優しい人だと思ってたんだけどな……)

 

目を閉じキスをされると思っていた一之瀬だが何も起きない事に不思議に思っていると

 

ペシッ

 

「あうっ!?」

 

「アホかお前、ちなみに無音カメラでキス顔撮ったから」

 

「え?え?え?」

 

「はぁ……全部嘘だよ、最初から動画は送る気無かったし、脅してたのも全部演技だ」

 

「え、えぇ……」

 

頭へチョップされ、全て演技だったと言われ一之瀬は脱力してしまった。

そして安心したのか泣きそうになってしまった。

 

「あ、浅桜君……酷いよ……」

 

「悪かったよ、けど必要な事でもある」

 

「必要な事?」

 

「ああ、覚悟だ」

 

「覚悟……」

 

「世の中にはこんな言葉がある、撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ。って」

 

真は有名なアニメのセリフを口にした。

 

「それって、今回私がやった事が自分にも返ってくるって言いたいの?」

 

「ああ、一之瀬、俺はなんで最初協力する事に消極的だったか分かるか?」

 

「……最悪の状態に巻き込まれるかもしれないから…」

 

「ああ、そうだ、今回はそれを俺が演出した、気分はどうだ?」

 

「怖かった……浅桜君はこうなるかもしれないって伝えたかったの?」

 

「そうだ」

 

「そっか……ありがとう……」

 

お礼を言われて真は思わず呆れた。

 

「なんで礼を言う?」

 

「だって、私にこうなるかもしれないから気を付けろって伝える為に演技してくれたんでしょ?」

 

「……まぁそうだな」

 

「だからありがとう、浅桜君、これからは覚悟を決めて行動するよ」

 

「そうか、一之瀬、もう1つ聞きたい事がある」

 

「何かな?」

 

真は前に神崎へした質問と同じ事を一之瀬にも問う。

 

「もし、試験で[クラスから退学者が1名出るかわりに500cpの譲渡]又は[退学者が出ない代わりにcpの変動は無し]…この2つのうちどちらかを選択しなければならない状況が来たらお前はどちらを選択する?」

 

一之瀬は即答で答えた。

 

「もちろん後者だよ!1度失った仲間は戻ってこないんだよ!?浅桜君だってそう思うでしょ?」

 

「……俺は前者を選ぶ」

 

「ッ!?そんな!?なんで!?」

 

「一之瀬、これが3年の3学期、俺達がAクラスにいてBクラスと接戦を行われていても同じ事を言えるか?」

 

「ッ!?」

 

「……恐らくだが他のクラスは退学者を出してでも前者を選び勝ちに来るぞ」

 

「……それでも……私は今の皆と一緒に卒業したい!!!!」

 

一之瀬がそう叫ぶ。

真は空を見上げながら呟いた。

 

「誰も傷つかない世界なんてないんだよ一之瀬……」

 

「え……」

 

「俺は勝つ為なら犠牲は付き物だと思っている」

 

「そんな……」

 

「俺はお前みたいに優しい人間じゃないからな、だから俺を頼るなら覚悟をしろ」

 

真は一之瀬の目を真っ直ぐ見て告げた。

 

「……分かった」

 

「ああ、それ「けど!」…」

 

「私は皆で卒業出来るように頑張るよ」

 

「……そうか、分かった、俺もなるべく善処する」

 

「む、そこは協力するって言うところじゃないかにゃー?」

 

「はぁ……協力はする、けどあまり期待するな」

 

「そっか、けど、困った時は助けてね」

 

「……ああ」

 

「ふふっ、それじゃ帰ろっか?」

 

「先に帰っててくれ、俺は少し残る」

 

「ん、わかった!それじゃ先に帰ってるね!バイバイ!」

 

そう言って一之瀬は屋上から出ていった。

真は内ポケットから煙草を取り出し火をつける。

 

「……フゥー…皆揃って卒業か……」

 

「……真」

 

「ッ!?」

 

声をかけられ振り向くとそこにはユキがいた。

 

「おま、いたのか……」

 

「ん、最初から全部聞いてた」

 

「……まじかよ…いや、その、誤解するなよ?」

 

「……本当に一之瀬襲ってたらアンタの事殴ってたわ」

 

「……だろうな」

 

「てかそれ……」

 

「え?…あっ」

 

ユキは煙草を指さしながら呆れた顔をしていた。

 

「……言うなよ?」

 

「……言わないけど、バレんなよ」

 

「おう…」

 

「……ねぇ、さっき一之瀬に言ってた事だけど」

 

「ん?ああ、俺は優しくないって話?」

 

「……うん」

 

「…幻滅したか?」

 

嫌われる覚悟はしていた。

勝つ為なら犠牲は問わないと言ったのだ、もしかしたら自分が切り捨てられるかもしれない。

友人がそんな思考の持ち主だとは思いもしていなかっただろう。

しかしユキは

 

「アタシはアンタが間違ってると思えない、けどアンタが辛そうな顔をしているのを見るのは嫌だ」

 

「……え?」

 

「……一之瀬の言う事もわかる、けどアンタだって間違った事は言ってないだろ」

 

「……」

 

「それに、アンタさっきから酷い顔してるよ」

 

「えっ、そんな酷い顔してる?」

 

「してる、本当は言いたくなかった、そんな顔してる……確かにアンタは皆に優しくないかもしれない、必要なら犠牲も問わない奴かもしれない、けど、誰かを救いたいって気持ちはある」

 

「……」

 

「あの時と同じ顔だよ、アタシはアンタのそんな顔見たくない」

 

「……ユキ」

 

「その、なんて言えばいいか分からないけど、アンタは本当は誰かの為に頑張る凄く優しい奴だってアタシは思ってる、だからそんな顔すんなよ、バカ真」

 

そう言われた瞬間、真は心が軽くなり少し笑顔になった。

そしてユキの頭を撫でながらお礼を言う。

 

「サンキュ、ユキ」

 

「……だから頭撫でるな…」

 

「ダメか?」

 

「……まぁ、いいけど…」

 

「ふっ、俺はいい友達を持ったよ」

 

「……あっそ」

 

(やっぱりアンタは優しい奴だよ……)

 

そう言って2人は太陽が沈んでいくのを眺めていた。

 




次回!夏休み!

あなたの推しは!?

  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 一之瀬帆波
  • 姫野ユキ
  • 椎名ひより
  • 伊吹澪
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 軽井沢恵
  • 松下千秋
  • 長谷部波留香
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