「さて、こちらもきちんと働きますかね。」
彼女はとても満たされていた。アナトリアの傭兵が行った第八艦隊単独突破。それと全く同じことができるのだから。しかもただ突破するだけではない。手に持つGAライフルを見て嗤う。艦隊に大損害を与えながら進むことができる。この状況にこの武器と機体、彼女にとって理想的な状況だった。機体はヒルベルト頭と腕にアルギュロスコアと脚の混成。とにかく防御に特化した機体は敵に絶望を与える。
通常ブーストを吹かしてティターニア進み始めた。
「ロケット装着完了しました。敵部隊までの距離は残り3000です。」
「まさか武器の調達だけでなく軍港のネットワークまで掌握するとは……一体何者だ?ただの捨て駒には思えないが……」
そう、長年傭兵を続け、様々な人に会ってきた彼がここまで驚くほどに彼女は異常だった。若くしてこの思い切りの良さと技術を持っていた。
「企業連に実力で入った人はかなり少ないですからね……殆どが企業のコネとかですから私のような人は少数なのです。」
「だったら尚更あの”老人ホーム”に入れておくのは惜しいな。」
「ありがとうございます。でも企業連はいいもんですよ。下っ端でもそれなりに待遇は良いですし。これは想定外ですけど。」
笑いながら答える。少ない平和な時間ももう終わる。
「さて、行くとしますかね。手筈通りに行くぞ。」
「わかりました。ご武運を。ホワイトグリント。」
「ああ。ホワイトグリント。出る!」
庫外に行きオーバードブーストを吹かす。
AFスティグロが先行してやってくる。
「ホワイトグリント……レイレナードの悪夢……ようやく見つけた!同胞の敵を討たせてもらう!」
「どっちの陣営だ?誰を殺ったなんてもう覚えてないのだがまあいい……」
悪夢は狡猾に嗤う。
「すぐに討たれたお仲間のところに連れてってやるよ。」
ロケットが構えられる。
「喰らいやがれぇぇ!」
スティグロの突進に合わせてロケットを撃ち込む。
ロケットを撃たれながらも速度が変わることなくホワイトグリントを通り過ぎる。そしてーー
「逃げる気か。」
反転しクイックブーストを吹かすが距離は離されていく。
「ロケットとなんら変わらないミサイルなど簡単に避けられるのだが……」
発射後の旋回半径が長いため、高度を変えながら前進することで簡単に避けられるスティグロのミサイルはホワイトグリントに触れることすらできない。
お互いに有効な攻撃をすることができない時間が進む。
そこでホワイトグリントが動いた。オーバードブーストを発動した後クイックブーストを一瞬溜めてブースター内のコジマ粒子を高濃度圧縮し、爆発的な推力を得る技術、二段クイックブースト。これらを併用して今までの約二倍の速度で動き、距離を徐々に縮めていく。そしてロケットが構えられる。
「来るなぁ……‼︎来るなぁぁぁ‼︎‼︎」
テクノクラート製のロケットは当社の技術力の低さからFCSの管制を受けることができず、搭乗者のマニュアル・サイティングにより狙わなければならないため、通常の戦闘では用いられることはない。しかしアームズフォートに対しては十分な弾速と威力、連射性能を持ち、的の大きさから非常に有効な攻撃手段となっている。
追い詰められたスティグロはハイレーザーで迎撃しようとするがホワイトグリントを捉えることができず大破。そして徐々に沈もうとしていくスティグロ上に佇むホワイトグリント。ロケットを外し、残る第八艦隊に向けて歩を進める。
ーーしかしタイムリミットはすぐそこまで来ていた。