ミミル軍港での出来事があって2日後。企業連職員と一部のリンクスが暮らしているクレイドル01の中で。
「ええと… クレイドル最上階のお茶会部屋にくるように…?」
一部のトップリンクスと企業連の代表達が集う「カラード緊急事態及び特別事項発生時に伴う企業連との合同会議とカラード定例会開催会議室」名前の長さとやっている内容の薄さの差が激しいことからお茶会部屋と呼ばれる場所に彼女ーーミウは呼び出された。軍事課及びリンクス管理課課長兼クレイドル治安管理長に。絶対に碌なことじゃない。ティターニアから言われたことが頭をよぎる。
ーー口封じ
確か過去にアナトリアの傭兵の正体を知るために何人もの諜報員は使われた後急に消息を絶った。同じような感じなのだろうか…
「まぁここから逃げ出せるわけもないしね。行きますか。」
そう言ってデスクを後にする。懐には忠告どおりに大型の自動拳銃を入れていた。
「失礼します。」
ノックをして部屋に入る。長方形に並べられた机の奥に1人の老人がいた。
「突然呼び出して申し訳ない。王小龍だ。ミウ・バーク殿」
「王小龍…?カラードランク7の?」
「ああ。その王小龍だ。君には異動についての話をする為に来た。」
「異動……ですか?」
「ああ。だがまず一つ謝罪をさせてほしい。ミミル軍港での件は伝達ミスによる事故だ。その件もあって前々から話されて君の異動が決定した。」
「前々からというのも気になりますが……あれが事故……ですか?彼を呼び出すための囮に使ったということではなく?」
普通一介の事務職員が王小龍と話すことはない。異動の話は大体企業連からはせいぜい書類で知らせるか直属の上司経由で来るかだ。さらに前々から異動の話が出ているのも怪しい。彼女はこの異常な状況を見て王小龍がミミルの件に関わっていて、彼に計画の内ではないかと考えた。その上で本質を引き出そうとしている。
「彼から何を聞いた?いや優秀な貴方のことだ。何も聞かずとも状況からある程度の予想が立っていて今確信に変わったのだろう。」
彼は未来を知っているのかの如く冷静に言葉を繋げていく。
「大体その予想が真実だ。君があの時ミミル軍港にいて、ティターンが出るタイミングで襲撃を仕掛けた。そしてホワイトグリントに救われる。ここまで計画の内だった。」
この言葉で彼女の彼に対する警戒レベルが大幅に上がった。懐に手を入れる。いつでも銃を取り出せるように。だがーー
「やめておいた方がいいぞ。近くに私の飼い猫がいる。それに私は君の口を封じようとしてきたのではない。」
彼女は眉に皺を寄せて言う。
「さっきの話を聞いてそれを信用できると思いますか?」
老人は笑って言う。
「そうだな。なら本題に入ろう。君にはリンクス管理課に異動してもらいとあるリンクスのオペレータをしてもらいたい。特例で少佐の階級も与える。」
「…………⁉︎そんなことがあり得ると?あなたがオリジナルリンクスで”会議”の参加者だとしてもこんなことできるはずが……」
「だから言っているだろう。”前々から”と。私はかなり前から君のことを調べていてね。ミミルの件はこれを実行するきっかけでしかない。ついでに我々にさらなる利があれば尚よしだったのだがな。」
少女は黙り込む。いくら才能があり、努力をしてきて企業連に入れたとしてもまだ18の少女だ。陰謀屋の全てを理解することはできない。
「ふむ……まだ信じられないか。なら君についてもらうリンクスのことを話そう。彼は……いや彼らはーー」
「と、いうことがのです。」
「首輪を付けに来たということか。王小龍……何を考えている?」
彼は唸る。ミウから聞いた王小龍の発言は確かに辻褄が合う。だが一つだけ大きな引っかかりがあった。
なぜ王小龍がミウのことを知れたのか。
企業のーー特にオーメルのコネが有れば誰でも入れてクレイドルで安定した生活を送ることができる。そして一年に入ってくる人数は数千万だ。その中から何故彼女を?いまいち納得がいかないがずっと考え続けるのも意味がない。
「まあ良い。まずは管制塔を案内してどこかに部屋を作ろう。」
トラックいっぱいに積まれた荷物の処理を始めた。