CoCシナリオキャンペーン『魔法科高校の劣等生』 作:虚憑き
前回よりも2倍以上の文章量ですよ!
エッ前話の投稿日から何日立ったって?
………スッ(土下座)
「何の権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか」
《少女の声が響く》
《決して大きな声ではないが、その気弱そうな外見からは想像できないような棘を含んだ言葉はその場にいる全員に声を届けた》
時は入学式翌日、放課後の正門前でのことである。
一科生数人と二科生数人が対峙していた。
事の起こりは本日昼頃のことらしい。
曰く、調子付いた二科生によって同級生(司波深雪)と仲を深める時間が減った、と。
曰く、その後の専門授業見学会でも二科生のクセに最前列で見学していた、と。
曰く、二科生のクセに司波さんと仲が良さそうだ、と。
昼はともかく、見学会の際には遠巻きには見えたし聞こえたが、清々しい程に自分達の都合しか考えない様には一科生云々よりも人としてどうかと思うところがあった。
が、一部の生徒には大層ウケが良かったらしい。
その中でも特にバイタリティ溢れる者たちが動いたのが今の状況だ。
「どよ!糸里くん!修羅場でしょ!?ヤバない!?」
「人の修羅場を楽しげに見ている君の方がヤバいと思うよ」
ちなみに私はそれを遠巻きに眺めている。
隣で楽しげに見ている女生徒は「正門前で修羅場だって!」と(何故か)伝えに来たクラスメイトの相澤さんである。
明るい性格で積極性が強い…というより、やたらグイグイと絡んでくる。…面が良いせいなんだろうか?できれば面倒事から離れた事柄で発揮されてほしかった。
じゃあ避けて帰るかぁー、と考えていたら「何してんの糸里くんはコッチ!」と連れてきた張本人である。
イヤナンデ?
「だって見てみなよ司波さんの顔!アレは恋しちゃってる乙女の顔ですよ!一科生と二科生…立場を越えた禁断の愛…司波さんの心はその間で揺れて…キャーッ!!」
人を連れてきて一人でヒートアップしないで欲しい。
「…ソーダネー、ところで私を呼んだのは何で?」
「おっとそうだった、いやぁ騒ぎが大きくなる前に我らが主席様にこの場を収めてもらおうかと」
「首席にそんな仕事は無いでしょ…やるけど」
「えっマジ!?いやぁ、言ってみるものですなぁ」
期待してなかったんかい、じゃあなんのために呼んだねん。
しかし、揉めている一科生の中に見知った顔が幾つか見える。 というか同級生である。
この後、司波達也が穏便に収めてくれるのを知っているとはいえ、同級生が犯罪紛いの事をしでかすのを止めず、何もしないのも収まりが悪い。
というか、此処にいるのを達也に気づかれてる……と思う。
視線はあってない、が何時でも動けるように重心を移している。
原作では一科生相手にそこまで警戒してなかったと思うので、この警戒は私に向けられたもの…じゃないかなぁ?
なので此処で動かなかったらマイナス印象を植え付ける可能性があるわけですね、
そういうわけで止めようというつもりはあったのだ。
《彼が周囲の雑踏から集団へと近づいていく》
《その時にその言葉は聞こえた》
「…今の時点で一体どれだけ優れているというんですかっ?」
あやっべ、駄弁りすぎたわ。
《先程も声を上げていた女生徒の言葉が響く》
《それと同時に空気が変わる》
《ぴん、と何処か張り詰めた、緊張感のあるものへと》
「…どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」
「ハッ、おもしれえ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
《慈悲か、嘲りか、或いは最後通牒か》
《ともかく一科生側が発したその言葉を二科生は一蹴した》
今から止める…止まるか怪しいな。
魔法の準備をしつつ近づく…あ、間に合わないわ、急ご。
と、考えた途端に体が動いた。
体を前に倒しつつ、足を後方へと蹴り出す。ロスを最小限にしつつ集団へと一息に近づく……今サラッとやったけど私、随分人間離れした技術使ってない?
いや、考えてる暇ねぇわ。
「だったら教えてやる!」
「いや駄目だろう」
言葉と同時に腕を振るう。
振るわれた腕からは燐光と共に粒子が漂った。
その粒子に気づいたのか、一科生に近づいていた二科生二人は飛び退き、逆に一科生は全員それに触れた。
何をしたかは単純、想子を打ち出しただけである。
ただし、打ち出す形は粒子状にして少しの間漂うように調整したが。
魔法を構築する魔法式に他者の想子が干渉すると、魔法式は効力を失う。
故に、魔法式の構築前から打ち出して置くことで妨害を…気のせいかな?森崎のCADに魔法式が見えるんだけど?え、間に合わなかったのか?…あ、良かったちゃんと無力化できてるっぽい。あせったわ。
「想像してたよりも早いじゃん森崎、間に合わないかと思った…」
「お前…糸里!何のつもりだ!」
「何って…あぁ、これは想子を弾丸状に固めずに粒子状で射出するように組んだ魔法式でな?速度では劣るが多少の時間漂って魔法を妨害できるのが強みかな」
とりあえず、すっとぼけておく。
本来の流れだと、この後に風紀委員によって取り締まられる流れになる。
実際に罰せられる前に達也がフォローを入れた結果、事なきを得たが同じように動いてくれる保証はどこにもない。
なので、此方から納得させてみようという試みである。
やるメリットは成功させると一科生側の心象が良くなる可能性があること。デメリットはそもそもやるつもりがなかったから、何も考えていないということだろうか…やっぱ駄目な気がしてきたわ。
ちなみに二科生側のことはあまり考慮していない。
ある程度誤り倒せば信頼は得られるんじゃないかと楽観的な考えと、関わりがなくても別に困らないなという考えの元、まぁいいやという結論に至ったのである。
司波兄妹?妹が同じクラスの時点で色々と諦めた。
「そこの1年!何をして―」
「お仕事ご苦労さまです、渡辺風紀委員長殿」
遠目で居たのを確認していたが、風紀委員長(+生徒会長)が到着したので此方から話を始めることにする。
首席として挨拶はしたことがあるから私のことは分かるだろう。
悪いことは自白するに限る…事実全てを言うつもりは無いのだが。
ついでに相手を役職付きで呼んで周りが黙ることを期待しておく。特に一科生。
「委員長は昼休憩中、その後の専門授業見学会で新入生同士で多少の諍いがあったことはご存知でしょうか?」
「聞いている、それが?」
「当の本人達だそうです」
まずは前提を誤魔化しておく。
そもそも当事者面して話しているが野次馬である。
諍いといっても一科生側が突っかかったくらいで、直ぐに終わっている。
何なら突っかかった張本人かどうか分かっていない。
だが、そうした方が何故、正門前で争っているのか?という内容にあまり突っ込まれない。
先程の話を聞いたらこう思うだろう「なるほど、昼間の続きか」と。…突っかかったのが別グループで、特定個人の把握も風紀委員会が把握していたら破綻するのだが…。
その時は別の方向に誘導するだけである。
わざわざ伝聞調で当事者だと伝えたのでそうでしたか、で済む。
「なるほど…今の状況は?」
「言い争いが発展、自らの実力を侮られたと感じた一科生が、その実力を披露のために自分と魔法の早撃ちを行いました、その直後に委員長が到着しました」
最後以外に嘘は言っていない。
ただ、現在の位置や構えを見ると、CADを構える一科生、(私が突っ込んで来たことで)離れて様子を伺う二科生、となっている。
これだけを見ると
まぁ、即興で考えたものだからガバガバな展開だし、突っつかれたらバレそうなんだが。
…コレ野次馬してた方が良かったのでは説が出てきましたね?
「ほう?そこの男子以外にも魔法を構える発動しようとしているように見えたが?」
「普段見ない魔法を前に思わず構えてしまったのでは?素晴らしい反応ですね」
経緯には突っ込まれていない…行けただろうか?
後は納得してもらって帰るだけ―
「そうか…ところでキミは七草の魔法を知っているか?」
「?えっと、知っていますが…うわぁ…」
「七草の魔法」、それが指し示すのは十師族の七草の方ではなく、七草真由美個人の魔法だろう。
そして個人として、ある程度有名な話がひとつある。
遠隔知覚魔法を先天的、かつ自在に扱えるというものがある。
コレは言葉通り(個々人によって見え方は異なるが)、遠くを知覚するという魔法だ。
で、この情報を踏まえて先程の言葉の意図を考えるとこうなる。
「お前の言ってること、こっちの見た情報と違うぞ?」と。
つまり最初から大凡全てを知っている状態で経緯を聞いてきたわけである。
性格悪ないか?
「性格悪くありません?」
「褒め言葉として受け取っておこう。改めて当事者には事情を聞かせてもらう、着いてきなさい」
思わず口から本音が漏れてしまった。
さて、前提ご崩れてしまった。
どうすりゃ誤魔化せるかなと考えていたところ…
「すみません、悪ふざけが過ぎました」
何処かで聞き覚えのあるフレーズが聞こえた。
☆ミ
いつか見たような流れで、覚えのある展開で、その場はお咎めなしで解放された。
一科生側は未だに敵意の残る言葉を吐きながらその場を後にした。
原作グループの三井さんと北山さんも達也たちに合流した。
最終的には私が動いた意味はあったんだろうかと思える結果だなコレ…。
ちなみに相澤さんは委員長が出てきた辺りでトンズラしてた。
さてはあやつ、面倒ごとの気配がしたから逃げたな…。
ちなみに私は、
「改めて、助かったよ。フォロー入れてくれなきゃどうなっていたことやら」
「先程も言ったが、深雪の言葉のおかげさ。気にしなくていい」
「そうだとしても、それを受け入れる空気を作ってくれたのは達也の言葉だよ。本当にありがとう」
小難しい事は考えるのを止めて、達也たちと茶をしばくことにした。
このケーキうめぇ。