テストチャンバー19
『お目覚めの時間ですよ〜フランカー。』
明らかに目の焦点が合っていない。このコールドスリープチャンバーの長期利用の副作用とかそういったものだろうか。まあ、5年も探し待たされたのだ少し煽ったって許されるだろう、きっと。
「……ストリンガー?」
『はい?』
「上官にはクソだろうとサー、を付けろ。新兵か。」
おお……手厳しい……やっぱり指揮官はこうで居てもらわないと困る。
「戦況は?」
『どこからどこまで話します?』
「この周辺3km以外の5年間。」
個人装備を起動しながら聞いてくる。それにしてもなぜ3km以内は聞かないのだろう?
「周辺3km以内は知ってる。嫌でもな。」
『……。』
「電撃質量兼用タレットは役に立ったか?」
『ええ。とても。』
科学者として眠っていなかったんですね。5年も。
『移動中にする話ではありませんが……。』
廊下を移動しながら説明していく。私の細かった腕は5年もの年月が過ぎ、人工筋肉、装甲の増設や交換で少し太くなってしまった。
「つまり私達は沈みゆく方舟を修理しながら耐えているわけだ。」
『そうなります。申し訳ありません。』
「兵士が一人強くても戦況はそう大して変わらん。生き残りは?」
『指揮官の部下は全員無事です。』
「……そっか。」
口元が微かに緩んだ。バイザーで目が見えないから本当に笑っているかはわからない。でも笑っているだろう。経験上、部下の生死には厳しい人のことだし。
『汚いですがここが現在の宿舎です。』
掃除しておくよう言ったのだが……
「十分綺麗じゃないか。こんな環境で生きていくにはこれくらいの弛さが要る。」
『総員、整列!』
ドアからのそのそと入ってくる戦術人形達。一部の者は指揮官の顔を見るなりはっとした表情で足を早めている。
『傾注!指揮官からのお言葉だ。』
『ライカ指揮官、ご挨拶を。』
え?私?とでも言いたげな表情をする指揮官にマイクを押し付ける。
「えー……おはよう?」
気の抜けた第一声に緊張の表情が解れていく。
「あーー……5年間、私は眠っていたらしい。皆を驚かせてしまってすまない。私はライカ指揮官だ。まあ、指揮官になったつもりはなくて本職はそもそも研究者のつもりだったんだがな。」
気の抜けた挨拶は続き、締めの言葉で終わった。
「指揮官
指揮官に抱きつくMG42……未だに治してなかったのな……指揮官の前ではサ行が「しゃ」やら「しゅ」になる癖……。
黒髪で肌は白く、細いがしっかりと筋肉の付いた1体の戦術人形が指揮官の前で止まり、敬礼する。
「スラッガー、指揮官のもとに改めて着任する。」
「スラッガー……そうか、君がスラッガーなのか……よろしく頼む。」
『お知り合いですか?』
「私が唯一、担当したアサルトライフルだよ。まあ、すぐに開発計画が凍結されちゃってね。暫くしてまた再開されたんだけれど……」
「足りない性能は技量でカバーする。よろしく頼む。」
「近距離系のアサルトライフルだから前線に立ってもらわないとね。よろしく頼むよ。」
この出会いが一波乱起こしたことを知るのはまた後の話。
お久しぶりでございます。この章はライカ指揮官の直属の部下である「スティンガー」の視点で進みます。よろしくお願い致します。