元研究者ですが何か?   作:イエローケーキ兵器設計局

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 スラッガーの朝は早い。朝の鍛錬に朝の点検、朝の食料調達……彼女がしていないことは何だろうか?


強打者の朝

 

「おはよう、ストリンガー。」

『ええ、おはようございます、スラッガー。』

「指揮官を起こしてきます。」

『ええ、お願いしますね。』

 筋肉がしっかりとついた頭の働く自称「脳筋」。それがスラッガーである。肉薄して高威力の大口径弾を浴びせる新型アサルトライフルとして開発されたものの……初期型であるスラッガーNN1はコストに見合わなかった性能だったらしく計画は暫く凍結され、開発再開された後のモデルを彼女は装備しているらしい。戦況によってはそのまま歴史に消えていったかもしれない訳だ……

「おはようございます、ストリンガーさん。」

『P38、早いね。』

「指揮官が長い仮眠から起きられたんです、自分も準備しないと。」

『真面目ね。』

「うぉぉぉぉ!誰か止めろ!止めてくれ!」

 廊下を走り去る影とそれに引き摺られていく影……ドリーマーとエクスキューショナーだろうな。

「あー……おはよう?」

『うわ、髪ボサボサじゃないですか!』

「水付けてヘルメット被ってたらそのうち直る〜」

『ほら、もう!こっち来てください!』

 今日も忙しくなりそうな気がする。

 

「身だしなみが整ってないくらいが丁度いいのにー」

『指揮官ともあろう人が最低限の身だしなみすら整えない人なのは頂けませんよ。皆の士気も下がります。』

「うへ〜ストリンガーは厳しいなぁ……そういえばここに流れ着く前も誰かに梳いてもらっていたような……」チラッ

『……なんです?』

「やっぱり相棒は適度に優しいのが丁度良い。」

『不満ですか?』

「ははは、まさか〜。私は幸せものだな。」

 あの……調べたら貴女が空軍のパイロットを辞めた理由のほとんどが私みたいなのですがそれは……

 

 指揮官の顔の翳りは私がまだ人間だった頃、フランカーの相棒として後ろを追いかけ、撃ち落とされてベイルアウトしたときに見えた陰そのもの。あの日の一番機の姿が重なった。

 

 話が大きく逸れたので修整。スラッガーはよく訓練にエクスキューショナーを連れて行く。エクスキューショナーは弾を弾く練習のため、スラッガー自身は銃弾を弾いてくる敵相手に対処する練習のため自然と組むようになったという。

「未熟だな。オレはその程度では倒れん!」

「くっ……!」

 まだまだ改良の余地はある、と指揮官は見守りながら言う。しかし答えは示さない。構え方がいけないのか、それとも銃本体が狂っているのか、弾に問題があるのか……それは本人が導き出すことだとスラッガーに指揮官が、分解整備をしながら言っていた。無責任だなぁとは思うが本人も納得しているからそれはそれでありなのかもしれない。

 

「本日の予定は?」

『0800から筋力トレーニングとリハビリがあります。』

「うげぇ……。」

『長期間、身体が眠っていたのです、リハビリはしないと。』

「嫌だぁ〜……。」

『あと30分ですから移動しますよ。』

 駄々をこねる指揮官を引きずってグラウンドへ。まあ、地下なのですが。

 

 夜間戦闘……もう朝だが、地下のグラウンドは様々な条件設定が容易にできる。例えば夜間訓練中に局所的に冬と夏を同居させるとか。

「筋トレにしては環境がおかしくない!?」

『文句を言う余裕があったら走ってください。』

 指揮官が体験しているのは後ろから撃たれながら冬と夏に区分けされた環境再現障害物コースを走るというもの。

「これも指揮官しゃまの為です!」

「だからってフルサイズを乱射しなくても良くない……!?」

 いつも思っているけれどMG42はどうやって連射しながら走ってるんだろうか……?戦術人形の底力は図りし得ないなぁ……。

『器用に避ける指揮官も指揮官ですよ……。』

 あれですか?元エースパイロットだから動体視力が人間離れしているとか?流石にそれはないか……ん?ちょっと待てよ……指揮官って今いくつだっけ?

『指揮官、今おいくつでした?』

「覚えなくていいことは忘れた!」

 えぇ……。流石にそれを忘れるのは不味いのではないでしょうか……。

『3……2……1……終了です。お疲れ様でした。』

「はぁ〜…………」バタン

「指揮官様?指揮官様!」

『あー……医務室、こちらB2グラウンド、負傷者発生。負傷者発生。受け入れ準備を。』

 施設内有線通信を使って連絡したあとはこの気絶した上官を運ぶ必要がある。

『MG42、頭側を支えて。』

「了解でしゅ!」

 

 

 

数時間後。

「ほーう……」カタカタカタカタ…

 パソコンに向かってひたむきにキーボードを叩く指揮官。どうやらナロードナヤ(かつて乗艦していた空母)と名乗る人物から自分の愛機の設計図とその改造プランが送られてきたらしい。当初は設計図を勝手に弄られた怒りと、情報の出処の不透明さから来る不信感で指揮官の精神面はおかしくなっていたが、次第に落ちついてきて、メールを送り合っている模様。

 

 二人が得意とする設計はどうにも異なるようで、

・指揮官の得意とする設計は先進的で前例が少ない、先尾翼を最初から装備する、前進後退翼双発機。

・ナロードナヤの得意とする設計はオーソドックスで、前例がある、後退翼機に先尾翼を付与した双発機。

 指揮官の設計した機体に乗っていた私としては……まあ、ナロードナヤ案の方がありがたい。確かに使いこなすことができれば、指揮官の機体は高性能である。高性能であるが、機体がピーキー過ぎるのである。安定性がまるで無い。フライバイライト、簡易コフィンシステム、そのような類のシステムがないとまともに飛べない……指揮官を除けば。

「資材状況は?」

『なにかするんです?』

「資材調達の必要があるのか知りたくて。」

『現時点では……食料に関しては備蓄食料と地下の植物工場によって供給が為されています……が、建築資材や兵器の製造に必要な資源に余裕はないですね。』

「(´・ω・`)」

『顔文字で会話しようとしないで頂けます?』

「資源不足かぁ……。」

『勿論、スラッガー達の探索も足しにはなっていますが……。』




 お久しぶりでございます。遅くなってしまい申し訳ありません。
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