エリス「そうか。騎士クンを、最強に、すればいいんだ」ミソラ「( 'ω')ふぁっ」 作:ルーピア
清純そうな見た目なのに破滅願望持っているギャップたまらなくないですか?
ミソラちゃんに「負けちゃっていんですよ〜♪ 騎士クンさん★」てな具合に優しい声と微笑みを浮かべながらえげつなく責められたら最高だと思いません?
最後は「あーあ、とーても、かっこ悪く負けちゃいましたね★」みたいな事を言われたい!
あとレギオンウォーの時のミソラちゃんのUBのドルルルル!ってとても、えっt
独自設定
ミソラ→超能力のおかげで現実とゲームの世界を行き来できる。
ループ回数。
これはもう一度、きみと繋がる物語。
──果てなく続く純白の空間。
「見下ろすことすらしないというの……おまえは! おまえはああああ! ぁあああああ」
毒々しい色合いの茨城によって両手足を拘束され、身動きが封じられていた、七冠、
永遠に続くとすら錯覚する純白の空間に静寂が訪れる。
『今回』も覇瞳皇帝は敗北した。アストルムの世界の運営装置。言わばこの世界の『神』とも呼べるその存在によって。
「……はぁ」
宙に浮遊する、漆黒の装束を纏い、黒薔薇のステッキを手に持った仮面の女──エリスは諦念のため息をつく。
今回もダメだった。BADEND。
あとはいつもの流れだ。
その巨悪は神の座を求めここへやってきて、エリスが赤子の手をひねるが如く消し炭にする。
そして、滅んだアストル厶の世界と住人達を再構築する。
その度に、エリスは苦痛を味わうことになるのだ。
(何度も、何度も、何度も、何度も……同じことの繰り返し)
もう気が狂いそうだった。
リセットの条件。愛しい騎士クンか、あの忌まわしく憎悪すべき対象である草野優衣が欠ける度、強制的に履歴(ログ)を見せられ、膨大な情報を焼きこまれる。
騎士くんや、仲間たちが絆を結ぶ光景を、騎士くんや草野優衣が、どのように果てたのか。
……そして、時には騎士クンが誰の思いに応えたのかすら。
「私は、騎士クンと、言葉を交わしたくてもかわせない。触れ合えたくても、触れ合えない。愛しいあの人に存在すら、気づいてもらえないというのに…」
……草野優衣の願いが叶った今の世界の運営装置であるエリスは世界に直接干渉することを許されない。
リセットの条件が整いエリスが世界に干渉できるようになるまで、隔離された外の空間から主人公たちの様子を観閲するしかない。
全てはこの世界『アストル厶』を創造した七冠(セブンクラウンズ)とソルの塔の頂上で願いを叶えた草野優衣のせいだ。
草野優衣という一人の少女の願いが原因で、VRゲーム レジェンド・オブ・アストルムにログインしていた全世界のプレイヤーがアストルムの世界に幽閉された。
幽閉されたプレイヤーたちは記憶を操作され、アストルムの世界こそが自分たちの生まれ育った『現実』だと認識させられている。
それは願いを叶えた草野優衣も例に漏れない。
自分の願いによってゲームの世界に世界中のプレイヤー達が幽閉されるという大事件を起こしておいて当人はその罪を覚えていないというのだからまったく度し難い。
そして、世界が幾度もリセット──ループしている最たる原因。七冠、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)千里真那。
己が理想とする世界を創造するがために、主人公たる騎士クン達を何度も果てさせ、何度もエリスに挑み敗北する存在。
騎士クンたちが覇瞳皇帝を倒さない限りこの無限地獄は続く。
覇瞳皇帝はループの記憶を所持していて、現時点で15531回の敗北を喫しても一向に神の座を狙う事を断念する気配はない。ホントいい加減にしてほしい。
エリスはたった一人で世界を滅ぼした覇瞳皇帝を圧勝できる程の権能と力を有しているが一部の例外を除いてリセットの条件が満たされた後しか世界に直接干渉する事はできないため、騎士クンを覇瞳皇帝から救うことができないでいる。
強大な力があるのにこの世で最も愛し恋焦がれている騎士クンを助けられないのがどれ程、ジレンマであるか!
「あらら★ 今回もダメだったんですね〜可哀想なエリスさま♪」
「……」
何も無かった空間から突如あどけない表情をした少女が現れる。
さらりとした藤色の髪の上に付けた白のラインの入った黒い蝶リボン。
白を基調とした清楚な印象を与えるセーラー服と黒の横ラインの入ったミニスカートから覗いているむっちりとした太ももはどこか官能的な妖しさを秘めていて、幼さを感じさせるリボンつきの短いニーソとのギャップが蠱惑的だ。
「……ミソラ、戻って、いたの」
「はい、ただいまです★」
ミソラはオペラグローブをつけている右手を額の近くまでもっていき敬礼ポーズをとった。
「あなたが、戻ってきたということは、駒が五つ揃った、ということ?」
エリスにそう訊ねられたミソラは敬礼ポーズをやめると「うーん」と口元に右手の人差し指をあてる。
「ごめんなさい★ 私を入れて四人までしか集められなかったです♪」
ミソラは無邪気な笑顔で手を合わせる。
エリスは仮面越しに無感情にじーとミソラを見る。
「幾ら願いがなんでも叶うという餌があっても、七冠を相手にできる程に優秀で、今の幽閉状態のアストルに入りたいって人が世界中を回ってもなかなか見つからなかったんですよ。三人見つけただけでも褒めてください♪」
「……」
「……」
希薄な感情と相まって無言の圧が凄いエリス。
無言ながら無邪気にニコニコして圧を躱すミソラ。
先に沈黙をやぶったのはエリスだった。
「……そう、わかった。なら後一つの駒は、ロストした魂を使って、こっちで作成する」
「ありがとうございます★ あーそれと、もう一つご報告があるんですけど〜」
「……なに」
「私が集めた三つの駒さんたちが、ここに来れるのは少し先の事になりそうなんです」
「どのくらい、先になりそう」
「アストル厶の世界の中で多分、三、四ヶ月くらいですかね〜」
「……遅い、二ヶ月は早くこれるようにして」
「これでもかなり無理を通してるんですよ。今こうしている間も私の分身が超能力をフル稼働させて準備を進めてますし♪ 覇瞳皇帝さんがだいたい半年に一回のペースでアストル厶の世界を滅ぼしてエリスさまの元にやってくるのは理解してますけど〜超能力者の私が全力を尽くしてそれくらいかかると言っているんですから、こればっかりは納得してもらうしかないですね★」
「……」
「そー不機嫌にならないでくださいよ〜。最低でもあと1ループの辛抱ですから♪ 私たちがこっちに来たら覇瞳皇帝さんなんてとっとやっつけて、他の七冠も捕まえて、この世界の創造者の七冠の情報を解析して〜世界をぐちゃぐちゃに壊して♪〜新世界を創造して♪〜エリスさまと、騎士クンとの二人が結ばれる理想郷を作っちゃいましょ★」
エリスは夢想した。自分と騎士クンが自身が想像した新世界の理想郷で結ばれる光景を。
理想郷では騎士クンと好きなだけ言葉を交わせて、好きなだけ触れ合って、好きなだけ共にあれて、騎士クンに大切にしてもらえる。
ああ。なんて、尊く、幸福な光景だろうか。
幸福な光景の想像に耽っているエリスにミソラは恐ろしく冷めた瞳をするがすぐに何時ものにっこにこした柔和な表情になって毒を吐いた 。
「それにしても、エリスさまはホントに可哀想な御方ですね★ 騎士クンたちが弱いばっかりに世界は何度もループを繰り返して〜思い焦がれる騎士クンには一向に会えなくて、言葉も交わせず、触れ合うこともできない。存在にすら気づいてもらえないなんて★」
「……」
「騎士クンが覇瞳皇帝をやっつけちゃえるぐらい強ければ、エリスさまが気が狂いそうになるほどの間ループする世界を見せ続けられることもなかったのに♪」
エリスは口元をムッとさせる。思いを寄せる人を悪く言われるのはいい気がしない。
確かに騎士クンは単純な武力では弱い。
だが、誰よりも優しくて、どんな困難な状況でも諦めない強い心を持っている!
反論しようとし、エリスの脳裏に天啓が舞降りる。
「……そうか。そうだよ」
「エリスさま?」
「ミソラ……」
「はい? なんですか」
様子のおかしい友達のエリスにミソラは首を傾げる。
「妙案よ。あなたが友達で良かった」
「え?」
ミソラとしては、騎士クンを侮辱されたことにムスッとした自分では何も出来ない不自由なエリスさまが、乙女ぽいことを言って騎士クンを庇う滑稽なところを見たかったのだが…。何故か褒められ感謝されたことに困惑するしかなかった。
「そうか。騎士クンを、最強に、すればいいんだ。……覇瞳皇帝を、倒せるくらいに」
「( 'ω')ふぁっ」
ミソラはエリスの不意の思いつきの発言に驚くしかなかった。
草野優衣は願った。
──みんなと、アストルムで一緒に、ずっと一緒に居たい。
そして、もう一つの本心の願い──
──わたしは騎士クンとずっと一緒にいたい。でも騎士クンが傷つく姿はもう見たくないの。騎士クンが幸せじゃない世界なんていらない! そんなのはわたしの願いじゃない!
その願いのせいで騎士クンか草野優衣が果てる度、世界は何度もループし続けてきた。
さて、ここで自問しよう。
草野優衣にとっての騎士クンとはどういった存在を指すのか?
騎士クンの魂を宿した騎士クンのアバターデータの事を指すのであれば、アバターデータの強さを弄るのはアウトになるとエリスは今まで勝手に思いこんでいた。
だが、草野優衣が騎士クンのどこが一番好きなのかと言えば、他人にどこまでも優しくて、諦めない強い心を持っている内面だ。あと、あの、のほほんとした容姿も好きだ。愛おしい。
そこに肉体的な強さの有無は関係ない!
ならば! アバターの容姿と魂はそのままでステータスやスキル、耐性を弄るだけならばギリギリセーフではないか?
エリスが、そして、エリスのオリジナルである草野優衣が、騎士クンのどこが好きなのかと言えば、容姿と内面なのだから!
もう気が狂いそうとか思ってたエリスは実はとっくの昔に頭がちぇるっていた。
しかし不幸中の幸いと言うべきか。頭がちぇるり散らかすことでエラーが蓄積されそれが結果的に彼女にAIの域を超える柔軟な(ぶっとんだ)発想を与えた。
思いついたら即実行。エリスは、リセットまでの僅かな間に全管理者権限を総動員し騎士クンのアバターのステータスが完ストになるように仕組み世界が騎士クンの強さを認識しバグだと判断できないように全管理者権限でゴリ押した。
仕込みが終わったあと、リセットまでほんの数十秒残っていたので騎士クンたちが覇瞳皇帝をぶっ倒した後、間接的に干渉し、騎士クンと接触をするための試験端末、D型検体0005bを作成する。
そして、世界はリセットされ、再構築される。
これはもう一度キミとつながるための物語。
第一部 五章六話 最初で最後の同窓会
覇瞳皇帝によって、王宮の玉座の間から四方山囲まれた草原の空にテレポートさせられたユウキ。
転移先の近くに偶然居合わせたペコリーヌによってキャッチされ騎士クンは助けられた。
ペコリーヌの近くには、七冠の三人、クリスティーナ。ラビリスタ。ラジラジ。そして、この世界の謎の鍵を握る存在、ムイミの姿があった。
一同は騎士クンを追ってテレポートしてきた夜空に神々しく君臨する覇瞳皇帝と対峙し僅かの間対話を行う。
覇瞳皇帝はこの場にいる重要人物達を葬る気満々だった。将来的に自分の前に立ち塞がる存在であるからだ。なので早いとこ潰して置こうと考えた。
因みにペコリーヌは優先度低いが丁度いたしついでにぶっ殺すわよ! との事だ。
「あなたたちはここで仲良く死ぬのよ。私が蓄えた膨大な魔力を消費して戦略級の攻撃魔法を放つわ……♪ この表現じゃあなたたちには伝わらないだろうけど、まぁ核兵器ぐらいの威力はあるのよ。あなたたちは肉片も残さず消滅して死ぬことになるわね。私の覇道の邪魔をしかねない連中をまとめて掃除するの……予定通りに物事が進むと気分がいいわね」
月を背景に覇瞳皇帝は邪悪に歪んだ笑みを浮かべながら右手を対峙するユウキたちへ突き出す。
ユウキたちも各々武器を構え臨戦態勢に入る。
覇瞳皇帝の手に赤黒く禍々しい膨大な魔力が集まっていく。
核兵器にも匹敵する威力を持つ戦略級の攻撃魔法。
集約された膨大な禍々しい魔力が解放されユウキたちに襲いかかる。
全てを焼き付く程の巨大レーザーともいえる赤黒い魔力光線に、ペコリーヌ。ラビリスタ。クリスティーナ。ラジラジ。ムイミが戦慄し、回避のため手段を模索する中、ユウキは迫りくる膨大な禍々しい魔力を睨み剣先を向け突き進む。
魔力を全身と剣に纏い。身体を左に捻り。剣先を地面へ。右足を前に踏み込み。左斜め下段の構えから右斜め上へ、気合いの咆哮と共に剣を振り上げる。
「はあああああああああああああ!」
全てを焼き付く威力の大規模破壊魔法とユウキの魔力によって強化された剣撃が激突する。
「せああああああああぁぁぁ!」
ユウキがもう一段気合いと力をを入れ剣を振るうと破壊魔法の光線は上へと弾き飛ばされ夜空の月を背にし霧散した。
「は?」
覇道皇帝は呆気にとられた間抜け顔で口を開ける。
ムイミの鈴のペンダントを使い、ラジラジを強化し空間跳躍して逃げようとしていたラビリスタも度肝を抜かれた様子で目を何度か擦る。
「え、今、少年が戦略級の攻撃魔法を剣で弾き飛ばしたように見えたんだけど〜私目がおかしくなっちゃったかなぁ……」
「いいえ、あなたの目に異常はありません。私も見ました。信じ難いことですがあの少年がその手に持つ剣であの禍々しくも圧倒的な破壊力を誇った魔法を弾き飛ばし霧散させたのです」
ラジラジが冷静に答える。
「フフははは! 全く、坊やは何時だって私の退屈を意図も容易く吹き飛ばしてくれるなあ!」
愉快そうに笑うクリスティーナ。
「あなたはほんとに常識外れに強くて、ヤバいですね☆ 頼りになりすぎです♪」
窮地から自分達を救ってくれて頼りになるユウキの存在が嬉しいペコリーヌ。
「お前いつの間にそんなに強くなったんだ!? あの真那の破壊魔法をぶった斬るなんて凄いじゃないか!」
自分の知らぬ間にめっちゃ強くなっているユウキに興奮するムイミ。
覇瞳皇帝は呆然と盛り上がっている下界の者達を眺めていていたがはっと正気を取り戻し今起きた事を整理した。
溜め込んでいた膨大な魔力をほぼ消費して放った核兵器にも匹敵する破壊魔法を、ユウキ、プリンセスナイトが剣をたった一振りして弾き飛ばした。
……ありえない。
キャルからは確かにユウキがとんでもなく強いという事を聞いて『今回』の彼はそこそこやるのかもしれないと思った。
けど、それはあくまでも今までよりも少し実力があるくらいの認識だった。
何処の誰が大規模破壊魔法を剣の一振りで弾き飛ばす程の化け物であると予想できようか。
いや、そもそもこんなことはありえない。この世界のユウキはプリンセスナイトはイレギュラーすぎる!
「……こんなのありえない……核兵器並の破壊力の魔法よ。それを、たったの一振で弾いて、しかも無傷なんて……なによ。なんなのよお前はあああああああああああぁぁぁ!」
自分の理想を阻むイレギュラーを睨み覇瞳皇帝がいらだちから髪を掻きむしりながら発狂する。
ユウキは苛立つ覇瞳皇帝を見据え答えた。
「僕は! ギルド美食殿所属のユウキ! プリンセスナイトだ! みんなは、仲間は僕が護る! さっきはよくもキャルちゃんを酷い目に合わせたな! 覚悟しろ!」
「え、あいつがキャルちゃんに酷い事を!? それは絶対に許せません!」
ユウキは王宮でキャルに酷い行いをした覇瞳皇帝に怒り心頭だった。
ユウキの発言から覇瞳皇帝によってキャルが酷い目に合わされた事を知りペコリーヌも激高する。
覇瞳皇帝は自身の権能の全てを見通す目『覇瞳天星』を使用しユウキを見る。
そして、見えた。全ステータス、全スキル、全耐性がカンストしている。
「(っ! そういう事! 全てはあの元凶の仕業という訳ね)アハハハハハ! いいわねぇ。あなたは世界に愛されていて! ……世界に愛されたこの世界の主人公、仕組まれたイレギュラー! ほんと、虫唾が走るわ!」
「……どういう意味?」
「どうせ今のあなたには理解できない事よ。けど、そうね。今回のあなたはとっても特別な存在みたいだし……殺せば少しはアイツに一泡吹かせられるのかしらっ!」
「っ!」
覇瞳皇帝の殺気が膨れ上がるのをこの場にいる全員が感じとった。
「神たる私の為に首を差し出しなさい!」
覇瞳皇帝は先程の大規模破壊魔法で自身に蓄えていた魔力をほとんど消費した。
しかしそれはあくまでも自分の中で蓄えていたものにすぎない。
覇瞳皇帝にはシャドウや魔物から魔力を自身にもってくる事が可能。
覇瞳皇帝は全魔力を総動員し最終形態へと進化する。
圧倒的な禍々しい魔力は最早人の域を超えていた。
「なんだあれは……陛下あなたは本当に神にでもなるつもりなのか」
覇瞳皇帝の圧倒的な魔力の奔流と神々しさすら感じさせる邪悪な格好に畏怖するクリスティーナ。
「いや、あれを神と呼ぶには纏う魔力がおぞましすぎる。化け物や悪魔と形容する方が相応しいかもしれません」
ラジラジは冷や汗を流しながら覇瞳皇帝を評する。
「これはホントに今すぐ逃げた方が良さそうだね」
ラビリスタの危険に対する警鐘が激しくなり続けていた。
「確かにやばそうな感じがビンビン伝わってくる!」
ムイミも覇瞳皇帝の本気を目の当たりにして総毛立つ。
そんな中、ユウキとペコリーヌだけは戦う気満々だった。
何故なら大切な仲間であるキャルを傷つけられたからだ。
「ユウキくん強化をお願いします!」
「わかった! ペコさん。僕があいつ地面に落とす。ペコさんは落ちたところをプリンセスストライクで攻撃して!」
「わかりました! 任せてください☆」
強化を発動しペコリーヌのステータスをユウキは向上させる。
「天上の存在である神たるこの私を地に落とそうというの? 身の程を知れ!」
覇瞳皇帝は『覇瞳天星』の権能でこのエリアのありとあらゆる情報を読み取り、天才的な頭脳をフル稼働させ未来を演算する。
(跳躍で一瞬で私の背後に移動し、剣の腹で私を地面まで叩き落とす。ふざけたスペックね。チートよ。チートよ。
……けど、来るとわかっているなら対処は簡単だわ。彼が跳躍して私の背後に移動した瞬間、ゼロ距離から最大出力の大規模破壊魔法を叩き込む。
いくら彼がステータス、スキル、耐性が完ストしているといってもゼロ距離からの最大出力の破壊魔法を受ければ跡形もなく消し炭になるでしょう)
ユウキはグッと両足に力を入れ、跳躍、さらに風魔法で速度を強化し、一瞬にして覇瞳皇帝の背後へと移動し、剣を振りかぶる。
演算した未来の通りの光景に覇道皇帝は勝利を確信してニヤリと口元を歪ませ嗤い振り返り……。
「残念だったわね。神たる私には全て御見通しよ! 去ねプリンセスナイトォォォ!」
核兵器以上の破壊力を持つ神の裁きともいえる魔法をゼロ距離で放つ。
「──っ!(どういうことっ!)」
覇道皇帝は確かに魔法を放った。
ユウキが剣を振り下ろすよりも早くに魔法を発動させた。
(なのに、なんなのよ。これは……)
覇瞳皇帝が見た光景は理解の及ばないものだった。
加速した思考の静止した時の中でユウキの剣だけが徐々にゆっくりと動き振り下ろされていく。
一方で自分は全く動けない。破壊魔力も発動直後の状態で止まっている。
ユウキの剣の一振りは音どころか時を置き去りにする。人知を超えた剣速。神速の一刀。
覇瞳皇帝は悟る。
諸悪の根源、全ての元凶であるアイツがユウキに干渉し力を与えた時点で……。
(今回、私には、ハナから勝ち目なんてなかったという訳ね)
(ああ、例え数え切れぬほどの敗北だったとしても、こうして跪くのは、本当に口惜しい……)
「っボベッ!」
覇瞳皇帝は音速を超えた弾丸となり月夜の空から地面へと撃ち込まれた。
地に墜ちた瀕死の神など、神に値しない。
「私の存在を奪ったこと、そして何より大事な仲間のキャルちゃんを傷つけたこと絶対に許せません! 全力、全開! プリンセス、ストライクーーーーーーーー!」
地を這う神を自称する者が意識を途切れさせる直前に見たものは、プリンセスナイトの力でフル強化し、さらにキャルを酷い目に合わせた怒りと自分から全てを奪った者への憎悪とその他も諸々の思いを胸にしたプリンセスの燐光の王剣。
(オーバーキルもいいとこね。本当、最低な気分……)
爆音と衝撃が轟き、山中に虹色に輝く巨大な王冠が描かれる。
覇瞳皇帝は凄まじい衝撃と共に意識が吹っ飛び……。
「全力、全開!」
(えっ! まだ来るの! ちょ、まっ)
「プリンセスストライクーーーーー!」
爆発音が山中に響きわたる。
覇瞳皇帝は二連続のプリンセスストライクにより白目を向いて撃沈した。
その後、覇瞳皇帝は七冠の協力の元捕まった。
ペコリーヌは王女の座に戻ることができた。そして、裏切りものだったキャルを許し、ギルド美食殿は続行。無事、大団円を迎える事ができたのだった。
エピローグ
「ミソラ! 何やっての! 早く! ミソラ!」
エリスは珍しく感情を露わにして焦っていた。
覇瞳皇帝を騎士クンたちというか主に騎士クンが倒したのはいい。遂にこれでループせずに済むのだ。それは嬉しいことだ。
問題なのはあまりに早く倒しすぎた事。
これは非常に不味い。
この『世界』のためには、何時までも続く『冒険』のためには、必ず、敵が必要なのだ。
覇瞳皇帝を倒した今、世界には新たな敵が必要だ。
予定では覇瞳皇帝を倒した後、騎士クンたちの次なる敵としてミソラと用意した駒を騎士クンたちにぶつけるはずだったが、騎士クンたちが思ってたより早く倒してしまった為、ミソラはまだあっちから現実世界から戻ってきていない。
アストルムではループのReスタート地点からまだ二ヶ月とそこらしか経っていない。
ミソラは最低でも戻ってくるまでにはこっちの時間で三ヶ月はかかるといっていた。
まだ後半月もある。最悪は1ヶ月半。それだけの期間があれば七冠たちが世界を解放する術を見つけてしまうかもしれない。
それだけじゃない。ランドソルが平和になった後 、ユイと騎士クンの関係がより親密になってきている。
不味い…。このまま二人が、あの諸悪の根源と騎士クンがチョメチョメする関係になってしまったら……エリスの騎士クンに恋してトゥインクルしてるハートがディバインレインでブレイクしちゃう!
ミソラ! なにやってんの! 早く! ミソラ!(二回目)
エリスは傍観する事しかできないため、ミソラが早く戻ってくるのを願って待つしかなかった。
■■■■■
ミソラは予定よりも少し早くエリスの元に帰ってきた。
帰ってきてそうそう「……信じてた。ミソラなら、早く戻って来てくれるって」とエリスに言われた時は突然どうした?という感じだったが、経緯を聞き理解した。
騎士クンが覇瞳皇帝を思いの外早く倒してしまったため、世界に敵がいなくなったこと。
七冠たちがこの世界からプレイヤーを解放するために動き出していること。
そのせいでエリスが精神的に追い詰められていたこと。
エリスさまは自分じゃなにもできなかったから、ただミソラが早く戻ってくる事を祈る事しかできなかったこと。
(凄い力を持っているのに不自由でエリスさまってほーんとに可哀想な御方ですね★)
可哀想なエリスを見れて機嫌を良くしたミソラはスカウトしてきた三人とエリスが作成したドラゴン族のプレイヤーとの五人でレイジレギオンなるギルドを作った。
七冠を捕まえ己の願いを叶えるという目的のためにレイジレギオンは活動し、騎士クンと仲間たちとの激闘の末破れる。
正確には……エリスが全ステータスをカンストさせた騎士クンのせいでほぼ一方的な展開で敗北した。
カリザきゅんは、戦闘(騎士クンの蹂躙)によってズタボロになった服で、腰をおって、しりを突き出した状態で動けないまま「なんなんだよあいつ!」と目尻に涙を浮かべ。
アゾールドは頑丈な木の棒に縄で手足をくくりつけられ、吊るされながら「やれやれ、私は丸焼きにしても美味しくはありませんよ。お腹が減っているのであればこのアゾールド、料理の腕には多少の心得がある故──」云々と呑気な態度を装いながら内心焦りながら、近くで「お腹がペコペコなせいですかね。アゾールドさんが大きな豚さんみたいでとっても美味しそうに見えます……じゅるり」とよだれを垂らすペコリーヌを説得し。
ランファは、歌で魔力を使い切って一歩も動けずその場にへたりこんで。
ゼーンは戦いでは龍化して騎士クンに挑んだが、終始、剣技、パワー、魔法で圧倒され、敗北し、潔い表情で審判の時を静かに待つ。
ミソラも戦いで魔力を込めて使用するガトリング砲を「ドルルルル!」とノリノリでブッパしまくっていたが騎士クンが完ストした防護魔法で全てことごく防がれて完ストしたレベルの拘束魔法と状態異常の麻痺魔法を騎士クンにかけられあっという間に敗北した。
(エリスさまったら騎士さんを強くしすぎじゃないですか。これじゃあ全然勝負になりませんよ。まぁ元々最後は負けるつもりだったから別にいいんですけど★ 今回の大規模襲撃でエリスさまが一時的にこっちにくるための条件満たせましたし♪)
その後、和解的な流れになり、ユイが座りこんでいるミソラに手を差し伸べる。
拘束魔法や状態異常魔法の解かれ動けるようになっていたミソラは差し出されたユイの手の上に一枚の黒の薔薇の花弁を一枚乗せた。
「ゲームオーバーです。ユイさん★」
「え?」
次の瞬間花弁はあとかともなく消え……ユイの内側から何かが弾けた。
■■■■■
どれだけの間この時を待ったことか。
繰り返される世界の無限地獄の中、ずっとあなたと合って話をして触れられる日を夢みて、それだけを支えにしてきた。
そして、今日というこの日、遂にその夢を現実にする事ができる。
そこには愛しい騎士クンがいた。
ずっと好きだった。
ずっと会いたかった。
ずっと話したかった。
ずっと触れ合いたかった。
私は騎士クンの元へと歩いていき、その身体を抱きしめる。
ああ、騎士クンに触れられた。
これが、騎士クンの感触。
ああ、騎士クンの匂いがする。
騎士クンの息遣いが聞こえる。
騎士クンの存在を全身で味わいながら、私は仮面を外す。
「騎士クン。私だよ。ずっと、ずっと、あなたと会いたかった」
「ユ、イ?」
「……ううん。違うよ。違うよ騎士クン。私はエリス。草野優衣とは違う。私は私だよ」
私は私だ。
例え、元は草野優衣の『記憶』を含めたアバターデータの複製だったとしても、私は私だ。
私の君への想いは愛は、私だけのものだ。
「……やっと、あなたにあえた」
さぁ、ここから始めよう。私とキミの物語を。
fin
独自設定 エリス→(草野優衣のアバターと同じデータ=記憶を含む)
騎士クン→全ステータス完スト。全スキル完スト。全耐性完スト。
騎士クンが活躍する系の話誰か書いてくれないかなぁ|*・ω・)チラッ
ミソラちゃんはどうか同人誌でお願いします神絵師様方ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛