エリス「そうか。騎士クンを、最強に、すればいいんだ」ミソラ「( 'ω')ふぁっ」 作:ルーピア
「はじめ、ちょろちょろ♪ な〜か、ぱっぱ♪ あかっご泣いても、蓋とるな♪」
女の子の歌声が耳朶を打ち、ユウキは目を覚ました。
可愛らしい紫根の瞳と視線が交差する。
銀髪の髪に花飾り、エルフの特徴である尖った耳。
ユウキは今、エルフの少女(12歳)に膝枕されていた!
「……おや、お目覚めになられたのですね、主さま」
ユウキはムクリと起き上がると、寝惚け気味のぼーとした顔で、少女をじーと眺め……。
「だれ?」
と、素朴な質問をした。
「わたくしは、偉大なるアメスさまによって派遣された『ガイド役』……名前は、コッコロと申します。どうぞ、以後、お見知り置きを」
そういうと、コッコロは、ユウキに柔らかく微笑んでみせる。
「主さまをお守りし、おはようからおやすみまで……揺籠から棺桶まで、誠心誠意お世話するのがわたくしの役目でございます。なんなりとご用命を、主さま」
「……?」
キョトンとした表情になるユウキ。彼には、コッコロが言っていることがよく分からなかった。
(せいしんせいい? ゆりかご? かんおけ? なにそれ?)
今のユウキは訳あって、
「おや、キョトンとされておりますね。えぇっと、不躾ではごさいますが……あなたさまのお名前を、お聞かせ願いますか?」
「なまえ……ユウキ」
「ふむ。ユウキさま、と仰るのですね。良かった、わたくしのお仕えする主さまで間違いないようです。よもや人違いなのでは、など疑って申し訳ありません」
「ん、いいよ」
「ご不快でしたら、なんなりと罰をお与えください。鞭で打たれようがなにをされようが、わたくしは一向に構いません!」
この不詳コッコロ、覚悟は出来ております!
キリッと、表情筋を締めるコッコロ。
(え、罰が欲しいの?)
そして、ユウキの無知から生まれるすれ違い!!
(ふかい? なにそれ? お与えくださいとは、くれってこと?)
というのも、ユウキは「不快」の意味がわからなかったのである!!
よって、ユウキ目線だと、コッコロは、突然SMプレイを求めてきたヤバい少女にしか見えなかった。*1
(いや、でもなにかの間違いかもしれないし……)
念の為、確認しておこう。
「……コッコロ、罰、お与える?」
お与えという言葉を覚えたユウキは、お与えるという間違った日本語を使った。*2
ユウキ的には、罰欲しいの? という意味での問いかけ。
しかし、ここに来て、日本語が悪さをした。
「を」と「お」の発音は結構似ている。
その結果、コッコロには 「コッコロ、罰を与える」に聞こえてしまったのだ!!
「……! はい。わたくしめに、なんなりと罰を」
「……鞭で打たれたい?」
頼むから、僕の間違いだと言ってくれ! と、内心願いながら、恐る恐る訊ねるユウキ。
だが、相変わらず言葉が足りていない。これでは「鞭で打たれたい?」とSっ毛のある意地悪な男の言葉責めとも解釈できてしまう。
そして、豊富な知識を持っているコッコロはソッチで解釈してしまった。
(ッ!! わたくし、お父さまの書庫にあった書物で、このような展開を目にした記憶がございます。確か、書物のタイトルは……主と従者のイケナイ関係〜許してくださいご主人様♡ 読んでいる途中、お父さまに「これはまだコッコロには早い」と取り上げられてしまい内容を全て読むことは叶いませんでしたが、わたくし知っております、これは質問系の言葉責めというものにごさいますね!)
ならば、従者たる自分は、主さまの要望に、応えなくては!!
「鞭打ち。それが主さまからの、わたくしへの罰なのですね。……了解いたしました。では、どうぞ、こちらの鞭をお使いください」
コッコロは、腰のポーチから手際よくソレを取り出すと、スっとユウキに差し出す。
ユウキはあまりに自然に差し出されたので、ついその鞭
鞭だと気づいたのは「なんだろこれ」と、手に取ったそれを自分の顔の前まで持ってきて確認した後である。
12歳の少女から鞭を受け取る17歳の少年……完全にアウトな絵図だ。
というか……
「ぇ、どうして、鞭持ってるの?」
「乙女の嗜みです」
どこか誇らしげですらある自信に満ちた顔で即答するコッコロ。
「故郷であるエルフの里に居た頃、よく使っておりました」
「……」
絶句するユウキ。
よく使ってたってなに? コッコロが自分で使ってたの? それとも人に? こんなに小さい女の子が?
ああ、もう! わけわかんないよ〜!(テイオウ節)
(乗馬は乙女の嗜みですからね。ランドソルでも乗馬の機会があるかもしれないと思い所持して来ましたが、結果的に主さまの要望に
アストルムの世界では乗馬は淑女の嗜みとされていて、自然豊かで自然と共に生きるのがモットーのエルフの里で育ったコッコロは都会で育つ一般人より乗馬の経験が豊富であった。
そして、ユウキはそのことを知らない。当然、発生する勘違い!!
鞭を右手に握り、ダラダラと冷や汗を流すユウキ。
(おや? どうして、主さまは、難しい顔をしてらっしゃるのでしょう。わたくし、何か主さまを困らせるようなことを言ってしまったのでしょうか?)*3
「ほ、ほんとにやるの?」
「わたくしは、仕えるべき主人である、主さまを疑い、ご不快な思いをさせてしまったのです。その鞭で、愚かな過ちをしてしまったわたくしに、どうか罰をお与えください」
(おろか? あやまち? またわかんない言葉……)
しかし、分かっている事もある。
コッコロは、ユウキに、主である自分に鞭で打たれたいのだ。
何せ初対面にもかかわらず、自分から鞭を所望するくらいだ。きっと、鞭で打たれるのが好きな、特殊性癖の持ち主なのだろう。
こんなに幼い女の子がどうしてそんな歪んだ性癖を持つことになったのかはわからない。
※全部ユウキの勘違いと妄想です
…そんな女の子を前にして…ユウキは……。
「……いやだ」
「……主さま?」
「鞭打ち、いやだ! これ返す!」
ユウキは、コッコロに押し付けるようにして鞭を返却する。
コッコロは内心首を傾げた。
(主さまは、愚鈍な従者たるわたくしに鞭打ちによる罰を与えると確かに
「しかし、それでは、わたくしはなんの罰を受ければ……」
「罰、おあたえない! 痛いのダメ! 僕は、コッコロ、傷つけたくない!」
必死に自分の思いを拙い語彙でコッコロに伝えるユウキ。
「ですが、わたくしは、仕えるべき主たる、主さまの事を疑い、ご不快な思いをさせてしまったのです。なのに、なんのお咎めなしというのは」
「ごふかいとか、おろかとか……、コッコロの使う言葉難しくてよくわかんない」
ユウキのその言葉を聞いて、コッコロは、ぽかーんとする。
そして、ハッと何かを思い出した表情になり……
「……そうでした。アメスさまの託宣で、主さまは殆どの記憶を喪っていると聞き及んでおりましたのに……わたくしとしたことが主さまへ不敬を働いてしまった事を気にするあまり、すっかり忘れておりました。……配慮が足らず、申し訳ありません主さま」
「いいよ。けど、もう罰をお与えくださいって頼むのだめ」
「かしこまりました。以後、絶対に口にしないと、主さまとアメスさまに誓います」
「うん。約束」
出会って間もない初対面の少女(12歳)と、変な約束を交わす少年(17歳)の姿がそこにはあったという。
「主さま」
「ん? どうしたの?」
「その……心優しい主さまに、罰を与えると言わせてしまった事、申しわけなく思います」
「言ってないよ?」
「きゅ( °×° ) で、ですがわたくしの記憶では確かに……」
「いつの事か教えて?」
「わたくしが主さまに、ご不快でしたらなんなりと罰をお与えくださいと申し出た際、主さまはこう仰いました「コッコロ、罰を与える」と……」
「お与えくださいって、欲しいとか、くれとか、ちょうだいってことだよね?」
「はい、概ねその認識で間違ってはいませんが……」
「だから、僕、コッコロに確認したんだよ? 罰、お与える? って」
(確認? ……っ! まさか!?)
「っ、主さま、不躾……失礼な頼みかと思いますが、コッコロにのところから、もう一度、同じ事を言ってくれませんか?」
「コッコロに確認したんだよ? 罰、お与える? って」
「罰『を』与えるではなく、罰、お与える? という確認系の問いだったと?」
「うん、そう」
能天気に返答するユウキ。
対して、コッコロは内心、頭を抱える思いだった。
コッコロの中で全てが繋がった。
つまり、全ては主さまへ配慮が欠けた己の言動が招いた、勘違い……。
「なんということでしょう……。という事は、主さまにはわたくしが自ら率先して罰を求める……それどころか、鞭で打たれようが何をされようが構わないと言い切る……特殊なあの……その……これは違うのです主さま! わたくしは、コッコロは、本来、そのような卑猥な事を主に求めるエルフではありませんのでぇええ!!」
白磁の肌を、かーと熟れた林檎のように真っ赤に染め、若干涙目になりながら弁明するエルフの少女(12歳)。
ユウキは、コッコロが落ち込んでいる!? 元気づけなきゃ! と思い、必死に空白だらけの記憶からこういう時にかけるべき言葉を模索し、恥ずかしさのあまり顔を伏せていたコッコロに声をかけた。
「ドンマイ」
「……穴があったら入りとうございます」
2
ぐううううう〜。とまるで獣の咆哮のような腹の虫の音が鳴る。
(主さまがお腹を空かせている。特殊性癖があると勘違いされてしまった汚名を挽回チャンスです)
「お腹が空かれたのですね。実は、こんなこともあろうかと、わたくしご飯を炊いておりました」
コッコロが目を向けた先には、焚き火後と木の枝で作ったトライポッドにぶら下がるキャプテンスタッグがあった。
ご飯をかき混ぜるのでしばしの間お待ちください。あ、主さま、一つお願いがあるのですが……これをご飯をかき混ぜ終えるまで預かっていただけますか?」
コッコロがユウキに手渡すのは鞭だった。
ユウキは?を浮かべる。なんで元々しまっていた腰ポーチに治さないんだろう。
でも、さっきの失敗もあるしコッコロにはなにか意図があるのかもしれない。
(主さまにいいところを見せないとおぉ!)
意図なんてものは、無かった!!
コッコロはおめいをそそぐ事を優先して考えるあまり、ポーチに治すという単純な事をド忘れして、この手にあるやつ邪魔だし、主さまに預かっててもらおう、と考えただけ。
コッコロがご飯をかき混ぜていると、ぐううううう〜、また大きなお腹の虫の音が鳴る。
「ふふっ、主さまのお腹の虫はとても大きな音で鳴きますね。それだけ主さまの器が大きいということでしょうか」
「僕のじゃないよ?」
「え、それでは一体誰の……」
コッコロが素朴な疑問を口にした時だった!
「も、もう我慢できません! ご飯ンンンっ!!」
森の方から、茶の混じったプラチナブロンドの長髪を靡かせ、とてもたわわな二つの果実をお持ちの、何処かの国のプリンセスとかしてそうな少女が凄まじい速度で飛び出してきた。
その少女は一直線に、コッコロの方、炊きたてのご飯が入ったキャプテンスタッグへ肉薄してきた。
少女は、コッコロの手からキャプテンスタッグを強奪すると、しゃもじをスプーン代わりにして、キャプテンスタッグの中のご飯を、あっという間に平らげてしまった。
「ふぅ〜。ご馳走様でした。ご飯ありがとうございます。助かっちゃいました♪」
エルフの里では、大人びた子供、で通っていて、温厚で穏やかな性格のコッコロだったが、これには流石にブチ切れた。
「いきなり、なんなんですか! あなたは!」
「特殊プレイの最中だったかもしれないですけど、ごめんなさい! けど、もうお腹ぺこぺこで、どうしても我慢できなかったんです! ヤバいですね☆」
これが後に、コッコロによってペコリーヌと呼ばれるようになる少女、ユースティアナ・フォン・アストライアとの出会いである。
余談。
ユースティアナを抹殺のため彼女を監視していたキャルという獣人の少女はというとユースティアナより遠い場所からユウキたちのことを眺めていて、女の子─コッコロがユウキに鞭を手渡した時……「あんな小さな子が、鞭を……世も末ね。けど、私も、陛下になら……って何言っているのよ私! 今はアイツを何とかして仕留めるのが先決でしょ!」と一人で騒いでいたとかなんとか。
その後、ユウキ、コッコロ、ペコリーヌの前に、大量の魔物に追われる少女ユイが現れ、助けを求めてきた。
その魔物たちは、ステータス完スト。スキル完スト。全耐性完ストのチート騎士クンによって一掃され、ユイちゃんは恋に落ち、何処かの世界でそれを見ていた仮面の女はどうしてそこにいるのは自分じゃないのかと、苛立ちのあまりディバイレインを連発しまくるのだが……表の世界の住人たちはそんなこと知るよしもなかった。
騎士クン一人によって、魔物を全滅させられ、その時の余波で気絶していたキャルちゃんは全員によってランドソルの病院に運ばれ、院内で目を覚まし、別に助けとか頼んでないから感謝なんてしないんだからね!とツンデレかまして「なにあいつ! 存在がチートよ! チート! 陛下に慰めてもらおう!」と陛下のいるお城へと戻ったわけだが、案の定キャ虐される羽目になった。
「ああ。愚かなキャル。可愛いキャル。あなたはどうしてそんなに馬鹿なのかしら?」
地面に這いつくばらされ、陛下にボロカスに言われるキャルちゃんであった。
主人公たちの冒険は始まったばかりだ!
最強の騎士クンが活躍する話を書こうと思ったらなんかプロットから脱線しまくってついに一番描きたい騎士クンの活躍がダイジェストになる事態に陥ったのが私です。
……深夜に書いちゃダメだね。
めちゃつよーい騎士クン活躍する話を誰か気が向いたときでいいので書いてほしぃっす。