エリス「そうか。騎士クンを、最強に、すればいいんだ」ミソラ「( 'ω')ふぁっ」   作:ルーピア

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今回はプリコネRのイベントストーリー「魔法少女二人はミスティ&ピュアリー」の二次創作作品です。

一部ネタバレ。独自設定。独自解釈。独自考察。が含まれるのでご留意ください。


モーラ「アンチビーストの体には強力なバリアが張られてて」ユウキ「えい」モーラ「( ゚д゚)」

【カスミ】

 

「──キミたちには、魔法少女になってこのランドソルを救って欲しいんだ!」

 

宙を浮遊する全身体毛の二頭身の生物──モーラくんはキラキラとした目で私とシオリさんにそう頼んできた。

 

もふもふの大きな二つの獣耳。

額には柄の違う体毛でできた可愛らしいハートの模様。

あざといくらいなつぶらな瞳。

首元にはベルの装飾が施された蝶々結びの赤いリボン。

もふもふの尻尾には星型の装飾が輝いている。

 

このファンシーな生き物は魔法の国から来たという自称魔法生物のモーラくんだ。

 

 

まずはなぜ、私とシオリさんがこの自称魔法生物と関わりを持つに至ったのか説明しよう。

 

シオリさんに誘ってもらい、二人で好きな推理小説の作家のサイン会に行った帰り、空から光った物が空から落ちてくるのを目撃した私たちはそれが落ちた場所へと向かった。

 

そこにはバケツに頭からハマったモーラくんが助けを求めていて、私たちは彼? を助けてあげた。

 

そうしたらいきなりお願いがあると言われ、今に至るというわけだ。

 

助けてもらっていながら、更に頼み事とは……ちょっと厚かましくはないかい?

 

というか……。

 

「魔法少女?」

 

意味をそのまま考えるなら魔法を使う少女になるけど。

 

ランドソルでは魔法を使える少女なんて珍しくないし多分違うんだろう。

 

では、モーラくんがいうところの魔法少女とはどういったものを指すのか。

 

「そうさ! 純粋な心と可憐な容姿! そして、溢れ出る愛! 平和のために戦う、魔法少女だよ!」

 

……。

 

……うん、何をいっているのかさっぱり理解できない。

 

「……シオリさん。この魔法生物くんがなにをいっているのか、分かるかい? 私はその、論理的に理解できない話は苦手でね」

 

シオリさんは困った時に出る空笑いをする。

 

「ええっと……モーラさん。どうして、私とカスミさんなんですか?」

 

「魔法の国の女王がいっていたのさ。世界には必ず、ボクらを助けてくれる人がいるって!」

 

それといったいなんの関係があるんだろう。

 

「カスミちゃんにシオリちゃん。キミたちは僕を助けてくれたでしょ? きっとこれは運命だと思うんだ!」

 

いや、偶然だよね。

 

「直感したのさ! キミたちこそがボクの探している魔法少女に間違いないってね!」

 

うん、だからさ。

 

「いや、どう考えてもただの偶然だと思うのだけど……」

「いいえカスミさん。魔法少女のお話はいつもこういう偶然から始まるものなんです。可愛らしいマスコットとの出会いをきっかけに平凡な毎日が一変して─!」

 

まくし立てるように言葉を紡ぐシオリさん。止めないと、ずっと語り続ける勢いだ。

 

「おっとシオリさん。思いのほか語るね」

「あ、いえ。すみません。『魔法少女ベルルちゃん』とか読んでいたもので、つい……」

 

少し恥ずかしそうに頬を赤らめるシオリさん。微笑ましい。

 

「ふふ、熱弁をふるえるのはいいことじゃないか。それで、魔法少女の物語だと次はどうなるんだい?」

「ええっとマスコットとであったあとはだいたい──」

「っ! この邪悪な気配……二人とも気をつけて、アレが近くにいるよ!」

「……敵が現れますね」

 

「GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

 

ランドソルの街に魔物が現れる。

しかも私たちの居るところからかなり近い場所に、だ。

 

「うん。よくわかったよ。というかこんな街の往来に魔物だって? 警備はどうなっているんだい!」

 

それに、こんな街の往来に魔物が迫っていて今の今まで騒ぎにすらならなかったなんて。

 

「しかもあんな魔物本の中でも見たことがありません」

 

博識なシオリさんも知らない魔物か。

 

それにしても……タイミングが良すぎやしないかい?

 

じーとモーラくんを見る。

 

「やっぱり現れたか。あれはアンチビースト! この世界に災いをもたらす存在さ!」

「魔法生物だの。アンチビーストだの忙しないことだね」

「あっ、見てくださいカスミさん!」

 

シオリさんが魔物の居る方を指さす。

 

視線を向ければ、アンチビーストと青い外套を纏った剣士が戦っていた。

 

「みんなこっちに来ちゃダメだ! 魔物の居る逆の方に逃げて!」

 

アンチビーストから近くに居た街の住民を護ろうと戦うその人は私のよく知る人物だった。

 

「あれは──助手くんじゃないか!こんなタイミングで居合わせるとは……不運な事だね」

「そうですね。不運としかいいようがないです──あのアンチビースト」

「ちょっと二人ともなに落ち着いてるの? あの騎士さまってキミたちの知り合いなんだよね? 助けないと!」

 

モーラくんが焦った様子でいってくる。

 

「んー。大丈夫だと思うよ。助手くんなら」

「ええ。あの人はとっても強いですから」

 

私とシオリさんは助手くんがとんでもなく強いことを知っている。

 

だから助手くんにもしものことが起きるなんて不安は微塵もなかった。

 

「あの騎士さまがどれだけ強いのかは知らないけど、アンチビーストの体には強力なバリアが張られていて普通の攻撃は効かないんだ!」

「そうなのかい?」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ! バリアを破るには愛の込められた魔法少女の力しか──」

「えいっ」*1

 

バリッーン!

 

「魔法少女の力しか……。……」

「モーラくん。キミの言う普通の攻撃が効かないというバリアとやらがたった今、助手くんの普通の攻撃に破られたみたいだけど……?」

「………( ゚д゚)」

 

モーラくんは口を半開きにした状態でフリーズしている。

 

「モーラさん。急に静かになって、どうしたんですか?」

「……今はそっとしておこう。きっと助手くんの常識外れの強さに脳の情報処理が追いついていないんだよ」

「なるほど。私も最初はそうでした。でもやっぱり……あの人が戦っている姿は凛々しくてとてもカッコイイですよね」

「え!? シオリさんもそう思う!? 」

「カスミさんも同じですか!?」

運命とか、直感とか、論理的でないものは普段あまり信じようとは思わない私だけど、今だけは直感している。

 

シオリさんも今、私と同じ気持ちを抱いていると!

 

「ああ! それに助手くんの格好良さは強さだけじゃなくて、優しさにもあるよね」

「わかります!」

 

食いつくように反応するシオリさん。

 

「……これは一度、助手くんの格好良さについて徹底的に語り合うしかないね」

「はい。……望むところです」

 

モーラくんに会う前に話していた推理小説について語り合うなんて話は私たちの頭からはすっかり消えていた。

 

あるのはただ互いの想い人がいかに素晴らしく、かっこいいのか語り合いたいと純粋な思いと。

 

「でも、今は──」

「はい。わかっています」

「助手くんの」「あの人の」

「勇姿をこの目に焼き付けよう」「勇姿をこの目に焼き付けましょう」

 

そして、今目の前でアンチビーストと戦っている助手くんの勇姿を脳に刻みつけたいという欲求だけだった。

 

 

バリアの破られたアンチビーストはあの助手くんの攻撃に三度耐えた。

剣を振るえば、地が割れ、海が割れ、空が裂けるあの助手くんの攻撃をだよ?

アンチビースト。キミは充分誇っていい。ただ相手が悪すぎた。

 

ランドソル最強にして無敵の騎士にして──私の助手くん!

助手くんと居合わせた時点でキミが倒されることはほとんど決まっていたんだ。

住民を襲わなければ、優しい助手くんのことだから魔物の居る森とかに返したのかもしれないけど。

 

アンチビーストが倒されてなお愕然とした表情のままのモーラくんを一度見上げ、小さなため息をつく。

 

もし、ランドソルの街の住民を襲うように命令されていたなら、どの道、助手くんの剣の錆となっていたことだろう。

 

……運がなかったね。

 

でも。……ありがとう。アンチビースト。不謹慎かもしれないけど、キミのおかげで私とシオリさんは助手くんが戦うカッコイイ姿を脳内記憶に保存することができたよ。

 

どうか安らかに眠ってくれ。

 

 

「ふぅ。意外に硬かった。あ、おーい。カスミ〜! シオリ〜!」

 

剣をベルトに吊るす鞘に収めた助手くんが私たちに気づいて手を振り、こっちに歩いてくる。

 

「やぁ助手くん! 大活躍だったね」

「ええ、とてもかっこよかったですよ」

「そう? ありがとう。……これなあに?」

「ああ。そこで呆然自失としているのは、自称魔法国から来たという自称魔法生物のモーラくんだ」

「じしょう?」

 

助手くんは記憶喪失だからたまに知識が欠けている場合があるんだよね。

説明すればいいだけだから気にしたことはないけど。

 

「自称の意味は、嘘か本当かの事かともかく、自分の名前や職業や肩書きを自分で称する……言うことですね」

「自称についての丁寧な説明ありがとうシオリさん。助手くんにも分かりやすい説明だったんじゃないかな」

「うん。教えてくれてありがとうシオリ、カスミ」

 

助手くんは笑顔でお礼をいってくれる。

うっ、その顔ずるいなあ。もう魔性の微笑みだよ。

あ、シオリさんも赤くなってる。私もこういう顔になってるのかなあ。

 

「自称魔法の国から来たの? ねぇ、自称魔法生物なの?」

 

つんつん。と、モーラくんのほっぺをつつく助手くん。

 

「はっ! ボクはいったい今までなにを。……そうだ! アンチビーストは?」

「アンチビーストならそこにいる助手くんが倒したよ」

「っ! あ、あなたは! アンチビーストと戦っていた騎士さま! というか……え、本当にアンチビーストを一人で倒しちゃったの?」

「アンチビースト?」

「助手くんがさっき倒した魔物のことだよ。特殊なバリアが張られているとかで普通の攻撃は効かないらしいけど、助手くんには関係なかったみたいだね」

「……そんな! ね、ねぇ、騎士さま。いったいどうやってアンチビーストのバリアを破ったの?」

「普通に剣で叩いたら割れたよ? パリーンって」

「え?え? だ、だって『あのバリア』は愛のある魔法少女の力じゃないと破れないはずで……え? あれ?」

 

ふーむ。どうやらモーラくんは常識の通じない相手に初めてであって困惑しているみたいだな。

 

それにしても……『あのバリア』ねぇ?

 

まるでアンチビーストについて知り尽くしているような物言いに思えるのは探偵という職業柄、穿った見方をする癖のある私だからだろうか?

 

「あ、わかった!」

 

閃いたとばかりにモーラくんが自分の手をポンと打つ。

 

「なにかわかったんですか?」

 

シオリさんがモーラくんに訪ねる。

 

「私も気になるね。是非、モーラくんがなにについて理解したのか聞かせてくれないかな?」

 

「なんかすごい食いつくね」とモーラくんは苦笑いを浮かべると表情を引きしめそのわかった事とやらを簡潔にいってのけた 。

 

「騎士さまは──」

「助手くんは?」

「この人は?」

 

「きっと魔法少女なんだ!」

 

……はぁ。なにを言い出すかと思えば……。

 

「そんなわけあるかああ! そもそも、助手くんの性別は男だ。少年であっても少女ではないよ」

「この人が魔法少女……。……私、ありだと思います」

「シオリさん!?」

 

……シオリさんがわからない。

助手くんのことなら通じ合えていると思ってたのに。

 

「魔法少女? なにそれ?」

「純粋な心! そして、溢れ出る愛! 愛と希望と平和のために戦う、魔法少女だよ!」

「おぉー。魔法少女かっこいい」

「ねぇ、シオリさん。……なんかモーラくんがいっていることがさっきと微妙に違う気がするは私だけかい?」

「いいえカスミさん。私もそう思います。……この人は充分、可憐な容姿なのに」

 

シオリさん本人が目の前に居るのによくそんなこと言えるなぁ。

 

「だからきっと『魔法少女ベルルちゃん』に出てくるような魔法少女の姿も似合うと思うんです」

 

うん。……よく本人の前でそんなこと言えるなあ(遠い目)

 

 

「で、どうなの騎士さま? 騎士さまは、魔法少女なんだよね!」

「え違うよ?」

「……( ˙▿˙ )」

 

モーラくん私が言ってたこと聞いてなかったのだろうか?

いや、多分、現実逃避しているだけなのだろう。

 

「モーラくん。いいかい? 落ち着いて聞くんだ。君とっては受け入れ難い事実なのかもしれないが、助手くん──君の目の前に居るユウキくんは魔法少女ではない。そもそも少女ですらない。ただ常識外な強さを持つだけの少年なんだよ」

 

モーラくんは何度か頭にもふもふの手を当て悩むと、ついに乾いた笑みを浮かべ。

 

「……あはは。……はぁ。わかった。……認めるよ。騎士さまは魔法少女じゃないけどアンチビーストを倒せる。そんな常識外れな強さをもった人だって」

「やっと現実を受け入れてくれたか。……さてと。アンチビーストは助手くんが倒した事だし、事件は万事解決ということで。私たち三人はこれで失礼するよ。ふぅ、魔法少女とやらにならずにすんで正直、ほっとしたよ。ありがとね助手くん」

「よくわからないけど。どういたしまして?」

「あ、この流れは……」

 

シオリが不穏なことを呟く。

 

「なにいっているのさカスミちゃん! 戦いはまだ始まったばかりじゃないか。」

 

嬉々とした様子で話すモーラくん。

 

「……こうなっちゃいますよね」

「えぇぇ……」

「騎士さまが倒したアンチビーストは見たところ大した強さをもってなかった。きっとまだ様子見だったんだ」

「「あれで様子見!?」」

「二人ともなんで驚いてるの?」

 

助手くんが不思議そうな顔をして驚いた私とシオリさんを見てくる。

 

「だって、あなたの攻撃を3度も耐えたんですよ?」

「助手くん。いつもどんな魔物だって一撃で沈めるキミの攻撃をあのアンチビーストは耐えた。しかもそれが様子見だったなんて言われたら驚きもするよ」

「んー。普通の魔物よりはちょっとだけ硬かったけど、そこまで強くはなかったよ?」

「あなたにとっては他の魔物と大差ないんでしょうけど……」

「私たちにとってはとても大きな差だ。助手くんはもう少し自分の常識外れな強さを自覚したほうがいいと思う」

 

助手くんは「うん。わかった。気をつける」と和やかに微笑む。きゅん。

 

「……ちょっとだけ? やっぱり騎士さまの強さはおかしいよ。絶対普通じゃない

「モーラさん、今、何か言いました?」

「いや、なんでもないよ!」

 

……やっぱりモーラくんがアンチビーストをけしかけたんじゃないだろうね?

 

「そもそもアンチビーストってどういう存在なの?」

 

助手くんがモーラくんに質問する。

 

「アイツらは色んな場所に現れ、災いを振りまく存在。ボクの国にも現れて、様々な混乱を引き起こしたんだ。奴らが狙うのは……愛の力。ここに現れたということは、次はこのランドソルを狙っているに違いない!」

「……」

 

なんかアンチビーストがランドソルを狙っているのを今確信した。みたいな空気を出しているけど……。

 

モーラくんはアンチビーストが現れる前の時点で私とシオリさんに魔法少女になってランドソルを救って欲しいと頼んでいた。

 

これはアンチビーストがランドソルに現れる事を事前に知っていたとしか思えない。

 

アンチビーストは本来なら魔法少女の力でしか倒せないらしいからね。

 

 

それにアンチビーストが現れたのがモーラくんに魔法少女になって欲しいと頼まれたすぐ後だった事も気になる。

 

助手くんが偶然近くに居なければ、モーラくんの望み通り私とシオリさんが魔法少女にならざるを得ない状況だっただろう。

 

正直、できすぎ。としか思えない。

 

 

「カスミちゃん、シオリちゃん! もう一度改めてお願いするよ! この世界のために魔法少女になって戦って欲しい!」

 

モーラくんはそのつぶらな瞳に誠実さを宿させ、私とシオリさんに頼んで来る。

 

「私はやりたいです」

「え、本気かいシオリさん?」

「はい。私はランドソルの街が好きですから。それにアンチビーストに対抗出来る手段があるのに、ユウキさんばかりにアンチビーストを任せるのはなんだか申し訳なくて……」

「うっ、そう言われるとたしかにそうだけど……」

「シオリちゃんの言う通りだよ! 魔法少女になればアンチビーストを倒せるのに、騎士さまばかりに頼って負担をかけるのはちょっと薄情なんじゃないかな?」

 

……このっ魔法生物! 助手くんへの良心を引き合いに交渉とはなんて狡猾な!

 

「全然、負担じゃないよ? 冒険者ギルドのクエストで魔物を倒すのとあんまり変わらないし。でも、魔法少女には興味あるかも。僕も魔法少女なれる?」

「ほら助手くんもこういってることだし……え? 今なんて?」

 

助手くんが魔法少女に?

 

「騎士さまは男の子だから魔法少女になるのは難しいかな。あはは……」

「そっかー。残念。……魔法少女なりたかった」

「……流石に冗談だよね助手くん?」

「私はユウキさんが魔法少女。ありだと思います! ……カスミさんはどうして魔法少女になりたくないんですか?」

「そ、それは……」

「もしかして、魔法少女になるのが恥ずかしいんですか?」

「いや、たしかに羞恥心が無いわけではないのだけれど……問題はそこではなくてね……」

「じゃあ、何が問題なのさカスミちゃん! キミもシオリちゃんと一緒に魔法少女になって騎士さまと協力してアンチビーストからランドソルの平和を守ろうよ!」

「うーん。しかしだね……」

「騎士さまはシオリちゃんとカスミちゃん二人の魔法少女としての姿を見たいと思わないかい?」

「見たい!」

「助手くん!?」

 

このマスコット助手くんの魔法少女への好奇心を利用するなんて……なんて悪辣な。

 

しかしこの状況。3対1で圧倒的、数的不利。

 

こうなったら……もうとれる選択肢は一つだ。

 

「やれやれ……わかったよ。魔法少女の件、考えてみることにするよ」

「カスミちゃん!」「カスミさん!」

「勘違いしないでくれたまえ。まだ、私は魔法少女になると決めたわけじゃない。考えてみるといったんだ」

「ええ! 魔法少女になってくれるんじゃないの? 完全に魔法少女になる流れだったじゃないか!」

 

その流れを作ったのはキミだけどねモーラくん!

 

 

「モーラくんを信じてもいい。そう思えたら私は魔法少女になるよ」

「どういうこと?」

 

首をコテっと傾げるモーラくん。一々、あざといな。

 

「モーラくん。正直に言おう。私は、君のことを信用していない」

「え! なんで!」

「というか、さっきのアンチビーストは実は君がけしかけてきたのではないかと疑ってすらいる」

「そんな酷い!」

 

モーラくんがショックを受けた声を出す。

 

「……カスミさん。私にはモーラさんはアンチビーストと敵対しているように思えます。その考えは流石に飛躍しすぎじゃ……」

「シオリさん。モーラくんと出会ってからのことを順を追ってよく思い返しておくれ」

「えっと……バケツにハマっていたモーラさんを助けて……『魔法少女になってランドソルを救って欲しい』と頼まれて……それでアンチビーストが現れて……」

「はいストップ。まず私がモーラくんに疑いを抱くに至った理由の一つはそれだよ。モーラくんが私達に魔法少女の話を持ちかけたすぐ後にアンチビーストは現れた。……まるで気を見計らったようなタイミングでね」

「偶然だよ!」

 

モーラくんを見て助手くんが首を傾げている。

 

これはもしかすると……本当に……。

 

「偶然にしてはあまりにタイミングが良すぎやしないかい?」

「でもカスミさん。魔法少女もののお話ではそういう偶然はよくある話ですし……」

「シオリさん。それはフィクションでの話だろ? ここは『現実』だよ。ただの偶然で最初から結論ずけるのは論理的ではない」

「それは……確かに。そうですけど」

「シオリさん。アンチビーストが私たちの近くに現れたのが偶然ではないとしたら? それを踏まえた上で考えてみてくれ。もしあの場に助手くんがいなかったらどうなっていか」

 

シオリさんは少し考え……。

 

「……アンチビーストから街の人を守るために、多分、私たちが魔法少女になってましたね」

「そう。モーラくん曰く、アンチビーストには普通の攻撃はきかない。例外の助手くんが居なければ、アンチビーストに対抗するためには私たちが魔法少女になるしかった。モーラくんが望んだ通り、私たちが魔法少女にね……」

「こ、こじつけだよ! それに、それはボクがアンチビーストをけしかけた証拠にはならないじゃないか!?」

「推理小説では証拠を出せという台詞を言うのは犯人だと相場は決まってるのだけど……。ここは現実だからね。まあ、確かに君の言う通り証拠にはならないだろう。でも、そういう疑惑を抱くには充分な要素だとは思わないかい? なにせあの状況は私たちに魔法少女になってほしかったモーラくんにとって、あまりに都合が良すぎる展開だからね」

「……そう言われてみれば、そうですね」

「シオリちゃんまで!」

 

私の話を聞いてシオリさんも冷静になってきたみたいだ。

 

「これが一つ目ということは、他にもあるんですよねカスミさん」

「もちろんだよ。私がモーラくんを疑っている理由はもう一つある。──モーラくんキミはアンチビーストがランドソルに現れることを事前に知っていたね?」

「え!? ……どうしてそう思うの?」

「質問に質問で返さないでくれないかい。今は私が君に聞いているんだ。それで、どうなんだい?」

 

返答次第によっては黒かどうか判断できるだろう。

 

「し、知らなかったよ?」

 

ああ、これは……黒だね。

 

 

「……知らなかった、か」

「本当だよ! 信じてカスミちゃん!」

「モーラくん。それはおかしいんだ」

「え……。い、いったい何がおかしいって言うのさ?」

「モーラくん。君は私たちに助けられたすぐあと、私とシオリさんに頼み事をしてきたね。その時、自分がなんと言ったか覚えているかい?」

「勿論、覚えているさ。なにせついっさきのことだしね! ……あ」

 

モーラくんが自分の失態に気づいたのか、顔色が変わる。

 

「『キミたちには魔法少女になってランドソルを救って欲しいんだ』……でしたね。でもこれって──」

 

シオリさんがあの時のモーラくんの言葉を一字一句違わず再現し、モーラくんを見る。その目は疑惑に変わっていた。

 

どうやら気づいたようだねシオリさん。

 

「──そう。モーラくんはあの時既にランドソルに危機がやってくることを、アンチビーストが現れることを予見していた。……あるいは必ず現れると知っていたんだ。そうでなければ魔法少女になってランドソルを救って欲しいなんて言葉が出てくるはずがない。……さて、こうなるとさっきのモーラくんの知らなかったという発言には矛盾が出てくるね」

「……モーラさん正直に答えてください。モーラさんはアンチビーストがランドソルに現れることを知ってたんですか?」

「……い、今のはそう言葉のあやと言うか。そう! 騎士さまの強さがあまりに衝撃的で記憶が飛んでただけなんだ。今思い出したよ! カスミちゃんの言うとおり僕はアンチビーストがランドソルにやって来ると予見していたんだ」

 

予見、ね。

 

「ふむ。では、どうやって予見したんだい?」

「魔法の国にはアンチビーストの反応を見つけるための技術があるんだ。それで数日前にこのランドソルにアンチビーストの反応を感知したんだよ。ボクは魔法の国の女王にアンチビーストからランドソルにいる人々を護るために魔法少女になれる人材を探すよう任務を言い渡されてそれでここにやって来たんだ!」

 

助手くんはまた?を浮かべている。

 

「じゃあ、君が私とシオリさんに魔法少女になるよう頼んだあのタイミングでアンチビーストが現れたのは本当に偶然だったのかい?」

「そう言ってるじゃないか!」

「ということだけど。……どう思う助手くん?」

「 ……優しい騎士さまはボクの味方だよね! この目が嘘をついている魔法生物の目に見えるかい!?」

 

つぶらな瞳をうるうるさせて助手くんに媚びるモーラくん。

 

助手くんはじーとモーラくんを見つめる。

 

……判定はどうかな?

 

「見える。思う。だってモーラ、ウソついてた」

 

シオリさんのモーラくんへの目付きが完全な疑惑へと変わる。

 

どうやら大勢は決したようだね。

 

「ええ! あれは本当にただの偶然だったなのにどうして信じてくれないの!」

「あ、またウソついた」

「ウソじゃないよ! それともあれかい? 騎士さまは相手がウソをつているのかどうか見抜けるのかい?」

「うん」

「……ぇ? ……(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)」

 

さて、ここで種あかしといこう。

 

「モーラくん。助手くんは相手がウソをついているのかどうか看破できるんだよ。しかもその的中率は驚異の100パーセント。そしてそれは助手くんの知り合いなら殆どの人が知っていることだ。もちろん、シオリさんもね」

 

シオリさんは「はい」と小さく頷く。

 

「ユウキさんにはババ抜きでババを持ってる時や人狼ゲームで人狼になった時は一度も勝てた試しがないですから……。だから私はユウキさんのモーラさんがウソをついたという言葉を信じます。そして、モーラさん。すみませんがさっきの魔法少女になるという話はなかったことにしてください」

「そんな! 騎士さまが勝手に言ってるだけでボクがウソをついてるって証拠にはならないじゃないか!」

「モーラくん。最早、証拠がどうこうといった話じゃないんだよ。助手くんがウソだと断定した。それこそが事実なんだ。君がどう言葉を尽くそうが、ね」

「理不尽すぎるよそんなの!」

 

助手くんは理不尽な存在さ。

 

彼がいるだけで大抵の事件は解決するんだからね。

 

「あれが偶然でないならモーラくんとアンチビーストには何らかの関わりがあるのは間違いない」

「もしかするとアンチビーストという存在自体モーラさんが用意したのかもしれません。魔法少女ものにはダークな感じの話もあって、それでは魔法少女を生み出すマスコットが大抵黒幕なんです。『魔法少女まどかマギカ』とか『魔法少女育成計』とか」

「なんだいその子供にトラウマを植え付けかねない魔法少女物語は……」

 

あ、モーラくんがギクッとしている。

 

……魔法少女。思ってたより闇が深いのかもしれない。

 

「こんな、茶番に、つきあえるか! 信じてくれないみたいだし、ボクはもう魔法の国に帰らせてもらうよ!」

 

空へ飛んで逃げようとするモーラくん。

 

「助手くん! モーラくんが逃げられないようにしてくれ! 彼にはまだ聞かないといけないことがある」

「わかった。任せて」

「無駄だよ! どんなに騎士さまが強くたって空の上までは追いかけてこれないでしょ!」

 

30m以上のところまで上昇しているモーラくんが言う。けど……。

 

「……それフラグですよ。モーラさん」

 

次の瞬間、助手くんは地を蹴り空を飛んだ。

 

助手くんが立っていた場所の地面が陥没している。弁償代高くつくかなぁ? いやランドソルに危機が迫った緊急時なんだし大丈夫のはず……多分。

 

そして、一瞬にしてモーラくんを両手で捕まえると地上へとゆっくり降りてくる。

 

地上へしゅたっと降り立った助手くんに拘束されたモーラくんと目が合った。

 

「やぁ、モーラくん。さっきぶりだね」

「え? ……えっと。あの、その。あはは。二人とも……魔法少女にならないかい?」

「断る」「お断りします」

「……ですよね」

「さて、それじゃあ隠している事を洗いざらい吐いてもらおうか! モーラくん!」

 

…。

……。

………。

 

その後、助手くんに拘束され逃げることのできなくなったモーラは助手くんの天才的な指テクによる擽りの拷問を受け洗いざらいを話した。

 

あのアンチビーストは自分が第三者に力を与え利用して仕向けたものであることは勿論。

 

魔法少女とアンチビーストは愛と希望の力を回収するためのマッチポンプのために創造した存在であることも。

 

モーラくん、というかモーラくんの魔法の国に住む魔法生物たちの生命の源は愛と希望の力に依存しているらしい。

 

愛と希望から生まれる力の回収。それこそが私たちで言うところの食事にあたる行為なんだとか。

 

アンチビーストが愛と希望の力を回収し、魔法少女がそのアンチビーストを討伐し人々に希望を与える。そしてまたアンチビーストが愛と希望を回収する。その繰り返す。

 

そうして半永久的に愛と希望の力回収するための舞台に今回選ばれたのがランドソルだった。

 

事情があるのはわかったけど、ランドソルに危機が来るのをわかっていてそれを許す訳にはいかない。

 

……どうしたものか。

 

解決しなければいけない問題はモーラくんたち魔法生物に必要な愛と希望の力の安定した供給。

 

けど、それはあっけなく解決した。

 

なんと助手くんのプリンセスナイトの強化の力が愛と希望の力を増大させることがわかったんだ。

 

モーラくんがアンチビーストをけしかけるのに利用した人物は助手くんの自称お姉ちゃんであるシズルさんだった。

 

シズルさんはアンチビーストの力を吸収していて暴走していた。

 

暴走を止めるために助手くんがプリンセスナイトの強化の力でアンチビーストの力を上書きした際、その力を目撃したモーラくんが「これは愛と希望の力が増大していく!

そうか! 騎士さまは愛と希望の騎士さまだったんだ!」とまたわけの分からないことをいいながら目を輝かせていた。

 

事件解決の後、モーラくんは助手くんが定期的に力を分け与えてくれるなら魔法少女とアンチビーストを使ったマッチポンプをしなくて済む!

 

といいだし、助手くんはこれを了解した。

 

しかも助手くんのプリンセスナイトの強化の力は通常の愛と希望よりも濃い濃度であるらしく月に1回回収するだけでも魔法の国の全魔法生物たちの10年分の寿命は担保できるということだ。

 

そうして助手くんはモーラくんに月に1回力を分け与えることになったのだけど……。

 

 

「騎士さま! 騎士さまは以前、魔法少女に興味があるって言っていたよね!」

「うん。それがどうかしたの?」

「魔法の国の女王が魔法の国のために愛と希望の力をくれる騎士さまにお礼をということでね。なんと男の子でも魔法少女になれる力を騎士さまにプレゼント──」

「こら! モーラくん! 助手くんを魔法少女にしようとするんじゃない!」

「私はありだと思います!」

 

助手と私と一緒に推理ゲームをしていたシオリさんがノリノリで言う。

 

ああ……。もうこの中でまともなのは私だけなのなのかな!

 

「カスミ。シオリ。僕と一緒に魔法少女になってよ!」

 

私とシオリさんの手をとると、助手くんは魔性で微笑んだ。

 

そして、気がついたら私は魔法少女の姿になっていた。

 

助手くんとシオリさんと一緒に……。

 

……解せぬ。

*1
ユウキが剣を振りおろす声





結局、カスミは魔法少女になるオチだったというね……。

今回頭を悩ませた点。

Qくっ、モーラが黒幕という決定的な証拠がないどうすればいいだ!

a主人公のチートで解決!

ユウキがウソを100%見抜けるというのは諸悪の根源さんが調子に乗ってカンストさせたスキルの中に看破スキルがあったという独自設定です。

ご都合主義ともいう…。
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