エリス「そうか。騎士クンを、最強に、すればいいんだ」ミソラ「( 'ω')ふぁっ」   作:ルーピア

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ユイ「あ、これダイエットのための運動とかにも役に立つかも」

夢で見る騎士の少年は、あまり強くはないけれど、わたしがピンチな時にはいつも助けに来てくれるヒーローで。

 

わたしはあの人のお人好しなところというか、通り越して馬鹿なところとか、もっというと不憫なところというか。

 

自分のことよりも、困っている他人を助けることを優先してしまう。

 

そんなあの人のことが、わたしは、大好きだった。

 

…。

……。

………。

 

【ユイ】

 

ランドソルの街から少し外れた場所にある森。

 

冒険ギルドで薬草採取のクエストを受けたわたしはひとり、目当ての薬草が群生するこの場所に採取に来ていた。

 

この森に生息する魔物は温厚な性格で、こちらから刺激を与えるようなことをしなければ襲われることは滅多にない。

 

だから、回復や支援魔法の適性が得意な一方で、攻撃魔法があまり得意じゃない魔法士のわたしひとりでも大丈夫。

 

そう思っていたのに……。

 

「「「グオオオオオ!」」」

 

「イヤ〜! こっち来ないで〜!!!」

 

わたしは、今、大量の魔物に追いかけられていた。

 

どうしてこうなったの!? わたしはただ、薬草を摂りに来ただけなのに〜!

 

大量の魔物たちから、必死に走って逃げながらこうなった経緯を思い出す。

 

えっと、森に入って、しばらくして、薬草を発見、薬草採取済ませて、さぁ、帰ろうと思ったら、茂みから様子がおかしいキノコの魔物たちが出てきて……。

 

しかもその後、普段は深部にいるはずのゴーレムまで現れて……*1

 

普段は温厚なはずの魔物たちは、わたしを見るや否や、なぜか襲いかかってきて……。

 

魔法士のわたしひとりじゃ倒せっこないから急いで逃げ出して……そして、今に至る。

 

うん! これどこにもわたしに非はないよね! 魔物に襲われるようなことはなにもしてないもん!

 

思い返してみれば、魔物たちは最初から何処か様子がおかしかった気がするし。

 

ということは魔物が凶暴化している原因はなにか別にある? それがなにかはわからないけど。

 

とにかく今はランドソルの街を目指して逃げ続けるしかない。

 

街には騎士団の人がいるだろうし、それに森の外に出れば、疎らではあるが人が通る道だ。

 

運がよければ、誰かに助けてもらえるかもしれない。

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ、っ!」

 

息が苦しい。お腹の横が痛い。足が重い。

 

走りながら、ちらりと後ろを確認する。

 

魔物との距離はさっき確認した時よりも縮まっていた。

 

前を向く。

 

どうしよう。このままじゃ追いつかれて、食べられちゃうよ!

 

 

なんとか、なんとかしなくちゃ。なんとか……。

 

……! そうだ。

 

「『フラワーヒール』」

 

自分の身体の周りが一度、緑色に輝く。

 

疲労感が癒え、呼吸が楽になった。

 

「『フラワーブースト』」

 

次は、橙色の光が一度、煌めく。

 

身体も軽くなって、走る速度が上がる。

 

回復魔法で自分の疲労を癒して、身体能力を一時的に増強する。

 

これなら魔力が尽きるまでは魔物から逃げ続けることができる。

 

「……! あ、これダイエットのための運動とかにも役に立つかも」

 

支援魔法を使えば、重い樽とかを何個も縄にくくって引いて走れるだろうし、疲労は回復魔法で癒せば、魔力が尽きるまでの間ずっと運動することができる……これなら、短期で痩せることも夢じゃない。

 

これでもう甘いもののカロリーを気にしないで食べられる!

 

そんな、別のことを考えるゆとりもでてきた。

 

あとは、街につくまでわたしの魔力がもつかだけど……うーん。回復と支援魔法を使うタイミングを見極めて、できるだけ魔力を無駄に使わないようにして……ギリギリもつかどうかって感じかな。

 

 

「──?」

 

「──!」

 

「──」

 

……! 今、あっちの方から人の声がしたような。

 

ランドソルの街につくまで確実に魔力がもつ保証はない。なら……。

 

わたしは声がした方を目指して走った。

 

そして、開けた場所に出る。そこには3人の人影があった。

 

お願い──

 

「助けて〜! 魔物が、大量の魔物が追いかけて来る〜!」

 

 

わたしがそう助けを求めてすぐ……3つの人影の1つが掻き消えたかと思うと。

 

後部で、爆発が起きた。

 

「きゃあああああ!」

 

爆風で吹き飛ばされて、地面に顔面からダイブする。

 

「……イタタ」

 

なんとか腕の力で起き上がって、四つん這いになる。

 

「いったいなにが起こって……」

 

「だいじょうぶ? ケガはない?」

 

後ろから男の人の声がした。

 

「な、なんとか……」

 

と、いうかわたし今、四つん這いになってるから、後ろからはわたしのスカートの中が丸見えなんじゃ!

ばっ! と急いでスカートの後ろを両手で抑える。

 

「そうだ魔物は! ……え」

 

立ち上がり、声の主の方に振り向いて……わたしは愕然とすることになった。

 

「たおした」

 

そこに居たのが青い外套を纏った騎士の少年でいつも夢に出てくるあの人にそっくりだったから? それもある。

 

でも、それよりも……さっきまであった森の一部が3キロくらい先まで直線上に綺麗に無くなっていて、代わりに抉れた地面の道が出来上がっていたことが衝撃すぎて。

 

「……これあなたがやったの?」

 

「うん」

 

「え、でも。……え?……え? ……ど、どうやって?」

 

「……? この剣を、えい、って振ったらこうなった」

 

蒼穹の剣を自分の胸元くらいの高さまであげて、抉れた地面の道の方を見て、説明してくれる騎士の少年。

 

夢のあの人に姿がそっくりだから、この後、わたしは騎士クンって呼ぶようになるんだけど……。

 

その時のわたしは、びっくりして、混乱するあまり、騎士クンに、大量の魔物から助けてもらったことのお礼を言うよりも、素直に思ったことを言葉にしてしまった。

 

「いや、普通、そうはならないよ!?」

 

そんなツッコミの言葉を……。

 

 

この後、ちゃんと助けてくれた事へのお礼をいって、騎士クンと合流したコッコちゃんとペコリーヌさんたちとお互いに自己紹介して、ペコリーヌさんが見つけてきた気絶したキャルちゃんをランドソルの医療機関までみんなで送り届けて、その場で解散した。

 

その日の晩。わたしは自分の部屋のベットの上でうつ伏せに寝っ転がりながら今日であった騎士クンのことを考えていた。

 

「騎士クン。あの人とそっくりだったなぁ。なんであんなにそっくりなんだろう……。もしかしてこれって運命の出会いだったりして…………/////」

 

何言ってるんだろわたし! でも、夢の中のわたしはあの人のことが大好きだったし……。

 

それに……。

 

──だいじょうぶ? ケガはない?

 

騎士クン優しかったなぁ。

 

ドクンッ。

 

刹那、鼓動が高鳴る。

 

「……/////」

 

騎士クンのことが凄く気になっちゃてる。ソワソワする〜!

 

「そうだ。この気持ちを日記を書けば少しは気持ちが落ち着くかも」

 

わたしはベットから起き上がって、自分の本棚のところから日記帳を探し出す。

 

そして、机の前に、座って日記を描き始めた。

 

 

〇月×日

 

今日は、森で大量の魔物に追いかけられていたところを、いつも夢で見る騎士のあの人とそっくりな男の子、騎士クンに助けてもらった。

 

 

わたし、騎士クンのことが凄く気になちゃってる。

 

もしかして運命の人なんじゃないかって想像しちゃったり……恥ずかしいよね。

 

けど、家に帰ってきてからもずっと騎士クンのことが気になちゃって全然頭から離れない。

 

夢のあの人のそっくりなこととか。

 

あの人と優しいとこともそっくりなところか。

 

騎士クンのことを考えると、なんだかソワソワしちゃう。

 

もしかしてこれが、恋、だったりするのかな?

 

 

「……はあ。騎士クンまたお話したいなあ。……ランドソルに居るんだし、またどこかで会えるよね」

 

ふと、思いを馳せて、窓をみれば、ランドソルの夜闇の空に美しい三日月を背にするソルの塔が見える。

 

「……そして、いつか夢で見たみたいに、騎士クンと同じギルドで仲間と一緒に冒険できたら……。ファ〜。日記を書いて気持ちが少し落ち着いたらなんだか眠くなってきた」

 

 

わたしは、日記を本棚にしまうと自分のベットで眠りについた。

*1
キノコの魔物と同じで何処か様子がおかしかった


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