エリス「そうか。騎士クンを、最強に、すればいいんだ」ミソラ「( 'ω')ふぁっ」 作:ルーピア
A
目を覚ますと、そこは暗闇の中だった。
→……なにも見えない。
状況を把握するために手近な周囲を調べる。
そして、どうして自分がここにいるのか思い出そう記憶を辿ってみることにした。
あなたは、昨日の夜、確かに、美食殿のギルドハウスの自分の部屋のベットで眠りについた筈だ。
そのあとの記憶は無い。目が覚めたらこの暗闇の空間に居た。
→ここは一体……
あなたが独り言を呟いたその時だった──!
バッ! と闇を切り裂いた、一つのスポットライト。
ライトに照らされたのは
藤色のサラサラとした髪、白のラインが入った黒の蝶リボン。
澄んだ空のように碧い、若干タレ目気味の可愛い瞳、桜色の薄いぷっくりとした唇がすっと上がり、素敵な笑みを作る。
白を基調とした清純な印象を与えながらも、華奢な肩が丸見え大胆な制服。そして、制服の上からでもわかるくらいのはちきれんばかりのたわわなふたつの果実。
制服と同じく白を基調としたスカートから除く、むっちりとした生身の太ももはどこか官能的ですらある、ハイニーソックスというのがまた一段と少女の瑞々しい太ももの魅力を引き上げていた。
あなたはその少女の名を呼んだ。
→……ミソラちゃん!?
「おはようございます♪ 騎士さん★ それとも、こんにちは? こんばんは? まーどっちでもいいか★ なにせこれは『夢』なんですから。そんなの気にするだけ無駄ですよね♪」
→ ……夢?
「ええ♪ ここは『夢』の世界。騎士さんのここで目が覚める前の最後の記憶もベットで眠りについたところまで……そうですよね♪」
右手の人差し指を、その小さな顔の近くで立てて、可愛らしいポーズするミソラちゃんに同意を求められる。
ああ、そうだ。ミソラちゃんのいうとおりだった。
と、いうことはこれはただの『夢』か。とあなたは不思議と納得できた。
「どうやらここが『夢』だって納得してくれたみたいですね。それじゃあ〜騎士さん♪ そろそろ始めちゃいましょうか♪」
→始めるって、なにを?
あなたの問いに、ミソラちゃんは楽しそうににっこりと微笑む。そして、ノリノリなな口調でそれを告げた。
「──バレンタイン戦争です★」
『バレンタイン。それは、一年に一度、女の子が好きな異性にチョコレートを送る世界に愛が溢れる特別な日』
何処から出したのか、マイクを右手に、突然、語りだすミソラちゃん。
『手作りで作った愛のこもったチョコレートを手渡して、そのまま愛の告白なんかもしちゃって、恋が叶ったり、叶わなかったりするそんな甘々なイベント満載なバレンタイン
たしかにそういうこともあるだろう。しかしそれがバレンタイン戦争とどう繋がるというのだろうか?
『そして、そこで発生するのが、その被ってしまった特定の好きな異性を巡る乙女たちによる湯煎したチョコレートのようなドロドロとした戦い。バレンタインのチョコレート決戦。それが───バレンタイン戦争です★』
……うん。意味がわからない!
『……あれ? 意味がわからないって顔してますね』
困った生徒を見るような目であなたを見てくるミソラちゃん。
→……実際、よくわらない。
『あー。じゃ〜あ、騎士さんのために簡単に説明しますね? つまりですねー、騎士さんを巡って行われる乙女たちのチョコレートを使った料理対決です♪ 騎士さんにはその審査員をしてもらいます★』
どうやらあなたはバレンタイン戦争と言う名のチョコレート料理対決の審査員に抜擢されたらしい。
『それと、騎士さんを巡るバレンタイン戦争といっても、騎士さんに行為を寄せる女性、全員を此処へ呼ぶのはこの『夢』の定員を余裕でオーバーしちゃうので、わたしの独断と偏見で騎士さんへの好感度が高いと思う二つのギルドのメンバーでチームわけをして、そして、特別枠のチームも一つ用意しました♪』
ノリノリのミソラがパチッと左手の指を鳴らす。するとバッ!とこの空間全体に次々と松明の明かりが灯った。
その場所に、あなたは見覚えがあった。
その場所は、捕まったトゥインクルウィッシュの解放をかけて、ミソラとゲームをした祭壇のようなところだ。
違いがあるとすれば、大きな調理台とガスコンロつきキッチンが3つずつあることだろう。
『最初に紹介するのは、このチーム。食への探究心なら誰にも負けない。チーム、ギルド【美食殿】のみなさんでーす〜★』
調理台の前に三つ人型の光が現れ、弾け、姿が明らかになる。
「は、え? ちょっと、ここいっったいどこよ! もしかしなくても
「キャルちゃん落ち着いてください!」
「え、ペコリーヌさん、キャル、それにママ……じゃなくて、ココッロさんもいるの?」
「キャルさま、ペコリーヌさま、シェフィさま、おはようございます。おや、……ここは……」
「なにコロ助、ここに見覚えあんの?」
「そうなんですか? コッコロちゃん」
「はい。以前、ミソラに囚われの身となってしまったトゥインクルウッシュのみなさまを助けるために、ゲームをした場所にとても似ている気がします」
ギルド【美食殿】のキャル、ペコリーヌ、コッコロ、シェフィの4人に……
『続いて紹介するチームは〜人助け中心に活躍するなんでも屋。困った時はおたがいさまさま。チーム、ギルド【トゥインクルウィッシュ】のみなさんでーす』
人型の光が現れ(以下略)
「え、ここどこ! あれ? あたし、寝たはずじゃ……というかなんで立って? もしかして、寝ぼけて知らない何処かまで歩いて来ちゃったとか!?」
「落ち着くんだヒヨリ。どうもそういうわけではないみたいだよ」
「レイちゃん、ヒヨリちゃん!? それに美食殿の人達まで居るの?」
「いや、美食殿だけじゃない……あれは、まさか!?」
「えーーー!」
「ッ! あれは……」
ギルド【トゥインクルウィッシュ】。驚愕するするヒヨリ、レイ、ユイの視線の先には
『そして、みなさんお待ちかね、特別枠のチームの紹介です★』
「……また、会えたね騎士クン」
「一緒に騎士さんへのチョコレート作り、頑張りましょうね♪ エリスさま★」
『エリスさま&わたしのふたりのチーム。チーム名は、ぺんぽこりんで〜す♥』
「いや、おかしいでしょう!!! なんでミソラがふたりいんのよ!?」
キャルちゃん恒例のツッコミがミソラちゃんに炸裂する。
司会をしているミソラちゃんと、エリスと一緒にいるミソラちゃん。
この場にはふたりのミソラちゃんがいて、つまり此処は、
『なんでって〜超能力で分身してるからに決まってるじゃないですか〜。もうキャルさんったら、変なんですから★』
「変なのはあんたでしょうが! というか、なんなのよこの状況! どういうことか説明しなさいよ!」
『もー。きゃるん、きゃるん騒がしいですね〜』
「そんな奇声、一回も発しとらんわ!!」
『色々この『夢』についてみなさんに説明する前に、キャルさんに大人しくしてもらうためにも、先に特別ゲストの紹介と行きましょうか』
→特別ゲスト?
「はぁ? 特別ゲストォ? そんなのいいから早く説明を──」
『──今回のキャ虐担当、特別ゲストの
ついさっきまで、なにも場所に豪奢な玉座が現れる。そしてそこには白き狐の偉そうな獣人が目を閉じたまま、ふんぞり返って居た。
「へ? へ、へ、へ、陛下ぁぁぁあああ!!」
顔を青くしたキャルちゃんの絶叫が空間に響く。
「まったく、きゃるん、きゃるん、何処の馬鹿が騒いでいるのかと思ったら、あなただったのね──キャル」
「あ、あの陛下、あたしは、きゃるん、きゃるんなんて口には──ヒッ」
ギロリと深紅の眼で、キャルちゃんを一睨みする覇道皇帝。それだけでキャルはビクッと身体を硬直させる。
(間違いない。このシッポがビリビリくる圧倒的な威圧感、本物の陛下!)
恐ろしい眼光とは相反して、優しい声色で覇道皇帝はキャルに語りかける。
「どうしたのキャル? そんな蛇に睨まれた蛙のように固まってしまって。ほら、早く続きを言いなさい? 口には……何かしら?」
答えを誤れば『殺される』。獣の直感はやがて悪寒となりキャルちゃんを襲う。
キャルちゃんは、今の自分は何をするべきなのか、猫の獣人として生きてきた全ての時間を思い返し、必死に模索する。
生存本能を最大限まで高め、生き残ろうとする生への執着が導いた行動それは、鳴くという行為だった。
しかしそれはにゃあという猫の獣人らしいものではなく──
「──き、きゃるん! きゃるん! あ、そ、そういえば、よく考えてたらこれってあたしの口癖でした! 今、思い出しました! 思い出させて下さりありがとうございます陛下!!」
奇妙な鳴き声をあげ、早口で感謝を述べるキャルちゃん。
「自分のことも忘れてしまうなんて、ホント愚図な子。もう二度と忘れることが無いように、痛みで、躾てあげようかしら? 一時的なものとはいえ、暴力ほど効率のいい指導は無いこと、身をもって知ってるわよねキャル」
口の端を吊り上げて、ニヤッと邪悪な笑みを浮かべながら、スっと、黄金の短剣を向ける覇道皇帝だったが……。
「………久方ぶりの再開だから、ちょっと
次の瞬間には、あなたによって、首元のスレスレに剣を突きつけられ、身動きできない状態となっていた。
→みんなに危害を加えないと約束してください
「嫌よ。どうしてあなたの勝手な都合に此方が合わせないといけないわけ。相変わらずの楽観思考。……虫唾が走るわ」
→お願いします
「何度頼もうが答えを変える気は無いわ。けど、あなたが危惧する事態にはならないと断言しましょう」
『わー。一瞬で見抜くなんて流石ーって感じですねー』
覇道皇帝に賛辞の言葉を送るミソラ。
→どういうこと?
『
→試してみる。
剣を鞘に仕舞ったあなた。そして、覇道皇帝の正面に立つ。
「……? 視界に立たられると邪魔なのだけど。退きなさい。……って、なにその指の形……あなたまさか!」
あなたは、親指と中指をくっつけて、力を貯める。
そう、覇道皇帝にデコピンで危害を加えることができるか試してみるつもりなのだ!
力をMAXまで貯めて、ズバンっと覇道皇帝のデコを目掛けて、中指を解き放った。
凄まじい速度で、覇道皇帝のおでこに迫る中指の爪。回避不可能の一撃。
『覇瞳天星』で中指の動きを追えていた、覇道皇帝の脳裏を過ぎったのは『死』という一文字。
そして、おでこに中指が直撃する直前、ピタッと停止した。
あなたは覇道皇帝のおでこをデコピンするつもりだった。しかし、その意思に反して、寸止めさせられた。
『どうですか♪ 攻撃しようとしたのに無理やり寸止めさせられる感覚は★』
→したくてもできなくて、なんか変な感じ?
『あはっ★ もしかして〜癖になちゃいましたか♥』
「……知能指数の低い会話をしている暇があったら、早くこの鬱陶しい手を退けなさい」
冷汗ぐっしょりの覇道皇帝があなたに言う。
話を進めるためにも、あなたは寸止めくらった指を引っ込めて、元いた台の椅子へと戻っていく。
「それじゃあ、キャルさんが大人しくなったところで、みなさんが集められた理由を説明しますね♪」
ミソラはバレンタイン戦争についてこの場に居る者に概要とルールを説明した。
調理台とキッチンはチームごとに用意されているものを使用する。
材料や調理器具は欲しいと願えば、それが具現化する。
「なるほど。つまり、主さまにわたくし達が作ったチョコレートを食べてもらって、その出来と味を評価してもらえばよいのですね」
「そして、三つのチームでその評価点を競う、と」
コッコロとシェフィが簡潔にまとめる。
「……こんなバカな催しのためにあたし、呼ばれたわけ……。……特別ゲストはあの陛下だし……モウオウチカエリタイ」
「まぁまぁ、キャルちゃん。バレンタイン戦争? 楽しそうじゃないですか☆ ここは、みんなで一緒に彼のために、おいしいチョコレートを作るために頑張りましょうよ!」
「……てか、どうしてあいつのためにあたしが手作りチョコを。……やる気があるあんた達だけで頑張りなさいよ」
『ちなみにー。勝者したチームには、後日、騎士さんと夢の中で2人っきりでイチャイチャできるチケットが人数分、授与されます★』
「「 「「……」」」」*1 「「「……」」」*2 「……」*3
「キャルちゃん! この戦い絶対に負けるわけにはいきません!」
「ま、まぁ? 今回だけよ? 今回だけは、あたしも頑張ろうかしら」
──勝つ
このバレンタイン戦争で、絶対に勝つ!
ミソラを除いた、恋する乙女たちの気持ちが一致した瞬間であった。
優勝景品である騎士クン《あなた》との夢イチャイチャチケットを求め、闘志を燃やす乙女たちを、見ていた覇道皇帝は心底くだらないと言った感じでつぶやく。
「くだらない茶番だわ。ねぇ、そこのミソラといったかしら? 私を今すぐこの心底くだらない
『ダメです★ バレンタイン戦争に招集されたものは、この戦いが終戦するまで何人たりとも『夢』から出すわけにはいきませんー』
「私は参加者でもなければ、審査員でもないのだし、なんら問題はないでしょ?」
『そう言われましても、そういうルールなのでー。 それに♪ 覇道皇帝さんには、キャ虐っていう大事な役目がありますし、バレンタイン戦争が終わるまでは我慢、お願いしますね★』
「……はぁ、こんな茶番に巻き込まれるなんて、ツイてないわ……恨むわよキャル。あなたがこの場にいさえしなければ、私が巻き込まれることもなかったのだから 」
ギロリっ。
「き、きゃるんっ!?」*4
後編へ続く