ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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アニメ版のハドラーの月命日が16日と決まった様なので(涙)……
その月命日にうぼのあん氏(https://www.pixiv.net/users/159931)の16年前に戻ってやり直すハドラー(https://www.pixiv.net/artworks/86959749)を参考に(パクった)、ハドラー様が魔法騎士レイアースの獅堂光の様な姿になるお話を作ってみました。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/8799426


第10話

破邪の洞窟地下180階を彷徨っていたハドラーちゃんは、そこで白骨化した人間を見つけた。

「ほお。ここまで辿り着けたと言う事は、本来なら地上にその名を轟かせる筈だった者……であった筈か」

破邪の洞窟の全貌を知り尽くす事無く力尽きた無名の無双者の無念を思うと、1周目(ぜんかい)のダイと戦ってからアバンの腕の中で死ねた事がどれだけ幸せかを改めて思い知らされた。

「もし……こんな所で潰えず、無事にアバン達と合流していたら……」

そう考えると、どうしても自虐的な笑みが浮かんでしまうハドラーちゃん。

「かつての俺では無理だな。特に大魔王バーンの手下と成り下がった情けない俺如きでは……」

そう考えると、この人骨が非常に勿体無く感じた。

「どっちにしろこのまま腐らせるには惜しい逸材である事だけは確かか?」

そう言うと、ハドラーちゃんが懐から2本の筒を取り出した。

「破邪の洞窟もここまで下ると、欲しいモンスターがうようよいるからな、空の魔法の筒をもう少し増やすか……デルパ」

ハドラーちゃんが取り出した筒から出て来たのは、溶岩魔人と氷河魔人。もしもバーン軍との戦いで兵力が大幅に減衰した時に備え、新たなフレイザードを作る為に保存しておいたものだ。

「まさか……もう作る事になるとはな……」

ハドラーちゃんが今からやろうとしている事は……あまりに卑怯なために使うのを禁じられていて、使うと魔法使いの間で仲間外れにされるという呪法。

白骨化した無名の無双者、溶岩魔人、氷河魔人を融合させて禁呪法生命体に作り変えようとしているのだ。

ハドラーちゃんが呪文を唱えると、溶岩魔人と氷河魔人がドロドロに溶けながら白骨化した無名の無双者を包み込んだ。

「甦れ!フレイザード!」

溶岩魔人と氷河魔人と言う新たな肉体を得た白骨化した無名の無双者が再び目を開くが、その姿にリアクションに困るハドラーちゃん。

「おーーー!おっ……お?」

完成したのは、屈強とは真逆の可憐な美少女であった。

「こいつが……本当にここまで辿り着いた猛者……なのか?」

少女は突然名乗り始める。

「百合の香りに誘われて、百合の導きに救われし女性達に新たな命をもたらす為、死の淵から今舞い戻るぅー。フレイザード2号!再臨よー!」

その自己紹介に驚くハドラーちゃん。

「2号だと!?何で貴様が1周目(ぜんかい)のフレイザードの事を知っている!?それに、さっきから百合百合って、俺はそんな趣味は無いぞ!」

ここでハドラーちゃんが自分の趣味についてとやかく言うのには、一応理由があった。

生み出された禁呪法生命体は、術者の精神が反映された意思を持つからだ。その証拠に、魔軍司令時代のハドラーが生み出したフレイザードが狡猾で残忍かつ名誉欲に凝り固まった性格であり、親衛騎団のメンバーが騎士道精神と仲間意識や絆を重んじた性格であることは、それぞれを生み出した際のハドラーの精神状態を如実に表した例と言える。

だが、新たに作られたフレイザード2号は、ハドラーちゃんが思いもしなかった百合志向に凝り固まっていた。

「いやー、そこの可愛いお嬢さん。かなり待たせて悪いが、私が未熟故に未だに世の女性達の真の願いを叶えるには至っていないのだ」

全く何を言っているのかが解らないハドラーちゃん。

「ね……願い……フレイザードよ、お前は俺の何を叶えてくれると言うのだ?」

「なにって、百合妊娠に決まってるじゃない」

「ゆりにん……え?……なに?……」

「なにって、破邪の洞窟の奥地に眠る女性同士の性交のみで赤ちゃんを作る呪文を発掘しにだな―――」

フレイザード2号の言い分に困り果てるハドラーちゃん。

「いやいやいやいや!どう考えたって、地上に仇為す敵との戦いに役立つ呪文とは思えぬのだが」

どうやら、フレイザード2号は女性をこよなく愛する女性と言う変わった性格になってしまった様だ。

ハドラーちゃんは、フレイザード2号がどうしてこうなったのかを調べる事にした。だが、

「ハドラーちゃん、欲求不満が随分溜まってる様だが、女性の扱いは丁寧にしないとね♡」

「ちゃ、ちゃんーーーーー!?」

このままでは本当にフレイザード2号との同性性交に陥ってしまうので、ハドラーちゃんが慌ててフレイザード2号の両腕を握って核がどうなっているのかを確認した。

「何がどうなっているのだ?俺が今唱えた呪法に何か間違いでもあったのか?」

しばらくして、フレイザード2号の性格の不調の原因が材料側にあった事を知る。

「そう言う事か。あの骨の本来の持ち主の魂まで取り込んでしまったと言うのか?」

そう。フレイザード2号の材料になった無名の無双者はまったく成仏しておらず、あの人骨の中に入り込んだままだったのだ。

その結果が、フレイザード2号の女性の同性愛(レズビアン)化である。

「ここまで来れたから……と期待したんだがな……俺はとんでもない者を作ってしまったのかも知れん」

 

その後、破邪の洞窟地下200階に辿り着くまでにフレイザード2号の事を理解しようとしたハドラーちゃん。

「あの最悪の問題点さえなければ、今回のフレイザードは強大無比……なんだけどなぁ……」

あの人骨の本来の魂だけでなく、溶岩魔人と氷河魔人の頭脳まで取り込んでいるので、炎と吹雪を意のままに放ててしまっている上に、元々がハドラーちゃんの呪法無くとも破邪の洞窟地下180階に到達した猛者だった女。

フレイザード2号が弱い理由が無い……筈なのだ。

そう、フレイザード2号の材料となった女が女性の同性愛(レズビアン)でさえなければ……

「評価が難しいわこれ……」

 

一方のアバンの逢魔窟探索はと言うと、

「やはり……瘴気が変異してるだけのものに、普通の剣技は通用しない様ですね」

そんなアバンの言葉に、ハドラー軍に化けた瘴気達が悪意満載の言葉を垂れる。

「ならば、呪文を使って我々を消し去れば良い。だが、数に劣る貴様では考えつかぬであろうな」

無論、アバンは瘴気達の罵詈雑言に耳を貸さない。

それに、実体化する程の瘴気に下手な呪文をぶつければどうなってしまうのか、全く予想が付かない。

「やはりここは……空裂斬しかありませんね」

だが、今のアバンにそれが出来るのか?そこが最大の問題だ。

「ま、やるしかありませんね。私はその為にここに来たんですから!」

その直後、アバンの剣に光の闘気が宿る。

それを見たハドラーちゃんに化けた瘴気が挑発する。

「1人で戦うのか?誰の到着を待たずに?それとも……」

ハドラーちゃんに化けた瘴気の微笑みに悪意と邪気が宿る。

「孤独ゆえに当てが無いか?」

アバンは完全に無視。

心を研ぎ澄ます事に集中する。

すると、モンスター群に化けた瘴気が焦れたのか、統制が乱れ始める。

「そこか!?」

アバンが2匹のキメラを斬った。だが、その内の1匹は滅びずに瞬時に完治してしまった。

「浅い!空裂斬はまだ未完成か!?」

キメラの化けた瘴気がアバンに斬られて消滅したのを確認したハドラーちゃんに化けた瘴気が「くくく」と嗤った。

「なかなかやるな?だが、それでは長期戦は無理だ。先に疲れるのは、孤独と言う枷を背負う貴様の方だ」

ギガントに化けた瘴気が飛び掛かり、アバンの両肩を掴んだ。だが、その顔は……

「どうだ!?これが、貴様を孤独にした男の顔かぁーーーーー!?」

この時のギガントの顔は、正にジニュアール1世そのものだった。

が、アバンの心を乱すどころか逆にシラケさせてしまった。

「流石にここまで言われ続けると飽きますね?」

対し、ハドラーちゃんに化けた瘴気の邪悪な微笑みはまったく崩れていなかった。

「強がるな。数が孤独に敗北する理由など……無いのだぞ?」

「それに……貴方達は何か勘違いしている」

「1人のお前のどこが孤独じゃないと言うのだ?」

「その前提そのものが間違っていると言うのだ!」

アバンは、普通の凡人じゃない。

そしてアバンは、独りじゃない。

 

そんなアバンの帰りを待つ仲間達は……ギュータが予想していなかった戦いをしていた。

結局、ハドラーちゃんはキギロの寿命を致命的に縮めた「キギロがギュータを襲撃」を止める事が出来なかったのだ。

だが、2周目(こんかい)のハドラーちゃんは、魔軍司令時代(なにもしらなかった)あの頃じゃない。

ハドラーちゃんの命令を受けたガンガディアがキギロの回収を諦めずに動いていたのだ。

「キギロ……そんなとこに居たのか?だが」

ガンガディアだってキギロの強さは知ってるし、キギロの勝利を疑う訳でもない。

だが、ハドラーちゃんのあの焦りからして、今のキギロではアバンには……

「ハドラー様は恐らく、今回のキギロの独断先行が勇者を育てる試練になるとお考えであろう」

ガンガディアにとって幸いだったのは、キギロが破邪呪文(マホカトール)を破壊してくれたお陰でギュータへの侵入が容易になった事だが、それがかえってギュータの残った者達の戦闘意欲に火が点いてしまったのがガンガディアのキギロ回収を遅らせてしまった。

「どうやら、アバン達は良き修業の場を得た様だな?それに、天地魔界の邪気が集結し噴き出している……破邪呪文(マホカトール)が無かろうと、キギロの回収は難しそうだな」

しかも、キギロが次々と分身体を生み出し続けるからか、ガンガディアですらどれがキギロの本体か解っていない体たらくであった。

 

アバンの逢魔窟探索……もとい、ハドラーちゃん率いるモンスター軍団に化けた瘴気との戦いも佳境に入った。

(当たる!……様になってる!敵を感知する力が高まっているのだ)

空裂斬の完成が近づきモンスター群に化けた瘴気を追い詰めているのか、最初の頃の鬱陶しい悪口も大分聞こえ難くなってきた。

アバンの精神が鍛え上げられてる証拠だ。

だが、

「アレは!?バルゴート様の杖!?」

それはつまり、人間が辿り着ける逢魔窟の深部に到着してしまった事を意味する。

(と言う事は!)

ハドラーちゃんに化けた瘴気が身に纏う邪気も当然強大になる。

(当然、そうなる理屈だ)

さっきまで聴こえ辛かった悪口が一気に大音量となる。

「孤独に堕ちた雑魚の分際でぇー!」

一瞬気圧されそうになったアバンであったが、

(闘気を!闘気を最も鋭く集中させる放ち方を見つけなくては!)

が、気合いを入れ直すアバンの前に、招かざる客が来てしまった。

「君は本当に面白くて……ムカツク奴だよ!」

「その声は……キギロ!」

「僕もね、今の君同様にガンガンに鍛え直して来たのさ。特に1番強く生まれ変わったのは『根』だ」

「ね?」

「僕の根は絶大な魔力を持った。地に刺しただけで大陸全ての植物を管理下に置けるほどの力さ。普通の植物を自分の分身体に出来るだけじゃない、大陸の全植物を悪魔の目玉の様に自分の端末にする事も出来る!」

アバンは、呆れながら言い放った。

「貴方は相変わらずバカですね」

「おい!そのやり取りはたしか!?」

「そうだ!キギロ、貴方は調子に乗り過ぎると自分の能力を敵に明かしてしまう悪癖がある。しかも、これが3度目だ……最も治すべき場所だけは修正出来ていない様だな!?」

 

一方、キギロが逢魔窟に侵入した事を察したマトリフがカノンを差し置いて逢魔窟に入ろうとするが……

「……お手柔らかに頼むぜ!神様よ!」

「馬鹿!何をする気だい!?お前みたいな屑がここに入ったら―――」

「解ってるよ。自分の恐怖心や罪悪感にやられちまう。だが、アバンの奴はもっと危ねぇ!相手は厄介な能力を持った化物だ。呪文の助けがいる!」

「だからこそ―――」

「俺の役目なんだよ!師匠との約束なんだ!」

口を滑らせてつい言ってしまったマトリフの台詞に驚くカノン。

そう。マトリフは師匠であるバルゴートに託されていたのだ。地上界を救う真の勇者やそれを支える英傑達を育て、真の勇者達と共に救世の道を歩む夢を。

そして、1周目(ぜんかい)はアバンと共にハドラー達と戦い、ポップを一人前の大魔道士に育て上げ、大魔王バーンとの戦いの縁の下の力持ちの役目を十分に果たしたのだ。

「父様が、アンタにそんな事を……アタシゃてっきり」

「ま、オレがクズなのは事実だけどよ。その後もデタラメな人生だったしよ!」

ここで動くのがお人好しなロカ。

「よっしゃ!話は解った!俺がアバンの所までおぶってやるよ!」

「あん?馬鹿野郎。おめえはどうすんだ?」

「俺に怖いもんなんかねぇから大丈夫だ!俺が怖いのは、自分がヘマする事だけだ!」

で、ロカとマトリフの2人でアバンを救助すべく逢魔窟に入ったが、

「あれ?何も出てこねぇ……やはり恐怖心が無い奴には効かないのか?」

「そんな馬鹿な事が……」

そう言いかけて……マトリフの背中が凍り付いた。

「不味い!キギロの奴、洞窟の邪気を吸収し始めたたんだ!急げ!」

 

逢魔窟の邪気を全て吸い尽くしたキギロは……巨大な蟹の様な化物へと豹変した。

「グハハハハハハハハ!この洞窟の邪気……ほとんどが魔族や魔物達由来の物だ。どこかが魔界と繋がってるのかもね?今のボクには最高の……ボーナスだぁーーーーー!」

しかも、ただ巨大化しただけではなく、素早さも倍増どころではなかった。

「先手必勝さ。また鋼鉄変化呪文(アストロン)とか使われると面倒だからな。グハハハハハハハハ!」

それに対して万事休すのアバン。

(いけない……前が見えない……しかも……剣が……)

「イタダキぃーーーーー!」

このままアバンに止めを刺そうとするキギロであったが、

極大爆裂呪文(イオナズン)!」

「ぐおぉー!?」

「アバン!」

ロカとマトリフが間に合ってくれたのだ。

「戦士くんと……大魔導士とか言う奴か!?」

とは言え、逢魔窟の全邪気を味方につけたキギロに一般的な技が通用する訳が無い。なら、

(とは言え……あれ程膨大な邪気を素通りする攻撃は、やっぱアバンの空裂斬しかねぇか!?)

「アバーン!其処の杖を使え!師匠の杖は、全部仕込み杖だ!」

「それがどうした?……このビンビンのどす黒い邪気のガードをさぁ!そんなズタボロな状態で貫けるなら!」

「たとえ何度剣を折られ様と、私の心はまだ折れてはいない!心の光を一撃に籠め、闇を貫く!」

「やって魅せて貰おうかぁーーーーー!」

バルゴートの杖に仕込まれた剣を抜き、渾身の力でそれを揮うアバン。その技は正しく、

「空裂斬!」

「消え去ー……え?」

アバンの空裂斬は見事にキギロが身に纏う邪気を完全に祓った。

(え!?あれ程の量の邪気を……一撃でぇ!?)

その隙にマトリフが氷系呪文(マヒャド)真空呪文(バギクロス)を同時に発動させる。

「物理で削りゃ良いんだろ?」

(2つの呪文を同時にぃ!?)

氷系呪文(マヒャド)真空呪文(バギクロス)の合わせ技にどうにか耐えるキギロ……だったが、

「当然……やる事は解ってるよな?用心棒!」

ロカがカール騎士団正統の構えでこのチャンスを待っていた。

(いつまでもレイラに甘えてられねぇ!俺の剣の速度だって、この里の修行でグッと上がってる筈なんだ……これが1人で出来る俺の精一杯の)

「豪破一刀だぁー!」

ダメ押しの斬撃まで食らい、ボロボロに砕け散るキギロ。

「そんな、馬鹿なぁーーーーー!?」

だが、ここへハドラーちゃんからキギロ回収の密命を帯びたガンガディアがすっ飛んで来た。

「何!?」

「君達はなかなかに恐ろしい連中だよ。ハドラー様が興味を持たれるのも納得だ」

ガンガディアはこのままアバン達を抹殺しようと考えたが、

「その結果がキギロのこの窮地だ。このままではキギロ回収に失敗しそうなので、今日はこれで失礼するよ。瞬間移動呪文(ルーラ)

キギロとガンガディアが去り、戦いは終わった。

そして、アバンはロカとマトリフに抱えられながら逢魔窟を出た。

「アバン!無事だったかい!」

「はい。なんとか。ロカとマトリフのお陰です」

と言って、アバンはハドラーちゃん率いるモンスター軍団に化けた瘴気の言った言葉を思い出す。

「数は力だ!数は孤独如きには絶対に届かん力の極致だ!」

(確かに……あの時ロカとマトリフが来てくれなかったら、私はキギロに敗れ朽ち果てていただろう。その点だけは、逢魔窟(おまえたち)の言う通りだった。でも、それは彼らが心を許せる友だからだ!)

やっぱりアバンは、独りじゃない。

 

破邪の洞窟地下192階にいたハドラーちゃんは、キギロの無念の悲鳴を聞いた気がした。

「ん?」

「どうしたのハドラーちゃん?」

「いや……キギロがまた敗けた気がしてな……俺はまた、間に合わなかったらしい」

フレイザード2号の材料となった女は百合萌えの女性の同性愛(レズビアン)。故に女性の表情の微妙な違いが判るのだ。

「その割には嬉しそうね?ハドラーちゃんはキギロに何か恨みでもあるの?」

フレイザード2号の質問に対し、ハドラーちゃんはある意味安堵の表情で答えた。

「強いて言えば、キギロの奴がアバン如きに敗け過ぎたくらいか……寧ろ、アバンが何度も皮がむけて俺を楽しませてくれるのが面白いと言うのが本音だな」

フレイザード2号は嫌そうな顔をしながらハドラーちゃんに問う。

「ハドラーちゃん、アンタもしかしてそのアバンの事が好きなんじゃないの?」

フレイザード2号の見当違いな質問を聞いてズッコケるハドラーちゃん。

「何を言ってんだお前は!?俺はただ、このままアバンに負けっぱなしで死ぬのは我慢ならないだけだ!」

「いやいや、そうやって何度も戦っている内に、宿敵から必要不可欠な―――」

「違うわ!アバンは地上侵略を阻む勇者だ。つまり、我々魔王軍の敵だぞ!」

しかし、百合萌えの女性の同性愛(レズビアン)と化したフレイザード2号は、ハドラーちゃんの弁明をかなり拗れて解釈してしまう。

「つまり……ハドラーちゃんを巡る恋敵は、やっぱりアバンなのね?」

「だから違うと言うに!」

百合萌えの女性の同性愛(レズビアン)と化したフレイザード2号との会話についていけず、別の意味でへとへとになるハドラーちゃんであった。

 

「して……キギロ殿の回収の方は?」

バルトスの質問に対し、残念そうに首を横に振るガンガディア。

「本体の方はどうにか回収したのだが、本体の核が損傷していてね……」

「な!?助からぬのか!?」

「勇者一行が寄る場所にしては瘴気が多い場所だったのでそれなりの応急処置を施したが、白状するなら『もう大丈夫』……とは言えん」

それを聴いてアバンの底知れぬ何かに不安を感じるバルトス。

「まさか……あのキギロ殿がここまで追い詰められるとは……」

そこで、ガンガディアがある独断を決意する。

「キラーマシーンを使用しようと思う」

「あのデカいのをか?」

「恐らく負けて帰って来ると思うが」

「それって、投入する意味があるのか?」

「少なくとも、勇者一行の次の行き先をこちらである程度調節出来る」

「気付きますかね?」

「そこまで奴らは馬鹿じゃない……と信じたいがね」

 

一方、どうにか地底魔城に帰り着いたキギロであったが、自身の棺桶になる筈だったギュータの戦いでの傷が予想以上に深く、未だに生死の境をさまよっていた。

「ぐおぉーーーーー!この僕が死ぬのか?あんな奴らに敗けで死ぬのか?……嫌だ!敗けたくない!僕は敗けてない!」

そこへ、あの疑惑のさまようヨロイがやって来た。

「貴様は、あの時の空っぽ!?」

さまようヨロイはキギロの傷口に手を当てる。

「貴様?何をする気だ!?」

すると、キギロの傷口は急速に小さくなり、全身がボロボロに砕け散りそうな激痛が消えて無くなった。

「な!?何だこれは!?力が……力が溢れそうだ!」

キギロが完治したとみるや、さまようヨロイが退室する。

「オイ待て!お前は本当に何者なんだ!?」

さまようヨロイはキギロの質問に目もくれずに静かに退室した。

「……なんなんだアイツ?」




後書き

第10話で漸く登場した本作オリジナルキャラクターの『フレイザード2号』さん。
今はまだ、溶岩魔人と氷河魔人に破邪の洞窟地下180階で死亡した女性の白骨と魂を融合して生み出された禁呪法生命体に過ぎず、本来の性格もまだまだ鳴りを潜めておりますが、この後はどんどん百合萌えの女性の同性愛(レズビアン)と化す……予定です。
と言うか、私如きの腕で百合萌えの女性の同性愛(レズビアン)をどこまで表現できるか解りません。でも、頑張ります。

キギロ
「おい!この空っぽおぉーーーーー!またボクが活躍するシーンを色々と端折ってくれたなぁーーーーー!?いいか空っぽ!次こそはめんどくさがらずにボクの大活躍をちゃんと細かく書けよ!って、おい!聴いているのか!?空っぽおぉーーーーー!?」

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