ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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アニメ版のハドラーの月命日が16日と決まった様なので(涙)……
その月命日にうぼのあん氏(https://www.pixiv.net/users/159931)の16年前に戻ってやり直すハドラー(https://www.pixiv.net/artworks/86959749)を参考に(パクった)、ハドラー様が魔法騎士レイアースの獅堂光の様な姿になるお話を作ってみました。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/8799426


第15話

ウロド決戦はアバン達の都合の悪い方向へと突き進んでいた。

キエサリ草の効果はゾーマズレディの凍てつく波動で打ち消され、フレイザード2号の極大消滅呪文(メドローア)とサルガメの尻尾は1ヵ所に留まる事を許さぬ凶悪さを誇り、ハドラーちゃんに至ってはウトロ決戦最大の要である『凍れる時間(とき)の秘法』を恐れて欠席である。

しかも、ウロドにやって来たハドラーちゃん側の精鋭はたったの3人。つまり、万が一の時はついて来たモンスター達を全滅させて魔王軍の戦力と兵力を削ぐ……すら出来ないのである。

「……さて……どうしたものか……」

 

一方、地底魔城でウロド決戦を観戦していたハドラーちゃんは、玉座に座らず立ったまま腕組みをしていた。

「どうするアバン?これで凍れる時間(とき)の秘法如きに時間を奪われ尽くされる事は無くなった。ここからが武人として、そして勇者としての試金石ぞ」

 

気付けはサルガメの姿が消えていた。

(あのデカブツが……いなくなった?)

ここでマトリフがサルガメの尻尾の事を思い出す。

(は!)

「下だ!アバン!」

その途端、サルガメの頭部が地面から突然生えてアバンを真下から頭突きしようとするが、マトリフの警告のお陰でギリギリで回避した。

そんなアバンを嘲笑うサルガメ。

「どうしたどうした!発見と判断が遅いぞ!せっかくこんなにも臭くしてやったのによ、まーだ眼に頼り過ぎて俺を見失ったかぁ!?」

その言葉に対して皮肉を言うマトリフ。

「言ってくれるぜ!そう言うお前だって、発見されねぇ様に地面の中を移動してるじゃねぇか!」

「ははは!眼に頼り過ぎた愚者は直ぐそう言う泣き言を言う。だが、この俺にはそう言う甘えは効かんぞ!」

そう言うと、再び地面に中に潜るサルガメ。

(目に頼り過ぎ……か。確かにこういう姿無き敵は、色々と厄介だよなぁ)

ならばと重圧呪文(ベタン)で地面を穴だらけにしてサルガメを引き摺り出そうとするが、

「おっと!アンタの相手は私だよ!」

フレイザード2号がそう言うと、左手から冷たく輝く息を吐いてマトリフを牽制する。

「ち!?」

「そう言う事そう言う事!このまま立ち止まらずに動き回るのが得策だよ!」

だが、アバンがちょこまか動き回ればアバンが凍れる時間(とき)の秘法の詠唱に集中出来ない。

(やはり……この布陣はアバンに凍れる時間(とき)の秘法を使わせない為の秘策!)

その間も、右手から灼熱の炎を吐いてアバンの立ち止まりを防ごうとするフレイザード2号。

(先ずは……あの可愛いお嬢ちゃんからだな)

「おーい!」

「ん?」

「そんな安全な所で攻撃したって、俺達には当たらないぜ?」

マトリフの意図が読めないフレイザード2号。

「……そりゃそうだろ。こうもちょこまか動き回られたら、そう簡単には当たらんだろ」

「そして弾切れでジリ貧……つまらん敗け方だぜ?」

このやり取りを挑発と判断したフレイザード2号は、

「なら……最初の奴をもう1発放とうか?そうすれば、今度こそ立ち止まっている余裕が無いを思い知るだろう……」

フレイザード2号は右手から吐く灼熱の炎と左手から吐くあまりの低温で凍った大気が輝くほどの猛吹雪を眼前で―――

(タイミングは超シビアだが……やるしかねぇ!)

 

マトリフが思い出すは、恩師バルゴートとの会話であった。

「危険?合体呪文(このわざ)が?」

「正確には、『危険な組み合わせがある』と言う事だ」

「どう言うこった?」

「2つの呪文を同時に使用するお前の才能には感心したが、1歩間違えば、合体呪文(そのわざ)はお前自身を滅ぼす」

マトリフは半信半疑で訊ねた。

「どの組み合わせが不味いってんだ師匠?」

そこで、バルゴートは微弱な氷系呪文(ヒャド)を発生させた。

「これにお前の火炎呪文(メラ)を重ねてみろ」

バルゴートの言ってる意味がますます解らなくなるマトリフ。

「?いや、火炎呪文(メラ)氷系呪文(ヒャド)は同時に使わねぇだろ。威力を殺しあっちまうし意味ねぇよ」

対するバルゴートは頑固に命じ続ける。

「いいから重ねてみろ。ただし、私の呪文とまったく同じ強さ(・・・・・・・・)に合わせるのだ」

マトリフは、訳の解らぬままバルゴートの微弱な氷系呪文(ヒャド)に微弱な火炎呪文(メラ)をぶつけてみた。すると、

(!?呪文同士が!?……混ざって……弾ける!)

そして……火炎呪文(メラ)氷系呪文(ヒャド)が相殺し合う時に発生する力に耐え切れずに吹っ飛ぶマトリフ。

(そう……かっ!)

ここで、ようやくバルゴートの言いたい事を正しく理解したマトリフ。

(温度を変化させるって点においては、2つの呪文は同質なんだ!だから完全に同威力で合成すると、両極の力が混ざってとんでもないモノに化ける!全てを……消滅させる様な別の呪文に!)

「お前は聞き分けのない弟子だ。口で言っても従わん。しかし、1を聞けば10を知る知恵もある。だから身体で覚えて貰った。2度は言わん。気を付けろ。いいなマトリフ?」

 

フレイザード2号の極大消滅呪文(メドローア)の原理を見抜いたマトリフは、フレイザード2号の眼前で行われている灼熱の炎と冷たく輝く息のぶつかり合いに火炎呪文(メラゾーマ)を強引に割り込ませた。

(しまった!?こいつ!極大消滅呪文(メドローア)の習得を困難にした炎と氷のバランスを……もう見抜いてる!?)

(こいつの氷と威力を合わせて……)

この事態に、フレイザード2号が汗だくとなる。

(不味い!極大消滅呪文(メドローア)が……暴発する!)

「弾けろおぉーーーーー!」

暴発した極大消滅呪文(メドローア)は、光の爆発となって上空を包んだ。

「う……うわあぁーーーーー!?」

そして、上空を包んでいた光が消えた途端、フレイザード2号の姿は無かった。

「悪ィ師匠、禁を破っちまった……」

フレイザード2号が姿を消したのを察したマトリフが呟く。

「この威力をいつでも思った時に出せりゃあ、この世に敵なんかいねえんだがなぁ……」

 

一方、バルトスの目の前にフレイザード2号が出現した。

かなり重傷の様である。

「フレイザード殿!?」

「無事か!?」

バルトスとガンガディアが心配する中、フレイザード2号が悔しそうに呟く。

「やられた。マトリフとか言うおっさん、極大消滅呪文(メドローア)の詳細を見抜きやがった。破邪の洞窟で合流呪文(リリルーラ)を発掘しなかったら、私はとっくにあの世だぞ?」

 

ブロキーナと戦っていたゾーマズレディは、極大消滅呪文(メドローア)の暴発を見た途端、臆して逃走してしまう。

「そっちも決着が着いた様だな?……さて……」

フレイザード2号の様子を視る為に頭部を地面から出していたサルガメに向かって牽制ついでの火炎呪文(メラ)を放つマトリフ。

「上の状況が気になったか?臭いだの眼に頼り過ぎなどとか言ってるが、偉そうに言ってるおめぇも仲間の安否を目で確認してるじゃねぇか」

一方のサルガメは余裕の表情を崩さない。

「あのフレイザードをもう退けたか……アイツの百合萌えの女性の同性愛(レズビアン)が暴走する要素は無かったんだがな」

しかし、サルガメは太陽を視た途端に表情が少しだけ歪む。

「チッ!」

(太陽はまだ光り輝いている!凍れる時間(とき)の秘法……まだ間に合うか?)

アバンもそれを察したのか、サルガメ……もとい、ハドラーちゃんを挑発する。

「本当に自分の力に自信が有るなら、こんなのに頼るより自分が赴いたらどうです……ハドラー!」

でも、サルガメはその挑発を一蹴する。

「ハドラー様が、ここに?貴様はまだその段階か?勇者の名を返上しな!」

とは言ったモノの、サルガメは既に1人だ。数の上では不利だ。

「まあ……まだまだ時間がある。もっと遊ぼうぜ!」

その途端にサルガメが地面の中に隠れるが、

「逃がすかよ!氷系呪文(マヒャド)

マトリフはなんと、大胆にも地面を凍らせようとしたのだ。

「何!?」

そこへ、ブロキーナが追い打ちの1発を凍った地面に向けて放った。

流石のサルガメも地面から出るしかなかった。

「こうやっておめぇを外に出しゃあ、おめぇは見落とし不能なデカブツよ」

でも、それでも余裕の表情を崩さないサルガメ。

「この俺が、もの凄く臭いのと地面に隠れるだけが取り柄とでも?笑わせてくれる……笑止千万!」

その途端、サルガメは粉々に砕け散った。

「自爆!?」

「いや……その割には距離があり過ぎる……」

マトリフが「これは罠だ!」と言いかけたが、時すでに遅く、無数の石礫がアバンを襲った。

「やはり自爆かな?」

「……だと、良いんだがな……」

が、さっきの無数の石礫がまたアバンを襲った。

「合体と分裂を繰り返すって訳か!?こいつ、やはり!」

「えぇ。アレは、禁呪法で生み出された人工生命体だ!」

「それで臭かったのか?魔王も傍迷惑な者を造るわい」

が、アバン達の予想に反して、無数の石礫は無数の蜂の群れの様に空を舞った。

「ガッハハハハハハ!どうだ!?地面に入れぬなら空中に入れは良いだけの話!流石の貴様だって空中を凍らすのは無理だろう?」

空中を自由自在に泳ぐ無数の石礫となったサルガメが自信満々に言い放つ。

「これでもう目は使えまい。俺の爆裂岩衝弾が勝つかお前の鼻や耳が勝つか……勝負だ!」

それには流石のマトリフも困惑し歯噛みする。

(そんな奥の手があったとはね。そうと解っていれば、あのお嬢ちゃんを追い出さなかったんだがなぁ)

マトリフはフレイザード2号が使用した極大消滅呪文(メドローア)を真似て何か撃とうとするが、サルガメがそれを阻む。

「アイツの極大消滅呪文(メドローア)の原理を本当に見抜いた様だな?が、極大消滅呪文(メドローア)を形成する速度はアイツの方が速い様だな!」

「原理が解っても体が動かなかったら意味無いか……歳は取りたくねぇなぁ」

その間もブロキーナがサルガメを殴ろうとするが、そのどれもサルガメの核に届かずにブロキーナの手を臭くするだけであった。

「やめとけやめとけ。これ以上俺の臭いをお前に遷したら、アバンの鼻が大混乱するだけだぜ」

マトリフの呪文もブロキーナの鉄拳も通用しない今、サルガメを止めるのはアバンの空裂斬のみだ。が……

(オーサムでの戦いの時の命中率は50%といったところ……どうする!?アバン!)

 

目を覚ましたロカは、ここが見慣れぬ部屋だと気付いてレイラに訊ねた。

「……レイラ。ここ……どこだ?」

「パプニカのお城よ。あの後、王族の使者の方が来て、私達をここに匿ってくださったの」

ここでふと自分が寝かされていた理由を思い出し、慌てて外を見た。

「そうだ!アバンは!?夜になっちまってる!もう、終わっちまった後なのか!」

だが、レイラの答えはロカにとっては予想外過ぎた。

「今は……夜じゃないわ」

そう言われたロカが慌てて外へ出て信じられない物を見てしまう。

「あ……ああっ……」

(アバン!)

 

空中を自由自在に泳ぐ無数の石礫と化したサルガメとの戦いの最中、アバン達が恐れていた事態が遂に始まってしまった。

「しまった!太陽が!?」

凍れる時間(とき)の秘法発動の必須条件である皆既日食が、ハドラーちゃんがウロドに到着する前に始まってしまったのだ。

サルガメの苦戦やフレイザード2号の重傷を観て目頭や歯ぐきから血が出る程苦悶し歯噛みしていたハドラーちゃんも、漸く始まってくれた皆既日食を観て少しだけ安堵した。

「そうだ!俺とお前の間に凍れる時間(とき)の秘法は不要!そうだろ!アバン!」

それと同時に……サルガメへの申し訳なさに苛まれていた。

(すまんなサルガメ……許せとは言わん!ただ、凍れる時間(とき)の秘法から逃れる為だけにサルガメ(おまえ)を造った俺は、お前に恨まれる資格が有る……それだけは確かだ!)

一方のアバンの焦りはピークを迎えていた。

「何とした事……このままでは、間に合わない!?」

そんなアバンの焦りをサルガメが嘲笑う。

「この期に及んでまーだ凍れる時間(とき)の秘法に頼るか……マジで勇者失格だな!」

そして、無数の石礫がまたしてもアバンを襲った。

「死ねぇー!お前の様な偽勇者の贋作如きが、ハドラー様の手を煩わせるまでもない!」

サルガメがハドラーちゃんの言い付けに反してアバンに止めを刺そうとした時、アバンの脳裏に何者かの声が響いた。

「見た目に惑わされちゃダメ。目を凝らして見た目の先に在る本質を視るの」

その途端、アバンは目を閉じて静かに剣を構えた。

(そう……でしたね?空裂斬は心の剣。サルガメ、私は確かに目以外の物を疎かにいていたのかも知れませんね?)

止めを刺す心算でアバンとすれ違ったサルガメが再び合体するが、

「ん?何でアバンが逆さに見える?どう言う事だ?」

よく視ると、サルガメの頭部が股間についていた。

「だははは!随分ご立派な物をぶら下げてるじゃねぇか!?」

マトリフに嘲笑われている中、サルガメは慌てて何かを探すが、

「あーーーーー!無い!俺の核が!俺の!」

アバンが持っている物を視て愕然とするサルガメ。

「探し物は……これですか?」

「!?俺の核が……何でこんな所に!?」

「これ、確かに臭かったですよ。お陰で、私は自分の耳や鼻を全く信用していなかった事を自覚しましたよ」

サルガメが恐る恐る空を視上げるが、皆既日食はまだ終わっていなかった。

「そんな……」

ハドラーちゃんに言い渡された使命を果たせない焦りからか、サルガメが命乞いを始めた。

「待て!このまま皆既日食が終わらず凍れる時間(とき)の秘法に頼りっぱなしでは勇者の名折れとは思わんか!?」

だが、アバンは一蹴する。

「思わん!」

「そんな事より、必中の必殺技を完成させて堂々とハドラー様に挑んだ方が勇者の名声を保てるとは思わんか!?」

「確かに私の必殺技(スラッシュ)も刀殺法もまだ完成してはいない。今、この場で平和を手に入れるには、凍れる時間(とき)の秘法しかなかった……」

サルガメはアバンの言い分に混乱し困惑しながら問いを続ける。

「なぜそこまでして汚名や酷評を欲しがる!?凍れる時間(とき)の秘法が生み出す汚点の数々がお前に何をしてくれる!?」

対するアバンは真剣な眼差しで力強く答える。

「私は……大切な仲間が新たな命を授かった事を知った。未来を守る為の勇気と決意を神から授かったと思った。だから……お前如きに立ち止まっている暇は無いのだ!」

そう言うと、アバンは躊躇無くサルガメの核を斬った。

「空裂斬!」

サルガメの核が真っ二つに割れて砕けた。

「ぐぎゃあぁーーーーー!」

(頼む……早く!早く終わってくれぇーーーーー!)

だが、サルガメの願い虚しく、皆既日食はまだ続いていた……

 

サルガメの戦死を察したハドラーちゃんは、凍れる時間(とき)の秘法への恐怖とトラウマに耐えながらの出撃を決意しようとするが、ガンガディアとバルトスに抱えられたフレイザード2号が停めに入る。

「待って!私を修復してくれ!そうすれば、極大消滅呪文(メドローア)で―――」

その時、謎の声までハドラーちゃんの出撃を止めようとする。

「その必要は無い。皆既日食はもう直ぐ終わる」

その声に不気味がるガンガディアとバルトスだが、ハドラーちゃんは寧ろイライラが更に増した。

「また俺の失態を嘲笑いに来たが……大魔王バーン……」

「何と!?これが大魔王バーン」

異元扉が見せた『ピラァ・オブ・バーンに消される地上界』を思い出したフレイザード2号が更に叫んだ。

「私を修復してくれハドラー!このままじゃ死んでも死にきれない!頼む!私を戦わせてくれ!」

そんなフレイザード2号を説得する異元扉。

「あかんて!別世界で鍛え直すんやなかったんか!?」

が、大魔王バーンはフレイザード2号の殺意が自分に向けられている事を知りながら冷静だ。

「安心せい。もう次は用意してある。ウロド決戦はもう直ぐ終わる」

さっきまで怒りに支配されていたフレイザード2号ですら、バーンの言葉に首を傾げざるおえなかった。

「……どう言う意味だ……」

 

一方、ハドラーちゃんがウロド決戦に送り込んだ3人を全て退けたアバン達であったが、肝心のハドラーちゃんの到着が未だに遅れている事に狼狽えていた。

アバンが残念そうに見上げると、皆既日食が既に終わり始めていた。

「失敗……の様じゃのう……」

「ああ……あの臭いのしか来なかった時点で、予想は出来てたがな……」

残念そうに空を見上げるアバンをチラ見しながら、

「アバンの奴……この結果を絶対に納得しないだろうがな……」

そんな時、ある者の足音が響いた。

「ん?……誰だ?」

マトリフが振り返ると、そこには大魔王バーンの命令でウロドにやって来たガルヴァスが立っていた。

その事実にハドラーちゃんは歯噛みした。

(バーンが言っていた『次』とはこいつの事か?今度はこいつを使い潰す気か?)

1周目のハドラーとは似て異なるガルヴァスの存在に困惑するマトリフ。

「……例の3人が逃げちまったんで、次はお前の番かい?」

マトリフの予想を鼻で笑うガルヴァス。

「私があの馬鹿の部下だと?なめられたものだな」

ブロキーナは既に臨戦態勢であった。

「だが……わしらの味方では……ないのであろう?」

「だとしたらどうする?」

「つまり、おぬしが魔王ハドラーの部下である証拠」

ガルヴァスは鼻で笑いながらハドラーちゃんを嘲笑う。

「あのアホの手下と見下した時点で、私の全てを見抜き損ねたと言っておこう……私とハドラーとか言うアホでは(ここ)のデキが違う」

自分の頭を右人差し指でトントンと叩くガルヴァスの余裕を視て、ガルヴァスの現在の立場を見抜いてしまうアバン。

「つまり、貴方はハドラーより弱い……と言う事なんですね?」

アバンの予想外過ぎる憶測に困惑し狼狽するガルヴァス。

「……は?……貴様……今何と言った?……」

凍れる時間(とき)の秘法を利用したハドラーちゃん撃滅作戦が失敗に終わりそうに対するイライラも加味しているのか、アバンはガルヴァスへの挑発に怒気を加える。

「貴方はハドラーより弱いと言ったのだ!」

流石にイラっとしたガルヴァスの叫びが木霊する。

「ぬ!?……貴様あぁーーーーー!後ろ盾の意味も知らぬアホ女と一緒にするなぁーーーーー!私の戦略……どこが歪んでるぅーーーーー!?」

ガルヴァスは怒りに任せて大魔王バーンから授かった鎧を上空に出現させる。

「なんだありゃあ」

少しだけ冷静になったガルヴァスが人を小馬鹿にしたかの様な笑みを浮かべた。

「くく、これは偉大なる大魔王バーン様より授かった最強の鎧……こいつの前では、貴様等も強風に屈する落葉同然―――」

「やはり弱いですね?」

「何!?」

「『偉大なる大魔王バーン』と言った時点で、貴方は既に大魔王バーンと戦う理由を失い、大魔王バーンに勝つ事を諦めている……そんな弱り切った心で魔王ハドラーに勝てると、本気で思っていたのか!?」

再びガルヴァスの怒気満載の叫びが木霊する。

「いい加減にしろ貴様ぁーーーーー!貴様は自分の事をあのアホ女と同じくらいバカだと見下しているのかぁーーーーー!?このバカ男がぁーーーーー!」

それに引き換え、ハドラーちゃんはあまりの恥ずかしさに赤面しながら狼狽えた。

「た!?何で俺が貴様に持ち上げられねばならんのだ?俺は貴様の敵だぞ!」

 

アバンに敗れて消滅寸前のサルガメは、ガルヴァスが召喚したデッド・アーマーを見て嫌な予感がした。

「待て……その鎧をどうやって動かす!?まさか、俺がこの中に入れって事なのか!?」

ハドラーちゃんも全く同じ嫌な予感をしていた。

「もう良いサルガメ!お前はもう頑張るな!眠って良い!」

だが、その嫌な予感は的中してしまった。

「お前の悪臭の暗黒闘気、即ち魔臭気と自らが化す決意が有るなら……与えてやろう」

対して、サルガメはハドラーちゃんの手下としての最期の意地を魅せる。

「それって、大魔王バーンの部下になるって事じゃねぇか!そんなの俺はごめんだぜ!」

サルガメの本心を悟ったアバンは、ガルヴァスの考えを曲げようと更なる挑発を加える。

「てっきり貴方がそれを着て戦うとばかり思ってましたが……やはりハドラーより数段下ですね?」

「黙れバカ男!プライドを捨てる勇気すらないあのアホ女と一緒にするなと言っただろ!?」

「かつてのハドラーなら、その場でその鎧を着て戦っていたでしょう……だが!『勝つ為ならプライドを捨てる』と言えば聞こえは良いが、貴方が実際に行っている行為は、『自分の手を汚さずに勝利する』と言う見栄えが悪過ぎる邪道だ!」

このアバンの挑発は、ガルヴァスの悪意の最後のトリガーとなってしまった。

「いい加減にしろバカ男!大魔王バーン様より授かりし最強の鎧の力、冥土で自慢するが良いぃーーーーー!」

そう言うと、ガルヴァスはサルガメを強引に魔炎気に作り変えてデッド・アーマーの動力源にしようとする。

「だあぁーーーーー!?やーーーめーーーろぉーーーーー!」

「なんて事を!?」

ハドラーちゃんは部下の制止を振り切りながら、サルガメの戦死を汚そうとするガルヴァスの暴挙を止めるべく異元扉をこじ開けようとする。

その時、アバンは剣を逆手に持ち直した。

「そんなにその鎧を着たくないのであれば……私が責任を持って廃棄して差し上げますよ……」

アバンの膨大な光の闘気を察したガルヴァスの頬に汗が伝う。

(何だ!?今の不安感は?)

一方のハドラーちゃんは、寧ろ勝ち誇ったかの様な笑顔を魅せた。

「完成だ。空裂斬を会得したことによってアバンのアバン流刀殺法は完成をみた。それはあの必殺技の完成をも意味する」

嫌な予感がしたガルヴァスはデッド・アーマーを盾にし、ダメ押しにダブルドーラと言うリビングアーマーまで召喚する。

が、ハドラーちゃんはガルヴァスの愚かさを嘲笑う。

「貴様が何者かは知らぬが、貴様の最大の敗因がアバンを甘く診た事である事だけは解った!」

 

大地を斬り

海を斬り

空まで斬った

 

そんなアバンが、ガルヴァス程度の小悪党如き簡単に斬れるに決まっている。

アバンが今から解き放つ必殺技がそれを証明してくれるだろう。

「アバンストラッシュ!」

アバンが放ったアバンストラッシュがデッド・アーマーとダブルドーラを切断粉砕してガルヴァスを驚かせた。

「何いぃー!?斬っ…斬っ…斬っ…斬られた!?斬られた斬られた斬られたぁー!そんな!?バカな!?信じられぬ!とんでもない異常事態だ!大魔王バーン様より授かった最強の鎧が負けたのか!?」

そんなウロドに拍手が響き渡る。ハドラーちゃんの幻が再びウロドに出現したのだ。

「素晴らしい。アバンよ、貴様のそういう顔が観たかった。やっと解放されたな?凍れる時間(とき)の秘法の呪いから」

アバンが残念そうに空を見上げると、皆既日食はとっくに終了し、太陽が勝者であるアバンを祝福するかの様に輝いていた。

「何故残念そうな顔をする?やっと貴様の御自慢のアバンストラッシュが完成したのだぞ?もっと喜んだらどうだ?」

アバンの勝利を茶化すハドラーちゃんが余裕を取り戻せば取り戻す程、それに反比例してガルヴァスの怒りが増す。

「くそぉー!!あってはならぬ事だ!人間の分際で!大魔王バーン様より授かった最強の鎧の頸をよくもー!おぞましい下等生物めが!大魔王バーン様は貴様ら100億人の命より価値がある!選ばれし!優れた!生物なのだ!」

「この期に及んで大魔王バーンの称賛とは……貴様、まだ何も解っておらん様だな?」

「黙れアホ女!貴様こそ、何時か必ず大魔王バーン様を裏切った事を後悔する日が必ず、必ずやって来るぞ!その時に大魔王バーン様の許に戻ってももう遅いからな!覚悟しておけ!瞬間移動呪文(ルーラ)!」

邪魔なガルヴァスがいなくなったところで、ハドラーちゃんがアバンに提案する。

「せっかくお互い凍れる時間(とき)の秘法に奪われた1年間を取り戻したのだ、お互い鍛え直すと言うのはどうだ?」

アバンが再び構えるが、マトリフがそれを制止する。

「止めときな。アレは伝言用の幻影……こっちの攻撃は当たらねぇよ」

「俺達は大魔王バーンを処刑するべく此処とは違う別世界で1年間鍛え直す。その後、ヴィオホルン山の中でお前達の到着を待つ。無論、俺の魔力が途絶えれば、俺に付き従っていたモンスター達は戦意と士気を失う。アバンよ、自分を視つめ直すには丁度良い時間ではないのかな?」

アバンは答えない。

だが、ハドラーちゃんは即決する。

「さらばだ。1年後にまた逢おう」

そう言い残してハドラーちゃんの幻は消えた……




勇者アバンが『凍れる時間(とき)の秘法の力を借りないと空裂斬を習得出来ないヘタレ』から卒業する為の戦いもこれが最後です。
これでようやく、ハドラーちゃんは心置きなく『平行世界で1年間修業する』が出来ます。
幽☆遊☆白書の蔵馬対玄武を模した心算でしたが、結局、ダイ対フレイザード1号をなぞっただけでしたけど……

キギロ
「それもあるが、ウロドをウトロと書き間違えていたぞ?本当に貴様は空っぽだなぁ」

あと、映画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 ぶちやぶれ!!新生6大将軍』からのゲストキャラである豪魔軍師ガルヴァスは、これからどんどん小物化させる……予定です。超魔生物時代のハドラーから視た魔軍司令時代のハドラーはどんな感じか的な感じで。
ま、117分以内に敵を2人斃せば良い『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』と違って39分以内に敵を7人倒さなきゃいけないだけあって、6大将軍やガルヴァスの説明が雑になるのも仕方ないですね?
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