ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第20話

クレオがちょくちょく訪れる異世界で色々と多くの物を得たハドラーちゃん達であったが、それがバルトスにある疑念を浮かばせる事になってしまった。

「で、この俺に訊きたい質問とは?」

「その前に……ここにいるのは私とハドラー様だけですよね?」

「……諄いぞバルトス。そんなに俺以外に聞かれたくない質問なのか?」

「と言うか……」

と、ここで考え込んでしまうバルトス。

「……どう言う事だ?」

「……我ながら、あまりに荒唐無稽なので、もし違っていたら恥ずかしい……と申しますか……」

少しイライラしたハドラーちゃんがバルトスを急かした。

「いい加減に勿体ぶるのはやめろ。言いたい事が有るならハッキリ言え」

バルトスは意を決して質問する。

「では……ハドラー様、人生を何度かやり直した事がありますか?」

「……何?」

その言葉に、今度はハドラーちゃんが驚く。

バルトスはハドラーちゃんの今までの行動から『強くてニューゲーム』の存在に気付き始めたのだ。

「何を根拠にそんな事を?」

「お叱りを覚悟で申し上げますと、ハドラー様の大魔王バーン対策は、らしくもない(●●●●●●)と思える程慎重だったので、もしや大魔王バーンに既に出遭ってるのかと?」

ハドラーちゃんは、もうこれ以上隠し通せないと判断した。

言われてみれば、大魔王バーンが本当にハドラーの地上支配の邪魔をしているのであれば、さっさと大魔王バーンを排除すれば良いだけの話である。

だが、ハドラーちゃんは直ぐには大魔王バーンを抹殺しなかった。それはまるで、ハドラーちゃんが大魔王バーンの強さと恐ろしさを熟知しているかの様に……

「……お前の言う通りの荒唐無稽なのだが、実はアバンに出逢うちょっと前に未来(●●)の記憶と能力を思い出してな……いや、これはもう未来の俺と入れ替わってると言っても過言ではない」

「あ、そうですか」

「意外と……驚かんし疑わんのだな?」

「何か……そんな気がしていましたので……」

「……そうか」

 

しばらくして、ハドラーちゃんは申し訳なさそうにとんでもない真実をバルトスに告げた。

「1周目の貴様を殺したのは……この俺だ」

「……そんな事だと思っておりました。私が本当に地獄門の警備を怠ったのであれば」

「意外と……驚かんし疑わんのだな?」

ハドラーちゃんが困惑する中、今度は自分が白状する番だと言わんばかりに自分の心情を語り始めるバルトス。

「大分前に人間の赤子を拾った事、お憶えでしょうか?」

「……ヒュンケルの、事か?」

その言葉に、罪悪感と未練が入り混じった俯きをするバルトス。

「我々は魔物、ヒュンケルは人間……本当はこんな事をしてはいけないと解っているのですが―――」

「……情が移ったか?」

ハッとするバルトス。

だが、バルトスの言い訳を阻むかの様に自分の考えを口にするハドラーちゃん。

「気にするな。貴様がヒュンケルを気に入っている……それだけの話だろ?」

「ハドラー様!?」

「それにだな、最近のヒュンケルの目が気になってな」

ハドラーちゃんの意外な言葉に驚くバルトス。

「気になる!?……とは?」

「最近のヒュンケルは、大分いい目をする様になった。ああいう目が出来る者は必ず強くなる。少なくとも、頑強な信念を宿している事は疑い様が無い事実だ。だから……迷っているのだ」

「迷う?」

「そうだ。ヒュンケルは今後も強くなる。だから、このまま貴様の許で育て続けるか、1周目同様ヒュンケルをアバンに返すか……迷うね」

相手が凡庸な人間であれば、捨て置いて良し。実際にそうして来た。

だが、1周目でアバンの使徒の強さとその理由を知ったハドラーちゃんに人間に対する傲慢な侮りは無かった。

それに、1周目のヒュンケルはバーン軍六大団長の1人である不死騎団の軍団長に任命される程の実力者。その才能は見過ごせない。

けど、ヒュンケルはなんだかんだ言って人間だ。その事実は、ハドラーを超魔生物に作り変えたザボエラの様な卑劣で邪な行いでもしなければ変えられない。

それはつまり、いずれバルトスはヒュンケルと別れなければいけない日が来る事を覚悟しなければならない事を意味していた。

「で……1周目のヒュンケルのその後は?」

「アバンがちゃんと回収したよ」

バルトスは安堵した。

少なくとも1周目ではヒュンケルはアバン達と共に生きているからだ。

 

だが、そんなバルトスとハドラーちゃんの会話を中途半端に聞いてしまったヒュンケルの心に焦りが宿ってしまった。

 

一方、クレオとぶくぶくはハドラーちゃん達の事について話し合っていた。

「私は、あの子達が悪い連中には見えなかった。少なくとも、この森に巣食う魔物達ほど凶暴じゃない」

「僕様もそう思う……だが、彼らはこことは違う異世界を侵略して支配しようとしている。その事実を無視は出来ない」

「解ってはいるんだけどね。でも、あのフレイザードちゃんとは良い女子会が出来そうだよ」

「その気持ちは解る。僕様だってガンガディアのお陰で多くの物を得た!」

そこへ、2人組の男女がやって来た。

「ぶくぶく、アンタの悩みを解く鍵はアバン=デ=ジニュアール3世……あの子達の世界征服計画を命懸けで潰そうとしている勇者様さ」

その声は……ウロド決戦でサルガメの爆裂岩衝弾に苦戦していたアバン達にアドバイスした者と同じであった。

どうやら、この平行世界は異世界に造詣が深い様だ。

だが!

「タタクにアフロちゃんじゃない」

「クレオ……もうそろそろ本名で言ってくれ」

どうやら、この2人はクレオが付けたあだ名を気に入っていない様だ。

格闘家の男性の方は、敵と対峙した時に「叩く!」を口癖の様に言うと言う理由だけで「タタク」と言うニックネームを付けられ、ピンク色のアフロが特徴の商人少女は見たまんまの「アフロ」と呼ばれている。

「で、その『デ』の字がなんだって?」

クレオの台詞に呆れる3人。

「……それ……ハドラーの前で言わない方が良いわよ?」

「と……取り敢えず、アバン=デ=ジニュアール3世の事を『アバン』と呼ぼう(笑)」

 

で、アバン達にアドバイスをした2人からアバンの事を聞かされたクレオとぶくぶく。

「つまり、彼らがハドラーちゃん達の野望を砕く英雄……になる筈だった逸材な訳ね?」

「それはそうなんだが……」

「どうした?歯切れが悪いな?」

2人の歯切れが悪い理由はアバンの危なっかしい性格にあった。

そう。

この2人もまた、ハドラーちゃん同様全てを捨ててまで『凍れる時間(とき)の秘法』を使用する事を快く思っていなかった。

「アバンって男、自己犠牲が強過ぎる」

「!?」

「少なくとも、アバンは魔王打倒によって得る名声や報酬には目もくれていない。寧ろ、世界平和の為なら自分すら捨てられる無謀さと仲間を見捨てきれない間違った優しさが同居してる、危ない奴さ」

戦い慣れしている2人にとって、アバンが仲間達にかける情けが仇になり、かえって多くの犠牲者が出てしまうのではないかと危惧する。

現に、1周目では地底魔城防衛の為に急遽生成されたグランナードの猛攻からレイラを庇ったせいでアバンが傷付き、危うくロカやマトリフが望んだ『アバンを無傷で魔王ハドラーの許に届ける』が叶わなくなるところであった。

ただし、

「ただ、ハドラーはそのアバンとの戦いに、アバンとは別の意味を見出そうとしている」

「逆?」

「ハドラーはもしかしたら、アバンとの戦いで得た物を後世に残そうとしている……俺にはそんな気がするんだ」

2人のそんな予想は、つまるところハドラーちゃんのアバンの使徒に対する未練であり、『もしアバンの使徒や竜の騎士(ドラゴンのきし)とまた戦えるのであれば、今度こそ何のしがらみも無く思う存分に戦いたい』と言う願望でもあった。

「それに、ハドラーは大魔王バーンとの戦いを控えている……だからこそ後世に何かを残そうとしているのかもな。自分達が残した物が、大魔王バーンの頸を斬るだろうと……」

 

そんなクレオ達の許にヒュンケルがやって来た。

「ん?この坊やは?」

「ヒュンケル。6本腕のスケルトンと一緒にいる子供だよ」

「因みに、ヒュンケルはそのスケルトンが命名した名前だ」

「だったら!俺も親が命名した方の名前で呼べよ!」

ぶくぶくは思った。

問題はそこじゃないだろ!と。

「で、そのスケルトンの子がこんな所で何やっている?」

それに対し、ヒュンケルは簡潔かつ真面目に答えた。

「俺、強くなりたいんだ!」

が、クレオ達から視れば、ヒュンケルはまだ子供だった。

「その歳でか?」

「何でまた?」

「ハドラー様が死んだら困るから」

ぶくぶくはいよいよ混乱してきた。

「ん?どうしてそんな事を言うんだい?」

一方のクレオにタタクと呼ばれている男は、ヒュンケルの目に命を賭ける覚悟を読み取った。

「護りたい物が、有るんだな!?」

それに対し、ヒュンケルは真剣な眼差しで答えた。

「……俺は人間だ。でも、父さんに拾われた」

「何!?」

「魔物は家族で、あの城は俺の家だ。でも、ハドラー様が死んだら父さんも……」

「……どう言う事だ?」

「あの6本腕のスケルトンの忠誠心がそれだけご立派って事よ」

が、クレオにアフロと呼ばれている女商人の言い分は違った。

「いや、それだけじゃない!バルトスは……ハドラーの呪いの力で生み出された者だ」

「つまり、ハドラーからの呪いの供給が断たれた途端!?」

ヒュンケルは残念そうに首を縦に振る。

「……そう言う事か」

アフロにとってはそこが悩みどころだった。

「つまり、本来ならバルトスは製作者であるハドラーの本性が反映された性格じゃなきゃいけない!でも……」

そこで、クレオがアフロが言いたい事を察してしまい、考え込む。

「傲慢で脳筋な超極悪独裁者が、フレイザードちゃんや6本腕のスケルトンの様なフレンドリーな善人を造るのか……って話よね?」

「そこなのよ。ハドラーに向かって下す評価を難しくしている点は」

だが、ヒュンケルの視線を気に入ったタタクにその様な小難しい事はどうでも良かった。

「それがどうした?俺の目の前に良い目をした漢がいる!それだけで十分だ!」

そして……タタクが高らかに宣言する。

「良いぜ!この『ア゙ュッナ・ヲャッエョ』が、責任もって遠慮なくお前を鍛え直してやるぜ」

ヒュンケルがタタクの本名を言おうとするが、

「アッ、あいた!?」

舌を噛んだヒュンケルを気遣う様にクレオがアドバイスをする。

「無理しないで。言えないと思ったら『タタク』でも大丈夫だから」

「『ア゙ュッナ・ヲャッエョ』だ!クレオ!いい加減ちゃんと俺の名前を覚えろよ!」

「読み難いのよ!アンタの真名!」

ぶくぶくもその点は同感だった。

「確かにな」

で、アフロと呼ばれた女商人も本名を名乗ったのだが……

「で、私の本当の名前は―――」

その途端、クレオが慌てふためいた。

「やめろぉー!」

「『オマン・コォイック』って言うの」

「おまんこぉいっく?」

ヒュンケルがオマンのフルネームを口にした途端、クレオが大袈裟に恥ずかしがった。

「きゃあぁーーーーー!アフロが、年端も行かない少年に『おまんこ』って言わせてるぅーーーーー!」

「クレオ……いい加減私の名前で遊ぶの辞めて」

「と言うか、日本に来た時は、お願いだからアフロって名乗ってよ!」

「何でよ!『オマン・コォイック』が私の本名なんだから、私が『オマン・コォイック』って名乗るのが普通でしょ!」

だが、クレオはヒュンケルにオマンの意見とは真逆な事を吹き込んでいた。

「ヒュンケル君、6本腕のスケルトンの前ではこのピンク色のお姉さんの事を『アフロ』って呼ぶんだよぉ。良いわね?」

「おい!普通に『オマン・コォイック』って呼べば良いだけの話でしょ」

くだらない事で口喧嘩を始めるクレオ、ア゙ュッナ、オマンの3人を観て呆れるぶくぶく。

「……相変わらず、締まらないメンバーだなぁー僕様達……」

 

一方、ロン・ベルクはハドラーちゃんから無理矢理渡された覇者の剣を研ぎ直していた。

だがそれは、ハドラーちゃんの依頼である『覇者の剣をアバン専用に改良してくれ』を全うする為ではけしてない。

悪魔の目玉越しに観たヒュンケルの覚悟に触発されての行動だった。

もしかしたら、ヒュンケルの存在と覚悟を知らなかったら、ハドラーちゃんから無理矢理渡された覇者の剣に触れる事は無かったかも知れない。

と言うか、どうもかつて造った鎧の魔剣や鎧の魔槍がヒュンケルを呼んでいる気がしてならないのだ。

「あのガキ、もしかしたら化けるかもな」




今回のお話は、
バルトスがハドラーちゃんが強くてニューゲーム状態である事に気付き(今頃かよ)、その事についてハドラーちゃん本人に質問する事に始まり、
ハドラーが強くてニューゲームを行う上である意味鬼門である『ヒュンケル』の事について話し合い、
そんな会話を聴いてしまったヒュンケルが自分も異世界修行に参加する事を決意する。
そして、ヒュンケルの覚悟に触発されてロン・ベルクの重過ぎる腰がようやく上がり、
強くてニューゲーム効果によって覇者の剣が2本に増えた事がようやく意味を持ち始める。

と言う流れなのですが……

新たに登場した本作オリジナルキャラである2人の名前……だいぶ遊び過ぎましたね(笑)

クレオがその2人に『タタク』や『アフロ』などの渾名を付けているが先行したのですが、後で考えると、苦楽を共にした仲間の本名をちゃんと呼ばないのは失礼に値するだろうと考え、その理由を考えたのですが……

格闘家(男)の方は『ア゙ュッナ・ヲャッエョ』が読み難いから、敵と対峙した時に「叩く!」を口癖の様に言うから『タタク』と呼び、

商人(女)方は『オマン・コォイック』が卑猥に聞こえるから、外見的特徴であるピンク色アフロをもじって『アフロ』と呼ぶ。

我ながら、苦楽を共にした仲間の本名を呼ばない理由としては弱過ぎますね(笑)?

『オマン・コォイック』は兎も角、『ア゙ュッナ・ヲャッエョ』の方はちゃんと呼んであげればいいんじゃないかと……
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