ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第22話

ハドラーちゃん達が異世界修行に没頭している間に世界はどう変わったのかを確認する為に派遣されたオマン・コォイックとガッルールは、デルムリン島を離れてホルキア大陸に到着した。

本当ならヴィオホルン山内に建造した地底魔城の様子を視に往きたい処だが、

「今はよそう」

「何でだよ!?」

「その冷静さがだよ」

地底魔城を乗っ取ったとされる白いスカイドラゴンは、間違いなくクレオ達と浅からぬ因縁が有るとガッルールは判断。後ろ髪を引かれる思いながら地底魔城の調査を後回しにしたのだ。

(ハドラー様がお戻りになられた後の最初の仕事は……地底魔城の奪還になりそうだな)

ガッルールが地底魔城の今後について思案していると、オマンがツッコむ。

「で、この大陸では何を視に往く気だ?」

地底魔城を調査する事が出来ないとなると、ホルキア大陸での残りの調査はガンガディアの気掛かりになっているアレしかない。

「ヨミカイン遺跡だな。そこにはハドラー様がかつて使用しておられた図書館が在ったんだが、アバン一行に利用される事を恐れたガンガディアが沈めちゃってね。ガンガディアは内心『もったいない事をした!』と嘆いているそうだ」

「で、そのヨミカインが復活してないかどうかを確認するって事だな?」

と言う訳で、ヨミカイン魔導図書館跡地と化した湖に向かう事になったのだが、その道中で奇妙な戦いを目撃する。

「おりゃぁー!」

「おっとあぶねぇなぁ」

「……なんだアレ?」

どうやら、11歳くらいの男児がトゲだらけのヘルメットを被りながら盗賊風の男性2人に頭突きを見舞おうとしているが、男性2人は嘲笑いながら避け続けていると言う構図の様だ。

「……どうする?」

オマンは完全に呆れていたが、一方のガッルールは男性2人の背中に生えている翼が気になった。

「……気になる事がある」

が、オマンはそんなガッルールを茶化す。

「確かにあの2人の態度はムカつくけど、それやったら正義側だぞ」

でも、ガッルールはやっぱり背中の翼が気になるので、目の前の喧嘩に割って入る。

「待て!」

「ん?」

「お前達、何者だ?」

その途端、2人はガッルールを嘲笑う。

「誰だだってよぉ!笑える、笑えるぜぇ!アーハッハハハハハ!」

「見て解んねぇのかよ?それとも、目ん玉腐ってんのか?ギャハッハハハハハ!」

最初は不干渉の心算だったオマンも、この態度には怒りを覚える。

「何か……腹立ってきたな」

それでも、ガッルールは彼らの正体が気になるを辞める事は無かった。

「あっそ。つまり、相手を名乗らせたいのであれば、こっちが先に名乗れと?」

「あ?」

「解った。名乗ろう。僕の名前はガッルール。ハドラー様に仕えるアニマルゾンビで、ハドラー様の指示で進化の実を毒味した身だ」

その途端、2人は大爆笑!

「ダァーーーーーハハハハハハハハハ!誰が出てきたのかと思って一瞬驚いたが、なんとあの負け犬ハドラーの手下風情だったとはな!」

「ギャァーーーーーハッハハハハハ!逃げぞこないの落ち武者が、俺達猛禽人(エンジェル)に取って代わろうとは片腹痛いわ!」

ガッルールは彼らの言葉に驚く。

猛禽人(エンジェル)!?お前達は猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員なのか!?」

それを聞いた2人は更に大笑い。

「はぁ?俺達だけ(・・)猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員だと……馬鹿かお前?」

「本来なら、お前達も猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員なんだよ。そんな常識すら知らねぇのかよ?バッカでぇー!」

その言葉にオマンが困惑するが、一方のガッルールは至って冷静だった。

「なっ!?……どう言う事だ?それは?」

「つまり、この地上界は既に猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の所有物だと言いたいのか?偉大なるハドラー様や憎き大魔王バーンを差し置いて」

2人は更に笑おうとしていたが、ガッルールはもう彼らに質問する意味は無いと判断し……その拳を猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員と思われる2人の顔面にめり込ませた。

「お前は本当にば―――」

「バカどもが……邪魔さえしなけりゃ生かしといてやったのに……だが、もうただでは済まなくなっちまったぜ!」

2人にとっては予想外の攻撃だったのか、ガッルールのパンチを喰らった方もそれを観ていた方も完全に困惑していた。

「貴……様……本気で天空神ゼウス様に歯向かう気か?この地上の真の支配者である天空神ゼウスを―――」

「この僕を勝手に貧弱賊軍風情の猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の負け犬扱いした事もだが、それ以上に!テメェらみたいな屑野郎が偉そうにハドラー様を侮辱しやがった事が!最高に許せねぇッ!」

そこからは、蹂躙だった。

1粒で200万年分の進化を齎す進化の実は、1匹のアニマルゾンビを猛禽人(エンジェル)と戦える程の強豪魔物に生まれ変わらせたのだ。

しかも、2人の猛禽人(エンジェル)はハドラーちゃんへの誹謗中傷を遠慮無く言うと言う名のダメ押しまでして、自分の寿命を自分自身の手で縮めてしまったのだ。

これでガッルールが圧勝しない方が変なのである。

 

灰燼に帰した2人の猛禽人(エンジェル)を背にするガッルールの鬼気迫る表情に、オマンは先程2人の猛禽人(エンジェル)と戦っていた子供の方を向く。

「あっ!……えーとぉー……怖かった……よね?」

確かに例の子供は尻餅をついていたが、直ぐにこのままではいけないと思ったのか、すくっと立ち上がり、オマン達に偉そうに説教を始めた。

「……はっ!いけないいけない。助けてくれた事には感謝の意を示そう。ありがとう。だが!君達には致命的に足りない物が有る!」

少年の「足りない」発言に敏感に反応するガッルール。

「ん?足りない?」

オマンが慌てる中、少年は臆する事無く何が足りないのかを説明する。

「確かに貴女方は強い。正に触れる事さえ叶わない程に。でも!故に大事な事を君達は疎かにしている!」

ガッルールは「大事な事」に反応してクールダウンする。

「足りない?僕のどこが間違っているって言うんだい?」

「それは……防具だ!特にその頭!兜無しで何が起こるか解らない戦場に出るなんて、死にに逝く様なものだ!」

言われてみれば、確かにガッルールは普段着と呼べる程軽装だ。これでは、何も知らない者は戦いに赴くと言っても信じてくれないだろう。

「……」

オマンは長い時間考えたが、確かに言われてみればと、長い時間かかって漸く理解した。

「……確かにな」

しかし、ガッルールは兜を被る事を嫌がる。

「嫌だぞそれ。そんなの被ったら、耳が塞がっちゃう」

それを聞いた少年が残念そうに言う。

「いるんだよねぇ。そうやって自分の髪形を気にして兜を拒絶する奴。いただけないなぁ」

が、少年は何かを想い付いて表情が明るくなる。

「だが!そう言う文句を高性能でねじ伏せれば良いのだ!」

とここで、オマンはトゲだらけのヘルメットの意味に気付いて呆れた。

「それで、そのけったいなヘルメットを被ってるって訳ね?」

けど、少年はそれを悪口とは思っておらず、寧ろ、

「よくぞ気付いてくれましたぁー。先ほど言った通り、兜は髪形がどうとか言う不届き者の屁理屈をねじ伏せる程高性能にならなくてはならない。で、そこで僕は考えた。今の兜達に何が足りないのかを!」

ますます呆れるオマン。

「で……出した答えが、それか?」

「そう!今時の兜に足りない物……それは、攻撃力!」

オマンとガッルールは完全に呆れ果てて何も言わなくなってしまった。

「ただ頭を護るだけでなく、ちゃんと攻撃も出来る兜が誕生すれば、必ずや兜の地位や株は必ず上がる!間違いない!」

正直間違いだと思ったオマンだったが、その事を口にする事は無かった……

 

その後、ヨミカイン遺跡に向かって歩き始めたオマンとガッルールは、先程の少年の馬鹿さ加減について話し始める。

「兜に攻撃力を!……ねぇ……アンタはどう思う」

「脳味噌が振り子の様に揺れそうで嫌だなぁ」

「逆効果になると?……まあ、解る気がするなぁ」

「それに、そう言うのが無くても、帽子や兜は耳が塞がっちゃるから嫌だ」

今度はガッルールの意見に呆れるオマン。

「……そう言う兜軽視がああ言う馬鹿を生む切っ掛けじゃないの?」

「あんなの絶対に若気の至りだよぉ!ちゃんと考えれば、アイツだって兜が無くても戦えるって解るよぉ」

だが、ガッルールの予想は外れた。

何故なら、先程の少年の正体が、パプニカ王国でハーフヘルムと掛矢の複合武器である『どたまかなづち』を販売していた商人の15年前の姿なのだから。

 

気を取り直してヨミカイン遺跡に向かうオマンとガッルールを突然落雷が襲った。

「何だいきなり!?避雷針みたいな物に落ちったって感じじゃないとすると……デイン系か!?」

オマンの予想を聞いたガッルールは、現存する竜の騎士(ドラゴンのきし)である竜騎将バランが遂にハドラーちゃん排除の為に動き出したかと焦る。

「バランか!?コソコソ隠れてないで出て来い!そんなコソコソは竜の騎士(ドラゴンのきし)の名が泣くぞ!」

だが、声は遥か上空から聞こえる。

「たわけ。偉大なる神がそう易々と下郎の前に姿を魅せると思うか?」

その言葉に、今度は大魔王バーンを思い浮かべるガッルール。

「はん!何が魔界の神だよ。偉そうな事を言ってはいるが、実体はただの臆病じゃないか?」

が、ガッルールの挑発は不発かつ不正解に終わった。

「魔界の神?違うな」

ならばと、オマンは単刀直入に訊く。

「バランでもバーンでもないなら、アンタは本当は誰だ!」

謎の声は少し考えたのち、あえて名乗る事にした。

「……本来なら、無知な下郎に聞かせる程価値が低い名前ではないのだが、お前達の絶望的な無知を修正する意味を込めて名乗ろう」

「勿体ぶらずに早く言えよ!」

「……本当に無知で無礼で下愚な下郎よ。だが、このわしの名を聞いてもその様な態度を維持出来るかな?」

鼻で笑うガッルール。

「大層な自信ですこと。姿を見せずに陰に隠れて電撃系呪文(ライデイン)で一気のクセに」

謎の声は気にしない。それは自信の表れだった。

「わしの名は『天空神ゼウス』!天空に住まいし地上を統べる神よ」

だが、ゼウスの予想に反してやっぱり鼻で笑うガッルール。

「あー、あのボケ老人の大魔王バーンの手下風情である猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)のボス猿かぁ」

でも、ゼウスは余裕を魅せる為に冷静を装う。

「やはり貴様は無知だな。そなたも本当は猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員のクセにか?」

先に冷静さを失って激怒したのはガッルールの方だった。

「貴様ぁーーーーー!この僕に濡れ衣を着せるのも大概にしろよぉー!それじゃあまるで僕がハドラー様を裏切ったみたいじゃないかぁーーーーー!」

しかし、ゼウスは自分勝手な言い分を曲げなかった。

「何を言っておる。地上界に生きとし生ける者全てがこのわしの配下。つまり、この世の全てが猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員である。確かに背中に翼が生えている人間を猛禽人(エンジェル)と呼んではおるが、それは猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の上位である証に過ぎぬ。何故なら、地上界に生きとし生ける者全てが猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員なのだからな」

今度はオマンが鼻で笑う。

「そう言う偉そうな事を言っている奴に限って、実際は大した事ないんだよね」

反面、ゼウスに『ハドラーちゃんを裏切った裏切り者』扱いされて焦るガッルールは、ハドラーちゃんから教えられた地上界の窮地について問いただす。

「そこまで言うなら、何故大魔王バーンの地上界破壊計画に対して何も言わない!?」

すると、ゼウスはそんなガッルールを鼻で笑った。

「愚か者。無知なハドラーの根拠無き見当違いな妄想を現実と勘違いするとは、それこそが貴様が無知である証拠よ」

その途端、『ハドラーちゃんを裏切った裏切り者』扱いされた事に対する焦りと怒りは一気に消滅し、呆れ果てながら真上を見るガッルール。

つまり、ゼウスは天空神や地上を統べる神を騙って偉そうにしてる割には、大魔王バーンについて何も知らないのだ。

無論、大魔王バーン主導の地上界破壊計画の事など全く気付いていない。それ故の自信過剰な台詞を恥かし気も無く堂々と言い放つゼウス。

「寧ろ、大魔王バーンもちゃんと自分が猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の一員である事に気付き、このわしをこの地上界の王であると認めておるわ」

自分を『ハドラーちゃんを裏切った裏切り者』扱いしたゼウスに対する憎しみを完全に失ったガッルールは、冷静に気にすべき事をゼウスに訊ねる。

「だとすると、勇者アバンはどうする?あ奴とて、地上界をどこぞの馬の骨が独占する事を嫌がる気概を持っている筈だぞ?」

それに対するゼウスの答えは……

「何を言っておる?勇者アバンはわしの物である地上界がハドラーなどと言う無知な愚者に汚される―――」

「はーいはーいはぁーい」

もうゼウスの自信過剰な意見を聴く必要が無いと判断したガッルールは、真上に向かって長い暗黒闘気を伸ばし続けた。

 

片眼鏡(モノクル)を付けた頭髪が少し薄い老人が目の前の水溜りを観ていると、その水溜りから黒い光の柱が突如出現した。

「な!?何じゃ!?」

老人が驚く中、黒い光の柱は中間で折れて地面にしがみ付く。

「何!?まさか……」

そして、黒い光の柱に引っ張られる形で水溜りからガッルールが飛び出してきた。

予想外の展開に驚く老人。

「何と!?全知の泉を破ったと言うのか!?」

先程までゼウスと対立していた筈のガッルールが何故こんな所にいるのか?

いや……当のガッルールはそうは思っていなかった!

「お前が無知な猛禽人(エンジェル)のボス猿……ゼウスだな?」

ゼウスと呼ばれた老人は、ガッルールの無礼に激怒する。

「貴様ぁー!天空神たるこのゼウスと目線を合わせるとは、身の丈を知らぬ無礼者が!」

だが、この一言だけでゼウスを知ったガッルール。

「なるほどね。この池に観たいモノを映し出して偉そうに上から目線か?……小物め」

ゼウスにとってはガッルールの様な地を這う生物と同じラインから対面する事事態屈辱なのに、ガッルールはゼウスを神と認めずに小物と決めつけたのだ。

だが、ガッルールにとっては前線で勇敢に戦う者達から遠い場所で偉そうに命令するだけの小物にしか視えない。

猛禽人(エンジェル)!」

ゼウスが叫ぶと、背中に翼が生えた人間達がわらわらと出現する。

でも、ガッルールは焦るどころか呆れた。ガッルールの暗黒闘気を登って来たオマンも同様だった。

「この群衆の後ろにいるおじいちゃんが……上から目線で偉そうな事を言っていたゼウスか?」

「そう。あの小さい小物がゼウスだ」

「殺せぇー!」

ゼウスの号令を合図に、複数の猛禽人(エンジェル)がガッルールとオマンに飛び掛かる。

すると、先端に算盤が付いている杖で猛禽人(エンジェル)を殴るオマン。

「行商を嘗めるなよ!こっちだってクレオの無茶振りに耐え抜いた猛者なんだぜ!」

それを観てニヤッとするガッルール。

「やるじゃん!」

そして、ゼウスを睨み付けるガッルール。

「こっちは『ハドラー様を裏切った裏切り者』と言う濡れ衣を着せられたんだ、汚名返上といかせて貰うぜ!」

 

で……歴戦の勇士となった行商と200万年分の進化を果たした女性獣人が相手では、上空からお見通し気取りで現場から離れていた猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)は強敵ではなかった。

「な!?」

自分の護衛を瞬く間に斃したオマンとガッルールに驚くゼウス。

「何故だ……下級とは言え猛禽人(エンジェル)だぞ!」

「だから何?」

そう言うとガッルールは闘気弾を放ってゼウスの左頬を傷付ける。

「次は狙う」

対するゼウスは杖でオマンとガッルールを指した。

「その杖から何が出るの?」

だが、オマンとガッルールの足下に水溜りが突然出現し、2人はその水溜りの底に落下する。

「何!?」

「このまま私達を転落死させる気か!?」

そこで、ガッルールは真下に向かって闘気弾を放ってその爆発をクッション代わりにした。

「あ……あぶねぇー……」

「し……死ぬかと思った……」

で、自分達はどこに落ちたのか確認しようとするが、目の前に浮かぶ異様な形の建物を視てガッルールが驚く。

「アレは……ヨミカイン魔導図書館!」

ガッルールの言葉にオマンが首を傾げる。

「って、それはガンガディアが沈めたんじゃなかったの?」

「その筈だけど……何で復活しているの?」

その答えを告げたのは……ゼウスだった。

「フハハハハハハハ!天空神たるわしの手に掛かれば、この程度の物を浮かべ、わしらの領域である天空に届ける事など、造作も無いわぁーーーーー!」

古代の呪文などが記されている書物が多数収められているヨミカイン魔導図書館をアバン一行に利用される事を恐れたガンガディアは、泣く泣くこの図書館を湖に沈めたと言うのに……それがハドラーちゃん達に楯突く無知で小さい小物如きの手に渡るとは……

我慢出来ないガッルールが再び暗黒闘気を真上に飛ばすが、

天候呪文(ラナリオン)

「な……」

電撃呪文(ギガデイン)!」

「何!?」

強大な落雷がガッルールを襲い、ゼウスの全知の泉を貫く為の暗黒闘気を途切れさせてしまった。

「ぐわあぁーーーーー!」

「ガッル!?」

その間も、ヨミカイン魔導図書館がゼウスの全知の泉に吸い込まれて行く。

幸い、ガッルールの怪我はかすり傷程度だったが、肝心のヨミカイン魔導図書館が猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)に奪われる事態を阻止出来なかった事が、ガッルールにとっては何より痛かった。

「くそおぉーーーーー!」

そして、それを嘲笑うゼウス。

「フハハハハハ!これが現実じゃ。わしと貴様等はこれだけの差が開いておるのじゃ。わしが天空から全てを見通し、お前らは地上で一生わしの姿を見る事無く生きるのじゃ。フハハハハハ!」

オマンは無礼千万な挑発をぶちかまそうと思ったが、全知の泉の万能性に酔って溺れているゼウスに対して何を言っても無駄だと判断して口を閉ざす。

 

結局、猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)にヨミカイン魔導図書館を奪われたガッルールが項垂れる。

「申し訳ありません……ハドラー様……」

そんなガッルールを慰めるオマン。

「大丈夫。ああ言うプライド過剰な小物は、自分の負けを帳消しにしようと手を打って来る筈だ。その時まで気長に待てば良い」

オマンの励ましの言葉に、ガッルールは力強く頷く。

「……ああ……あんな小物はハドラー様の手を煩わせるまでもない……僕が倒す!」

こうして、猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の首領格である『天空神ゼウス』打倒を誓ったガッルールの偵察旅は続くのだった。

 

かくとうパンサーのメスが現れた。

「……」

沈黙するガッルールを訝しむオマン。

「どうかしたの?」

「……何故だろう?なんか否定されている気がするんですけど」

オマンはガッルールの言っている意味が解らない。

「何に?」

かくとうパンサーのメスは、訳も解らずこの場を去った。




キギロ
「あの後、実際にドラゴンクエストに狼系モンスターがいないのか調べたら、『アニマルゾンビ』より『かくとうパンサー』のメスの方が【回復術士のやり直し】に登場する『セツナ』に近かったぞ。それに、『ダースウルフェン』も狼系モンスターだった。やはり貴様の予習不足だったなぁ空っぽよ」

それは兎も角、前話まではグループ名しか登場しなかった猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の詳細が今話からどんどん公開されます。
と言う訳で、猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の首領格である『天空神ゼウス』のイメージモチーフは、【ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク】の『オーディン』と【ドラえもん】の『神さまセット』です。で……随分偉そうな事を言っておりますが、こいつも大魔王バーンの地上界破壊計画については何も知りません。

また、ハーフヘルムと掛矢の複合武器である『どたまかなづち』は、実際にダイの大冒険に登場します。本当です。疑うのであればオフィシャルファンブックの203ページをご覧ください。
まあでも、ダイの大冒険って兜を装着しないキャラクターが致命的に多い作品なので、どたまかなづちの様な複合武器に頼る商人の気持ちも解らなくはないかなぁー……

それと……
これは私の個人的な感想の様なモノですが、本家本元の『勇者アバンと獄炎の魔王』はグランナードの戦死を契機に地底魔城編が最終決戦篇に名称を変えたようですが……この時のハドラーは既に黒歴史である魔軍司令時代に片足を突っ込んでいる状態なので、唯一玉座の間に到着したアバンを見てハドラーが何を言うのかが……今から不安です。
ガンガディアやバルトスを退けたアバンの頑張りをからかう余裕が有るならまだしも、アバンを止められなかった事をとやかく言ってガンガディアの忠誠、キギロの執念、グランナードの存在を無下にする真似だけはして欲しくないのですが……
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