ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第24話

ハドラーちゃんがアバンに渡すべくロン・ベルクに預けていたもう1本の覇者の剣を巡り、ハドラーちゃんが送り込んだ偵察員のガッルール、ロン・ベルク、そして猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の三つ巴の戦いが繰り広げられる!

 

……が、この三つ巴はロン・ベルクとガッルールの圧勝で終わろうとしていた。

「やはり、地位と名声に溺れた屑には、俺が作った武器は似合わんか!」

オマンも襲い来る猛禽人(エンジェル)を蹴散らしながら同意する。

「確かにな……武器が可哀想だ!」

散々ロン・ベルクに馬鹿にされた猛禽人(エンジェル)達は更に怒り心頭である。

「や……やろー、な……嘗めやがってー……」

でも、やはり力の差が大き過ぎたのか、ガッルールは場違いな要求をしてしまう。

「ちょっと静か過ぎるよねぇー。なんか激しい(やつ)、弾いてくれる人がいてくれたら良いけど……」

「ふざけるなー!」

怒り狂った猛禽人(エンジェル)達が一斉にガッルール達に飛び掛かる。

「怯むなー!突撃ー!」

だが、結果はさっきと同じであり、ロン・ベルクとガッルールにとっては遊びですらなかった。

「大層な肩書を並べ立てておきながらその程度とはな……やはりお前達の為の剣を作る気になれんな」

これにはドミニオンを名乗っていた猛禽人(エンジェル)も、悔しさと怒りで歯軋りする。

「ぬぅー……いくら第3位階9級だからって、偉大なる天空神たるゼウス様の配下たる猛禽人(エンジェル)にここまでの仕打ち……最早万死に値する」

その言葉にオマンはあっけらかんと訊ねる。

「救急?お前らが人助けする珠かよ?」

「そっちの9級じゃねぇ!階級の方の9級だ!」

その言葉にガッルールが飛び掛かりそうな勢いで訊ねた。

「階級!?お前ら愚か同士の中に差が有るって言う心算なの!?」

ドミニオンは激怒が頂点に達し過ぎて逆にクールになった。

「……よかろう……ならば、第3位階9級と第2位階4級の差……たっぷり教授して……くれるわ!」

ドミニオンが手にしていたメイスをガッルールめがけて勢い良く振り下ろすが、それを視たガッルールの驚き方はドミニオンの予想の完全に真逆だった。

「お!?……遅い!?」

ドミニオンがガッルールの驚き方に否を唱えようとした時には、既に勝敗は決していた。

(お……『遅い!?』?何その驚き方?……と言うか……目が……霞んで……)

目の前の結果に対し、ロン・ベルクが皮肉な質問をした。

「で、第3位階9級と第2位階4級の差とは何だ?」

ここで漸くドミニオンを倒すタイミングを間違えた事に気付いたガッルールが悲鳴の様な叫び声を上げた。

「わ……解りましぇん!」

 

ガッルールが覇者の剣がアバンの手に渡る事態を阻止しようとしたドミニオンを瞬殺した事で、ロン・ベルクの工房に平和が戻った。

「……なんか……お騒がせしちゃったねぇ……」

バツが悪そうなガッルールに反し、オマンはロン・ベルクの先程の太刀筋が気になっていた。

「と言うか、私達がいなくても勝てたんちゃう?あの猛禽人(エンジェル)共に」

「何故そう思う?」

「よう言うわー。それだけの腕を持っとるクセに」

ロン・ベルクは少し考えてからオマンに質問した。

「これだけの腕を持ってる奴が、何でこんな所で鍛冶屋を営んでいるのかが不思議か?」

ロン・ベルクに腹を読まれたオマンは少しビビった。

「まぁ……不思議と言われたら不思議……かもね」

ガッルールは、そんなオマンとロン・ベルクのやり取りを不思議そうに観る。

「ん?」

そして、ロン・ベルクは溜息を吐きながら自分が鍛冶職人をしている理由を軽く説明した。

「俺は元々、自分の腕に見合う武器に巡り合えなかった。で、無いなら作るしかないと考え……」

そこまで言ってロン・ベルクは今までの自分の行動を思い出し、言葉が詰まった。

「その様子だと、その自分専用の武器の方は……」

オマンのツッコミに、ロン・ベルクは恥ずかしそうに答えた。

「お前らの予想通りだ。俺に見合う剣が完成したら『星皇剣』と名付ける予定だが、お恥ずかしい話だ。そう言う意味では……」

そう言いながら床に転がっている猛禽人(エンジェル)達の死体をチラッと見るロン・ベルク。

「俺もこいつらと変わらんな……俺は腐りたくないから大魔王バーンの許を去ったと言うのに……」

ロン・ベルクの過去から予想外の人物が登場したので驚くガッルール。

「大魔王バーン!?」

「ん?知っているのか?奴を」

「知ってるも何も、ハドラー様はその大魔王バーン討伐が地上界制圧に必要不可欠だと仰ったんだよ」

ハドラーちゃんの地上界征服計画から予想外の人物が登場したので困惑するロン・ベルク。

「戦う気か?大魔王バーンと」

「戦うに決まってるでしょ!あんなの野放しにしたら、いつかこの地上界は跡形も無く……」

ガッルールのその言葉に、ロン・ベルクはハドラーちゃんの本気度を視た。

「……本気の様だな」

「ハドラー様の望みは地上界の支配であって地上界を消滅させる事じゃない。だからこそ、ハドラー様達は異世界で修業中なんだ。大魔王バーンを斃す為に」

ガッルール達やハドラーちゃんが退かない事を察したロン・ベルクは、ガッルールに1つアドバイスをした。

「なら、氷系呪文(マヒャド)を覚えろ。それが出来なければ、地上界は諦めろ」

そんなロン・ベルクの言葉に首を傾げるオマン。

「マヒャド?大魔王バーンはヒャド系の呪文に弱いのか?」

だが、ロン・ベルクの答えは違った。

「そうじゃない。もしもその地上界消滅計画の内容が俺の予想通りだったらの話だ」

その言葉の意味を察したガッルールは、あるとんでもない化物の名を口にする。

氷系呪文(マヒャド)なら、『黒の核晶(コア)』を止められるとでも?」

ロン・ベルクは鼻で笑った。

「フッ。そこまで解っているのなら、さっきのは余計な御節介だったな?」

ただ、オマンだけは何の事か解らなかった。

「黒のコア?何それ?」

 

黒の核晶(コア)に関する重大な情報を得たガッルールは、アバンに明け渡す予定の覇者の剣を再びロン・ベルクに託して工房を後にしようとしていたが、

「待て」

「ん?ハドラー様に力を貸してくれるの?」

「いや、もう1つだけ質問したい」

「質問?」

「ヒュンケル……とか言ったか?そいつ、どこで見つけて来た?」

ガッルールは、手を振り振りしながらその質問を否定した。

「いやいやいやいや。ハドラー様があんたに頼んだ仕事とは何の関係も無いから」

それを聞いてロン・ベルクは鼻で笑った。

「ハドラーと言う女、余程その勇者アバンがお気に入りの様だな?確かにあの男は今まで見て来た屑とは全くの別物だ」

「なら―――」

「だが、奴は覇者の剣を受け取らんよ」

ロン・ベルクの予想外な予想に困惑するガッルール。

「なんで!?」

だが、ロン・ベルクは驚く事じゃなかった。

「何で?……強いて言えば、あの男は武器に頼り過ぎる屑ではないからだ。あの男なら、どんな苦難も培った知恵と技で切り抜けるだろう」

ロン・ベルクの言葉に一応納得するガッルール。

「……なるほどね……流石はハドラー様に認められた勇者だわ」

「で、話は戻るが―――」

「ヒュンケルの事?あれはただの人間だよ」

ロン・ベルクは不思議そうに首を傾げた。

「人間……なのか?」

「そうは言われてもね。バルトスが制圧した町から拾った赤子でね、その時の赤子の顔を視ていたらどうしても殺す事も置き去りにする事も出来ず、そのまま拾ってきたんだって」

興奮して驚くロン・ベルク。

「そのバルトスと言う者、もの凄い拾い物をしたぞ!俺がかつて造った鎧の魔剣と鎧の魔槍がそのヒュンケルを呼んでいる!作った俺が言うんだ!間違いない!」

それに対し、ガッルールは必死にロン・ベルクを宥める。

「待て待て待て!ヒュンケルはまだ6歳だぞ!人間共を襲わせるには早過ぎるって!」

其処へオマンが見当違いなツッコミを入れる。

「何気に最後の方が物騒なんですけど……」

だが、ロン・ベルクの興奮は停まらない。

「なら、そのヒュンケルがたくましく成長したらここに連れて来てくれ!アイツになら、良い武器を作ってやれる!」

ロン・ベルクの話が永くなりそうだと感じたガッルールは、軽く空返事をしてその場を後にした。

(おいおい。あれは元々アバンの奴に渡す為に研ぎ直しを依頼したのに、このままだと、ヒュンケル専用の剣に生まれ変わりそうだぞ……バルトスになんて説明しよう……)

 

黒の核晶(コア)に関する重大な情報をハドラーちゃんに伝えようと異元扉のドアノブを握るガッルールだったが、

「おりゃ!」

ガッルールは何かを感じて異元扉を殴り、その勢いで異元扉が倒れた。

「おい!何やってんだ!?」

オマンが驚く中、ガッルールが倒れた異元扉に訊ねた。

「な!?何や今の!?」

「目が覚めた?」

異元扉はガッルールの問いに驚く。

「何言ってまんねん!?わてはいつも通りの―――」

だが、ガッルールは異元扉の異変を簡潔に説明した。

「そのいつもの五月蠅さが無かったじゃん。私に殴られるまで」

「な、なんやて?!何時からや!?」

「デルムリン島に到着した時には既に」

ここでオマンがハッとする。

「それって!……やはりあの白いスカイドラゴンは……」

「もしかして、アイツの事を言っとるんか?」

オマンのハッにツッコミを入れる異元扉にツッコミを入れるガッルール。

「そのアイツを地底魔城に招き入れたのはアンタ」

「わてが?何時?」

自分の推測が一方通行なのを感じて呆れるガッルール。

「自分が操られている事に気付いていなかった訳ね……」

「えぇー!?」

ガッルールは取り敢えず異元扉を開けて偵察旅の中間報告を行う事にした。黒の核晶(コア)に関する重大な情報を忘れる前に。そして異元扉が再び大魔王バーンに洗脳される前に。

 

そして、ガンガディアがガッルールから受け取った報告をハドラーちゃんに伝えた。

「元居た世界への偵察に行っていたガッルールから報告が入りました」

「報告?何が遭った?」

「どうやら、ロン・ベルクから黒の核晶(コア)の弱点を聴き出したらしく、氷系呪文(マヒャド)に弱いとの事です」

それを聞いたハドラーちゃんが赤面しながら頭を抱えた。

氷系呪文(マヒャド)だと?……俺は氷系呪文(ヒャド)が苦手なんだよ」

(ダイがキルバーンの悪辣な罠にかかって死にかけた時はほぼ火事場の糞力だったからな……)

それを聞いたクレオがふと何かを思い出した。

「それって、まるで爆弾処理で液体窒素を使う様な物じゃん」

「つまり、凍らせて爆弾の機能を封印する」

「で、更に爆弾を起動させる機械を凍結破壊する」

理屈は解るが、問題は誰が黒の核晶(コア)に向かって氷系呪文(マヒャド)を使うかだ。

その時、フレイザード2号が自信満々に答える。

「そう言う時こそ私の出番……溶岩の様にホットで、氷河の様にクール!炎と氷を操る女性の同性愛(レズビアン)!それがフレイザード2号!」

が、ガンガディアは冷静に突っ込んだ。

「全ての黒の核晶(コア)を1人でか?」

「それは……あ!」

「それに、大魔王バーンとて地上破壊を阻む側が黒の核晶(コア)を凍結封印させようとする事は予想するだろう」

「……その手は……あり得ますね……」

「それらを総合すると、やはり全ての黒の核晶(コア)を1人で凍結封印するのは無謀かと」

で、黒の核晶(コア)に向かって氷系呪文(マヒャド)を使う要因として、自ら立候補したフレイザード2号とぶくぶくの2人が候補に挙がったが、欲を言えばもう2~3人欲しい。

「訳を話せばマトリフも手伝いそうですが……」

改めて大魔王バーンとの戦いの難しさを知るハドラーちゃんであった……

 

因みに、異元扉に洗脳された事とロン・ベルクが覇者の剣をヒュンケルに渡しがっている事は伝えなかった。

異元扉の方は不安要素が多過ぎる事と、クレオが白いスカイドラゴンの正体を察してハドラーちゃんの異世界修行に付き合うを途中放棄してまで地底魔城に無策で乗り込む危険性が高い事が懸念されるからだ。

一方、ヒュンケルの方は完全にガッルールの私的な理由であり……バルトスへの言い訳が思い付かないから報告を先延ばしにしているだけである。




オマンとガッルールの偵察旅第3弾。
『第3位階9級と第2位階4級の差』がどうとか言っていたドミニオンも、自分の本名を名乗る暇すら与えられずに早々に戦死……
上から目線で高みの見物ばかりの猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)と天空神ゼウスの底の浅さが露見してきまし、た!
後はヒュンケルの行方ですけど、原作の方は人間側に戻れるチャンスを貰いながら憎しみに囚われ過ぎて自ら人間側に戻れるチャンスを捨て、後にその憎しみが勘違いだと判明して紆余曲折の末ようやく人間側に戻りましたが……
本作の方は……その点がまだまだ曖昧です(汗)♪

キギロ
「相変わらずの空っぽブリだな空っぽ」
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