ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第25話

ロン・ベルクからハドラーちゃんが預けた覇者の剣を奪おうとした第2位階4級猛禽人(エンジェル)のドミニオンを、無傷で軽ーく撃破したガッルールとオマンは、今度はパプニカ王国を偵察しようとした。

だが、

「いたか!?」

「いや、向こうにはいなかった」

「では、今度はあっちを探そう!」

パプニカ王国所属の魔法使い達に追われる身となってしまった。

「チッ!」

「ちじゃないよ!アンタが倉庫の中を調べる最中に変なおっさんを追いかけ回すから」

そう。

ガッルールとオマンがパプニカ王国に追われる身となったきっかけは、オマンがとある人物を危険視して尾行した事であった。

パプニカ王国に来た理由は、ガッルールがキラーマシーンの残骸が現在どうなっているのかを気にしただけだと言うのにである。

「どうするんだよ?多分、ガンガディアが送り込んだキラーマシーンの残骸はあの倉庫の中にあると思うが……アンタのせいで下手に近付けば、まーた余計は大騒動になっちゃうよ」

ぷくーっと顔を膨らませながら怒るガッルールに対し、オマンはどうしてもとある人物の邪な笑みを忘れる事が出来なかった。

「そんな事を言われてもなぁ……あの爺さんから臭いがするのよ」

「匂い?そんなの元犬の私が感じなかったのに?」

「いたか!?」

「いや、向こうにはいなかった」

「では、今度はあっちを探そう!」

ガッルール達を捜索中の魔法使い達を発見して慌てて物陰に隠れるガッルールとオマン。

「いい加減、腹が立ってきたな」

「で、どうする?悪役らしくあいつらを叩きのめして強引にあの倉庫に入る?」

「そりゃあ良いねぇ……って!そうせざるおえない状況にしたのはアンタでしょ!アンタが何とかしなさいよ!」

「ん?向こうから声がしなかったか?」

「気になるなら見て視るか?」

ガッルール達を捜索中の魔法使い達を発見して慌てて物陰に隠れるガッルールとオマン。

「おい犬!さっきの威勢はどうしたのよ!?」

「しょうがないでしょ!下手に騒いでハドラー様が不利になったら逢わせる顔が無くなるし」

結局、ガッルール達を発見出来なかった魔法使い達は別の場所を捜索しに行った。

「はぁー……取り敢えず余計な騒ぎは去ったな?」

猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)相手に毎回騒ぎを起こしてるくせにか?」

「あいつらは良いんだよ!どうせ、ハドラー様がお戻りになる前に私が壊滅させる予定だから」

「はいはい。そうですか」

パプニカ王国と猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の違いは何なのかを問いかけかけたが、ある人物の邪な笑みを思い出してしまったので訊きそびれてしまった。

「で、元犬の私が嗅げなかったのにアンタが嗅げた匂いって、どう言う意味よ?」

ガッルールのこの質問に、オマンはある人物の邪な笑みを思い出してしまった。

「そうそうそれ!私が気になったのは、アンタが偵察しようとした倉庫に入ろうとしたあのおっさんの事よ!」

「で、どんな匂いがしたって?」

「そう!アイツから臭いがしたのよ裏切り者(クーデター)の臭いが」

オマンの口から出た意外な言葉に、ガッルールの思考は一旦停止する。

「クーデター……」

そう。

オマンが気になっていた『ある人物の邪な笑み』とは、パプニカ王国に仕える司祭、テムジンの事であった。

このテムジン、前の時間軸においてレオナ姫の暗殺を企ててその罪をデルムリン島に暮らす魔物達に擦り付けようとした大罪人なのだ。

つまり、冴えわたるオマンの勘が、遂に前の時間軸の情報もキャッチしたのだ。

が、そんなオマンの予想をガッルールは大笑いしながら一蹴した。

「あははははは!無い無い!」

「何でそう言いきれる?」

「だって、今はハドラー様と大魔王バーンが地上を覇権と存亡を賭けて戦ってる時だよ。そんな時にこんなちっこい所で反乱を起こして人間共に何の得が有るって言うの?」

ガッルールの言い分は一応的を射ている。

つまり、全人類共通の敵が目の前にいるのに、何でそれでも小さき権力争いを続けなければいけないのか?

ガッルールはそう問いかけているのだ。

だが、

「その人間共を……あまり買い被らん方が良いぞ……」

何故かオマンの顔は深刻さを増していた。

 

一方、ハドラーちゃんが送り込んだ偵察員が直ぐ側まで迫っている事に気付かないテムジンは、ガンガディアがパプニカ王国に送り込んだキラーマシーンの残骸を見ながら邪悪な微笑みを浮かべた。

いや、残骸と呼ぶにはあまりに保存状態が良過ぎた。頭部さえ残っていればまた動き出すんじゃないかと思えるくらいに。

「しかし……これは視れば視る程凄まじい兵器ですな、あの時勇者様達がおられなかったらと思うと……」

「悪寒がする。か?」

キラーマシーンを調査していた部下達の深刻そうな顔を見て更に邪悪さを増すテムジン。

「もし……これが我々の敵ではなく、味方だったらどうする?」

テムジンの予想外の提案に驚く部下達。

「み、み、味方ですとぉー!?」

そして歓喜する部下達。

「もしそれが出来れば、魔王軍に一泡吹かせる事が出来ましょう!」

「早速実験に取り掛かります!」

こうして、嬉々としてキラーマシーンを引き抜く為の実験を始めたが、テムジンがキラーマシーンを引き抜く本当の理由に気付く者は1人もいなかった。

そう……誰1人としてパプニカ王国の味方になったキラーマシーンの刃がレオナ姫に振り下ろされるとも知らずに……

だが、前の時間軸で発生してしまいレオナ姫の命を奪いかけた悲劇は、突然倉庫に入って来た魔法使い達の報告により変な方向に向かい始めた。

「テムジン司祭!申し訳ございません!」

「ん?どうした?何を誤っておる?」

「この近くに不審な人物を発見したのですが、その後取り逃がしてしまい―――」

その途端、テムジンは顔面蒼白となった。

「馬鹿者!それを早く言わんか!して!その者の特徴は!」

「は。1人は狼の様な耳と尻尾が特徴の女格闘家で―――」

「狼の様な女だと!?まさか、魔王がこの兵器を取り戻しに来たと言うのか?」

「で、もう1人はピンク色のアフロが特徴の女商人でした」

「あー……そっちはどうでも良い。やはり問題は狼の様な女の方じゃ。もしかすると、奴はこの兵器を取り戻して再び魔王の配下として再起動させる気やもしれんぞ」

確かにそう言う予想が出来るのは無理も無い。

だが、テムジンにとって実際に厄介なのは、ピンク色のアフロが特徴と言われたオマンの方だった。

狼の様な女と揶揄されたガッルールは確かにパプニカ王国に残るキラーマシーンの残骸の行方を気にはしていたが、ハドラーちゃんの邪魔さえしなければ正直どうでもいい代物だし、破壊するにしたって必ずハドラーちゃんに伺ってから行う筈なので、即効的な危険性は無い。

一方のピンク色のアフロと揶揄されたオマンは、テムジンの裏切り者としての素質を正しく見抜き、隙あらばテムジンの野望を砕かんとする勢いであった。

 

で……

結局、追手の視界から消える形でパプニカ王国から追い出されたガッルールとオマンは、罪を擦りあうかの様に罵り合った。

「アンタがあんなおっさんに現を抜かすから本来の目的が果たせなかったでしょうが!」

「あんなヤバい奴を野放しにしろと言うのか!?裏切り要素満載の奴を!」

「ハドラー様がお戻りになられたら、そんな暇無いわぁー!」

「あんな腹黒に『人類共通の敵』なんて屁理屈が効くかぁー!」

「効くわ!ハドラー様が殺せと言ったらアイツ速攻で殺すから!」

その時、異元扉が開いて中からフレイザード2号が出て来た。

「黒の核晶(コア)氷系呪文(マヒャド)に弱い事を嗅ぎ付けたからもっと真面目に偵察旅をしているかと思いきや、こんな所でなんて醜態を晒している?」

「フレイザード!?」

「で、この醜態の訳を聴こうか?」

「元はと言えば!こいつが予定外の事をしたから!」

「この馬鹿犬があの腹黒の危険性に気付かないから!」

一度に同時に喋り始めるガッルールとオマンにタジタジなフレイザード2号。

「ちょっと待って!冷静にゆっくり説明して貰えるかな?」

で、

ガッルールがパプニカ王国を襲ったキラーマシーンの残骸が現在どうなっているのかを確認しに往ったが、その道中、オマンが気になる男性を勝手に尾行した結果、ガッルール達の偵察行動がパプニカ王国にバレて逃げ出した旨を……落ち着かないガッルールとオマンの早口な文句をどうにか聞き分けながらどうにか辿り着くフレイザード2号。

(私、ゆっくり説明しろって言ったわよねぇ!?)

「あー、解った解った!取り敢えず、パプニカ王国に奪われたキラーマシーンの残骸とパプニカ王国にいる危険人物をどうにかすれば良いんだな?」

「そう!それ!」

「そう!それ!」

「だから!……」

自分まで喧嘩腰になりかけたフレイザード2号は、一旦自分の頭を冷やして冷静さを取り戻す。

「……取り敢えず、ハドラーちゃんの意見を訊こう。そこからパプニカ王国に対する行動を決めよう」

しばらく、異元扉を開けて異元扉に話しかける形となったフレイザード2号。

そして……

「待たせたなガッルール!」

邪な笑顔を浮かべるフレイザード2号に対し、ガッルールは言ってる意味が解らない。

「待たせた?何を?」

「お前達は今まで偵察旅と言う自分を抑える行動しかしてこなかったが、今日は羽目を外していいぞ」

「は……はぁ……」

既に猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)相手に羽目を外しまくっているガッルールにとっては何を今さらな話だが、下手な事を言うとまた拗れるので黙った。

一方のオマンは、パプニカ王国に蔓延る裏切り者(クーデター)の臭いを一掃出来る口実を得て内心喜んでいた。

「つまり……悪役らしく振舞えと?」

オマンの言葉に気合いを入れ直すフレイザード2号。

「つまりそう言う事。パプニカ王国に奪われたキラーマシーンも、それを利用しようとしている不届き者も、どちらもぶっ潰すぞ!」

で、ここで〆ればそれなりにカッコイイのだが、ここでフレイザード2号の悪癖が顔を出してしまう。

「そして!全てを成し遂げた暁には!担当した女性同士で成功を祝う抱きしめ合いをば」

呆れるガッルールとオマン。

「お……おう……」

「そう……ね……」

それは兎も角、裏切り者(クーデター)の臭いを漂わす謎の敵テムジンを討伐すべく再びパプニカ王国に戻るガッルール達であった。

 

一方、魔界ではパプニカ王国に戻るガッルール達の姿を悪魔の目玉越しに観る大魔王バーンの姿があった。

「これで、ハドラーが異世界修行で得た力の一端が観られそうだな?」

その言葉にガルヴァスは焦った。

(何ぃ!?あれでまだハドラーは本気じゃないだとぉ!?こっちは未だにアバン如きの討伐すら成し遂げておらんのにぃ!)

ガルヴァスは元々、ハドラーに成り代わって地上界を支配する為に大魔王バーンに近付いたのに、このまま勇者アバンの抹殺に失敗し、更にハドラーちゃん達との力差が修復不可能レベルにまで広がれば、大魔王バーンがガルヴァスを見放す可能性が高まるのである。

だが、アバン抹殺と鬼岩城建設に忙殺されている今のガルヴァスに部下を送り込む余裕は無い。そこで……

(が……頑張れぇ!キラーマシーン!お前の手でハドラーの手下を一掃するのだぁー!)

……完全に他力本願である。

一方のゼウスは大魔王バーンの言葉に怒っていた。

(何じゃその態度は、第2位階4級猛禽人(エンジェル)であるドミニオンですら奴らの本気を引き出せないと言う気か!?)

とは言え、実際にガッルールはドミニオン相手に本気を出す暇無く楽々と完全勝利してしまった現実が存在するのである。が、

(そんな筈は無い!無理じゃ!第2位階4級猛禽人(エンジェル)であるドミニオンですら引き出せない物をあんな鉄屑が引き出すなど……)

と考えて、ふと悪辣なアイデアが浮かんだ。

(ならば、あの中に第1位階3級以上の上級猛禽人(エンジェル)を送り込めば良いだけの話ではないか!くっくっくっくー!)

こうして、パプニカ王国はしばしの騒々しい夜に巻きまれるのであった……




ガッルールとオマンの偵察旅も佳境に入り、フライング帰還をしたフレイザード2号を巻き込んでのパプニカ王国に奪われたキラーマシーンの破壊計画に移行します。

と、ここで重大となるのが裏切り者でおなじみのテムジン司教。
前の時間軸では、政敵レオナ姫を殺してパプニカ王国の実権を握ろうとした逆臣。デルムリン島にとっても自分達の評判が大幅に減衰する危険性を秘めた傍迷惑な極悪爺である。
とは言え、スピンオフ『勇者アバンと獄炎の魔王』ではキラーマシーンを手に入れて間もない頃な上に、何時悪徳賢者バロンに出会ったのかも現地点ではまだ不明。この段階でこの事実に勘付くオマンさんはある意味凄いですね。流石は商人の勘と言ったところでしょう。

で、そんな悪徳司祭のテムジンが本作ではどうなるかは、来月のお楽しみと言う事で。
ま、ほぼ『ざまぁ』な状態になるとは思いますが……
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