ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第26話

フレイザード2号が考えたキラーマシーン破壊計画は非常に単純で悪役らしいものであった。

まず手始めにガッルールがパプニカ王国で大暴れし、オマンがそれを針小棒大に伝えながら盛大に避難誘導を行う。

これにより兵士および民間人をキラーマシーンから遠ざけ、その隙にフレイザード2号が極大消滅呪文(メドローア)でキラーマシーンを消去すると言うモノだ。

そんな彼女達にとって嬉しい誤算だったのは、その作戦を猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)が妨害しに来てくれた事だ。

「グワッ!?」

「何だ!?人が紙屑の様に飛んで来たぞ!?」

「何をしている!?早く逃げろ!」

「何が起こってるんだ!?」

「いいから早く逃げる!巻き込まれるぞ!」

オマンの偽り(?)の避難誘導に合わせ、ガッルールが猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)と盛大に大喧嘩である。

「懲りないねぇ君達。大魔王バーンにそんなに肩入れしたって、何時まで待ってもこの地上界は手に入らないって言うのに」

「黙れ!これ以上自分の無知を曝け出すかぁ?我々猛禽人(エンジェル)こそが地上界を監視する現場監督―――」

偉そうな事を言っている猛禽人(エンジェル)にパンチ1発お見舞いするガッルール。

「そうやって地上界を上から目線で語って良いのはハドラー様だけだよ」

「ハドラー……あの嘘吐きの事か?」

「それは、大魔王バーンが企てる地上界を破壊する計画をハドラー様が言いふらしてるからかい?」

「ありえぬ事だ……偉大なる天空神ゼウス様の許可無く地上を破壊するなど、おこがましい事この上ないわ!」

ガッルールは呆れた。猛禽人(エンジェル)の見当違いな言い分に。

「じゃあ何でアバン達まで襲ってんだよ?ハドラー様だけなら、大魔王バーンの配下同士がくだらない権力争いを行ってるだけで済むけど、人間共に勇者と言われてチヤホヤされてるアバン達まで襲っては、誰も地上を見守る天の使者とは信じまい」

それを聴いた猛禽人(エンジェル)が大激怒する。

「ボケるな!大魔王バーンは愚かなハドラーと違って、我ら猛禽人(エンジェル)を地上を監視する偉大なる天の使いであると認めて―――」

ガッルールが頭を掻きながら呆れた。

「だとしたら……大魔王バーンは詐欺師の素質があるな?」

「貴様ぁ、天空神ゼウスが大魔王バーンに騙されていると嘘を抜かすか!」

「大魔王バーンの配下なのに地上界の支配者を気取ってるんでしょ?この矛盾に気付いていない時点で大魔王バーンに騙されてるのは丸解りでしょ?」

「黙れぇー!愚かで無知なハドラーの手先風情が……この第2位階5級猛禽人(エンジェル)ヴァーチャーたる―――」

もう話す事は何も無いと言わんばかりにガッルールが蹴り一閃!ヴァーチャーを軽々と吹き飛ばす。

「はい終わりぃ」

「馬鹿な!?ヴァーチャーは第2位階―――」

ガッルールが暗黒闘気を巨大な爪に変えて猛禽人(エンジェル)を次々と斬り裂く。

「それに、この程度じゃハドラー様には勝てないよ?」

氷系呪文(マヒャド)

予想外な方向からの氷系呪文(マヒャド)に驚くガッルール。

「へぇー……猛禽人(エンジェル)の中にも、それなりに戦える人はいたみたいね?」

ガッルールがわざとらしく感心してみたが、氷系呪文(マヒャド)を放った猛禽人(エンジェル)は当然納得しない。

「そのふざけた笑いは何だ?この第1位階2級猛禽人(エンジェル)ケルビムに対して行う態度としては……不合格!」

ケルビムはガッルールが今まで軽ーく撃破して来た猛禽人(エンジェル)とは一味違う様で、一撃で倒すには至らなかったが、それでもガッルールは不敵な笑みを崩さない。

「へぇー……これなら少しは遊べそうだね?でも、ロン・ベルクの剣より遅い!」

 

ガッルールがケルビムを引き付けている間にキラーマシーンの所に向かうフレイザード2号。

「あの2人、かなり派手に暴れてるみたいね?これなら―――」

「こんな所で何をしているのですかな?」

だが、キラーマシーンを保管している倉庫にいる兵士達はガッルールとケルビムが起こしている騒動に関わる気は無かった。

「おいおい、こんな所でサボっても良いのかな?街ではとんでもない化物が暴れてるって言うのに?」

フレイザード2号の質問に対し、テムジンは冷静かつ自信満々に答える。

「その点はご心配無く。パプニカ王国はそこまで惰弱じゃないのだよ」

そんなテムジンを視て、オマンの見立てが正しい事を察するフレイザード2号。

(なるほどね……これは確かに、こんな危ない奴にキラーマシーンを渡す訳にはいかないか)

なんなら、この目の前の不義ごと極大消滅呪文(メドローア)でキラーマシーンを消去してしまおうかと考えたフレイザード2号だったが、

爆裂呪文(イオラ)!」

「うお!?こいつら、そんなの使えるの!?」

 

キラーマシーンが保管されていると思われる方向から聞こえる爆発音に困惑するガッルール。

「爆発!?いや……この破裂音は極大消滅呪文(メドローア)じゃない!何で……こんなに街を破壊しているのに!?」

確かに猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の刺客を叩きのめしながら街を破壊するガッルールは、被害者であるパプニカ王国にとっては厄介極まりない存在の筈だ。現に、パプニカ王国の魔導士部隊が現地に駆け着けてるのにである。

既にグロッキーなケルビムが傷だらけの顔に邪な笑みを浮かべさせながら、想定外な爆発音に狼狽えるガッルールを嘲笑う。

「どうやら、貴様は思ったより影が薄い様だな?ま、その馬鹿さでは仕方がない事か」

「ふざけるな!」

ガッルールがケルビムにトドメのパンチを見舞おうとするが、ケルビムは真上に飛翔して回避し、そのままキラーマシーンが保管されていると思われる方向に向かって飛び去ってしまった。

「しまった!」

ガッルールがケルビムを追撃しようとするが、

「貴様ら!何処へ行く!?」

魔導士部隊に停められるガッルール。

「流石に目立ち過ぎたか……これのどこが影が薄いんだか……」

 

一方、テムジンの手下達の攻撃をいなしながら極大消滅呪文(メドローア)を撃つチャンスを窺うフレイザード2号だが、

「随分派手に撃ってくれるねぇ……前回のキラーマシーン襲撃で懲りたかい?」

それに対し、テムジンの手下達はフレイザード2号の変形する両腕に驚きを隠せない。

「何だその腕は!?」

「まるで炎と氷だ!」

「貴様、何者だ!?」

段々面倒臭くなってきたフレイザード2号は、盛大に名乗りながら極大消滅呪文(メドローア)を放ってしまおうと考えていると、空から突然氷系呪文(マヒャド)が降って来た。

「今度は何だ!?」

「新手か!?」

「あれが、猛禽人(エンジェル)

そう、ガッルールに敗北して逃走して来たケルビムがキラーマシーンを奪いにやって来たのだ。

「第1位階2級猛禽人(エンジェル)ケルビムたるこの私がこのまま敗けて帰るとなれば、天空が大恥を掻いてしまう……」

ケルビムがキラーマシーンをキッと睨むと、何かを察したテムジンが慌てた。

「貴様……それをどうする心算だ!?」

「決まっている……こうするのよ!」

ケルビムがアバンとロカが放った豪破一刀によって切断された筈のキラーマシーンの頭部に乗り込み、その魔法力で操作する。

「これは……なかなか高性能だがやはり猛禽人(エンジェル)の威厳には届かぬか……なら!」

一方、アバン達に破壊された筈のキラーマシーンが動いている事にフレイザード2号は嫌な予感をする。

「何であんなにこなれた動きを……アンタらまさか……」

キラーマシーンに施した改造を見抜かれたテムジンは苦虫を噛み潰したかの様な顔をする。

「っく!」

だが、驚くのはまだ早かった……

 

キラーマシーンが保管されていると思われる方向から発生する薄気味悪い光の柱に、ガッルールとパプニカ王国魔導士部隊が驚き恐れる。

「何だ!?あの神々しくも邪悪な光は!?」

「光の筈なのに……まるで悪意の塊だ!」

「まさか、例の兵器が再び動き出そうとしているのか!?」

魔導士部隊の予想外の言葉を聴いて怒り問い詰めるガッルール。

「動くだと!?キラーマシーンはアバン共に破壊された筈だろ!それが何で動く!?」

問い詰められた魔法使いは、観念して全てを話した。

「なるほどね……キラーマシーンで魔王軍を攻撃する為に……」

ガッルールはパプニカ王国の楽観的な見立てに呆れ頭を抱えた。

「でも、直したらまたハドラー様の配下として再起動する事を想定していなかったのかい?」

先程の邪悪な光の柱を思い出し、返答に困る魔導士部隊。

「考えていなかったみたいだね」

ガッルールは頭を掻きながら魔導士部隊に指示を出す。

「あんた等はさっさと避難誘導してな。こっから先は、力が足りない人はかえって邪魔だよ」

「何を偉そうに―――」

先程の邪悪な光の柱が消えると、中からハドラーちゃん達が知っているキラーマシーンとは明らかに違う金属の化物が浮遊していた。

「……まさかとは思うけど……あのキラーマシーンが猛禽人(エンジェル)の力でパワーアップした?」

その途端、ガッルールの指示通りに動く事を嫌がった魔法使い達が慌てて避難誘導を開始する。

「奴を国民に近付けるな!国民の避難経路を確保しろ!」

ガッルールはその隙にケルビムの力でパワーアップしたと思われるキラーマシーンの許へと急ぐ。

「パプニカ王国にとって……人間共にとっては最悪のシナリオだろうね!」

 

ケルビムの邪悪な魔法力を吸収したキラーマシーンは、異様な変形を行っていた。

「くっくっくっ……さあ、天空の使いたる第1位階2級猛禽人(エンジェル)ケルビムの、偉大で聖なる力を受けて更に強く成るが良い!」

それを観ていたフレイザード2号は、言葉と現実との乖離に呆れた。

「聖なる力?そんな禍々しい者のどこが?」

まず、特筆すべきは下半身を構成した4本足を廃し、尻尾のようなフレキシブルアームに変更した点。続いて頭部は額に当たる部分が縦長になってスライムのツノのようなものが2本生え、腰周りにもトゲ飾りが付いている。

さらに武装は左手のクロスボウを廃し刀剣に換装。右手も刀剣からメイスのような打撃武器に換装し、いわゆる二刀流の形態になったため白兵戦はむしろ強くなったといえる。また、クロスボウだった弓系武器の配置は尻尾に移行したことによって、理論上変則的な動きやそれによる多角的な射撃が可能になっている。

「キラーマジンガ……あの馬鹿で無知蒙昧なハドラーの支配から解き放たれ、猛禽人(エンジェル)の聖なる力を得て美しく蘇った聖なる聖人よ」

フレイザード2号は完全にドン引きした。

「この私が言うのもなんなんだけど、言ってて恥ずかしくない?」

「どこがだ?」

「さ……流石に引くわ……」

そんな中、テムジンの手下達が火炎呪文(メラゾーマ)連発でキラーマジンガを攻撃するが、

「あ!馬鹿!」

キラーマジンガの尻尾から複数の矢が放たれてテムジンの手下達が次々とやられて逝く……

「よせ!そいつはもう、お前の手に負える相手じゃない!」

フレイザード2号がテムジンの手下達に向かって叫ぶが、それが致命的な隙となってしまい、

「受けるが良い、天空から下る罰を!」

キラーマジンガのメイスをもろに受けてしまう。

「だばっ!?」

だが、墜落するフレイザード2号をガッルールが間一髪でキャッチする。

「フレイザード!?」

ガッルールの姿を確認したフレイザード2号が謝罪する。

「すまない。遊びが過ぎた様だ」

「お前が謝る事じゃない!本当に遊びが過ぎたのは、危険性を考えずに敵の力を我が物にしようとした……無茶な野望の方だ!」

 

第1位階2級猛禽人(エンジェル)ケルビムの禍々しくて邪悪な魔法力の影響で猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の手下と化したキラーマジンガを睨み付けるガッルールとフレイザード2号。

「撃てるよな?極大消滅呪文(メドローア)

「ああ。今日はその為に来たんだ」

ガッルールとフレイザード2号が邪な笑みを浮かべながらキラーマジンガに襲い掛かる。

だが、

「黙れ!これだけ天空に歯向かっておいて、今更生き永らえる気か?無礼千万!」

キラーマジンガの剣やメイスが次々と2人を襲う。

「こいつに接近戦は禁忌か?」

しかも、

「あの尻尾のせいで背後からの攻撃も禁忌だな」

すると、2人は何を思ったのかキラーマジンガの周りをグルグルと回り始めた。

そんな2人をケルビムは嘲笑う。

「何の真似だ?たわけめ!」

そして、ケルビムの嘲笑いに反応する様にキラーマジンガが2人を攻撃しようとするが、

「やーい!こっちこっちー♪」

「どうしたどうした?遅いぞー!」

肝心のキラーマジンガは2人の動きについてけずに空を切るばかり。

「あ、当たらないだと?当たれ。当たれ!」

だが、キラーマジンガの攻撃が2人に当たるどころか、2人の動きは更に速くなった。

「お?お?お!?」

そして、キラーマジンガを操縦するケルビムが完全に混乱しているのを確認したガッルールが咄嗟にキラーマジンガの正面に飛び掛かった。

「あ!?お!?」

完全に混乱していたケルビムがキラーマジンガに張り付いたガッルールを引きはがそうとキラーマジンガを暴れさせたが、その隙にフレイザード2号がキラーマジンガの右脇に回り込んだ。

「今だ!フレイザード!」

「言われるまでもない!」

フレイザード2号が極大消滅呪文(メドローア)の発射体制に入ったが、肝心のケルビムはそれに気付かず、それどころかガッルールを引きはがそうとキラーマジンガを暴れさせたのが仇となり、かえってキラーマジンガを傷付けてしまう。

「あー!くそ!離れろ!離れろぉー!」

「はいはい」

ガッルールがキラーマジンガを蹴ってキラーマジンガから離れた。

「ガッルールがこれだけ頑張って……この呪文で……これで負けたら……バカだぜーーーーーッ!極大消滅呪文(メドローア)!」

フレイザード2号の極大消滅呪文(メドローア)がキラーマジンガに迫るが、ケルビムは混乱したのか避ける素振りを見せない。

「何だ?その光の矢は?そんなものがこのキラー―――」

が、極大消滅呪文(メドローア)は容赦なくキラーマジンガを操縦しているケルビムごと完全消滅させた。

「そんな……馬鹿なぁーーーーー!?」

こうして、キラーマジンガは滅び、テムジンに奪われたキラーマシーンの破片の破壊任務は達成されたのだった。

 

パプニカ王は兵士達の報告を聴き困惑した。

「恩を着せる前に消えた?」

「はい。再び動き出した魔王軍の兵器を跡形も無く消し去り、まるで鳥の様な翼を背負った不審者達を全て打ち負かした者達は、我々に何かの要求をする素振りを見せず、それどころか我々が声を掛ける前に」

パプニカ王は溜息を吐いた。

「勇者アバン殿ですらこの私に謁見してくれたと言うのに……せめて一言礼を言いたかった」

この時、パプニカ王は気付かなかった。

ガッルール達のこの行動が、政権奪取を目論むテムジンへの最初の一撃となった事。そして、テムジンの野望に巻き込まれる筈だったレオナ姫とデルムリン島の運命を変える一撃になった事を。




邪臣テムジンの手に渡ったキラーマシーンを破壊しようとして猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の妨害を受け、天空神ゼウスの力でキラーマシン2に変異するとこまでは予定通りでしたが、更に上のキラーマジンガがいる事を知り、キラーマジンガにしました。
その上で、挿入歌を流したくなる展開にした……心算でしたが、相変わらずの歴然とした(ガッルール達と猛禽人(エンジェル))実力差を埋める事は、流石のキラーマジンガ様ですら無理だったようです。
ま、相手が量産型大魔王ゾーマを苦も無く倒してしまう程ですからね(汗)。

キギロ
「相変わらずの空っぽぶりだな。展開がハチャメチャだ」

ま、とにかく邪臣テムジンの野望の一角であるキラーマシーンの破壊には成功したので、デルムリン島の肩の荷も少しは軽くなった事でしょう。

キギロ
「何を言っているのだ空っぽ。まだまだ、悪徳賢者バロンと盗まれた魔のサソリが残っているだろ?」
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