ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第27話

ガッルールの偵察旅の表向きのラストはザムザだった。

前の時間軸のハドラーは、このザムザの長年の研究によって超魔生物へと生まれ変わっており、そんなザムザの忠義に報いる為にハドラーは最期まで憎きザボエラを殺さなかったのだ。

故に、ハドラーちゃんはザボエラからザムザを奪うつもりでいた。だが、肝心のザムザがザボエラの許を離れたくないと言うのであれば無理強いは出来ない……

で、ガッルールはとあるドッキリを仕掛けると共にザムザの現在の心境を偵察しに来たのだが……

「ザボエラよ!大魔王バーン様に仕える魔軍司令である我の命令を伝える!我が部下となり、生涯働くのだ!」

「黙れガルヴァス!この地上界を統べる天空神ゼウス様の命に従え!よいなザボエラ!」

ガルヴァスも猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)も相当追い詰められているのか、遂にザボエラに頼ると言う選択を選んだのだ。

(この様子だと、勇者アバンはまだ生きているとみて間違いないな……私はまだアバンに遭った事は無いけど)

一方のザボエラは、ガルヴァスと猛禽人(エンジェル)の焦りを感じ取っているのか、余裕の表情で『馬の耳に念仏』の様な感じで対応していた。

「豪魔軍師だか魔軍司令だか熾天使だか知りませんが、貴方方はものの頼み方を解っていない様子ですなぁー。ヒッヒッヒッ!」

(完全に嘲笑われているな?ハドラー様が視たら何と言うか……)

ガッルールがザボエラの足元を見る様な態度に不快感を感じている中、ガルヴァスの口調は更に強くなった。

「『命令だ』と言った筈だぞザボエラ!お前に拒否権は無い!従わぬならそれは、大魔王様に歯向かうのも同然!」

「横槍を入れるなガルヴァス!命令しているのは天空神ゼウス様の方だ!ザボエラよ!地上界で暮らすは天空神ゼウス様に従うと同義じゃ!解ったな!」

ガルヴァスも猛禽人(エンジェル)も上から目線でザボエラに命令するが、ザボエラは自らの魔力を開放して2人の威圧に対抗する。

「命令?お願いの間違いではありませぬ……のかな?」

「黙れザボエラ!この第1位階1級猛禽人(エンジェル)セラヒィムが直々に命令してやってるんだぞ!ありがたく従え!」

ガッルールは忌々しい猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)がザボエラ如きに弄ばれている様子に笑いを堪えるのに必死だった。

が、

(揉めろ揉めろー!もっと揉めろー!このままずっと観てたい光景だが、これ以上ハドラー様を待たせるのも悪い。そろそろ……始めるか)

ザボエラ、ガルヴァス、セラヒィムの3人の口論を観ていたザムザは、ガルヴァスとセラヒィムの後ろにいる何かに驚き、腰を抜かしながら尻餅をついた。

「!?……ううっ!ちっ……ちっ……父上!」

「ん?まさか……この2人程度に臆したか?」

「おい!私は大魔王バーン様の命で地上界の全権を預かる存在である魔軍司令となる男だぞ!」

「貴様あぁーーーーー!地上界に暮らす全生命体は天空神ゼウス様に絶対服従するが絶対の責務!大魔王バーンですらその定めに逆らえん!」

「つまり……お前達は大魔王バーンの本性を知らぬと視える」

「ん?……ん?……ん!?」

ガルヴァスともセラヒィムとも違う声が混ざっている事に気付いたザボエラが2人の後ろを見て視ると……

「ハドラー殿ぉ!?何時の間に!?」

「ハッ……ハドラー様!?」

ガルヴァスとセラヒィムは、ザボエラとザムザが何で急にハドラーがいると言い出したのか解らぬまま、2人共同時に後ろを向くと……

「どうしたザボエラ?俺の顔に何か憑いているか?」

ハドラーちゃんのこの質問に、セラヒィムは瞼を全開にし、ガルヴァスは盛大に鼻水を垂らした。

「ハドラあぁーーーーー!?今更何しに来たのおぉーーーーー!?」

(バッ!バッ!バカなあぁ!第1位階1級猛禽人(エンジェル)セラヒィムが1人であるこの俺が、こんなに馬鹿正直で馬鹿デカい気配に全く気付かないだとおぉーーーーー!?)

 

突然のハドラーちゃん登場に驚く4人に対し、ガッルールは命じる。

「何をしているお前達?ハドラー様の眼前ぞ。(こうべ)を垂れて蹲え。平伏せよ」

ガッルールがそう言うと、ザムザは土下座しガッルールは片膝をつき、ガルヴァスは滝の様な汗を掻きながら起立し、ザボエラは鼻水を垂らしながら腰が抜けて尻餅をついた。

「なんたる……恐ろしい超魔力!居合わせただけでも判る!逆らいようが無い!」

だが、ガルヴァスとセラヒィムはハドラーちゃんの突然の登場に驚いてはいるものの、平伏する気はいっさい無いので立ったままだ。

「何を言っているのだ?地上界で暮らすと言う事は、既に天空神ゼウス様に永遠の忠誠を誓ったとおな―――」

なので、ガッルールはセラヒィムに闘気弾を見舞った。

「ぐえぇー!?」

「立ち逆海老で足りると思ったか?ハドラー様の御前だそ。もっと()を下げろ!」

が、ハドラーちゃんはガッルールを片手で制した。

「は。出過ぎた真似をしました」

で、ハドラーちゃんがボディブローの様な冗談を言う。

「実るほどなんとやらだ。よほど頭が軽いと見える」

それを聴いたザボエラとガルヴァスは、恐怖のあまり既に汗だくになって鼻水を垂らしていた。

(これがハドラー……ウトロの時とは異質の強さ。圧倒的邪悪。互いの一挙手一投足が全て死因になりうる恐怖)

(息……息……息……息息息息息!)

だが、セラヒィムは怒りに任せてハドラーちゃんを攻撃した。

「態度がデカいのは貴様の方だぁー!貴様が世間知らず過ぎるから、そこの愚犬も愚かなのだあぁーーーーー!」

しかし、セラヒィムの攻撃はハドラーちゃんにまるで通用しなかった。

「断っておくが、ここにいる俺を倒そうとしても無駄な事だぞ。これは、俺が魔力で作った幻聴にすぎん」

「黙れ!天空神ゼウス様に歯向かう者……第1位階1級猛禽人(エンジェル)セラヒィムの命を無視する者……それが死なずして誰が死ねる―――」

ハドラーちゃんに吹き飛ばされたセラヒィムが何度も転がった。

「ま、確かにガッルールの気持ちも解るな?」

(……バカなのか?)

「ん?」

「ぐっ!」

ガルヴァスに近付くハドラーちゃん。

「お前……ウトロで会った気がするなぁ」

「う!?」

(ここでお辞儀が出来ない私は、やはり頭が軽いの……いやいやいやいや!違う違う!私は大魔王バーン様から地上界の全権を授かる定めの男!)

ハドラーちゃんへの恐怖心と大魔王バーンの配下の特権を最大限に利用したい欲望が、ガルヴァスの中で激しく激突していた。

(逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ逆らわなきゃ)

「何故……逆らう……」

「何?」

「どうあがいても大魔王バーン様に絶対に勝てぬ。今はバーン様が地上界に興味が無い故に一時的に自由を得ているに過ぎない。それは貴様が1番解っている筈だ」

「だから配下になるフリをして奴との間に縛りを作り、地上界の主導権を永劫得る。それが貴様が計略か?」

「他に手はあるか?無いであろう」

「解ってないな?」

その途端、ガルヴァスは前に突き出ていた筈の腹が後ろに引っ込み、前に引っ込んでいた筈の尻が後ろに突き出し、前に向かっていた筈の視線は床に向かおうとしていた。

(は!いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ!地上界の主導権が欲しくないのかガルヴァス!?大魔王バーン様に歯向かう事は地上界の支配を諦めると同意!なのに……私が大魔王バーン様に歯向かう者に頭を!?)

「ふんぬうぅーーーーーー!」

ハドラーちゃんはガルヴァスの気合い入れの意味を正しく理解して感心した。

「ほう。この俺の力を知ってなお、バーンに義理立てして忠義を尽くし、この俺に歯向かうか?欲望が恐怖心に勝ったか?」

ハドラーちゃんはチラッとザボエラを見た。

「かと言って目の前の者の実力を知らぬ無勘と言う訳でもない。立派よ。まっこと立派。どこぞの卑屈な尻軽とは大違いだ」

だが、ガルヴァスのハドラーちゃんへの抵抗はこれで終わりだった。頭を上げて起立するのが限界だったのだ。

「ぐ!……ぐぐ!……」

 

(やはりあの2人は駄目だったな……やはり大魔王バーンに直接仕えるのがさい―――)

ハドラーちゃんはザボエラに話しかけた。

「早速、主君の品定めか?」

「!?」

ハドラーちゃんに腹を読まれて鼻水を垂らしながら困惑するザボエラ。

「ザボエラ……貴様はやはりどの時間軸に行っても変わらぬのだな?」

そして、ハドラーちゃんはザボエラへの興味を失ってザムザの方を向いた。

「そう。今俺はこことは別の時間軸に引き篭もっている最中だ。この俺からこの地上界を永遠に奪おうとしている、忌々しい大魔王バーンに歯向かう為にな」

「……別……」

「つまり俺は異世界で修業をしている。その最中、俺は200万年分の成長と進化を齎す進化の実を食べた。俺の肉体は今、最強の力を備えた者に改造されようとしている」

ハドラーちゃんの説明に、ザムザもザボエラも驚く。

(200万年分!?)

(異世界修行じゃと!?)

「嘘だと思うなら、そこにいるガッルールを視よ。これは一見すると魔族の娘に見えるが、実際は進化の実を食べて200万年分の進化を果たしたアニマルゾンビよ」

ハドラーちゃんに名指しされたガッルールは、片膝をついた状態のまま再び頭を下げた。

(こ!?……これが?)

(どこがアニマルゾンビじゃ?)

「だが、その進化の実は気まぐれでな、必ず手に入ると言う保証は無い。でも、ガッルールの血と他のアニマルゾンビの血を比べれば、超魔生物の研究に何らかの役には立つ」

ハドラーちゃんに腹を読まれて困惑するザムザ。

(何故それを!?)

「どうだザムザ?俺と一緒に来るか?」

ハドラーちゃんがザムザをスカウトしようとした時、ザボエラが不必要な横槍を入れた。

「待たれよ」

「ん?」

「わしはザムザの親じゃ。つまり、ザムザの未来に関する選択権は―――」

「チッ!」

ハドラーちゃんは不機嫌そうに舌打ちをしながらザボエラに質問する。

「親とは何と書く?」

「はっ?」

ハドラーちゃんの腹が読めないザボエラは、意味不明な展開に対してイライラしていた。

「何を言っておるのじゃ!子は親に逆らえぬ者!子が親に逆らう事など―――」

「いや……解ってないな!」

意味が解らずにいるザボエラに対し、

「親とは木の上に立って見ると書く。ノコノコと木から降りてまで子の巣立ちを邪魔する親がどこにある!」

と一喝した。

「じゃが……結局子は親には逆らえぬ―――」

「何も取り立てて騒ぐ事ではない。父は子を愛し、また子に愛されると信ずる方がおかしいのだよ。誰もが1匹の獣だ。それぞれの理由で牙をむくのが本来の性だ。それを恐れて子の牙を抜けば、その子は他の獣の牙にかかるだけだ。親に叛く牙も持たぬ男に何が出来る」

ハドラーちゃんの答えは、乱世ならではの特殊なものに聞こえる。だが、子が乗り越えるべき最初の壁、それが両親である事は今も変わらない。

そう……ザボエラを超える策略家になる為には!

「それに、恐怖心に屈する程小さい欲望が示す忠誠は忠義ではない。卑屈な尻軽よ」

そして、ザムザが心の中での決意に呼応するかの様に異元扉がザムザの前に出現した。

「往きたいんやろ?ザボエラを超えたその先へ」

(何じゃこのドア!?)

(……よし!やるぞ!魔王軍で……必ず、父上を超える偉業を成し遂げて魅せる!)

ザムザが決意を固めて異元扉をくぐろうとする……

 

がしかし、ガッルールが突然叫んだ。

「ザムザ殿!上だ!」

ガッルールに言われて上を向いたザムザは、謎の落雷が自分を襲おうとしている事に気付いた。

「な!?これは!?」

バルトスが異元扉から飛び出して咄嗟にザムザを庇うが、セラヒィムがそれを嘲笑うかの様に邪な微笑みを浮かべた。

「無駄よ!天空神ゼウス様に逆らった者が天罰から逃れる事は不可能!ザムザよ、天空神ゼウス様に逆らいし者の仲間になった事を後悔するが良い!」

だが、

「つまり……その異例が初めて生まれた記念日と言う訳だな」

ガッルールがザムザをしつこく追い回していた落雷を掴むと、ガッルールの暗黒闘気が落雷をよじ登ってある人物の眼前に辿り着く。

「何!?」

そして、ガッルールが雷を思いっきり引っ張ると、天井からゼウスが降って来た。

そう!ガッルールの偵察旅の本当のラストはゼウスとの最終決戦だった!

だが、セラヒィムはそれを認めない!

「な!?……何をしている愚か者が!天空に御座すべき天空神ゼウス様を地上に堕とすとは最大の禁忌!命―――」

「邪魔だ!」

ガッルールに斬りかかろうとするセラヒィムを闘気弾で追っ払うガッルール。

その隙に真実の泉を発生させてこの場から立ち去ろうとするゼウスを闘気弾で吹き飛ばすガッルール。

「ぐええぇー!」

「ぐはあぁー!」

人差し指を振って「チ」を連呼するガッルール。

「ダメダメ。これはハドラー様の御前でどちらかが死ぬまで続けなければいけない私とゼウスとの決闘。余計な邪魔伊達は……不要」

でも、ゼウスは懲りずに真実の泉を発生させて他のセラヒィムを呼びながらこの場から立ち去ろうとする。

「第1位階1級猛禽人(エンジェル)セラヒィムよ!猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の誇りに賭けて命を捨ててこの儂―――」

だが、ガッルールは目の前のセラヒィムをその真実の泉に投げ捨て、その上で闘気弾で真実の泉を破壊してゼウスを真実の泉から遠ざける。

「ダメダメ。この戦いに参加出来る資格を持っているのは、私とアンタだけ。他は観客または部外者」

「おのれぇー……電撃呪文(ギガデイン)!」

ゼウスが遂に観念してガッルールの撃破に心血を注いている……様に観えるが、

「お見通し!」

「ぐえぇー!?」

結局は電撃呪文(ギガデイン)直撃の隙に真実の泉を発生させてその場から立ち去ろうとしているだけだったので、ガッルールは闘気弾を飛ばしてゼウスを真実の泉から遠ざけた。

「くそ!何故このわしを天空に帰さぬ!?儂は天空神ゼウスぞ!直ぐに天空に帰るが儂が本来やるべき事ぞ!」

だが、ゼウスはまたガッルールが放った闘気弾に吹き飛ばされた。会話している隙に真実の泉を足下に発生させようとしている事がバレてしまったからだ。

「なんだ今の魔力が籠っていない一撃は?ハドラー様の眼前で行われている御前試合だぞ。対戦相手に決着がつく前に逃げると言う恥を掻かせる訳が無いだろ」

今度こそ遂に観念したゼウスは、自身の最大の技でガッルールを滅ぼす事にした。

「そこまで言うのであれば……天空の怒りを思い知れぇ!万雷天罰撃いぃーーーーー!」

すると、無数の落雷が一斉にガッルールを襲った。

(1万本の電撃呪文(ライデイン)がお前を骨まで食い尽くす。しかも1本残らず高速自動追尾だ。逃れる術は無い)

ザボエラとガルヴァスがゼウスの本気に無言になる程驚く中、ターゲットのガッルールは冷静だった。

「私達はちょっと前まで異世界で修業していたって言ったよねぇ……異世界には君の知らない技が沢山有るんだよぉ」

ガッルールの不気味な笑顔に一瞬だけゾッとするゼウスであったが、既に1万本の電撃呪文(ライデイン)に襲われている身だとして深く考えていなかった。

「無駄だ。1万本の電撃呪文(ライデイン)が―――」

「ならは教えてやるよ!異世界の広さを!霞の呼吸、漆ノ型、朧……」

「命中だあぁーーーーー!」

1万本の電撃呪文(ライデイン)が一斉にガッルールを襲う姿を確認したゼウスは、今度こそ真実の泉を使って天空にある自身の神殿に帰ろうとする……が、

1万本の電撃呪文(ライデイン)が今度はゼウスに向かって飛んで来た。

「なぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?」

ゼウスが慌てて足下に発生させた真実の泉に飛び込もうとしたが、何者かに蹴られて床に激突してしまった。

「なんだ!?」

ゼウスを蹴った者の正体は……ガッルールだった。

そう。高速自動追尾機能を持たされた1万本の電撃呪文(ライデイン)が一斉にゼウスに向かったのは、ゼウスの真後ろにガッルールがいたからだ。

「馬鹿な!1万本の電撃呪文(ライデイン)を……儂の万雷天罰撃を喰らって生きている者が―――」

「違うよ」

「違う?」

ガッルールの言う「違う」に対し、ゼウスの背中は氷の様に冷たくなった。

「どんなすごい攻撃も当たらなかったら意味ないでしょ」

ガッルールの下衆全開の笑みに、ゼウスの背中は更に冷えた。

「避けたあぁー!?儂の万雷天罰撃を!?」

その間も、高速自動追尾機能を持たされた1万本の電撃呪文(ライデイン)がガッルールを襲い続けたものの、現れる際は亀のように遅く、消える際は瞬きする一瞬の間にと、緩急自在の足運びで、高速自動追尾機能を持たされた1万本の電撃呪文(ライデイン)を全て避けるガッルール。

「芸は身を助けるとは良く言ったモノだよ。霞の呼吸、ありがたくハドラー様の覇道に役立てさせて貰うよ」

(あっ!?何だ?なぜ消える!?どう言う事だ!?奴はどこへ行った!?これはまるで……まるで……霞に巻かれている様な……)

寧ろ、狙われていないからゼウスの万雷天罰撃に完全に無視される定めの筈のガルヴァス、ザボエラ、そして異元扉が巻き添えを食わされて慌てた。

「くそ!巻き込むんじゃねぇよ!」

「わ、ワシの家があぁー!」

で、

「そろそろ……避けるのも飽きちゃったし……攻めて視るかなぁ」

「何!?」

「霞の呼吸、伍ノ型、霞雲の海!」

ガッルールが暗黒闘気で強大な爪を形成すると、前方に突撃しながら辺り一面を大量の霞で覆う様に細かい連撃を高速で繰り出した。

「馬鹿が!1万本の電撃呪文(ライデイン)を全部斬る気か!?不可能だ!」

「霞の呼吸、陸ノ型、月の霞消!」

上空に跳躍しながら、広範囲にわたり霞で包み込む様に1万本の電撃呪文(ライデイン)に斬り込む。

「霞の呼吸、参ノ型、霞散の飛沫!」

霞を晴らすように腕で大きな円を描く回転斬りが、残りの電撃呪文(ライデイン)を全て霧散させた。

「なぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?ぜっ……全部斬りおった!儂の1万本の電撃呪文(ライデイン)はどこへ行った!?そんな!?バカな!?信じられぬ!とんでもない異常事態だ!儂が負けたのか!?」

ガッルールに完全に押されている事に焦ったゼウスが再び真実の泉を発生させようとしていたので、ガッルールが慌てて止めようとするが、

「停まれガッルール」

ハドラーちゃんの命令で慌てて停まるガッルール。

「ハドラー様!?いきなりなんで!?」

無論、ハドラーちゃんは色々と考えての命令であった。

「あの……昔の俺の様な馬鹿共に真実を教える為だ」

「……真実……」

そう。今回真実の泉を発生させた理由は逃走ではない。寧ろその逆だった。

「よくもこの天空神をここまでコケにしてくれたな?ならば呼ぶしかあるまい……儂の新たなる部下を……」

ゼウスの言葉に、ガッルールは漸くハドラーちゃんの言ってる意味を理解した。

「あー、なるほどね。と言う事は、あの水溜りから出てくるのは……」

「いでよ……儂の新たなる部下……信徒……大魔王バーン!」

そう言いながら怒りに満ちた笑みをガッルールに向けるゼウス。




後書き

ガッルールの偵察旅も最終局面!
ザムザの心境調査にスカウト、ザボエラにコケにされるガルヴァスと猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)、ハドラーちゃんとガルヴァスによる超魔生物時代ハドラーVS魔軍司令時代ハドラーの代理戦争。
そして……
ガッルールと天空神(を騙る)ゼウスとの最終決戦にガッルールが霞の呼吸をパクった疑惑へと至る、我ながら忙しい回になりました。

ま、前の時間軸の悪行が祟っているのでザボエラの扱いはこのまま雑にする予定です。

キギロ
「で、このまま来月ハドラーと大魔王バーンが戦って終わりか?大風呂敷を広げ過ぎて制御不能になった支離滅裂系漫画の末路みたいだぞ空っぽ?」

はてさて……本当に来月号以内に大魔王バーンがハドラーちゃんの前に出現するのかな?

キギロ
「それは……どう言う意味だ?」
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