ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第28話

ゼウスが目の前に発生させた真実の泉を使って大魔王バーンを召喚すると言い出したので、ガッルールは滝の様な汗を掻く程緊張し、ガルヴァスは大魔王バーンを手下扱いするゼウスに文句を垂れたが、ハドラーちゃんだけは何かを確信しているのか安堵の表情を浮かべていた。

「落ち着けガッルール。大魔王バーンとの戦いは、まだ遥か先だ」

 

ハドラーちゃんの言葉通り、30分後。

 

「……」

「……」

「……」

いっこうに姿を現さない大魔王バーンに痺れを切らして叫ぶゼウス。

「何をもたもたしているのだ大魔王バーン!?この天空神ゼウスが真実の泉を使ってまで呼んでいるのだ、瞬時に来るのが定めだろ!」

この展開には、流石のガルヴァスも困惑する。

「お越しにならないの?……大魔王バーン様は……」

大魔王バーンが未だに姿を現さない事で、ガッルールの緊張と危機感が更に高まり、臨戦態勢を保ちつつ脱水症になるんじゃないかと思われるくらい滝の様な大量の汗を掻いた。

が、そんなガッルールにハドラーちゃんは予想外な命令をする。

「休め」

「!?……何故です!?ここにもう直ぐ、大魔―――」

「いくら待ってもバーンは来ないよ」

そう言えば、ゼウスが大魔王バーンを召喚すると言った途端、ハドラーちゃんだけは何故か涼しげだった。

ガルヴァスはその意味がまるで解らなかった。

最初は精神体だから攻撃されても怖くないのではと考えた、だが、大魔王バーンのあの超魔力でその精神体を砕かれたら……魂の死は精神の死だ。

そうなれば、ハドラーちゃんの肉体はただの抜け殻になる。それではハドラーちゃんのリスクが大き過ぎる。

次の考えたのは、ハドラーちゃんが既に大魔王バーンを超えている可能性である。

なにせ、大魔王バーンの存在を知っていながら単独で地上界を支配すると抜かしたアホなのだ。

(……いや、それも違う。本当に大魔王バーン様に勝つ自信が有るなら、何故わざわざ異世界に自分の体を残した?何故精神体のみで来ると言う遠回りな事をする?)

「考え過ぎだ。そこの……かつての俺に似ている者よ」

ハドラーちゃんに思考を読まれたガルヴァスが驚く。

「!?」

「貴様はこう考えていただろう?『ここにもう直ぐ大魔王バーン様がお越しになるのに、何故この俺がここまで余裕なのか?』とな」

「ガフ!?」

「それはだな―――」

ハドラーちゃんが何を言おうとしているのかを察したゼウスは、それを遮る様にハドラーちゃんを小馬鹿にした。

「だから貴様はアホなのだハドラーよ。それは無い。絶対に有り得ぬ!」

だが、今のハドラーちゃんには解る。そのゼウスの言い分が見当違いな事だと。

「じゃあ何故バーンは来ぬ!」

ハドラーちゃんに図星を突かれて焦り叫ぶゼウス。

「来るわぁー!この地上を統べり監視する天空神ゼウスが呼んでおるのだ!来ない理由などこの世に存在せぬわぁーーーーー!」

それに対し、ハドラーちゃんは未だに余裕だった。

「なら……もう少しだけ待ってやろう。貴様等がバーンの到着を諦めるまで」

そんなハドラーちゃんの態度に、ガッルールもガルヴァスも軽く混乱した。

(え!?それだと、ハドラー様を護ろうと構えている私は何なの?)

(何を理由に大魔王バーン様が来ない事を確信した?ハドラーとバーン様の間に、いったい何が?)

 

そして……2時間が経過したが、

 

「……おい……この天空神ゼウスがお呼びなのだ……来るのが筋であろう……遂にボケたか大魔王バあぁーーーーーンーーーーー!」

一方、2時間30分も臨戦態勢状態で肩透かしを食らい続けたガッルールが限界を迎えた。

「ハドラー様……申し訳ございません。私は……ここまでです……」

疲労と脱水で遂に失神したガッルールは、オマンと共に異元扉を通って異世界に戻った。

「アフロ、ガッルールとザムザを頼む」

「はいはい。って!本名!オマン・コォイック!」

オマンのツッコミに対し、ガルヴァスが代わりに答える。

「オマン・コォイックだと!?卑猥が過ぎるだろ!」

が、ハドラーちゃんはオマンとガルヴァスのツッコミ合戦を無視してゼウスに話しかける。

「どうだ?これで、お前達もバーンの腹が見えてきただろ?」

「な、何ぃ!?」

「つまり、大魔王バーンは最初からこの地上を支配する気は無かったと言う事だ」

とここで、前の時間軸の事を思い出すハドラーちゃん。

(そう言う俺も、バランに言われるまではこの事に全く気付いておらんかったがな)

それに対し、ゼウスもガルヴァスも信じられないと言った感じでハドラーちゃんを見た。

(在り得ぬ!何故じゃ大魔王バーン!?このままでは、ハドラーのアホにまたボケ老人扱いされてしまうぞ!)

(何を言っている!?そりゃあ確かに、バーン様は無礼千万なゼウスを助けなかったよ。でも、それとこれとでは―――)

が、ハドラーちゃんは呑気にゼウスに質問する。

「では訊こう。魔界にいながら日光を浴びる術は有るか?ゼウスが言う真実の泉を使わずにだ」

「魔界にいながら日光……」

その途端、ゼウスもガルヴァスは嫌な予感がした。

「まさか……」

だが、2人共直ぐにそれを否定した。

「魔界にいながら日光、その疑問を抱く理由が、大魔王バーン様のどこにある!」

「たわけが!地上破壊などこの天空神ゼウスへの反逆そのもの!その様なデメリットしかない事を何故!」

ここまでヒントを与えたのに気付かない2人に呆れるハドラーちゃん。

「やはりお前達は、かつての俺と同じだな?支配欲と殺害欲に溺れ、陰に隠れた大きな陰謀を見落とし続ける。そして、気付いた時にはもう手遅れ」

ハドラーちゃんの言葉が、ガルヴァスを更に不安にさせる。

「確かに太陽の光が魔界まで届かん。だが!大魔王バーン様がこの地上界を破壊する理由には―――」

「本当にそうか?君は……漸くバーンのボケ老人を漸く疑い始めてない?」

「だ、黙りや!この私がそこまで不義者に見えるか!?」

「義理不義の問題じゃない!地上界が存続するか消滅するか?そう言う問題だろ!今は」

「ハドラー、貴様は何故そこまで―――」

「日光は……魔界まで届かないよ?」

不安に苛まれたガルヴァスが何処かへと駆け出した。

(アレは……バーンに歯向かうまでの度胸は無いか?やはりアバンの使徒とは違うか?)

で、残るはゼウスのみ。

「えぇーい!何をしておる大魔王バーン!?このままボケ老人のと言う罵りを一身に受け続ける気か!?」

「まだ気付かんか!哀れだな」

「何をぬか―――」

ハドラーちゃんは、ゼウスに現実を解らせる為、異元扉に命令する!

「異元扉!其処のボケ老人に大魔王バーンの腹を知る為のあの世界を魅せてやれ!」

「ほんまにええの?」

「やれ!」

「……後悔すんでぇ」

異元扉が再び開き、オマン達が逃げ込んだ異世界とは違う世界を魅せた……いや……この世界の末路を……

「な……何だこの光は!まるで消滅……まさか」

「そうだ。それが大魔王バーンが望む結果……地上の終焉だ」

「馬鹿な……そんな馬鹿な!そんな事をすればこの天空神ゼウスを敵に回すのは目に見えている筈。その様な―――」

その時、ミストバーンが異元扉の方へとゼウスを蹴り飛ばし、そして……

「そんな……馬鹿なあぁーーーーー!」

地上界を完全消滅させる光に飲まれて消滅するゼウスであった。

 

とここで、前の時間軸の話をしよう。

つまり、誰が猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)を本当の意味で滅ぼしたかである。

猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)を滅ぼした真犯人はミストバーンだった。

元々、魔界の酷な環境を理由に神々の事を嫌っていた大魔王バーンは、勝手に地上を統べる天空神とそのシモベを騙るゼウスと猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の事があまり好きではなかった。

そこで、バーンの意を受けたミストバーンが猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の本拠地である天空神殿に乗り込んで暴虐を振るったのである。

前の時間軸(そのとき)もまた、ゼウスはミストバーンの予想外の行動の意味を理解出来ずに死んだと言う……

 

ゼウスを殺してしまったミストバーンを視て困惑するハドラーちゃんとザボエラ。

「……ミストバーン」

が、ミストバーンはそんな2人に対して何もしなかった。

それどころか、仕事が終わったので帰るかの様にその場を後にして外に出て行ってしまった。

それを観たザボエラがそんなミストバーンに縋りつくが、ハドラーちゃんはそれを追わずに自分の体が待つ異世界へと戻った。

 

一方、ハドラーちゃんの意見と根拠に完全に混乱させられたガルヴァスが当ても無く走り続けた。

(嘘が!そんな筈は無い!大魔王バーン様が、地上界完全消滅などと言うハイリスクノーリターンな愚行を行う筈が無い!)

だが、ハドラーちゃんの大魔王バーンへの猜疑心を証明する質問がガルヴァスの頭にこびりつく

『魔界にいながら日光を浴びる術は有るか?』

(考えるな!ハドラーはアホだ。そんなアホの言葉を鵜呑みにするな)

けど……確かに魔界にいながら日光を浴びる事は事実上―――

(考えるな!アホの無知で無根拠なアホ発言を信じるな!)

でも……ハドラーちゃんの魔界と日光の関係に関する質問を理論的に分析すればする程―――

「考えるなあぁーーーーー!」

だが、1人の少女がガルヴァスの疑念を見逃さなかった。

「気付いたね?」

気付けば、ユニコーンの様な角を生やした少女がガルヴァスの前に立っていた。

「気付いた……何の事だ……」

ガルヴァスはそう言いつつ、内心不安だった。

(まさか、バーン様への疑念を見透かされたか?)

そこでガルヴァスは決断した。目の前の少女を殺そうと。

「それは、貴様が大魔王バーン様に歯向かっている事をかね?反逆者君」

それに対し、少女はガルヴァスの見苦しさに溜息を吐く。

「そうやって自分の都合の悪い物に蓋をしてきたの?解り易いね」

「黙りなさい反逆者。もう直ぐ大魔王バーン様の名の下にこの地上を支配するこの私に―――」

自分の勘が外れた事に気付いた少女は、恥ずかしそうに頭を掻いた。

「え?気付いていなかったの?うわぁ、恥ずかしいなぁ」

「何が恥ずかしい?大魔王バーン様の偉大さに気付いていない事か?」

「元はと言えば、君が大魔王バーンの本当の望みに気付いていない事が発端だよ……勘の鈍い鈍感さん」

その途端、ガルヴァスの脳裏にあの忌々しい質問が浮かんでしまった。

『魔界にいながら日光を浴びる術は有るか?』

が、ガルヴァスはそれを怒号で押し返そうとする。

「考えるなあぁーーーーー!」

そこで漸く自分の勘が当たっていた事に気付く少女。

そして……

「そうか……じゃあ死んで」

少女はユニコーンの様な角を持つ白いスカイドラゴンとなった。

少女の変化に気付くのが致命的に遅れたガルヴァスは、ここで自分が死ぬと悟った。

「畜生……ちきしょおぉーーーーー!」

こうして、ガルヴァスは白いスカイドラゴンが吐いたオレンジ色のビームの中へと消えた……




天空神ゼウスと豪魔軍師ガルヴァスはここで退場となります。
ゼウスの方は(大魔王バーンに見捨てられるのも含め)ほぼ予定通りの退場でしたが、ガルヴァスの方はちょっと違います……と言うか、この私がガルヴァスを使いこなせていなかったのが要因の1つであります(汗)。鬼岩城でアバンとハドラーちゃんを待ち構えるなどを予定していたんですが……

ま、これで堂々とハドラーちゃんに地底魔城を返却出来るし、クレオと例の白いスカイドラゴンとの決着を先延ばしに出来るし、良い事だらけって事でー!(汗)

で……次回から主役がハドラーちゃんに戻ります。
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