ぶくぶくが暮らす異世界での1年間の修業を終えたハドラーちゃん達がホルキア大陸に戻って来た。
「1年間もほったらかしにしていたのだ、地底魔城を失っていると考えるのが妥当だな?」
「もしも地底魔城が健在なら、敵が意外と鈍感か……」
ガンガディアが一旦沈黙し、意を決して言葉を再び紡ぐ。
「敵は既に我々への興味を失っているか」
ガンガディアが言いにくそうにしている理由を知ったハドラーちゃんは、邪な笑みを浮かべながら自信満々に答えた。
「もし後者であるならば、後でたっぷり懲らしめてやれば良いのじゃ!」
しかし、実際にヴィオホルン山に行ってみると、
「結界が機能していない?」
「その割には、誰もいないぞ?」
確かに何者かが地底魔城内で交戦した後が所々に有るが、その割には静か過ぎた。
「地底魔城に残していた連中は……」
「残念ながら……全滅の様です」
地底魔城の重要性に気付いてはいるが占拠はしていない……
ハドラーちゃんにとってはそっちの方がかえって不気味だった。
「まるで弄ばれてる様で腹が立つな」
「私は逆に空恐ろしいですね。本気を出せはお前など……と言ってる様で」
その後も地底魔城を探索するも、残っているのはハドラーちゃんの手下の死体ので、地底魔城を襲った犯人の姿は無かった。
その遺体の中には、破邪の洞窟で拾ったりゅうおうもどきの姿もあった。
「あの異元扉から自由を奪っていた連中がこうも簡単に!?」
「なんやて!?あの化物がか!?」
フレイザード2号と異元扉がりゅうおうもどきの戦死に驚く中、ガッルールがある予測を口にした。
「もしかして……アバンの仕業では?」
が、ハドラーちゃんもガンガディアもそれを否定する。
「それは無い。100%無い」
「ガッルールは直に戦っていないから解らんだろうが、彼らは賢いが卑劣ではない。そこら辺の強盗の様な真似はせんよ」
ハドラーちゃん達の言い分に、クレオはある違和感を感じた。
「君ら、本当に地上侵略をしてる魔王軍?」
「どう言う意味だ?」
「なんかね……まるでアバンの事を信頼しているみたいでさ……」
その後も地底魔城探索を続けるも、出てくるのは死体のみで敵の姿は無かった。
で、結局、1回も交戦せずに玉座の間に到着してしまった。
「すんなり辿り着いた……バルトスがいないとは言え……」
「地獄門が破壊されている……私の誇りだったのに!」
バルトスのこの言葉に、ハドラーちゃんはかつての自分の言葉を思い出してしまう。
『下らん正義感や騎士道精神を持ち合わせ、人間の様な情愛に現を抜かす!挙句には、敵に地獄門を通らせる大失態とは!』
そして……ハドラーちゃんは自分を恥じてしまう。
(あー!恥ずかしいー!ヒム達がかつての俺を観たら何と言うか!?)
「もうええやん。自分を許してやれや」
異元扉のこの言葉に、既にハドラーちゃんの正体を聞かされているバルトスは兎も角、ガンガディアとガッルールは困惑する。
「許す?何を?」
が、クレオが玉座に残されている宝石を発見したので、先程の疑問の答えを得る事は出来なかった。
「なんだ!?あんな場所にあからさまにダイヤなんか置いて?」
「近付くな!罠かもしれんぞ?」
すると、そのダイヤから光線が出て、逃げ出したガルヴァスを始末したあのユニコーンの様な角を生やした少女のホログラムをハドラーちゃん達の前に映し出した。
「生きていたのか?本来の役目を捨てた恥曝しめ!」
その途端、クレオが剣を抜いて目の前のホログラムを斬り刻もうとするが、ハドラーちゃんがクレオの肩を掴んだ。
「落ち着け。アレは魔力で作った
ユニコーンの様な角を生やした少女のホログラムは勝手に話し始めた。
「どうも、はじめましてハドラー。私は名無し。私が誕生してしまったと言う大大罪を償うべく、私は自分の本名を捨てました」
「嘘を言うなぁー!お前は本来、世界に希望をもたらす―――」
クレオが再びホログラムを斬ろうとしたので、ハドラーちゃんがクレオの肩を掴んだ。
「落ち着け!伝言を聴き逃す」
対して、ホログラムはクレオの怒りをある程度予想していたのか、クレオが落ち着くまで待った。
「すまないな。私が誕生する直前に犯した許されざる大大罪について、とんでもない勘違いしている女子がおってな、その女子の見当違いの怒りが止むまで黙らせて貰った」
「嘘を吐くなぁー!またしても、そうやってその身に宿る希望を侮辱するかぁー!」
どうやら、クレオとユニコーンの様な角を生やした少女との因縁は物凄く深い様だ。
ガンガディアもガッルールもバルトスも、怒り狂うクレオを取り押さえるのに必死であった。
「お前、マジで落ち着け。目の前の幻を殺しても何の意味も無いぞ」
それを観ていたハドラーちゃんは呆れながらホログラムの次の言葉を待つ。
「そろそろ落ち着いたと思うので、手短に話そう」
人格面は完全にユニコーンの様な角を生やした少女の圧勝に思えたハドラーちゃんだった。
(完全に弄ばれている……)
「先ず、私は大魔王バーンに力を貸す事に決めた」
ハドラーちゃんは黙った。
今のハドラーちゃんなら、大魔王バーンの本当の目的を知るが故に反論していただろう。が、クレオの怒り狂う姿を観て、ハドラーちゃんは逆に冷静になっていたのだ。
伝言用の幻覚に何を言っても無駄だと。
「ハドラー、お前は必ずこう言うだろう?『大魔王バーンに就いたって地上は支配できないぞ』と。だが、私はそれを承知の上でやってる事だ」
つまり、ユニコーンの様な角を生やした少女は大魔王バーンにこの地上界を破壊させる為に動くと言っているのだ。
「白状するとね、私、誕生する直前の私にとんでもない大大罪を犯させるきっかけとなったある風習が大嫌いなんだ。だから、私はその風習に消えて欲しいんだ。私とは関係が無い異世界の出来事なんて言い訳すら許さずにね」
「……何者だ?」
「後は、これは大魔王バーンからの伝言。ギルドメイン山脈まで来いって」
「ギルドメイン山脈だと!?」
今度はハドラーちゃんがビックリ仰天した。
前の時間軸では、ギルドメイン山脈の中に鬼岩城が建城されたからだ。
「鬼岩城は既に完成していたのか?」
「確かに伝えたからね。ギルドメイン山脈で待ってるよ」
そう言い残し、ホログラムは消えた。
ハドラーちゃんのアレの意味を察したバルトスは、殺される覚悟で自殺行為的な進言を行った。
「ハドラー様!もう、全てをお話になっては如何でしょうか!?」
それに対し、ハドラーちゃんは観念したかの様に呟いた。
「そうだな。あの事実を伝えずして鬼岩城の恐ろしさを伝える事は……無理か」
ハドラーちゃんは全てを話した。
自分が過去の自分に転生して人生2周目をしている事。
その過程で何故か自分は少女に成っている事。
気付いた時には魔族と超魔生物を兼ね備えた存在になっていた事。
その全てを。
で、それを聴いたぶくぶくの反応はと言うと。
「信じられんな」
「信じない?」
「確かに僕様は様々な呪文を使える魔法使いだ。が……いや、だからこそ、呪文が術と呼ばれる以上、そこには理屈があり、理論が組まれ、法則が支配している。逆に言えば、その理屈が不明な存在には魔法使いとて説明がつけられない」
ガンガディアはぶくぶくの言い分になるほどとは思う。
思うが、ハドラーちゃんの今回の白状が嘘だと言い切れない何かがあった。
「確かに、『転生して人生2周目』の原理が解らないのは色々と不気味です。が……これなら辻褄が合うんです」
ガンガディアの予想外の言葉に困惑するぶくぶく。
「辻褄?」
「サババとウトロです」
「さばば?」
「ハドラー様は勇者アバンがサババに到着する日を知っていましたね?」
前の時間軸ではザボエラから購入した超魔生物研究の過程で作られたおおめだまの亜種の地道な調査によって、ハドラーはアバンがサババにいる事を知った。
だが、この時間軸ではザボエラから距離を置き、ロン・ベルクに仕事を依頼しただけだった。にも拘らず、ハドラーちゃんはアバンがサババにいる事を知っていたのだ。
この時は、流石のガンガディアも不思議に思わなかったが、ウトロはハドラーちゃんの勘への猜疑心を強めた出来事であった。
先ず、ガンガディアの中ではハドラーちゃんは目立ちたがりだ。ハドラーちゃんが前線に姿を現さない事の方が疑問と言える程。その点は、前の時間軸のアバンも地底魔城攻略戦の時に指摘していた事だ。
しかし、ハドラーちゃんはウトロでのアバンとの決闘を避けた。その時の姿は、まるで何かから逃げる様であった。
事実、ハドラーちゃんは何故かアバンが凍れる
この予知は、ガンガディアは内心不気味に思えた。
だからこその、『転生して人生2周目』にある程度の納得が出来るのだ。
ぶくぶくは納得しないと言った感じだが、ガンガディアにそこまで言われたら、納得するしかなかった。
「つまり、1度経験したから知っていた事……だと言うのか?」
答えたのはハドラーちゃんだった。
「そうだ。つまり、サババもウトロもこれが2回目だったのだ」
でも、ぶくぶくはグダグダ言ってしまう。
「問題は、その方法が解らん事だ」
「これは俺の憶測―――」
その先の話は、ユニコーンの様な角を生やした少女の行方の方が気になるクレオによって強制終了させられた。
「そんな事より、あの裏切り者は本当にギルドメイン山脈にいるんだな?」
「裏切り者?」
ア゙ュッナはめんどくさそうに頭を掻いた。
「話は永くなるが、訊くか?」
で、結局、クレオに急かされる形で話は中途半端に中断された。
「往くぞぉー……ギルドメイン山脈にぃー」
「待て待て。俺の話を聴け」
ガンガディアは訊きたかった。
ハドラーちゃんは何故、ギルドメイン山脈と聞いて直ぐに鬼岩城が思い浮かんだのかを。
ハドラーちゃんは話したかった。
ギルドメイン山脈の中に潜む鬼岩城の恐ろしさを。
だが、クレオはひたすらハドラーちゃん達を大急ぎで急かすのみであった。
「何故そこまで慌てる?」
オマンとア゙ュッナは困り果てた。
「色々とあるのよ。色々とね」
「その色々を訊きたいのだが?」
その時、異元扉に異変が起こった。
「な!?……なんや?何者かがわてを勝手に開けようとしてる?」
「無理矢理こじ開ける?」
異元扉の事を思い出したクレオは、異元扉の言う異変を無視して異元扉に命令する。
「そんな事より、私を早くギルドメイン山脈に連れて往け!」
「いい加減落ち着けクレオ!焦り過ぎだ!」
他の者達がクレオを止める中、異元扉の奥から声が聞こえた。
「そうだ。ギルドメイン山脈には鬼岩城がいる」
異元扉の奥から聞こえる声が一同に静寂を与えるが、ハドラーちゃんだけは聞き覚えがあった。
「その声は」
そして、異元扉は遂に開かれ、中から1人の男性が出て来た。
「久しいな。バルトス」
謎の男に『久しい』と言われて困惑するバルトス。
「久しい?どこで遭ったか?」
が、そんなバルトスの疑問はハドラーちゃんの余計な言葉で吹き飛んだ。
「ヒュンケル」
ハドラーちゃんの口から出た言葉に、ガンガディアとバルトスは驚き、ガッルールは慌ててヒュンケルと謎の男を見比べた。
「ヒュンケルだと!?」
「これが……」
「え!?え!?だってヒュンケルはここに!」
無論、バルトスが知っているヒュンケルも困惑している。
だが、ユニコーンの様な角を生やした少女の事で頭がいっぱいのクレオは、目の前の謎の男をヒュンケルだとは信じず、
「あんた……私達のギルドメイン山脈往きを阻みに来たの?」
おまけ
ハドラーちゃん
「この俺が地上界を支配した暁には、ランサムウェアの使用を全面禁止にする!」
ガンガディア
「ハドラー様、ダイの大冒険の世界にパソコンは存在しないのですが」
ヒュンケル
「ハドラー、お前はまだあの事件を気にしているのか?」
ハドラーちゃん
「気にするも何も、KYな糞死神が悪魔の火を焚いた所で1ヶ月も待たされたからな。お陰で、ポップは1ヶ月も炎を持ち上げ続けた男と揶揄されたからな」
バルトス
「……それも、前の時間軸の御話で?」
ハドラーちゃん
「とにかく、あそこまで待たされるのは腹ただしいとしか言えぬ!」
ヒュンケル
「答えになっていない」
ハドラーちゃん
「それに、俺は最近、ニコニコ動画を観ておらんしな」
オーク
「あのぉー、ハドラー様がニコニコ動画を観ないとランサムウェアは、まったく無関係では?」
ガンガディア
「……」
オーク
「え?……あれ?……何で馬鹿を観る様な目で見られてるの?」
ハドラーちゃん
「ンン!兎も角、この俺が地上界を支配したら、ランサムウェアは使用禁止だ。解ったな」
さて、本作の主役をガッルールからハドラーちゃんに戻しました。
と思うでしょ?
ところがどっこい、ここからは合尾クレオパトラ(通称クレオ)とユニコーンの様な角を生やした少女(謎の白いスカイドラゴン)との因縁が今後の話の中心になります。
クレオが言う『希望』と『裏切り』とはどう言う意味か?そして、ユニコーンの様な角を生やした少女が主張する『誕生直前に犯してしまった大大罪』とは何か?
こうご期待。
そして、原作(前の時間軸)からの新たなる助っ人としてヒュンケルを登場させました。
原作から新たなる助っ人がやって来る話は最初から考えてはいましたが、最初は、自爆したキルバーンに吹き飛ばされたダイがハドラーちゃんがいる時間軸に迷い込む展開を考えていましたが、途中からハドラーちゃんの許に送る助っ人としては説得力が足りないと思ったので、バルトスの養子であるヒュンケルにしました。
一応吹っ切れたとは言え、やはりあの時バルトスが生きていたらは、どうしても考えてしまうので……
で……
最後のオマケは、『東映アニメ不正アクセス事件』への個人的な怒りと、ニコニコ動画がしばらく観れなくなった事への個人的な怒りが詰まってます(汗)。