ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第30話

異元扉をこじ開けてこの時間軸にやって来た前の時間軸のヒュンケルと、急ぎギルドメイン山脈に往きたいクレオがにらみ合っていた。

「貴方……私のギルドメイン山脈行きを邪魔する心算?」

「何も知らずにギルドメイン山脈に行く心算か?」

正に一発即発。

どちらかが余計な事を言えば、激戦は必至だろう。

皆が固唾を飲んで見守る。特にバルトスは目の前の男がハドラーちゃんに『ヒュンケル』と呼ばれた事がとても気になっていた。

そして……

ハドラーちゃんがクレオに覇者の剣を突き付け、ヒュンケルに地獄の爪(ヘルズクロー)を突き付けながら、2人の間に割って入った。

「そこまでだ。この戦い、どっちが勝っても無意味。大魔王バーンを喜ばすだけよ」

ハドラーちゃんがそう言うと、ヒュンケルの方をチラっと視て、更に一言、

「それに、ちゃんと休憩しないといけない奴が2人もいるらしいからな」

が、前の時間軸の方のヒュンケルがどうしても気になる事が有った。

「それより、この娘達は誰だ?ここは地底魔城の様だが、そこに何故、見覚えが無い女性達がいるんだ?」

一同は絶句した。

どうやら、前の時間軸のヒュンケルは目の前にいるハドラーちゃんの正体を見抜けなかったのだ。

「……俺は、また人生2周目に関する説明をしなければならんのか?」

「また長話……私は早くギルドメイン山脈に往かなきゃいけないのに……」

 

前の時間軸のヒュンケルは、ハドラーちゃんの正体とクレオ達に出逢った経緯を聴かされ驚いた。

「つまり、魔王ハドラーが女性となって蘇ったと言うのか?」

「そうだ。本来ならこの時代では使えない筈の超魔生物時代の技と武器のおまけつきでな」

故に逆に解らなくなった事がある。

「なら……鬼岩城の恐ろしさも十分知ってる筈だ。なのに、何故ギルドメイン山脈へと急ぐ?」

「それなら、あそこにいるクレオに訊け……」

ハドラーちゃんは残念そうに一旦区切り、

「と、言いたいところだが……」

「訳を、話さないのか?」

「そんな暇は無いの!」

ヒュンケルは呆れながら首を横に振った。

「無理だな」

「何がよ!?」

「そんな言い方だけでは、誰もお前に付いて行かんぞ?」

だが、焦るクレオはヒュンケルの説得にも耳を貸さない。

「言い方とか、そう言う問題じゃないの!」

「そう言う問題だ。お前が何故ギルドメイン山脈へと急ぐ理由が解らぬ者、特にギルドメイン山脈に往く理由は知らないが鬼岩城の恐ろしさを知ってる者は、絶対に首を縦には振らんぞ」

ハドラーちゃんはヒュンケルの意見に賛成した。

「そうだな。その程度の言い訳では、部下共を黙らせる事は出来んぞ」

劣勢になったクレオが苦虫を噛み潰したような顔をする。

「ぐぬぬぅー……」

ハドラーちゃんは再びヒュンケルをチラ見する。

「それに……休憩が必要な奴が2人もいるしな。ヒュンケル、その体で今のクレオと戦う心算だったのか?」

そう言われ、ヒュンケルはドキッとした。

「気付いたのか?」

「ああ。何せその傷、ほとんど俺のせいでもあるからな」

とここで、オマンが漸くしゃしゃり出てくる。

「と言う事は、エクスポーションの出番だな?」

だが、ぶくぶくはオマンの意見を真顔で否定する。

「いや、エクスポーションでは間に合わん!」

「間に合わんって、エクスポーションはHP全回復よ!」

「こいつが背負っている傷、エクスポーション如きがどうにか出来るレベルじゃない。エリクサーを使え」

「エリクサー!?あの超貴重な究極万能薬をか!?」

「そうだ。まあ、安心しろ。僕様の師匠がクレオにくれてやったあの家に不可能は無い!」

オマンとぶくぶくの会話を聞いて不安になるバルトス。

「ヒュンケル……お前はどんな人生を送って来たのだ?」

 

ぶくぶくに渡されたエリクサーを飲むヒュンケル。

それを不安そうに看るバルトス。

「どうだ?効いてきたか?」

その間、ずーっとイライラしているクレオに苦言を言うガンガディア。

「貴様、空気を読め」

で、その間、ヒュンケルの傷はエリクサーの力で徐々に修復されていくが、

「エリクサーの即効性がここまで阻害されるとは……ヒュンケル、お前はどんな人生を送って来たんだ?」

言われてみれば……

バルトスを失ったヒュンケルの人生は、激闘と激痛の連続だった。

勇者アバンをバルトスの仇と思い込み、アバンに剣術を教わるフリをしてアバンの殺害を企てるも失敗。

アバンが避けた拍子にヒュンケルは崖から落ちてミストバーンに拾われ、そこで暗黒闘気の使い方を学んだ。

そんなヒュンケルの努力が実を結んだかの様に、ヒュンケルは鎧の魔剣を手に入れて六大隊長の一角である不死騎団長の座に収まった。

しかし、弟弟子であるダイの執念の前に予想外の長期戦を強いられ、その最中にバルトスの死の真相を聴かされる形でアバンへの復讐を否定され、そんな気落ちも影響したのか、ダイのライデインストラッシュの前に膝を屈した。

その後、フレイザードに敗戦の責任を取ると言う名目で溶岩の中に突き落とされそうになるが、既に魔王軍を裏切っていたクロコダインの機転と説得に救われ、アバンの弟子へと表替えった。

が……

その後も、魔軍司令時代のハドラーの火炎呪文(メラゾーマ)、ボラボーンの凍てつく息(コールドブレス)、ラーハルトのハーケンディストール、アルビナスのニードルサウザンド、ヒムの闘気拳(オーラナックル)などと、様々な強敵の大技を次々と喰らってしまった上に、まるで贖罪のチャンスを欲しているかの様に大技グランドクルスを何度も使用してしまい、その後遺症も地味にヒュンケルを苦しめた。

そのせいか、大魔王バーンには戦わずして戦力外の烙印を押されてしまったのである。

それ故と言う訳でも無いが、ハドラーちゃんは改めて命令を下した。

「以後、デルムリン島からやって来る援軍がこの地底魔城に到着するまで、お前達全員に休憩を命じる!これは絶対だ!」

クレオがハドラーちゃんに食って掛かろうとするが、ぶくぶくが即クレオを捕まえてどっかに行ってしまう。

「はい休憩休憩」

「ちょっと!?今はギルドメイン山脈に急ぐのが先でしょ!」

ぶくぶくにとっては渡りに船だった。

かつての因縁の難敵の復活で冷静さを完全に失っていたクレオの冷静さを取り戻す時間が欲しかったからだ。

ハドラーちゃんはそれを察してか、クレオにアドバイスを送った。

「クレオ、チンチンに熱した頭で下した判断程、計画性に乏しいモノは無いぞ?」

それを聴いたオマンとア゙ュッナがぶくぶくの後を追う。

一方のフレイザード2号は、これ幸いと異元扉をどこかへと連れて行く。

「つまり、しばらく地底魔城で待機って事ですよね?なら、異元扉(こいつ)お借りしますねぇー」

で、ヒュンケルの事を気にするバルトスの肩を叩くガンガディア。

「我々も、自分の部屋に戻りますか?」

バルトスは前の時間軸のヒュンケルが背負った傷の事が気になったが、ハドラーちゃんとヒュンケルを2人きりにした方が良いと判断し、渋々ガンガディアの提案に従った。

「ああ」

 

2人きりになったハドラーちゃんと前の時間軸のヒュンケル。

先に口を開いたのはハドラーちゃんだった。

「で、ちゃんと効いているのか?その、エリクサーとやらは?」

「……ああ」

空返事なヒュンケルに釘をさすハドラーちゃん。

「余計な事はするなよ。命が惜しければな」

それに対して、ヒュンケルは答えない。

すると、ハドラーちゃんがわざとらしく、未練たっぷりそうに言い放った。

「あーあ、こんな事なら、俺はアバンから貴様を奪還しなきゃ良かったわ!」

ヒュンケルは苦笑しながら否定した。

「違うな。お前が俺をアバンから奪ったんじゃない。俺が勝手にアバンの許を去ったのだ」

ハドラーちゃんはそれを鼻で笑った。

「何も知らん者があの時の魔王軍を観たらそうは思わんよ。本来なら、人間共がアバンを恨む理由が無いからな」

「バルトスの事を知らん者にとっては……か……」

これ以上ヒュンケルの魔王軍入りの話を続けたら暗くなりそうだったので、ハドラーちゃんは強引に話題を変えた。

「で、そのアバンとダイは元気か?あいつらの事だから、未だにしぶとく生き延びておるのだろうと思うが?」

その途端、ヒュンケルの表情は更に重く暗くなった。

それを見て不安になるハドラーちゃん。

「何!?何が遭った!?アバンとアバンの使徒に!」

ヒュンケルはしまったと思ったが、取り敢えずアバンの未来について話す事ではぐらかそうとした。

「アバンは、今のところは元気だ。ただ」

「ただ?」

「フローラ姫に捕まって、カール王国国王をやらされてますがね」

その途端、ハドラーちゃんは大笑いした。

「フハハハハハ!アバンが支配する国だと?物凄く面白い国になりそうだな!」

が、まるでダイの末路を隠す事を許さぬかの様にハドラーちゃんが質問を続けた。

「で、ダイ共はどうした?」

「それは……」

どうしても渋ってしまうダイの末路……隠せるものなら隠したいとは思うが、この時間軸は、ダイの末路がハドラーちゃんにバレる事を望んでいた。

何故かと言うと、フレイザード2号がヒュンケルの背後にいたキルバーンの顔を、氷の拳で殴ったからだ。

それに気付いたヒュンケルが慌ててフレイザード2号に声を掛けた。

「顔だけはよせ!」

しかし、フレイザード2号は既にヒュンケルがキルバーンの顔を攻撃出来ない理由を知っていた。

「それは……この黒いのの本当の主従関係が明るみになるからか?」

それを聞いたピロロが慌てた。

「な!?今何言ったんだこいつ!?」

その間、ハドラーちゃんはキルバーンを直ぐに攻撃出来なかった。フレイザード2号の意味深な言い回しが気になったからだ。

「真の主従関係だと?」

それに対し、フレイザード2号はキルバーンではなくピロロに敵意を向けていた。

「黙れ等身大フィギュア!其処のひとつめピエロの手下のクセに」

先に反論したのはキルバーンだった。

「何を言ってるんだい?この僕が唯の人形だって言う気かい?」

だが、

「私は絶対に騙されないぞ。私は観たからな。前の時間軸の……ポップの末路を!」

それに1番驚いたのは……ハドラーちゃんだった。

「ポップの末路だと!?ヒュンケル!それは一体どう言う事だ!?」

「それは私の口から答えますよ。そこの黒い等身大フィギュアの―――」

フレイザード2号は、自身の背後にいたキルバーンに容赦なく氷の拳によるアッパーを見舞った。

「正体暴露を兼ねて」

それを見て慌てるピロロ。

「あー!ちょっと!大丈夫キルバーン!?」

目の前で繰り広げられている茶番を鼻で笑うフレイザード2号。

「キルバーン……ね?アンタ、そんなに大魔王バーンを爆死させたいの?」

フレイザード2号の予想外の言葉に、ハドラーちゃんは大混乱する。

「何!?キルバーンが大魔王バーンの敵だと!?」

それに関しては、既に答えを知っているからか、フレイザード2号は冷静だった。

「そう。こいつらは冥竜王ヴェルザーと大魔王バーンの密約により、大魔王バーンの許に出向させられた、人質の様な者ですよ」

「なんだと?キルバーンにそんな過去があったのか?」

「ただ、先に地上界を支配して新時代の神になるかバーンと勝負していたヴェルザーにとって、バーンは地上界征服の邪魔だった。そこでヴェルザーは密約の証となる人質と言う名目でバーンの許に、そこにある等身大フィギュアと」

フレイザード2号が再びキルバーンの顔を氷の拳で殴った。

それを見て慌てるピロロ。

「あーーーーー!」

そして遂にキルバーンの仮面がひび割れた。

「それを操るひとつめピエロをね」

「んー。よくもこの僕をここまでコケにしてくれたねぇ。君だけはタダでは殺さないよ。全身全霊をもって君を殺させて貰うよ」

が、キルバーンの言葉はフレイザード2号の心には届かない。

「黙れ等身大フィギュア。等身大フィギュアが化物のフリしたって、もう響かないんだよ」

一瞬で消えたキルバーンとピロロ。

が、ハドラーちゃんはそれよりもっと気になる事が有った。

「で、ポップの末路とキルバーンにどの様な関係が?」

 

フレイザード2号が異元扉を使って観たポップの末路を語り始めた。

目の前のヒュンケルがついさっきまでいた時間軸の大魔王バーンは、確かにダイに倒された。

だが、ヴェルザーにとって大魔王バーンを超える敵は地上界を支配するうえで邪魔者以外の何者でもなかった……

そこで、ピロロがキルバーンの頭部に隠した黒の核晶(コア)を起動させてダイを亡き者にしようとした。だが、それを操っていたピロロはアバンとマァムに完膚なきまで叩きのめされ、黒の核晶(コア)と化したキルバーンはダイとポップの飛翔呪文(トベルーラ)によって天空へと飛ばされた。

しかし、その最中にポップはダイに蹴り飛ばされ、ダイだけが自爆したキルバーンの中へと消えた……

その後、ロン・ベルクの見立てではダイはまだ生きているらしいので、ポップはマァムとメルルと共にダイを探し出す旅に出たのだと言う。

フレイザード2号が語るポップの末路を聴き終えたハドラーちゃんが不快感を露にした。

「キルバーン……最後の最後まで不快な邪魔者と言う訳か……許さん!」

とは言え、直ぐに動けない理由をハドラーちゃん自身が作ってしまっていた。

「とは言え、援軍が地底魔城に到着するまで休憩と言ったのは俺だったな?ま、キルバーンは興奮状態で戦える相手じゃないから、こういうクールダウンな時間はかえって貴重か?」

「クールダウン……クレオちゃんもそうしてくれると、ありがたいのですがね」

が、ハドラーちゃんもヒュンケルも、そんなクレオを本気で責める気にはなれなかった。

「で、話は変わるがギルドメイン山脈とあの女とはどんな因縁が有るんだ?」

「……どうやら、そこにクレオの因縁の宿敵がいるらしいのだ?詳しい話はまだ聴いておらんがな」

「因縁か……私、ピロロとの因縁を作っちゃったんだよねぇー。たった今」

フレイザード2号のこの言葉に、ヒュンケルは逸物の不安を覚える。

「まさか、キルバーンの狙いをハドラーからそらす為に―――」

それに対し、フレイザード2号は困り顔で本音を口にした。

「欲を言えば、ピロロが持ってる黒の核晶(コア)を奪って大魔王バーン撃破の切り札にしたかったんですがね」

「何!?」

ハドラーちゃんが驚く中、フレイザード2号が自信満々に答えた。

「つまり……この時間軸ではまだ間に合います!私がさっき語ったポップの末路が発生する前にピロロに勝利すれば良いのです!」

その言葉に、ヒュンケルは改めてギルドメイン山脈行きを焦るクレオの事を責める気にはなれなかった。

(『この時間軸ではまだ間に合う』……か。バルトス……)

 

一方、地底魔城からの援軍要請を受けていたデルムリン島では、何時の間にか地底魔城から姿を消していたゾーマズレディとバラモスエビルが海岸で座り込んでいた。

「はぁー……」

「何をやっているのだ?我々は……」

「私なんか、罪多き異元扉の終身刑を執行すると言う大事な仕事があったのに……」

項垂れているバラモスエビルが不憫に思ったのか、ブラスが声を掛けた。

「そんなに地底魔城に戻りたくないのであれば、この島に住めばよいのに」

バラモスエビルはそれでも構わないが、ゾーマズレディはそうも言っていられなかった。

「何を言ってるの!?アンタのボスであるハドラーが異元扉を野に放った上に、未だに再封印に失敗し続けている……あの方達がそれを知ったら……」

「あの方達?」

ブラスがその事に関する質問をする前に、その答えがブラスの背後に現れた。

「それは私の事かな?ゾーマズレディ?」

その途端、ゾーマズレディは顔面蒼白となった。

「バラン様!?これは!……違うんです!そうじゃなくて、そう言う事じゃなくて!」

バランの前で言い訳をしようとするゾーマズレディであったが、何を言って良いのかがまったく解らず、ただしどろもどろになるだけであった。

だが、そんなゾーマズレディに対するバランの発言は予想外の物だった。

「異元扉の事か?それについては、まだ討伐の命は受けていない」

「……へ?」

ゾーマズレディはバランの予想外の態度に困惑するが、一方のブラスは異元扉の執行猶予に関して身に覚えがあった。

「それはもしや……異元扉殿より大魔王バーンの方が危険だからでは?」




よくよく原作を振り返ると……ヒュンケルは無理し過ぎてるなって思いますね(汗)。
こんなヒュンケルの姿、とてもバルトスに見せられませんね(汗)。
ポーション系の最上位で対象のHPを全快するエクスポーションでは間に合わないって……我ながらぶくぶくに何を言わせてるんだ私(汗)。
ヒュンケル君、オマンがエリクサーを持ってて本当に良かったね(汗)。

後……
フレイザード2号さん……
本当に原作の最終回を知っているなら、キルバーンの顔を思いっきり殴るのだけはやめて!(汗)
ピロロなら兎も角!
今回は上手い事、るろ剣での鵜堂刃衛のターゲットが谷から剣心に換わったかの様な展開で済みましたが……(汗)

それと、ウトロから逃げて以降ほったらかしになっていたゾーマズレディは兎も角、バラモスエビルは何時の間にデルムリン島に辿り着いた?
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